ヒツジ
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ヒツジ
約一万年も前から人間に飼われてきた羊は、昔から人間の衣食住に欠かせない動物です。 モコモコのヒツジは、おとなしい、やさしそう、臆病、従順、といったイメージが強いけれど、野生の羊には、そんなイメージを覆す勇壮な種類も! 身近だけれど驚きがいっぱいのヒツジ・ワールドを覗いてみましょう。
ヒツジ 基本情報
哺乳(ほにゅう)綱 偶蹄(ぐうてい)目 ウシ科 ヤギ亜科 ヒツジ属
ヤギ亜科に属するヒツジはヤギととても似ています。ヤギの染色体は60本なのに対し、ヒツジには54~58本の染色体をもつ野生種と、54本の染色体をもつ家畜のヒツジがいます。また、野生種の雑種の中には55本や57本の染色体のヒツジもいます。
ヒツジの体重は種類によって様々で、45kgぐらいから大きいものだと160kgほどの重さになるヒツジもいるんですよ。ヒツジは群れをつくり、先導者についていく性質を持つため、紀元前9千年~8千年頃には家畜化されたと考えられています。
ヒツジ Q&A
ヒツジには、どのくらいの種類がいるの?
ヒツジには人間が長い歴史の中で家畜化した種と、家畜化されていない野生の種があります。家畜化されたヒツジは「めん羊(めんひつじ)」と呼ばれ1000種以上もの品種があります。野生のヒツジは「ビッグホーン」「アルガリ」「ウリアル」「ムフロン」などが知られており、それぞれ家畜化されたヒツジたちの原種と考えられています。
野生のヒツジって、どんなヒツジ?
野生のヒツジにはシベリア、アラスカ、カナダ、アメリカなどに分布するビッグホーン(アメリカビッグホーン・ダルビッグホーン、シベリアビッグホーン)。アフガニスタン、インド、ネパール、モンゴル、中国、ロシアなどに分布するアルガリ。
インドやパキスタンのカシミール地方に分布するウリアウ。アルメニア、イラン、トルコなどに分布するムフロン。
アフリカ北部の半砂漠地域に分布するバーバリーシープ(ヒツジ属ではなくバーバリーシープ属)などがいます。
野生のヒツジの分類
ビッグホーン おとなしい、弱い、といったイメージが強いヒツジですが、野生のヒツジたちは見た目も勇壮!ビッグホーンのオスは、その名の通りカールした15kgにもなる大きなツノを持っています。オスたちはこのツノを使って縄張りやメスをめぐって壮絶な闘いを繰り広げます。2頭のオスはうしろ足で立ち上がると、時速30kmものスピードでぶつかり合い、どちらか一方が負けて逃げ出すまで戦います。
ムフロン(絶滅危惧種) 体重はおよそ25kg~55kgと野生のヒツジの中で最も小さい種類で、家畜化されたヒツジの祖先の一種であると考えられています。標高5,000m以上の山地、断崖などの岩場に生息し、草本、木の葉、果実、樹皮などを食べます。
バーバリーシープ(絶滅危惧種) 長いたてがみ状の毛を持つことから「タテガミヒツジ」とも呼ばれます。乾燥に強く岩場に住んでいます。シープと書きますが、ヤギの特徴をもち、ヤギとの間に子供も生まれます。しかし染色体はヒツジに近いため、ヤギ属、ヒツジ属どちらにも入らず「バーバリーシープ属」となっています。
アルガリ アルガリはヒツジ属の最大種で、体長さ180 ~200㎝、体重95~180kgにも達します。オス・メス共に左右一対の角を持ち、オスの角は巨大で、ねじれながら前方外側に伸びていきます。
ウリアウ(絶滅危惧種) インド・パキスタン・イラン東部などの山地に分布する野生のヒツジです。弧を描いてほぼ1回転する、長さ50~100cmに達する長い角を持っています。
ヒツジの瞳孔ってどうして横に長いの?
ヒツジやウマ、ラクダなどの草食動物は、目が顔の横についています。これは広い草原を見渡すためで、顔の側面に目がある動物は、自分の前後左右、ほぼ360度を見ることができると言われています。彼らは横長の瞳孔を持っていますが、横長の瞳孔は明るい場所で目を細めても視野を広く保てるため、草を食べている時でも肉食動物の姿を発見しやすく、天敵から逃げやすくなります。
ヒツジの歯は人間の歯と違うの?
