アシカ
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あなたはアシカという、とっても賢い海生哺乳類(かいせいほにゅうるい)を知っていますか? 多くの水族館で飼育されていてショーに出演することも多いので、1度は見たことがある人も多いのではないでしょうか。 身近な存在であるアシカですが、実は昔日本にも生息していたこと、その体には海で生活するためのたくさんの秘密が隠されていることなど、意外と知られていないことが多い動物でもあります。 この記事でアシカにはどんな特徴や秘密があるのか、一緒にのぞいていきましょう!
アシカ 基本情報
哺乳綱-食肉目-アシカ科
カリフォルニアアシカ 体長 オス2.4m メス2.0m 体重 オス250~390Kg メス90~110Kg
アシカの1種である「カリフォルニアアシカ」は北アメリカの東部(カナダからメキシコにかけて)の暖かい海に生息しています。人になれやすいことから多くの水族館や動物園で飼育されていて、世界中でその姿を見ることができます。かつてはガラパゴス諸島に生息している「ガラパゴスアシカ」はカリフォルニアアシカの亜種だとされていましたが、現在は独立種だと考えられています。
カリフォルニアアシカは繁殖期(はんしょくき)になると1頭のオスが約30頭のメスや子どもを集めて、“ハーレム”と呼ばれる大きな群れを作ります。オスは生後5年ほど、メスは生後3~4年ほどで性成熟(せいせいじゅく)を迎え、メスは約1年の妊娠期間(にんしんきかん)を経て1頭の子どもを産みます。生まれたての赤ちゃんアシカの大きさは体長約70cm、体重は5~9Kgほどです。
カリフォルニアアシカは肉食性の動物で、野生ではイワシやタコ、イカなどの魚を食べています。水族館や動物園で飼育されているアシカはサバやアジ、ホッケ、イカなどの魚を中心に、1日に1頭あたり5~8Kgのエサを食べています。
アシカ Q&A
アシカの名前の由来は何?
アシカの名前の由来にはいくつかの説がありますが、以下の2つの説が有力だといわれています。
1つ目の説はアシカが“アシ(葦)という植物が生える所にいるシカ(鹿)に似た生き物”として、「アシシカ(葦鹿)」と呼ばれていて、その言葉から転じたという説です。2つ目の説はアシカが“海に棲むシカ”として「アマシカ(海鹿)」と呼ばれていて、その言葉から転じたという説です。
どちらの説が本当なのかはっきりとわかっていませんが、昔の人がアシカのことをシカに似た動物だと考えていたと思うとなんだか面白いですね。
なおアシカは英語では「Sea lion(シーライオン・海のライオン)」、漢字では「海驢」(※驢はロバという意味)と表現します。
アシカのオスとメスにはどんな違いがあるの?
アシカの仲間は大人になると、オスとメスの見た目が全く違うものになることが知られています。 オスは体が大きくて全身がこげ茶色で、頭にはこぶのように見える出っ張りがあります。一方のメスはオスよりも体が小さくて全身は薄いこげ茶色、頭にはこぶがありません。実際にオスとメスを見比べてみると、その大きさと顔つきの違いに驚く人も多いことでしょう。
なお生物学では、このようにオスとメスの違いを見た目で判断できるものを「性的二形(せいてきにけい)」といいます。身近な性的二形の例としては、ライオン(オスにはたてがみがあるがメスにはない)やキジ(オスは派手な色合いだがメスは地味な色合い)などが知られています。
アシカとアザラシにはどんな違いがあるの?
同じ海に住む哺乳類であるアシカとアザラシには、どんな違いがあるのでしょうか?
アシカとアザラシを見分けるポイントは、陸の上にいる時の姿勢にあります。アザラシは前脚(まえあし)で自分の体を支えて持ち上げることや後脚(うしろあし)を前に向けることができないため、常に地面にべったりと寝そべっていて移動する時も這う(はう)ように移動します。一方のアシカは前脚で自分の体を持ちあげて上体を起こせるうえ、後脚を前に向けることもできます。そのためアシカは陸上で走ることもできます。
またアシカには長い耳たぶがありますが、アザラシには耳たぶがありません。実際に見比べてみると、かなり体型や顔つきが違うことがわかります。
アシカとオットセイにはどんな違いがあるの?
次はアシカとオットセイの違いについて見ていきましょう。 アシカとオットセイは同じ「アシカ科」の動物であり、オットセイはアシカの1種です。そのためアシカとオットセイは体つきや見た目が似ているのですが、実はあるポイントに注目すれば簡単に見分けることができます。
アシカとオットセイを見分けるポイントは、ずばり体に生えている毛の量にあります。オットセイの毛はふわふわしていて、全身に生えています。オットセイは英語で「Fur seal(ファーシール、毛皮あざらし)」と呼ばれるほど毛の量が多く、毛皮は高級品として珍重(ちんちょう)されてきました。
一方のアシカも毛は生えているのですが、ぱっと見ると皮膚がつるつるしていて毛が生えているかどうかわからないように感じる人も多いことでしょう。毛が乾いている時は短い毛がびっしりと生えている様子が観察できますが、濡れている時は毛が生えているかどうかわからないほど見た目がつるつるになってしまいます。
また体の大きさ的にはアシカよりオットセイの方が大きく、より水の中での生活に適応した体つきをしています。
アシカはとっても泳ぎが得意って本当?
