プロングホーン

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あなたはプロングホーンという、主に北アメリカに生息している草食動物を知っていますか?
プロングホーンは陸上の動物ではチーターに次いで足が速く、時速80キロものスピードで走ることができます。
しかし日本の動物園では飼育されていないため、初めて名前を聞いたという人も多いのではないでしょうか。
この記事でプロングホーンにはどんな特徴や秘密があるのか、一緒にその暮らしをのぞいていきましょう!

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~基本情報~

哺乳綱(ほにゅうこう)鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)-プロングホーン科

体長100~150cm
体重 40~70Kg

プロングホーンは北アメリカとメキシコに生息する、草食動物の1種です。体の色は赤褐色~黄褐色でおなかとおしりが白く、のど元には白いしま模様が入るという特徴的な色合いです。彼らは砂漠や乾燥した草原(プレーリー)などに生息し、冬はオスとメスを含む最大1000頭にもなる大きな群れを作りますが、春になると小さな群れに分かれて暮らします。

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プロングホーンは毎年秋になるとオスがハーレムを作り、その中で交尾を行います。妊娠期間は約8カ月とやや長く、メスは春になると1~2頭の赤ちゃんを産みます。プロングホーンの赤ちゃんは生まれてから30分ほどで立ち上がり、生後数日で人間が走るスピードを追い越し、生後1週間もすると馬よりも早く走れるようになります。

プロングホーンの子どもは天敵に狙われやすいため、母親は子どもを背が高い草の中に隠して育てる習性があります。母親は子どもの存在を天敵から隠すために数時間おきに授乳する時以外は離れた場所で過ごし、生後2週間ほどたって子どもがしっかりと走れるようになると子どもを連れて群れの中に戻っていきます。

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プロングホーンのQ&A

プロングホーンの名前の由来は何?

プロングホーンという名前の由来は、そのツノにあるといわれています。プロングホーンを英語で表すと「Pronghorn」となり、“Prong”は先のとがった、“horn”はツノといった意味があります。このことから考えると、おそらくその「先がとがった枝角(えだつの)」から名前が付けられたものと考えられます。

プロングホーンの学名は“アメリカのカモシカヤギ”という意味がある「Antilocapra americana」と表現されます。しかし現在プロングホーンはカモシカの仲間ではなく、プロングホーンだけが分類される「プロングホーン属」に所属すると考えられています。

なお日本ではプロングホーンのほか、別名「エダツノカモシカ」「エダツノレイヨウ」と呼ばれることもあります。

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プロングホーンはどうしてそこに住んでいるの?

プロングホーンは北アメリカの西部とメキシコの北部に生息しています。

プロングホーンが暮らす北アメリカやメキシコにはかつて、プロングホーンに近い動物が何十種類も生息していたようです。その後他の動物たちは気温の変化や捕食者の圧に耐えられずにどんどん絶滅してきましたが、プロングホーンだけは唯一独自の進化をとげて生き残ったものと考えられています。

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プロングホーンは何を食べているの?

プロングホーンは草食性の動物で、草原に生えているありとあらゆる植物を食べて生活しています。

基本的には草原に生えているセージやヤマヨモギを食べていますが、低木やサボテンなども食べます。プロングホーンは基本的に乾燥に強く、水を飲まなくても食べ物から得られる水分だけで何週間も過ごすことができます。

なお動物園では乾燥した牧草(干し草)や草食動物用ペレットのほか、新鮮な植物や野菜を与えられているようです。

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プロングホーンには唯一の特徴があるって本当?

本当です。
プロングホーンは草食動物の中でもとても変わった存在で、キリン、ヤギ、アンテロープ、シカといった多くの草食動物の特徴を兼ね備えていることで知られています。見た目はシカやアンテロープのように見えますが、現存する動物の中で一番プロングホーンに近い動物はキリンだとされています。

プロングホーンのツノの先はとがったカギ状になっていて、鞘(さや)の部分だけが毎年抜けて根元の部分は残るという変わった特徴を持っています。同じ反芻(はんすう)を行う草食動物のツノのことを考えてみると、ウシの仲間はツノが抜けませんが、シカの仲間は毎年根元の部分からツノが抜け落ちます。つまり外側だけが抜けるプロングホーンのツノはウシとシカの中間的な特徴を示し、このようなツノを持つのは数多くいる動物の中でもプロングホーンだけだとされています。

ちなみにプロングホーンはオスもメスもツノがありますが、メスのツノはオスと比べるとかなり小さく、枝分かれしたりカギ状になったりするところまで大きくなりません。

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プロングホーンは世界で2番目に足が速い動物って本当?

本当です。
プロングホーンの最高時速は80キロほどで、陸上の動物ではチーターに次いで2番目に足が速い動物です。北アメリカでは最速の動物であり、同じ場所に生息するどんな動物もプロングホーンに追いつくことはできません。さらにプロングホーンはただ足が速いだけではなく、時速40キロほどで長距離を走り続ける優れた持久力も持っています。

ではなぜ、プロングホーンはこれだけ足が速いのでしょうか?プロングホーンが俊足(しゅんそく)になった理由は更新世に生息していた「アメリカチーター(アメリカンチーター)」と呼ばれる、ネコ科動物から逃げるためだったのではないかと考えられています。アメリカチーターは氷河期の終わりころに絶滅してしまいましたが、プロングホーンは俊足のまま生き延びたようです。

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なおプロングホーンは跳躍力(ちょうやくりょく)も素晴らしく、1回の跳躍で水平方向に6m以上跳べるといわれています。ただし垂直方向へのジャンプはあまり得意ではないようで、野生のプロングホーンは高さ1.2mくらいの囲いを飛びこえられない個体が多いようです。そのため高さがある障害物(牧場や住宅地を取り囲むフェンスなど)を見つけると、飛びこえるのではなく下をくぐり抜けようとします。



プロングホーンはどんな性格なの?

