スナドリネコ
スナドリネコ
スナドリネコ
あなたはスナドリネコという、水辺に生息する「漁」が得意なネコ科動物を知っていますか? 日本では限られた場所でしか飼育されていないため、初めて名前を聞いたという人も多いことでしょう。 しかし「ぼのぼの」というアニメ(漫画)に登場するため、名前だけは知っているという人もいるかもしれません。 この記事でスナドリネコはどんな動物でどんな特徴や秘密を持っているのか、一緒にその暮らしをのぞいていきましょう!
スナドリネコ 基本情報
哺乳綱(ほにゅうこう)食肉目-ネコ科
体長60~80cm 体重 6~10Kg
スナドリネコは南~東南アジアに生息する野生のネコ科動物で、体の大きさはイエネコの3倍程度とやや大きめです。毛の色はオリーブ色がかった灰色で、顔から背中にかけては濃褐色か黒色のしま模様が、全身には同じく濃褐色か黒色の斑点模様が入ります。ネコの仲間ですが水を嫌がらず、獲物を捕らえるために躊躇(ちゅうちょ)せず水の中に入っていきます。
スナドリネコの繁殖に関する情報は少なく、特に野生下においての繁殖に関してはまだわかっていないことがほとんどです。どうやら野生下では岩の間や深いやぶ、樹洞(じゅどう)などに巣を作り、その中で子どもを産むらしい、ということくらいしかわかっていないのが現状です。飼育下ではメスが生後15カ月ほどで性成熟したこと、妊娠期間(にんしんきかん)は63~70日ほどであること、1回の出産で1~3頭(平均2頭)の赤ちゃんを産むという記録があります。
スナドリネコ Q&A
スナドリネコの名前の由来は何?
スナドリネコは水辺を好み、魚を主食としている野生ネコの1種です。その魚を捕る姿から「漁る(すなどる)」ネコということで、「スナドリネコ」という名前が付けられました。
スナドリネコは英語でも釣りや漁業をするネコという「Fishing cat(フィッシングキャット)」と呼ばれていて、学名では「Prionailurus viverrinus」と表現されます。漢字では「漁り猫」と表現されます。
スナドリネコはどうしてそこに住んでいるの?
スナドリネコはインドやインドネシア、中国など、南~東南アジアにかけた広い範囲に生息しています。
基本的にマングローブの林や沼沢地(しょうたくち)、密林の川沿いなど水が豊富にあるところを好みますが、これは彼らの主食である魚が豊富に生息していることと関係があるものと考えられます。
スナドリネコは何を食べているの?
スナドリネコは肉食性の動物で、ネコ科の野生動物の中では珍しく魚を主食にしています。
野生のスナドリネコは主に水中にいる生物(魚類や甲殻類、貝類)や両生類やは虫類を食べますが、陸上にいる小動物(ウサギやネズミなど)や鳥類などを襲うこともあります。時には人間が飼っている家禽(かきん・ニワトリやアヒルなど)や家畜の子ども(子ヤギや子ウシなど)を襲い、食べてしまうこともあるそうです。
スナドリネコの狩りは主に水辺でじっと待ち伏せ(まちぶせ)をして、獲物を捕まえる待ち伏せ型で行われます。待ち伏せをする以外にも浅瀬に入って獲物を捕まえたり、水の中に全身をつけて泳ぎながら魚を追いかけたりすることもあるそうです。魚を捕まえる時はかがむような姿勢を取り、前脚(まえあし)で器用に魚をすくいあげます。
なお動物園では鶏肉や馬肉、ひよこを主食に、おやつ程度に魚(アジなど)が与えられているようです。
スナドリネコはどんな性格なの?
スナドリネコの見た目はイエネコに似ていますが、実はとても獰猛(どうもう)な性格をしていることで知られています。
その性格を表すにあたって、1つ有名なエピソードがあります。それはイギリスの動物学者が野生のスナドリネコを捕まえて人に良く慣れた若いメスのヒョウの隣のおりに入れておいたところ、スナドリネコが金網を食い破ってヒョウのおりに侵入し、あげくヒョウを食い殺してしまったというものです。
スナドリネコが勝ったのはヒョウが若く戦い方を知らなかったこと、狭いおりの中だったことなどさまざまな理由があってのことかもしれません。実際に野生でスナドリネコとヒョウが出会って戦ったらどちらが勝つかわかりませんが、このエピソードからスナドリネコの気性が荒く、かつ力も強いことが伝わってくるのではないでしょうか。
なおスナドリネコの生息地の1つであるバングラデシュでは、スナドリネコは獲物が少なくなると人間の子どもを襲ってさらってしまうと信じられているそうです。そのため現地においてスナドリネコはトラと同じように恐れられていますが、実際にスナドリネコが人を襲ったという確実な証拠はありません。
ちなみに動物園で飼育されているスナドリネコは人を良く見ているようで、飼育担当者によって思いきり態度を変える個体もいるそうです。そんなスナドリネコが威嚇する時の表情はトラやライオンを感じさせる、猛獣そのものといった表情です。
スナドリネコは、ネコなのに水かきがあるって本当?
