ハゲワシ
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ハゲワシ
皆さんは「ハゲワシ」という鳥を知っていますか?鳥の中でも大型で、怖いイメージがあるかもしれません。ですが本当は生きているだけで生態系の環境を綺麗にしてくれる鳥なんです。全て読み終わった頃にはハゲワシのイメージが変わっているかもしれません。そんなハゲワシのことを紹介していきます!
ハゲワシ 基本情報
鳥綱(ちょうこう)タカ目タカ科
体長:60〜125cm
翼開長(よくかいちょう):1.5〜3m
体重:1.3〜7kg
ハゲワシはアフリカやヨーロッパ、南アジア、中央アジア、中東、インド、中国西部などに住んでいます。
大きな体は、灰色や黒色、白色、茶色、オレンジ色など、種類によって1色だったり、2色などがいます。ハゲワシの1番の特徴は、顔から喉にかけて羽毛が生えていないか、産毛が生えている程度で皮膚が見えているんです。皮膚の部分は黄色や黒色、青色、赤色などここも種類によって色が変わってきます。
指の爪は短いですが、くちばしは先が曲がっていて鋭いです。体が大きいのでその体を支えるために足はしっかりとしており、大きな体を飛ばすために翼も大きくなっています。
ハゲワシ Q&A
ハゲワシの名前の由来は?
ハゲワシの名前の由来は、調べたのですがはっきりとはわかっていないようです。
ただ、似ている「ハゲタカ」という言葉の由来はこのような説がありました。まず、ハゲタカというのは、ハゲワシ類やコンドルなどを総称した呼び方で、漢字で「禿鷹」と書きます。その名の通り、頭の部分がハゲているので、「ハゲタカ」と呼ばれているという説があります。
それでいうとハゲワシも漢字で「禿鷲」と書きます。ですので、同じように頭がハゲているからという理由なのではないかと思いますが、はっきりとは分かりません。
ちなみにハゲワシは英語で「Old World vulture」と呼びます。これは、旧大陸の低緯度に住んでいることから名付けられています。旧大陸は旧世界とも言うのですが、ヨーロッパとアジア、アフリカと周辺の島のことです。旧大陸ではハゲワシやコンドルも合わせて「vulture(ハゲタカ)」と呼ばれていて、「旧大陸のハゲタカ」という意味の英語名になりました。
ハゲワシはどうしてそこに住んでいるの?
ハゲワシは山岳地帯や牧草地、草原、岩場、森林、海岸、マングローブ、半砂漠、牧草地、サバンナ、高地など種類によって住んでいる場所は変わってきますが、視界の開けた場所にいることが多いです。
基本的には単独か夫婦、群れで行動していて、日中は日の当たる場所で日光浴していることが多いです。夫婦や群れで行動している種類は毛づくろいをしあって過ごしています。それ以外はほとんどエサを探しています。エサを探したり食べるのに時間を使うので、たくさん食べているのかもしれませんね。
ハゲワシは何を食べているの?
ハゲワシは動物を食べますが、動物は動物でも死んだ動物を食べているんです。ハゲワシは動物を襲うことはほとんどありません。寿命や何らかの原因で死んでしまった動物、他の動物が食べた残りなどを見つけて食べているんです。
大型の哺乳類(ほにゅうるい)の死体には、何種類ものハゲワシがたくさん集まってきますが、その中でも強いものから順番に食べるので、食べられる場所が種類によって変わってきます。ちゃんと順番を守っていると思うと可愛いですね。
死んだ動物の肉を食べるハゲワシばかりではありません。ヤシハゲワシという種類はアブラヤシの実が主食で、ヒゲワシという種類は骨髄(こつずい)が主食なので、空から骨を落として割って食べています。エジプトワシという種類はダチョウの卵を食べるのですが、石で割ったり落としたりして食べます。道具を使ってエサを食べる鳥はとても珍しいんです。
死んだ動物を食べると聞くと、気持ちのいいものではないかもしれませんが、ハゲワシが死んだ動物を食べることで、生態系を維持し環境を守り、すべての生物のためになっているのです。
動物が死んでしまうと、すぐに腐っていきます。そこに害虫が発生し感染症が広がっていくことになるんです。ハゲワシは常にエサを探しています。死んだ動物を見つけるとすぐに食べているんです。もしもハゲワシがいなかったらサバンナでは動物の死体がゴロゴロと転がり、伝染病が広がっていくことになるんです。
ハゲワシは死んだ動物を見つけるのも早いですが、食べるのも早いんです。肉1kgなら1分でたいらげてしまいます。シマウマ1頭だと30分もしないうちに食べてしまうんです。早く見つけ早く食べることで、腐敗していくのを少しでも抑えてくれているのかもしれないですね。
ハゲワシは腐った動物を食べてもお腹は痛くならないの?
