ハリモグラ
ハリモグラ
ハリモグラ
ハリモグラって知っていますか? ハリネズミに、名前も姿も似ているけれど、ネズミともモグラとも違う、卵を産む珍しい哺乳類(ほにゅうるい)です。 珍獣とか生きた化石とも呼ばれるハリモグラには、不思議なことがいっぱいあるんですよ。ハリモグラの不思議を探しに行こう。
ハリモグラ 基本情報
分類: 哺乳網(ほにゅうこう)- 単孔目(たんこうもく)- ハリモグラ科 -ハリモグラ属・ミユビハリモグラ属 ※ハリモグラ属は1種ハリモグラのみ。 ミユビハリモグラ属は3種(ニシミユビハリモグラ、ヒガシミユビハリモグラ、アッテンボローミユビハリモグラ)
英名:Echidna(エキドナ)
生息地: 南半球のインドネシア、オーストラリア、ニューギニア島の一部
体長:30~45cm、体重:2~8kg 体温:33度
ハリモグラの体の特徴
・ハリモグラは哺乳類(ほにゅうるい)と爬虫類(はちゅうるい)、両方の特徴(※参照)を持っている珍しい「単孔類(たんこうるい)」の動物です。 ※単孔類が持つ哺乳類・爬虫類、両方の特徴 1. 赤ちゃんは母乳で育てる(哺乳類)。 2. うんち・おしっこ・卵をすべて一つの穴「総排出腔(そうはいしゅつこう/くう」から出す(爬虫類)。 3.単孔類の睡眠は、明確なレム・ノンレム睡眠を持たない(爬虫類) ↓ 鳥類・哺乳類は、深い眠りのレム睡眠と浅い眠りのノンレム睡眠に分かれる<真睡眠> 魚類と両生類は、レム・ノンレム睡眠に分かれていない<原始睡眠> 爬虫類はいくぶん真催眠に似た脳波はあるものの、明確には分かれていない<中間睡眠> ・ハリモグラの背中は短い毛とトゲで覆われています。 ・7.5cmほどの細長い吻(ふん・口あるいはその周辺が前方へ突出している部分)を持ち、その先端に鼻と小さな口があります。※この細長い吻は長い鼻、くちばしと呼ばれることもあります。 ・ハリモグラの耳は頭部の両側にありますが、耳たぶはありません。
・口は5mmほどしか開くことができず、歯もありませんが、約18センチもあるネバネバした長い舌を素早く出し入れして、アリなどをからめ取って食べます。この長い舌は血流を止めて堅(かた)くすることができ、土の中や朽木(くちき・枯れた木)の中を貫通させてアリやシロアリを捕ることができます。 ・ハリモグラには胃がありません。 ・オスのハリモグラは、先端が4本に分かれたペニス(オスの生殖器官)を持っています。 ・汗腺を持っていないため体温調節ができません。そのため暑さや寒さが苦手です。
ハリモグラの一生
ハリモグラのメスは繁殖期が近づくと、お腹の部分に、育児嚢(いくじのう)という、子どもを育てる袋状のものが発達します。ハリモグラの育児嚢はカンガルーのような有袋類のものとは違い、お腹の皮膚と筋肉がヒダのようになったもので、孵卵嚢(ふらんのう)とも言います。 メスは交尾後、21~28日の妊娠期間の間に、育児のために巣穴を掘ります。そして受精した卵が約2mmほどの大きさになると、あおむけに寝て卵を1個だけ産みおとします。卵は爬虫類(ワニを除く)や有袋類のように柔らかい殻(カラ)を持っています。産み落とされた卵は、育児嚢に入ります。卵を抱いている時期は、育児嚢の部分の温度が上がります。 卵は14~16mmほどの大きさになると、約10日ほどで孵化(ふか)します。 ハリモグラの子どもはパグルと呼ばれ、生まれたばかりの赤ちゃんは約1.5cm、体重0.3-0.4gほどで、まだ毛が生えていません。
単孔目のハリモグラとカモノハシは乳首がありません。では、どうやってパグルはママのオッパイを飲むのでしょう。実は単孔類の雌の母乳は、育児嚢の前端にある乳腺から、直接肌に染み出してくるのです。パグルはママのお腹にへばりついて、しみだしてくる母乳を飲みます。母乳はピンク色で、脂肪、たんぱく質、鉄分をたくさん含んでいます。 パグルは、育児嚢で約45日間育てられ、やがて体毛が生えトゲが成長し、ハリモグラらしい姿になってくると、育児嚢から追い出されます。パグルは孵化後、約200日ほどの授乳期間を経て、乳離れをし、生後1年ほどで独立します。 乳離れをしたハリモグラは、自分で餌を捕食するようになります。同じ単孔類のカモノハシは水辺に暮らし、水の底から昆虫・幼虫・貝などを捕食しますが、ハリモグラは地上に暮らし、アリやシロアリなどを食べます。特定の巣穴に住むのではなく、餌を探しながら移動していきます。 ハリモグラは、強い爪や尖(とが)った鼻先を使って、敵から隠れる穴を掘ったり、土の中の餌を探したりします。ハリモグラは昼行性ですが、暑い時には夜行性になる時もあります。また寒くなってくると冬眠します。