捕食者に狙われる機会が多いプロングホーンは、とても神経質な性格だといわれています。

その反面とても好奇心が強く、動くものや見慣れないものを見つけると近づいて調べようとする一面も持っています。かつてのアメリカではプロングホーンを見かけたら草むらに姿を隠し、赤いハンカチを棒にくくりつけて振ると恐怖心より好奇心が勝ってしまったプロングホーンが寄ってきたので簡単に捕まえられた、というエピソードがあるそうです。

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プロングホーンはペットとして飼えるの?

よく見るとつぶらな瞳でかわいい顔をしているプロングホーンですが、自宅でペットとして飼うことはできるのでしょうか?

プロングホーンは偶蹄類の動物であるため海外から輸入する場合、多くの検査や条件が必要になるものと考えられます。しかし亜種にもよりますが、おそらく法律や条約という面からペットとしての飼育を禁じられたり、制限されたりはしていないものと考えられます。

とはいえプロングホーンは非常に神経質な性格であり、動物飼育のプロが集まる動物園であってもおとなになった個体を飼育するのは難しいそうです。その反面、子どもから飼いならすとよく人になつくため、かつてのアメリカではプロングホーンをペットとして飼う人もいたようです。

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プロングホーンが見られる動物園はあるの?

プロングホーンは2017年9月まで、神奈川県にある金沢動物園で飼育されていました。しかし残念ながら、それ以降日本国内でプロングホーンを飼育している動物園はありません。

金沢動物園が飼育していた最後の個体は「ブッチ」という名前のオスで、平均寿命を大きく超えた15歳まで生きました。ブッチは人工保育で育てられた個体だったため、人によくなついていたそうです。

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プロングホーンはどのくらい生きるの?

野生下におけるプロングホーンの寿命は7~10年だといわれています。
神経質な性格であることから飼育することが難しく、飼育下では寿命を全うできないことが多いそうです。

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プロングホーンにはどんな敵がいるの?

野生におけるプロングホーンの天敵はコヨーテやボブキャット、オオカミやイヌワシなどの肉食動物です。特にコヨーテは仲間同士で連携して、プロングホーンがくたくたになるまで追いかけまわして捕まえることが多いといわれています。

しかし神経質で用心深く、世界で2番目に早く走れるプロングホーンにとって最大の敵は肉食動物ではなく、私たち人間です。プロングホーンはかつて北アメリカに数千万頭(推定3500万頭)生息していましたが、彼らが暮らす草原が開発されてしまったこと、食用にするために乱獲されてしまったことから一気に数を減らし、一時期は1万頭ほどにまで減ってしまいました。その後狩猟の制限と生息地の保護が行われたことからプロングホーンの生息数は回復し、現在は絶滅のおそれが少ない状況だと考えられています。

しかし亜種「カリフォルニアプロングホーン」は一度個体数が100頭ほどにまで減ってしまい、絶滅寸前の状況になってしまいました。現在は生息地を保護するとともに、飼育下で繁殖させて野生に戻すプロジェクトが進んでいるそうです。なおプロングホーンは今でも多くの地域で狩猟の対象となっていること、生息地を開発しようとする動きがあることから、その将来は明るいとは言い切れないのが現状のようです。

なおプロングホーンはメキシコに生息する個体群に限り、ワシントン条約における“絶滅のおそれのある種で取引による影響を受けている又は受けるおそれのあるもの“に分類され、「附属書Ⅰ(ふぞくしょ)」に掲載されています。

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プロングホーンの種類(亜種)

・プロングホーン(アメリカプロングホーン) Antilocapra americana americana
・メキシコプロングホーン Antilocapra americana mexicana
・カリフォルニアプロングホーン Antilocapra americana peninsularis
・ソノラプロングホーン Antilocapra americana sonoriensis
・Antilocapra americana oregona



参考文献

E.T. シートン(著),今泉 吉晴(翻訳)(1998年)『シートン動物誌〈8〉シカの好奇心』E.T. シートン伊國屋書店

金沢動物園「金沢動物園のプロングホーン、スーチョワンバーラルが死亡しました」
http://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/kanazawa/author1709b/12aeaa7fcde43e6878f2c67ec4314a08d40db5d7.pdf

ナショナルジオグラフィック「ナショナル ジオグラフィック日本版 2015年11月号 温暖化を味方にする動物は?」https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/magazine/15/102300010/102400005/?img=ph7.jpg&P=2

ナショナルジオグラフィック「動物大図鑑 プロングホーン」
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20141218/428896/

ナショナルジオグラフィック「マガジン/2010年11月号 シリーズ 地球と、生きる 動物たちの地球大移動」
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/1011/feature03/_03.shtml

一般財団法人 静岡市立動物園協会「ZOOしずおか 2021年90」
http://www.szga.jp/wp-content/uploads/2021/02/35a167fb6af8d72cf825b52ce0200e83.pdf

San Diego Zoo Wildlife Alliance「Pronghorn (Antilocapra americana) Fact Sheet: Taxonomy & History」
https://ielc.libguides.com/sdzg/factsheets/pronghorn/taxonomy

San Diego Zoo Wildlife Alliance Animals&Plants「Pronghorn Antilocapra americana」
https://ielc.libguides.com/sdzg/factsheets/pronghorn/taxonomy

WWFPronghorn」
https://www.worldwildlife.org/species/pronghorn

アイキャッチ画像
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Antilocapra_americana_pair.jpg