私たち人間で考えると腐った肉や食材を食べるとお腹が痛くなりますよね。ただハゲワシはお腹が痛くならないような体になっているんです。一体人間と何が違うのでしょうか。
それは胃液です。人間にも胃のなかに胃液があり、その胃液で食べ物を溶かして消化していきます。人間は胃液を入れている胃が溶けないように弱酸性の胃液が入っています。酸の強さを数値で表したときに人間はph2です。
これは数字が小さくなっていくほど強い酸ということになるのですが、ハゲワシの胃液はph0.2なんです。数字では分かりにくいですが、この数値は強酸性で、金属をも溶かしてしまうほど強いんです。この強さで腐った肉に含まれる病原体も全て溶かしてしまうんです。
ただ、最近わかったことなのですが、ハゲワシの胃や腸の中に死滅していない病原菌が見つかりました。病原菌は全てが悪いものというわけではありません。何らかの病原菌が体に入った時に、抗体を作ってその病原菌を殺してくれます。
ハゲワシはこの抗体を強い病原菌にも勝てるものを胃の中に飼っている、もしくは強力な腸内細菌を持っているのではないかと考えられているそうです。そして、ハゲワシは羽づくろいしあうので、その時にお互いの体についている病原菌を交換し合っているのではないかとも言われています。そうすることで、いろんな病原菌の抗体を作ることができていると考えられているそうです。
ハゲワシの特殊な体の中は、まだまだわからないことだらけですが、ハゲワシのお腹は無事だということがわかりましたね。
ハゲワシがハゲているのは理由があるの?
ハゲワシは頭から首の辺りまで羽毛がありませんが、単にデザインでハゲているわけではありません。
ハゲワシは死んだ肉、腐った肉を食べるとき、頭を近づけたり突っ込んだりして食べています。その時に顔の周りに羽毛がいっぱいあるとどうでしょうか。その羽毛に腐った肉がついてしまい、その中で菌が発生し周りに撒き散らしてしまいます。
それを防ぐために羽毛をなくし、いつでも清潔に保てるようになっているんです。日光浴をしたり開けている場所に住んでいるのも太陽の暑さで熱消毒ができるようにということなんです。清潔に保てるようにするためにハゲていたんですね。
ハゲワシは他にも、周りに迷惑をかけないように対策をしてくれています。ハゲワシは食事をしているときに同時に排泄(はいせつ)をしています。それを自分の足や腐った肉の周りにかけているんです。なぜそんなことをしているのでしょうか。
ハゲワシの胃液は強酸性なので、出てくる排泄物(はいせつぶつ)にも強酸性が含まれています。その排泄物(はいせつぶつ)を直接足にかけることによって、腐った肉につけてしまった足を消毒して、病原菌を周りに撒き散らさないようにしているんです。
しかも足だけではなく、周りにもかけることによってそこの芝生や地面を消毒し、環境を守っているんです。
また、ハゲワシは飛び立つ前に嘔吐(おうと)することがあります。これは重くなってしまい、飛びにくくなった時にする行動なんです。体を軽くして飛びやすいようにしているんですね。ただ、天敵に狙われないようにもなっているんです。
ハゲワシは嘔吐物(おうとぶつ)にも当然強酸性が含まれています。他の動物にかかると溶けてしまうので、その天敵たちは近づくことができません。ハゲワシは単に食べすぎたから体を軽くしているだけなんですが、いつ嘔吐物(おうとぶつ)が来るかわからないので、天敵を近づけないことにも役立っているんですね。
ハゲワシはどうやって増えるの?