ハリモグラは5年~12年で性成熟し、2年~6年に1度繁殖期を迎えます。季節は、生息する地域によって違いがありますが、主に5月から9月の間に繁殖相手を探します。メスは総排出腔に匂い付けを行い、オスはこの匂いを嗅ぎつけるとメスに求愛行動を始めます。 この求愛行動がとってもユニークなんです!というのは、メスの匂いを嗅ぎ付けたオスたちが、何匹も、多い時には10匹ほど列をなしてメスを追っていくのです。これがまるで列車のようなことから「ハリモグラ列車」なんて呼ばれているのですよ。列車の終点はメスが仰向けに横たわった場所。 オスたちはメスのまわりにサークル状に溝を掘り、メスを獲得するため、他のオスをサークルの外に追い出しにかかります。最後にサークルの中に残った一番強いオスは、メスを勝ち取り交尾をします。そして卵が受精し、また、新しい命が誕生するのです。 ハリモグラの寿命は野生下で40~45年ほど、飼育下では50年も生きるハリモグラもいます。小さな体ですが、とても長生きをする動物なのです。
ハリモグラ Q&A
Q,ハリモグラはどんな場所に住んでいるの?
ハリモグラは森林や草原、乾燥地帯や熱帯雨林など、さまざまな環境に生息しています。エサとなるシロアリやアリがいるところなら、森林から乾燥地帯まで、さまざまな環境で生きることができるのです。 ハリモグラは一つの巣穴に定住するのではなく、餌となるアリやシロアリを探しながら、移動して生活します。
Q,ハリモグラの名前の由来は?
日本語の呼び名「ハリモグラ」は、顔や前脚の形ががモグラに似ていて、背中に針を持っていることから名づけられました。 ハリモグラが生息地ている地域では、先住民の言語で、さまざまな名前で呼ばれていますが、英語名では「エキドナ」と呼ばれています。これは哺乳類と爬虫類両方の特徴を持ったこの動物を、ギリシャ神話の上半身が美女で下半身が蛇という姿をした怪物「エキドナ(echidna)」になぞらえて名づけられました。
Q,ハリモグラ属とミユビハリモグラ属の違いは?
・ハリモグラ属は、インドネシア、オーストラリア、ニューギニア島に生息していますが、ミユビハリモグラ属はニューギニア島のみに生息しています(過去にはオーストラリアにも生息していたと考えられている)。
・ミユビハリモグラ属はハリモグラ属よりも大型の体を持ち、体長約80㎝ほどですが、大きな個体では体長1m、体重が17kgにも達するものもいます。 ・ミユビハリモグラ属は、ハリモグラ属よりも吻が長く、アリクイに似ています。
・ハリモグラ属もミユビハリモグラ属も、四肢には前後ともに5本の指がありますが、種類によって爪が違います。ハリモグラ属は後足の第2指と第3指の爪が長く伸び、ミユビハリモグラ属(ヒガシミユビハリモグラを除く)は前後肢とも、3本の指の爪が発達しています。※ヒガシミユビハリモグラは第1~第5指すべてに爪があります。
Q,ハリモグラの長い爪は何に使うの?
ハリモグラの爪はとても強く、前足の爪は、穴を掘ったりアリ塚を壊したりする時に使います。 後ろ脚の爪は後ろ向きに生えていて、2番目のつま先にはとても長い爪があります。ハリモグラはこの爪をクシのように使って、トゲに挟まれた虫や汚れを取り除きます。
Q,ハリモグラのトゲってどんなトゲ?
ハリモグラの体は、お腹や顔、四肢を除いて、やわらかい毛とクリーム色のトゲにおおわれています。トゲは体毛が変化したもので内部は空洞になっています、根元の筋肉を使って一本一本の毛を動かすこともできるんですよ。 一方、ミユビハリモグラはやわらかい毛に覆われているものの、トゲが短くて少なく目立ちません。さらに年を取ってくると毛やトゲが抜け落ち、灰色の肌がむき出しになり、まるで小さな象のような姿になってしまいます。
ハリモグラは爬虫類などの捕食者を察知すると、強力な爪を持つ短い足を踏ん張らせ、体を丸めトゲを用いて身を守ります。
Q,ハリモグラのトゲって、ハリネズミのトゲと似てる?
ハリネズミとハリモグラのトゲは、長さも硬さも違います。 ハリネズミのトゲは3cmほどですが、ハリモグラのトゲはもっと長く最大5cmほどになります。 ハリネズミのトゲは、気を付けてそっとさわれば、なでることもできますが、ハリモグラのトゲは太くて硬いので、さわると危険です。
Q,ハリモグラはどうして生きた化石って言われるの?