ヒツジやウシの仲間などの反芻動物(はんすうどうぶつ)は、上の前歯がありません。でも奥歯は上下ともに、ちゃんとあるんですよ。これは、草を食べるのに便利な口なんです。上の前歯がない代わりに、反芻動物の上の歯茎はとても硬くできています(歯床板)この歯茎がまな板の役割、下の歯が包丁の役割をし、上手に草を食べます。草を舌で巻き取ると、それを上の歯茎に宛てて、下の前歯で切り、上下にある奥歯ですりつぶして飲み込み反芻するのです。
ヒツジが草を食べるときの反芻(はんすう)ってどういうこと?
反芻動物は4つの胃袋をもっています。この胃袋と「反芻」と言われる食事の取り方が、人間では消化できない草から栄養を取り込み、体を大きくして、栄養価の高い美味しいミルクを作ることができます。反芻とは、一度飲み込んだ食べ物を、もう一度口の中に戻して、再咀嚼(さいそしゃく)することです。草を食べていないときでもヒツジが口をもぐもぐさせているのは、この反芻をしているためです。
ヒツジはどうして胃袋が4つもあるの?
ヒツジやウシなどの反芻動物が4つの胃を持っているのは、そのままでは分解・吸収できない草から効果的に栄養を取り込むためです。口の中でかみ砕かれた草は、まず第一胃に送られ混ぜ合わされ、微生物によって発酵・分解されます。
この第1胃は、なんと四つの胃全体の約80パーセントをも占める大きさ!まるで発酵タンクのようですね。この第1胃で発酵・分解された草は第2胃に送られ、第2胃の収縮により口に戻され、再び咀嚼されます。
これを数回繰り返した後、細かくされた草はフィルターの役割をする第3胃で余分な水分などが除かれ、最後に人間の胃と同じように消化機能を持つ第4胃に送られます。ちなみに焼肉屋さんなどで食べるウシやヒツジのモツ「ミノ・ハチノス・センマイ・赤センマイ(ギヤラ)」は、この第1胃~第4胃のことなんですよ。
ヒツジにはシッポがあるの?
動物園や牧場でヒツジを見ると、シッポがないように見えますよね。でも、シッポ、あるんです! あるんですが・・・、生まれて1週間から10日ほどで、シッポを切ってしまうのです(断尾)え?どうして? そんなのかわいそう!と思うかもしれませんが、これはヒツジの健康のため。
めん羊は、家畜化されてきた歴史の中で、シッポの動きが鈍くなってしまいました。そのため、他の動物のようにシッポで虫を追い払うことができません。糞や尿でシッポがよごれて不衛生となり虫がわいたりすることもありするので、また、交配の邪魔にもなるので断尾するようになりました。
ヒツジのツメはどんなツメ?
偶蹄目の動物たちは2つに分かれたツメを持っています。偶蹄目であるヒツジもまた、2つに分かれたツメを持っています。人間と違って動物たちのツメには毛細血管が通っているので、ツメ切りをしないで「巻き爪」になるとツメが足に食い込んで傷ができ、ばい菌が入り化膿したりすることがあります。ですから爪切りは健康のために欠かせないお手入れなのです。ヒツジのツメ切りは「削蹄(さくてい)」といいます。
ヒツジの蹄(ひずめ)は「黄金の蹄」とも言われます。それはヒツジを放した野原や山が、やがて肥沃な土地になるから。牧草の種を蒔き、その上をヒツジが蹄で踏み歩くことにより種はよく植え付けられ、また、ヒツジが歩きながら糞をすることにより、それが肥料になり、良い牧草地になっていくのです。
ヒツジの角はどんな角?
角を持つ動物は、シカ科(枝角)、ウシ科(洞角)、プロングホーン科、キリン科、サイ科の5種類です。ヒツジを含むウシ科の角は洞角といい、頭蓋骨の突起に角質(ケラチン)の鞘(さや)がかぶさったもので、生え変わることなく一生伸び続けます。一方シカの角は枝角と言い、頭蓋骨の台座の上に骨質(カルシウム)が載ったもので毎年生え変わります。シカ科の角はトナカイ以外はオスのみに生えていますが、ヒツジを含むウシ科の角は例外はあるものの、基本的にはオスにもメスにも生えています。 ヒツジの角は「ラセン角(らせん状に巻きながらドリルのようにまっすぐ伸びる)」と、「アモン角(丸くカールしながら伸びる)」の2種類に分けられます。ほとんどの種は左右に1本ずつ2本の角を持っていますが、中には左右に2~3本ずつ、4~6本の角を持った種も。4本の角を持つ種はジャコブヒツジ、4~6本の角を持つのはマンクスロフタンです。
ヒツジの角は骨が伸びたもので、内部には血管が通っています。触ってみると温かいんですよ。ヒツジの角は一度生えたら生え替わることがありません。家畜化された種は交配の過程で退化させているものもあります。
ヒツジの毛はどうしてモコモコなの?
