シャチ

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愛らしい姿と高い知能で、水族館のショーでも人気のシャチ。しかしシャチの別名や異名は、物騒なものが多い印象です。
海のギャングという異名や、英名では殺し屋クジラ(Killer whale)。学名のオルキヌス・オルカ(Orcinus orca)は、「冥界からの魔物」という意味です。その名に恥じず、野生のシャチは生態系の頂点に立つほど獰猛で恐ろしい種。
相反する要素を兼ね備えるシャチですが、野生ではどのような生態なのでしょうか。シャチの普段の様子を見ていきましょう。

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〜基本情報〜

哺乳綱鯨偶蹄目-マイルカ科-シャチ属

オス:体長5.8〜6.7m 体重3,628〜5,442kg
メス:体長4.9〜5.8m 体重1,361〜3,628kg

もっとも広く分布する哺乳類と言われており、冷水を好むものの世界中の海で見られます。

現在は1種として数えられていますが、食性やサイズの違いから3つ(4つという説もある)のタイプがあるというのが定説です。シャチの種類については今も研究されており、今後どのような結論にたどり着くか楽しみでなりません。

シャチは基本的に群れで活動することが多く、独自の社会性を持っています。個体を識別する方法はアイパッチと呼ばれる目の上にある白い模様や、サドルパッチと呼ばれる背びれの根元にある模様です。

性格は活動的で好奇心旺盛。1日に100km以上を泳いだり、興味を持ったものには近づいて確かめたりする習性があります。

ほかの生物にも見られる特徴として、シャチは2種類の音を使うことがわかりました。コールと呼ばれる音は、群れのコミュニケーションに使われます。対してクリックスと呼ばれる音は、狩りにも使われる音波です。

前方に発することで何があるのかを判断し、凝縮して放つことで獲物を麻痺させることもわかっています。数mmしか離れていない2本の糸を判別するなど、精度は非常に高いようです。

知能が高いことから、世界中でショーが開催されています。日本でシャチのショーが見られるのは、鴨川シーワールドと名古屋港水族館の2つのみです。

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シャチのQ&A

シャチは本当に人に懐くの?

シャチが人に懐くと言われているのは、間違いではありません。シャチはとても知能が高く、世界中で人間とのショーに登場します。

人間の言うことに従うため「懐く」と言われていますが、従順かどうかは別の話でしょう。実際にシャチのショーで人間の死亡事故が発生しています。動物と付き合う中で、残念ながら起きてしまう事故ですね。

人間は大体にして「じゃれていただけだ」と言いがちですが、本当にそうでしょうか。それは当の動物にしかわかりません。ましてシャチはとても知能が高い動物ですから。

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シャチのかわいい白黒の模様に意味はあるの?

白黒の動物は自然界に何種類か存在しており、シャチ以外ではシマウマやパンダが有名です。愛らしい姿で人気がありますが、これらの色合いは分断色と言われる保護色とされています。

分断色とは、目立つ模様でその動物の体が分断されるように見え、1個の生物として認識されづらい体色のこと。とても目立つように思いますが、それは人間の目で見ているから。

動物の目は人間ほど色を感じられないと言われており、基本的に白黒の世界のようです。白黒の世界でシャチのような体色を持っていれば、捕食者として有利な状況になりやすいでしょう。

また目の上にある白い模様はアイパッチと呼ばれ、シャチの愛らしい姿の代名詞と言えます。アイパッチも分断色であると同時に、獲物の目に対して進行方向を誤認させる効果があるようです。ほかにも群れの中で位置関係を把握するために使われている、とも言われています。

人間にとっては愛らしさの象徴のように扱われますが、シャチにとっては狩りに必須の機能ですね。

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シャチは何を食べるの?

シャチと言えば愛らしい見た目に反して、獰猛なことが知られています。捕食するもので有名な生物は、アザラシでしょう。氷上に乗り上がってアザラシを襲う姿は、恐怖を感じるほどです。

しかしシャチは海洋生態系の頂点に立つ動物なので、捕食対象はたくさんあります。魚や鳥も食べますし、ホオジロザメやホッキョクグマも捕食対象です。

ホオジロザメと言えば、映画「ジョーズ」のモデルとなった人間にとって恐ろしいサメ。シャチにとっては、ホオジロザメすらエサに過ぎません。

さらに陸棲生物の中でも獰猛な、ホッキョクグマでさえ襲うから驚きです。ただシャチは多くの海域に生息しているため、海域によって捕食するものは違うと言われています。すべてのシャチが、ホオジロザメやホッキョクグマを捕食しているわけではないようです。

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シャチは本当に海中で最強の生物なの?