カモノハシとハリモグラは哺乳類でありながら爬虫類の特徴をあわせ持っている「単孔類」と、最初にお話ししましたよね。実は単孔類は、鳥類や爬虫類と共通の祖先から分かれた動物の末裔(まつえい ※参照)といわれており、その歴史はとても古く、最も原始的なグループなのです。そのため、ハリモグラは生きた化石といわれているという訳です。
※3億50万年前、哺乳類全体の祖先が鳥類・爬虫類の祖先と分かれました。 1億8760万年前、単孔類と胎生哺乳類の祖先が分かれました。 5460万年前、カモノハシとハリモグラが分かれました。
Q,同じ単孔類のカモノハシとどこが違うの?
カモノハシとハリモグラは同じ祖先をもっていますが、カモノハシは水中で狩りをする半水生動物で、ハリモグラは陸上で生活しています。また、近年のゲノム解析により、カモノハシとハリモグラでは、嗅覚(きゅうかく・においに関する感覚)とフェロモンに関する遺伝子が、大きく異なることが発見されました。 このことから、ハリモグラは嗅覚に優れ、それを利用してエサを捕食している可能性があることと、カモノハシはフェロモンを用いてコミュニケーションや繁殖をしている可能性があると推察されます。
Q,ハリネズミとハリモグラ、ハリモグラとモグラは祖先が一緒なの?
結論からいうと、祖先は異なります。
確かにハリネズミとハリモグラ、ハリモグラとモグラは、背中をおおうトゲや、姿が似ていますよね。でも、ハリモグラは、ハリネズミ(哺乳綱 ハリネズミ形目 ハリネズミ科)とも、モグラ(哺乳網トガリネズミ形目モグラ科)とも違います。 違う祖先から違う進化を遂げたのに、環境や目的に合わせて進化した結果、ハリネズミとハリモグラは敵から身を守るため体毛をハリに進化させ、ハリモグラとモグラは土を掘るために吻を長く進化させ、その結果、よく似た姿となったのです。このように、主に関係なく同じような形へと進化することを「収斂進化(しゅうれんしんか)」といいます。
Q,ハリモグラは巣穴で眠るの?
ハリモグラは出産・子育ての時期を除いて、巣穴を持たず単独で行動します。食べ物を探して移動しながら、柔らかい土や葉の中、倒木の割れ目などで眠ります。
Q,ハリモグラはどうやって餌になるアリを探すの?
ハリモグラは低周波を感知できる耳(耳介は持たない)を頭部の両側に持っています。また、吻の先にも、周囲環境の情報を収集できる、センサーのような感覚器を持っています。また嗅覚もよく発達しています。ハリモグラはこれらを使って、地中や朽ち木の中のアリやシロアリを見つけます。ハリモグラは、地中に吻を埋め込んで、じっとしていることがありますが、これは地中の中の様子をうかがっているのです。
Q,ハリモグラは泳げるの?
はい。ハリモグラとカモノハシの共通の祖先は泳ぎが得意だったので、ハリモグラも泳ぎが上手です。 長い吻をシュノーケルのように水の上に出して、吻の先の鼻で呼吸をしながらスイスイと泳ぐんですよ。 ちなみに象も長い鼻をシュノーケルのようにして泳ぎます。
Q,ハリモグラはペットにできる?
ハリモグラは野生の動物で、人になつく性質でもなく、動物園でも飼育や繁殖が難しい動物なので、ペットには向きません。ハリモグラに会いたい人は、ハリモグラを飼育している動物園などに行きましょう。
Q,日本でハリモグラに会える場所はどこ?
日本では「上野動物園」と「東山動物園」と「沼津港深海水族館・シーラカンスミュージアム」でハリモグラを飼育、公開しています。
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ハリモグラ 参考文献
- Waku Waku Tasmania https://wakuwakutas.com/echidna/
- Wikipediaハリモグラ https://ja.wikipedia.org/wiki/ハリモグラ
- natureダイジェストカモノハシとハリモグラの高精度ゲノム解読に成功/107426
- ナゾロジー哺乳類の鼻は「祖先の上アゴ」から進化したと明らかに - ナゾロジー (nazology.net)
- ログミーBizなぜハリモグラには陰茎が4つあるのか? 奇妙な単孔類の生態
- FUNDO【ハリモグラ https://fundo.jp/310059
- エレファントトークNo.051 ハリモグラ – おもしろ哺乳動物大百科 2 単孔目 ハリモグラ
- 日経サイエンスカモノハシがカンガルーから逃れた戦術〜日経サイエンス2010年2月号
- オーストラリア発 地理・歴史 -孤立した大陸- (australia.or.jp)
- Science portalカモノハシとハリモグラのゲノム解読 哺乳類進化の解明に活用へ
- GAIAPRESS ハリモグラ 睡眠健康大学 http://www.gaiapress.com/jp/article/958.html
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