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マヌルネコ

マヌルネコ

マヌルネコ

あなたはマヌルネコという、もふもふの毛皮とずんぐりした体型が特徴のネコ科動物を知っていますか? 限られた動物園でしか飼育されていないため、初めて名前を聞いた人や実際に見たことがない人も多いことでしょう。 マヌルネコは“世界最古のネコ”とも呼ばれ、時にマイナス50℃にもなる環境に適応して暮らすとても面白い動物です。 この記事でマヌルネコにはどんな特徴や秘密があるのか、一緒にのぞいていきましょう!

マヌルネコ 基本情報

哺乳綱(ほにゅうこう)食肉目-ネコ科

体長 オス54~57cm メス46~53cm 体重 オス3.3~5.3Kg  メス2.5~5Kg

マヌルネコは中央アジアの寒冷地(かんれいち)に生息する、野生の小型ネコ科動物です。約600万年前から生き残っていると考えられる古いタイプのネコで、時に“世界最古のネコ”と呼ばれることもあります。淡灰色~濃灰色の長い毛とずんぐりとした体つき、顔に入る独特の2本線など、他のネコ科動物とは異なる特徴を持っています。

マヌルネコは性別を問わず生後9~10カ月ほどで性成熟(せいせいじゅく)を迎え、繁殖ができるようになります。妊娠期間(にんしんきかん)は66~75日ほどで4月から5月になるとすみかに巣を作り、1回の出産で1~5頭(平均3~4頭)の赤ちゃんを産みます。子どもは生後4~5カ月で独り立ちしますが死亡率が非常に高く、約68%は独り立ちする前に死んでしまうといわれています。

マヌルネコ Q&A

マヌルネコ
マヌルネコの名前の由来は何?

「マヌル」はモンゴル語で“小さいヤマネコ”という意味で、現地での呼び名がそのまま動物の名前になったとされています。

マヌルネコは英語で「Pallas's cat」「Manul」「Steppe Cat」と表現され、和名では「モウコヤマネコ」と呼ばれることもあります。学名は「Otocolobus manul」で、“短く切った耳(短い耳)の小さなヤマネコ”(“Oto”は耳、“colobus”は短く切った“といった意味)といった意味が込められているようです。

余談ですが、マヌルネコはかつてイエネコやリビアヤマネコと同じ「Felis」属(ネコ属)に分類されていました。しかしその形態や生態が独特であること、さらに独特な遺伝子を持つことから現在“マヌルネコは「Otocolobus」属に分類される唯一の動物”という考え方が一般的になっています。

マヌルネコ
マヌルネコはどうしてそこに住んでいるの?

マヌルネコはシベリア南部からイラン、アフガニスタンにいたる中央アジアの広い範囲に生息しています。さまざまな環境に適応できるようで、砂漠地帯やステップのような平地に加え、3,000mをこえる高地で暮らしている個体もいます。

とはいえマヌルネコが生息する地域は総じて環境が厳しく、時にマイナス50℃になるばかりか天敵である猛禽類(もうきんるい)やキツネの仲間も生息している場所ばかりです。マヌルネコがなぜこのような厳しい環境に生息しているのか、この場所を住みかに選んだのか詳しい理由はわかりませんでした。しかしマヌルネコにとっては寒さや高山での生活に体を適応させてまで、そこを住みかに選んだ理由があったのだと考えられます。

マヌルネコ
マヌルネコは何を食べているの?