シャチが生息している海域において、生態系の頂点であることは明白な事実です。しかしすべての海においていわゆる「最強」と言えるか、それは定かではありません。出会うことのない生物と比較しても、結局机上の空論で空想に過ぎないからです。

シャチはクジラも捕食しますが、クジラは20mを越える巨体を持っています。そのクジラ相手にシャチは群れで狩りをしますが、1対1ではおそらく勝てないでしょう。

ほかにもサメを捕食対象とするシャチは、体表に多くの傷を持つことが知られています。これは反撃を受けているからに他なりません。サメだって襲われれば抵抗するので、場合によってはシャチも無事ではいられないでしょう。

自然界の生態系はとても複雑なので、単純に「最強」とは言えないもの。ただ、だからこそ興味が尽きないのかもしれませんね。

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シャチに天敵はいないの?

シャチの生息する海域に天敵と呼べる存在はいるのでしょうか。答えは「NO」です。

やはりシャチが生息する海域では、生態系の頂点に君臨します。もちろん幼少個体や病気個体などであれば、単体のホオジロザメに捕食されることもあるでしょう。ですので健康な成体であれば、天敵はいないと言えます。

少し主旨が変わりますが、あえて挙げるなら「人間」が天敵と言えそうです。環境を破壊したり研究として捕獲したりする人間は、あらゆる動物にとって天敵と言えるかもしれません。ただ全ての人間がその限りではないので、人間=悪とは考えたくないですね。

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シャチの名前の由来は?シャチホコと関係あるの?

シャチの名前は、空想上の動物である鯱(シャチ)が由来と言われています。鯱は頭が虎で、体が魚の動物です。名古屋城の天守閣にあるシャチホコも鯱に由来しているとされており、シャチとシャチホコは無関係ではありません。シャチホコは、強さの象徴として名古屋城の天守閣に取り付けられました。

またシャチは、昔から「シャチ」と呼ばれていたわけではありません。昔は「逆叉、逆戟(サカマタ)」と呼ばれており、由来は中国の戟(ゲキ)という武器です。シャチの背びれが戟に見えたことで、サカマタと呼ばれるようになりました。

シャチホコと戟、どちらも強さの象徴です。生態系の頂点であるシャチにはピッタリの由来ですね。

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シャチが海のギャングと言われるのはどうして?

シャチは、非常に頭脳的で高度な狩りをします。奇襲、協力、挟み撃ちのように人間が行う行動とあまり変わりません。

武器は大きな体と鋭い歯、そしてクリックスと呼ばれる音波です。クリックスはシャチ特有の機能ではありませんが、凝縮した音波を獲物に当てることで麻痺させる効果があります。

ほかにも海面付近を遊泳していたサメに対して真下から奇襲をしかけ、一撃で仕留めました。

さらに口に入れた魚を吐き出しておびきよせたカモメを捕食したり、氷の下を何度も往復して波を立たせ氷上のアザラシを海中に落下させてから捕食したりと普通では考えられません。

自分より大きいクジラを狩るときには、群れでクジラの上にのしかかって呼吸の妨害、窒息させます。

ただ獲物を追いかけるだけではなく、獲物の特性を知った上で狩りを行う姿はまさにギャングといえるでしょう。

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シャチが子供を産めなくなるってどういうこと?

シャチは家族単位で群れを形成し、社会的な活動を行います。その様子は人間とそっくりです。実は繁殖という点においても、シャチは人間と共通点が多く見られます。

メスのシャチは14〜5歳から子どもを産むようになり、子どもの数は生涯で4〜6頭ほどです。そして30〜40歳ほどになったシャチは、人間と同じように閉経します。

閉経というメカニズムを持った生物は、シャチ・人間・コビレゴンドウの3種類。子どもが産めなくなってから数十年生きる点も、人間とよく似ています。

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シャチの種類

現代の動物学ではシャチに種類はなく、タイプで分けられています。

  • タイプ1:定住型
  • タイプ2:回遊型
  • タイプ3:沖合型

将来的には「○○シャチ」と言った名称で分けられる日が来るかもしれません。

参考文献

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/シャチ

NATIONAL GEOGRAPHIC
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/071000260/
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8468/

Cute Shachi
http://tajijujejorenshu2.sitemix.jp/brog7.html

クジラや深海魚の生態情報をまとめるサイト
http://shinkai-fish.com/category10/entry80.html

法学部性が語る生き物の世界
http://blog.livedoor.jp/yasu1013orca/archives/1024978294.html

古世界の住人
https://ameblo.jp/oldworld/entry-10012657011.html

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