ハゲワシは、ほとんどが一夫一妻制(いっぷいっさいせい)で、一生一緒にいます。繁殖(はんしょく)の時期には、空中でアクロバティックな動きを一緒にして、コミュニケーションをとっています。巣は岩場や崖、洞窟、木の上など種類によって変わり、木の枝やゴミ、骨など、住んでいる場所で手に入る材料を使って巣を作っていきます。
巣の中に間隔をあけて1〜2個の卵を産みます。最初に産まれた卵から温めていくので、卵からヒナが産まれてくる日数は変わってきますが、約42〜60日後に卵から産まれてきます。そうすると最初に産まれたヒナの方が強い傾向があり、後から産まれてくるヒナは死んでしまうこともあります。悲しいですが、現実世界では強いものでないと生き残れないんですね。
無事に卵から産まれると、親からエサをもらいすくすくと育っていき、85〜110日で巣立っていきます。もうこの頃には、飛ぶこと、食料の探し方、食べ方など親から教わっていますが、まだまだ大人とは言えません。
外での生活、過ごし方を巣立った後に学んでいき、大人になっていきます。ただ、巣立ちした後も種類によって変わりますが、1ヶ月〜2年ほど親のもとに帰ってくることがあるので、その度に親は巣を作ってあげます。里帰りみたいなものかもしれませんね。
ハゲワシは絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)に指定されているの?
ハゲワシは私たちの住んでいる地球の環境を守ってくれていますが、そんなハゲワシは絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)に指定されているんです。しかも「クロハゲワシ」という種類はすでに絶滅(ぜつめつ)してしまっているんです。一体何が原因なのでしょうか。
やはり住んでいる場所や環境が人間に壊されたり、自然災害なども原因にはなってくるのですが、今の1番の問題は、人間に殺されてしまっていることなんです。
アフリカでは遊牧民が飼っている家畜が、ライオンなどの肉食獣などに殺されてしまっているんです。そこで遊牧民はそんな肉食獣に復讐をしてやろうと、家畜の死体に毒をかけ、肉食獣を誘い出し、まんまと肉食獣は毒のついた家畜を食べて死んでしまいます。その死んだ肉食獣をハゲワシが食べてしまい、ハゲワシも死んでしまうという連鎖が起きているんです。
また、2012年にジンバブエで191羽のハゲワシが死んだ事件がありました。その後も2013年のナミビアでは500羽以上、2019年にはボツワナでも500羽以上のハゲワシが死んでいるという事件が起こったのです。これは、密猟者(みつりょうしゃ)が自分たちが捕まらないようにやったことでした。
密猟者(みつりょうしゃ)はみんなゾウやサイを狙っていました。ゾウやサイのキバはとても高く売れるんです。そのために密猟(みつりょう)をしているのですが、ゾウやサイが死ぬとすぐにハゲワシが集まってきます。
ハゲワシが集まってくると、保護団体やその場所の管理者に見つかってしまうので、密猟者(みつりょうしゃ)はハゲワシが邪魔だったんです。そこでハゲワシを殺すために死んだゾウに毒を塗り、それを食べたハゲワシが死んでしまったというのです。悪いことをしているのが見つからないようにと、その欲のためだけに、1200羽以上のハゲワシが殺されてしまったのです。
ハゲワシは私たちの環境を清潔に保ってくれ、病原菌が広がらないようにまでしてくれています。日本にハゲワシはおらず、ごくたまに迷い込んでくる程度であまり身近ではないかもしれませんが、私たちの環境を守るためにも、まずはハゲワシの現状を知り守っていこうと思う人が増えることを願っています。
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ハゲワシ 種類
ハゲワシの種類と共に絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)のレベルを、上から絶滅の危険が高い順に紹介していきます。
- [絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠA類]
- ズキンハゲワシ
- コシジロハゲワシ
- ベンガルハゲワシ
- インドハゲワシ
- ハシボソハゲワシ
- マダラハゲワシ
- ミミハゲワシ
- カオジロハゲワシ
- [絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠB類]
- エジプトハゲワシ
- ミミヒダハゲワシ
- [絶滅危惧(ぜつめつきぐ)Ⅱ類]
- ケープシロエリハゲワシ
- [準絶滅危惧(じゅんぜつめつきぐ)]
- ヒゲワシ
- ヒマラヤハゲワシ
- クロハゲワシ
- [低危険種]
- ヤシハゲワシ
- シロエリハゲワシ
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