マヌルネコは肉食性の動物で、野生のマヌルネコはウサギ(ナキウサギ、ノウサギなど)やげっ歯類(アレチネズミ、ハタネズミ、ハムスター、ジリスなど)などの小動物を捕食しています。時には鳥類やトカゲなどのは虫類も食べますが、体が小さいため大型の哺乳類や家畜などを襲うことはほぼありません。

マヌルネコの狩りは天敵である猛禽類が活動を休止する、周囲が薄暗い明け方と夕方に行われることがほとんどです。狩りは音もたてずに獲物に近づいて捕らえる“忍び寄り型”が多く、その時の動きがカクカクとした“だるまさんがころんだ“のような動きであることが知られています。獲物が少ない冬場になると、獲物の巣穴の近くでじっと待つ“待ち伏せ型”で狩りをすることもあります。

なお動物園では馬肉や鶏肉、ハツカネズミやヒヨコなどを与えられることが多いようです。

マヌルネコ
マヌルネコはどんな性格なの?

マヌルネコは野生動物であり肉食動物ですが天敵も多く、自分自身も食べられてしまう立場の動物です。そのためとても警戒心(けいかいしん)が強く、人を襲うことはないもののなつくこともないといわれています。

基本的には飼育下でも物陰に身を隠していること、物陰から大きな犬歯を見せて威嚇(いかく)してくることも多く、イエネコのように人にすり寄ってきたり無防備なポーズを取ったりすることはありません。

例外中の例外で栃木県の那須どうぶつ王国で飼育されているメスのマヌルネコ「ポリー」はとても人なつこく、飼育担当者を見かけると後を追いかけるという行動をします。しかし通常のマヌルネコにおいては、こういった行動が見られることはありません。

マヌルネコ
マヌルネコはどうしてぬいぐるみのような見た目をしているの?

マヌルネコはイエネコと同じくらいの大きさでとても毛が長く、ぬいぐるみのようにずんぐりとした体つきをしています。ではなぜ、マヌルネコはこのような見た目をしているのでしょうか。

マヌルネコが暮らす地域は冬になると時にマイナス50℃にもなる、とても厳しい環境です。マヌルネコはその中で生き抜くため、冬毛をとても長く密に生やすことで寒さから身を守っているのです。さらにマヌルネコには冬を迎える前にたくさん食べて体重を増やし、天然のコートの役割をする脂肪をたっぷりとたくわえる習性があります。そのためふわふわの冬毛と大きくなった体が相まって、冬のマヌルネコは夏のマヌルネコよりも一回りも二回りも大きく見えます。

マヌルネコのぬいぐるみのような見た目には、厳しい環境で生き抜くための秘密が隠されていると考えると面白いですね。

マヌルネコ
マヌルネコはどうして他のネコと顔つきが違うの?

マヌルネコの顔を良く見ると他のネコと比べてひたいが高く、耳が低い位置についているように見えます。しかし実はひたいが高いのではなく、目が高い位置についているため独特な顔つきに見えるのです。

野生のマヌルネコは大きな岩が転がる砂漠やステップで狩りをする時に岩場に身を潜めて目だけ出し、獲物が油断する瞬間を狙います。この時マヌルネコは独特の顔つきのおかげで、耳も出さずに獲物の様子だけを伺うことができるのです。このような習性があることから、マヌルネコは独特な顔つきに進化したものと考えられています。

マヌルネコ
マヌルネコの毛はどうして灰色なの?

「マヌルネコはどうして他のネコと顔つきが違うの?」の項目でも説明しましたが、マヌルネコが暮らす場所には大きな岩がたくさん転がっています。そんな場所ではマヌルネコの灰色の毛皮は獲物にも天敵にも気づかれにくい、見事な保護色となってマヌルネコの命を守ってくれるのです。

ちなみに冬毛は良く見る“もふもふ”とした灰色の毛ですが、夏毛は赤みがかった色合いになる個体も多いようです。中央アジアでは一見するとマヌルネコには見えないほど、全身が赤褐色の個体が見られることもあるそうです。

なおマヌルネコは敵を見つけると動きを止めてその場に腹ばいになり、なんとかやり過ごそうとします。するとマヌルネコの毛皮は見事に岩場に溶け込み、目で見て獲物を探す猛禽類やキツネはマヌルネコがどこにいるかわからなくなってしまうそうです。走ることが得意ではないマヌルネコにとって、最大の自分の身を守る手段は岩への擬態(ぎたい)という訳です。

マヌルネコ
マヌルネコはペットとして飼えるの?