もともとヒツジは、毛が自然に抜け落ちて生え変わり、自分で体温調節ができる動物でした。しかし家畜化されていく中で、たくさんの毛が取れるように改良され、ほとんどの種類のヒツジは毛が抜け変わることなく伸び続けるようになりました。
毛刈り前のヒツジはモコモコで可愛いですよね! しかし野生種のヒツジは家畜化されたヒツジほどモコモコの毛は持っておらず、また夏を前に生え替わるので人間が刈り取ってあげる必要はありません。
ヒツジは毛刈りをしないとどうなるの?
家畜化されたヒツジは、1年に1~2回定期的に毛刈りをしてあげないと、体温調節ができません。また排泄に障害が生じたり、歩くのが困難になったりするので、家畜化されたヒツジにとって毛刈りは欠かせないものです。毛刈りをしないとどうなるか・・・。そんな事例がいくつかニュースとなったことがあります。
たとえば、毛刈りが嫌いで脱走し、6年後に巨大な毛の塊となって発見されたニュージーランドのシュレック(メリノ種)、伸びた毛が重すぎて歩行困難な状態で発見されたオーストラリアのクリス(メリノ種)どちらのヒツジも、伸びすぎた毛が体の自由を奪い、命の危険にさらされていました。無事に発見されてよかったですね! ちなみにクリスは2015年に「 世界で最も毛の量が多いヒツジ」のギネス記録を更新しました。
ヒツジはどうして群れをつくるの?
自然界においては、昆虫や魚、動物たちなど、さまざまな生き物たちが群れを作って生きています。生き物たちが群れを作るのには、様々な理由があります。ヒツジもまた群れをつくる動物の代表的な生き物です。ヒツジが群れをつくるのは、臆病な性質だったり、群れをつくることによってオオカミなど肉食動物のエサとなるリスクを減らしているなどの理由が考えられています。
人間はいつごろからヒツジを飼うようになったの?
ヒツジとヤギの家畜化はイヌに次いで古く、紀元前8000年から紀元前7000年前後のことと考えられています。紀元前7000-6000年ごろの古代メソポタミアの遺跡からは野生のものとは異なる小型のヒツジの骨が多数出土しており、ヒツジの家畜化の証拠と考えられています。ヒツジは群れを成して先導者に従う性質があり、その性質を利用して古くから家畜化されてきたのです。
日本には大昔からヒツジがいたの?
いいえ、日本には昔から住みついていた在来種のヒツジはいません。ウシやウマは縄文時代や弥生の時代に渡来し、交雑を重ねながら在来種ができました。しかし日本においてヒツジの存在が確認できる最古のものは「日本書紀」で、その中に「599年に百済より羊2頭を献ず」という記述があります。ヒツジはその後、820年、935年、1077年にも、新羅、大唐、宋から贈られたようですが家畜化されることはありませんでした。
ヨーロッパや中東、アジアなど、世界では古代から家畜として飼われてきたヒツジですが、日本に家畜としてのヒツジが入ってきたのは1805年。江戸幕府・長崎奉行所の成瀬正定がヒツジを輸入して飼育を試みましたが失敗。
その後1817年、本草学者の渋江長伯が薬草園内で、めん羊を飼育。本格的なヒツジの飼育は、時の内務卿 大久保利通の働きにより、1875年、日本で最初の「牧羊場(下総牧羊場)」を富里市十倉、御料などに開設したことに始まります。
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ヒツジ 種類
毛用種 スパニッシュ・メリノ、ランブイエ・メリノ、オーストラリアン・メリノ 肉用種 サウスダウン、サフォーク、チェビオット 毛肉兼用 コリデール 毛皮種 ロマノフ その他、多数
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ヒツジ 参考文献
- ウィキペディア フリー百科事典 https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒツジ
- Best Wool club https://www.bestwool.jp/secret/
- CNNニュース https://www.cnn.co.jp/fringe/35069920.html
- NZ便利帳 https://nzbenricho.com/island-of-sheep/
- 茶路めん羊牧場 http://charomen.com/index.html
- 季刊誌シープジャパン http://jlta.lin.gr.jp/publish/sheep/kiji/41_01.html
- 生き物NAVI https://livingthing.biz/archives/1872
- ナショナルジオグラフィック https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20141218/428882/
- 川西市歯科医師会 http://www.kda8020.com/kouhou/kouhou18.htm
- ジンギスカンweb http://www.29notoyo.co.jp/s-10-1.html
- NATURE &SCIENCE https://nature-and-science.jp/deer/#page-1
- 世界大博物図鑑 1988 平凡社
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