キジ

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Phasianus_versicolor_in_field.JPG

突然ですが、あなたは日本の国鳥を知っていますか?
意外と知られていませんが、日本の国鳥はツルでもトキでもなく、実は桃太郎のおともとして有名な鳥「キジ」です。
キジは目にも鮮やかな色合いが特徴の野鳥で、古くからさまざまな物語に登場するなど、私たち日本人にとっては比較的身近な存在です。
そんなキジにはどんな特徴や秘密があるのか、この記事で一緒にその暮らしをのぞいていきましょう!



~基本情報~

鳥綱キジ目-キジ科

オス 体長80cm 体重847~1387g
メス 体長60cm 体重692~970g

キジは日本の広い範囲(本州~九州)に生息する、キジ科の野鳥の1種です。かつて日本に生息するキジはユーラシア大陸に生息する「コウライキジ」の亜種だと考えられていましたが、現在は日本で独自に進化した固有種だと考えられています。このような背景があるため、この記事では日本に生息するキジのことを「ニホンキジ」と表現します。

ニホンキジはオスとメスで、体の色が全く異なることが知られています。オスは目の周りに赤色の肉垂(にくすい)があり、頭から首にかけては青色~紫色、体の色は緑色という非常に目立つ色合いをしています。一方のメスは全身が茶褐色という全く目立たない色合いで、見た目は同じキジ科の野鳥「ヤマドリ」のメスにそっくりです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Phasianus_versicolor_Couple.JPG

ニホンキジは一夫多妻制(いっぷたさいせい)の鳥であり、繁殖期になると複数のメスがオスのなわばりに住み着いて交尾を行います。繁殖期は生息する地域によって異なりますが、子育てはメスだけが行い、オスが子育てに直接協力することはありません。しかしオスは巣から離れた場所にいて天敵を追い払い、間接的にヒナを守っていると考えられています。メスは産卵期になると6~12個の卵を産み、卵は23~25日ほどでふ化します。ヒナは生後7~8か月ほどで親と同じくらいの大きさになり、巣立っていきます。

なお繁殖期以外は、オスはオス同士、メスはメス同士で小さな群れを作って暮らしています。

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キジのQ&A

キジの名前の由来は何?

ところでキジという名前には、どんな由来があるのでしょうか?

キジはその鳴き声から、平安時代には「キギシ」と呼ばれていたそうです。その後「キギス」と呼ばれるようにもなりましたが、キギシやキギスがどんどん短くなり、いつの間にか「キジ」と呼ばれるようになったと考えられています。

なおニホンキジは英語で「Green Pheasant」、学名は「Phasianus versicolor」と表現されます。漢字では「雉」と表現しますが、この漢字には“矢のようにまっすぐ飛ぶ鳥”という意味が込められているそうです。

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キジはどうしてそこに住んでいるの?

ニホンキジは本州から九州にかけた、平地から山の明るい林、草原、農耕地などに生息しています。

実はニホンキジは生息地によって、4つの亜種に分けられると考えられています。北日本に生息するものは「キジ」、東日本以西の本州と四国に生息するものは「トウカイキジ」、三浦・伊豆・紀伊半島と屋久島、種子島に生息するものは「シマキジ」、九州と中国・四国の一部に生息するものは「キュウシュウキジ」と名付けられています。

なぜニホンキジが日本に生息しているのか、詳しい理由はわかりませんでした。しかしユーラシア大陸に生息していて人間の手で日本に持ち込まれ、ニホンキジと交雑(こうざつ・違う種類の動物の間で繁殖ができること)できるほど近い鳥である「コウライキジ」が北海道や沖縄県、対馬などで繁殖しているところをみると、温暖で植物や昆虫が豊富な日本はキジたちにとって住みやすく、子育てもしやすい環境なのだと考えられます。

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キジは何を食べているの?

キジは雑食性の動物で、植物質の食べ物(葉、花、実、種、根など)や動物質の食べ物(バッタやコオロギのような昆虫やナメクジ、カタツムリなど)を食べています。

動物園ではニワトリ用の配合飼料を主食に、青菜などの野菜を与えているようです。

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キジはなぜ日本の国鳥になったの?