本当です。アシカは泳ぎも潜水(せんすい)も上手で、海の中を25~30キロ、時には40キロものスピードで泳ぐといわれています。
そんなアシカの体には、水の中で暮らすためのたくさんの秘密が隠されています。体型は流線形(りゅうせんけい)で水の抵抗を受けにくく、より早く泳げる形になっています。また水に潜っている間は耳や鼻を閉じて水が入らないようにできるうえ、冷たい海水で体温を奪われないように体中がぶ厚い皮下脂肪で覆われています。
またアシカの体には水の中に潜る時は心拍数を落とし、脳や心臓、筋肉など必要な部分にだけ血液を送るという面白い仕組みが備わっています。そのためアシカは呼吸をしなくても、10分ほど潜水し続けられるといわれています。このような面白い体の仕組みに加えて、アシカは30時間連続で狩りをし続けられるほどのスタミナを持っているそうです。
アシカはペットとして飼えるの?
もしかしたらかわいくて賢いアシカをペットとして飼ってみたい!と考えたことがある人もいるかもしれません。ところでアシカは個人がペットとして、それも自宅で飼うことはできるのでしょうか?
動物の中には絶滅(ぜつめつ)が心配されていて、法律で売り買いが禁止されているものが少なくありません。しかしアシカの1種・カリフォルニアアシカは野生における生息数が多く、また多くの水族館や動物園で飼育されています。種として絶滅の危険性が低いことから売り買いは制限されているものの禁止はされていないため、購入することが絶対に不可能という訳ではありません。
しかしアシカを飼うためには、アシカが十分に運動できるくらいの大きなプールが必要です。プールは汚れるのでこまめに掃除しなければならず、水替えや掃除にはたくさんの水を使うため水道代がとんでもないことになりそうです。また毎日餌としてたくさんの魚を用意する必要があることやとても鳴き声が大きいことを考えると、アシカをペットとして飼うのは簡単なことではなさそうです。
アシカはどのくらい生きるの?
カリフォルニアアシカの寿命は25~30年だと考えられていますが、飼育下では30歳をこえることもあります。
日本国内で最も長生きしたカリフォルニアアシカは静岡県にある下田海中水族館で飼育されていたメスの「エリー」で、エリーは34歳まで生きてその生涯を閉じました。
昔は日本にもアシカがいたって本当?
本当です。かつては日本海の西南部を中心に、「ニホンアシカ」という日本固有のアシカが生息していました。
しかし江戸時代から明治時代にかけて毛皮や油、お肉を取るため、そしてサーカスで芸をさせるためにたくさんのニホンアシカが捕まえられてしまいました。特に島根県の竹島周辺には多くのニホンアシカが生息していて、1900年代初頭からさかんにアシカ猟が行われていたという記録が残っています。
ニホンアシカはアシカ猟による個体数の減少に加え、環境の変化の影響を受けてどんどん数を減らしてしまいました。残念なことに1975年以降1度も生きた姿が目撃されていないため、現在は絶滅してしまったものと考えられています。なおニホンアシカは長らくカリフォルニアアシカの亜種だと考えられていましたが、独立した種類かもしれないと考えている研究者も少なくありません。
アシカにはどんな敵がいるの?
野生におけるアシカの天敵は、肉食動物であるシャチやサメ類だといわれています。
しかしアシカにとって、一番の敵は私たち人間です。「昔は日本にもアシカがいたって本当?」で説明した内容と被ってしまいますが、アシカは昔から毛皮や油を取るためにたくさん捕まえられてきました。それに加えてアシカは魚を食べてしまうことから漁師の人に邪魔者扱いされ、違法に傷つけられたり、殺されたりして数を減らしてしまったのです。現在は世界各地でアシカの保護が行われていますが、今も漁師とアシカの関係は良いとは言えないのが現状です。
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アシカ 種類
アシカ属 ・カリフォルニアアシカ ・ガラパゴスアシカ ・ニホンアシカ(絶滅)
オーストラリアアシカ属 ・オーストラリアアシカ
ニュージーランドアシカ属 ・ニュージーランドアシカ ※分類は研究者や資料によって異なる可能性があります。
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アシカ 参考文献
- D.W. マクドナルド(1986年)『動物大百科2 海生哺乳類』平凡社
- スミソニアン協会(2017年)『驚くべき世界の野生動物生態図鑑』日東書院本社
- 新江ノ島水族館「2013/05/06 アシカ入門2」 https://www.enosui.com/diaryentry.php?eid=02696
- 新江ノ島水族館「2006/08/18 水族館の魚の餌について。」 https://www.enosui.com/diaryentry.php
- 島根大学ミュージアム 島根大学標本資料類データベース「ニホンアシカ 剝製標本 Zalophus japonicus」 http://museum-database.shimane-u.ac.jp/specimen/metadata/411
- 島根県「ニホンアシカって知っていますか?」 https://www.pref.shimane.lg.jp/admin/pref/takeshima/web-takeshima/takeshima03/index.data/2018_asika.pdf
- 島根県「アザラシ目アシカ科 ニホンアシカ」 https://www.pref.shimane.lg.jp/infra/nature/shizen/yasei/red-data/kaiteishimaneRDB2014animal.data/h-ex.pdf?site=sp
- 海遊館「カリフォルニアアシカの赤ちゃんが生まれました!」 https://www.kaiyukan.com/connect/news/202007_post-403.html
- 海生哺乳類が長く潜水できる理由ナショナルジオグラフィック「海生哺乳類が長く潜水できる理由」 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8078/
- 海響館「第221回「アシカの体の表面は・・・」 http://www.kaikyokan.com/dolphin221/
- 毎日新聞「コトバ解説「アシカ」と「オットセイ」と「アザラシ」の違い」 https://mainichi.jp/articles/20110606/mul/00m/040/013000c
- 高知県立のいち動物公園「飼育動物紹介 カリフォルニアアシカ」 http://www.noichizoo.or.jp/park/animal_intro01_sealion.html
- ナショナルジオグラフィック「動物大図鑑 カリフォルニアアシカ」 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20141218/428822/
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