本当です。 まずスナドリネコはとても大きなツメを持っていますが、他のネコ科動物と違ってツメを完全にさやの中に引っ込めることができません。またスナドリネコはネコ科動物であるにもかかわらず、部分的ではあるものの前脚に水かきを持っています。
これらはスナドリネコが水の中に入り、ツルツルと滑りやすい魚を捕まえやすくするために持っている特徴だと考えられています。
スナドリネコとスナネコにはどんな違いがあるの?
同じ野生のネコ科動物である「スナドリネコ」と「スナネコ」は名前がそっくりですが、どんな違いがあるのでしょうか?
この2種のネコはまず、生息地が全く異なります。スナドリネコは水を好み熱帯の水辺で暮らしていますが、スナネコは水が非常に貴重な砂漠で暮らしています。スナドリネコにとって水は欠かせないものですが、スナネコは水を飲まなくても獲物に含まれる水分だけで生きていくことができます。
また生息地の違いから体の作りも異なっていて、スナドリネコの毛は密林に溶け込む色合いで荒く、水にぬれてもすぐに乾くようになっています。一方のスナネコの毛は砂漠に溶け込む色合いで冬毛は長くて密に生えるほか、脚の裏には砂漠の砂で滑ったりやけどをしたりしないように黒っぽくて細かい毛が生えています。
スナドリネコはペットとして飼えるの?
見た目は普通のイエネコに近いスナドリネコですが、自宅でペットとして飼うことはできるのでしょうか?
スナドリネコは日本の法律で人の命や財産に危険を及ぼす可能性がある、「特定動物(とくていどうぶつ)」に指定されています。令和2年6月1日以降新たに特定動物を愛玩目的(あいがんもくてき・ペットとして飼うこと)で飼うことは全面的に禁止されたため、日本国内においてスナドリネコをペットとして飼うことはできません。
とはいえもしスナドリネコを飼えたとしても、その気性の荒さを考えると世話をすること自体がかなり難しいものと考えられます。
スナドリネコが見られる動物園や水族館はあるの?
スナドリネコは令和3年現在、兵庫県の神戸どうぶつ王国と三重県の鳥羽水族館、愛知県の東山動物園にて飼育されています。2017年までは大阪府の天王寺動物園でも飼育されていたようです。
スナドリネコを飼育している施設は少ないため、ぜひ上記の動物園や水族館を訪れた際はじっくりと観察してみてください。タイミングが良ければ、実際に魚を“漁る”姿が見られるかもしれません。
スナドリネコは絶滅が心配されていること、まだまだわからないことが多い動物であることから、繁殖して赤ちゃんを見られる機会や新しい生態が判明することを期待したいものです。
スナドリネコはどのくらい生きるの?
スナドリネコの寿命は野生下では不明ですが、飼育下で12年ほどだと考えられています。
かつて大阪府の天王寺動物園で飼育されていたメスのスナドリネコ「ヴェル」は平均的な寿命をこえて15歳まで生きましたが、残念ながら肝腫瘍で死亡してしまいました。
スナドリネコにはどんな敵がいるの?
野生におけるスナドリネコにはほとんど天敵はいませんが、時に大型のは虫類(クロコダイルやニシキヘビなど)に捕食されてしまうことがあるようです。
スナドリネコはヒョウすら殺してしまうほど強い動物ですが、そんなスナドリネコにとって一番の敵はクロコダイルでもニシキヘビでもなく、実は私たち人間です。
スナドリネコは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは“絶滅の危険が増大している種”である「危急種(VU)」に、ワシントン条約では“必ずしも絶滅のおそれはないが取引を規制しなければ絶滅の恐れがあるもの“として「附属書II」に分類されています。
しかし南~東南アジアではスナドリネコが暮らす水が豊富にある場所の開発が進んでいて、スナドリネコが暮らせる場所がどんどん減少しています。現地ではスナドリネコが好むマングローブ林はエビの養殖地に姿を変えてしまい、スナドリネコが食べる魚は乱獲されて大幅に数が減ってしまいました。さらに漁師が捕った魚や養殖した魚を盗む、家禽や家畜を襲うといった理由から見かけ次第殺されてしまう、飼いイヌに殺されてしまうといった事態におちいってしまっていて、スナドリネコの個体数は年々減少しています。
スナドリネコが幻の動物になってしまう前に私たちに何ができるのか、一度考えてみたいものですね。
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スナドリネコ 参考文献
- 今泉 忠明(2004年)『野生ネコの百科』データハウス
- ルーク・ハンター,プリシラ・バレット(2018年)『野生ネコの教科書』エクスナレッジ
- 読売新聞オンライン「スナドリネコ : 飼育員は語る」 https://www.yomiuri.co.jp/local/mie/feature/CO035673/20190128-OYTAT50032/
- 神戸どうぶつ王国「2017 年3月11日(土)王国に新しい仲間たちが!水辺のハンター「スナドリネコ」他 公開決定」 https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M102567/201703200056/_prw_PR1fl_YLgyH8pj.pdf
- 鳥羽水族館「Gコーナー 奇跡の森」 https://www.aquarium.co.jp/kannai/mori.html
- 公益財団法人トヨタ財団「バングラデシュ北東部の湿地におけるスナドリネコと人との軋轢緩和に関する研究-軋轢の基礎調査と軋轢緩和における住民参加型調査の可能性-」 https://www.toyotafound.or.jp/research/2016/data/D16-R-0176_SuzukiAi_finalreport.pdf
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