このところSNSやテレビ番組でマヌルネコが取り上げられる機会が増え、そのなんともいえないかわいさにじわじわと人気が高まっています。かわいい動物を見ると飼いたくなる人もいるかもしれませんが、個人がペットとしてマヌルネコを飼うことはできるのでしょうか?

マヌルネコは“ネコ科全般”という扱いで、「ワシントン条約」の付属書Ⅱに掲載されています。 付属書Ⅱに掲載されている動物はすぐに絶滅してしまうとは考えられないものの、取引を規制しなければ将来的に絶滅してしまう可能性があるとされていますが、商業目的の取引は全く不可能という訳ではありません。しかし輸出する国の許可や書類が必要であること、マヌルネコは国際的に保護されている動物であることから、簡単に購入・輸入できるとは考えない方が良いでしょう。

また法律や条約という面以外から見ても、マヌルネコには感染症に弱いという特徴があるため一般家庭で飼育するのはほぼ不可能だと考えられます。というのもマヌルネコが暮らす高山は動物が生きるには厳しい環境であり、病原体となる雑菌などもほぼ存在しません。そのためマヌルネコは動物園で飼育員が徹底的に除菌・消毒を行って飼育しても感染症にかかってしまうことがあるほど、飼育が難しい動物です。特に免疫力(めんえきりょく)が弱い子猫のうちは感染症にかかってしまい、あっという間に死亡してしまうことも少なくありません。

マヌルネコはとても愛らしい見た目をしているため、ペットとして飼いたいと思う気持ちを持つ人もいることでしょう。しかしマヌルネコの命を守るためにもペットとして飼うのではなく、動物園に会いに行く、SNSに投稿されている写真や動画を見るといった方法でマヌルネコをかわいがって欲しいと切実に思います。

マヌルネコ
マヌルネコはどのくらい生きるの?

マヌルネコの寿命は野生下で最長10年(平均5年)、飼育下で11~12年だと考えられています。

なお日本最高齢のマヌルネコは2019年12月まで兵庫県の神戸市立王子動物園で飼育されていたメスの「ペッキー」で、12歳4カ月まで生きました。ペッキーは高齢にもかかわらず元気に過ごしていたそうですが、残念ながら心不全を起こして急死してしまいました。

マヌルネコ
マヌルネコにはどんな敵がいるの?

野生におけるマヌルネコの天敵は、大型の猛禽類(ワシやタカなど)やキツネの仲間(アカギツネ、コサックギツネなど)です。

しかし実はマヌルネコにとって、一番の敵は私たち人間です。 マヌルネコは昔から質の良い毛皮を取るために、たくさんの個体が捕まえられてきました。1980年代にはマヌルネコの毛皮の国際取引は規制されましたが、今も生息地の国内における取引は禁止されておらず、狩猟が続けられています。また人間が飼っているイヌに殺されること、人間が仕掛けたオオカミやキツネ捕獲用の罠にかかって死んでしまうことも少なくないそうです。

現状マヌルネコはすぐに絶滅してしまうことはないとされていますが、乱獲の影響と生息地の開発により個体数は減少傾向にあると考えられています。準絶滅危惧種(じゅんぜつめつきぐしゅ)に指定されているもののこのまま狩猟が継続し、生息地が破壊されてしまうとマヌルネコはいずれ本や映像でしか会えない動物になってしまうかもしれません。

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うしろまえこ

自分でマヌルネコに関する記事を書くにあたり参考にさせていただきました。ツボを抑えた良記事ですね♪と言いつつ気になる点が。マヌルネコの日本国内最高齢記録の持ち主は、1996年中国から東山動物園に来園、2012年に亡くなった名無しの雌の個体だと思われます。来園時は1歳ぐらいと考えられ、15年飼育されていたので16年生きたと推定されます。

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