ところでキジはなぜ、日本の国鳥に指定されているのでしょうか。

時は1947年(昭和22年)、文化省から日本鳥学会に「国鳥にふさわしい鳥を選んで欲しい」という依頼があったそうです。そこで22人の鳥類学者が集まって議論した結果、本州から九州にかけて1年中姿が見られること、目にする機会が多いこと、オスは羽が美しくて勇敢な性格をしていること、メスは母性愛が強いこと、そして古くから桃太郎などの物語で親しまれていることといった理由から、キジが国鳥に選ばれたそうです。

しかしキジは国鳥でありながら、狩猟鳥獣(しゅりょうちょうじゅう)にも指定されています。そのためキジは日本を代表する鳥であるにもかかわらず、猟期になると狩られてしまうという、なんとも不思議な立場におかれています。

キジはどんな性格なの?

キジは本来警戒心(けいかいしん)が強く、臆病(おくびょう)な性格だといわれています。

ただし繁殖期になるとオスはとても勇敢で狂暴な性格になり、ライバルのオスや天敵であるヘビに立ち向かっていきます。この時期のオスは赤色に反応する性質があるようで、時に人間に飛び掛かり、襲いかかってくることもあります。

一方のメスは母性愛が強く、ヒナや卵に危険が迫っても巣から離れようとしません。「焼け野の雉夜の鶴(やけののきぎすよるのつる)」ということわざがあり、これは野原が焼かれてしまっても自分の命を顧みず、ヒナを翼でおおって守ろうとするというキジのメスの性質を表しています。今もときおりキジの巣があることに気づかず、草刈り機で雑草を刈っていたら卵やヒナを守ろうとしていたキジのメスを傷つけてしまった…という事例が報告されています。

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キジはどんな鳴き声なの?

キジの一番有名な鳴き声は、繁殖期を迎えたオスの「ケーンケーン」「ケンケン」という鳴き声です。オスはこのように鳴いた後は翼を激しく震わせて「ババババ」「ドドドド」という音を立てる、母衣打ち(ほろうち)と呼ばれる行動をします。この行動には体を大きく、強く見せることでメスにアピールする、他のオスになわばりを主張するといった意味があると考えられています。

一方キジのメスは「ピュウピュウ」「キューキュー」といった、なんとも可愛らしい声で鳴きます。

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キジは飛ぶのが得意ではないって本当?

本当です。
キジは鳥の仲間ですが、実は飛ぶことがあまり得意ではありません。長距離を飛ぶことができないため、他の鳥のように木の上や空で暮らすことはなく、一生のほとんどを地面の上で過ごしています。

キジは飛ぶことが得意ではない代わりに走ることが得意で、本気を出すとなんと時速30kmものスピードで走れるといわれています。

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キジはどうしてオスとメスの色が違うの?

キジのオスはとても派手な色合いをしていますが、メスは同じ鳥だとは思えないほど地味な色合いをしています。それではなぜ、キジのオスとメスはこれほど色が違うのでしょうか?

動物にはライオンやカブトムシのように、性別によって見た目や大きさが異なる「性的二型(せいてきにけい)」と呼ばれる性質を持つものがいます。キジもこの性的二型が見られる動物の1種で、オスはメスにモテるために鮮やかな色をしていて、メスは天敵に見つかりづらく子育てに有利なように地味な色をしているのではないかと考えられています。

なおキジのメスは、オスの顔の肉垂のふくらみが大きければ大きいほど強いオスだと判断しているようです。そのため繁殖期のオスは顔の肉垂を大きく真っ赤にし、さらに尾羽を広げて翼を半開きにして、なんとかメスの気を引こうと必死になって求愛のディスプレーを行います。

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キジはペットとして飼えるの?

ところで個人がペットとして、自宅でキジを飼うことはできるのでしょうか?

日本国内に生息しているキジは捕獲が許可されている狩猟鳥獣(しゅりょうちょうじゅう)であるため、狩猟免許を持っている人であれば決められた期間・場所を守れば自由に捕獲できます。しかしこれはあくまで狩猟することを許可されているだけであり、愛玩目的(あいがんもくてき・ペットとして飼うこと)を許可されている訳ではありません。

野生のキジを捕獲して飼育したい場合は、自分が住んでいる市町村で飼養登録をする必要があります。許可が下りる可能性は非常に低いと考えられますが、どうしても野生のキジを飼いたい場合は市町村へ問い合わせてみましょう。

なお野鳥のキジは基本的に飼育できませんが、実はキジをペットとして飼育すること自体は可能です。というのも数は多くありませんが、キジを飼育・繁殖して愛玩目的や放鳥目的で販売している企業があるからです。そのためペットとしてキジを飼いたい方は、キジの飼育繁殖を行っている企業を探して問い合わせてみると良いでしょう。キジはニワトリと同じ餌で飼育できること、飼育するために必要なスペースが広くないことから、飼育難易度は低いとされています。

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キジが見られる動物園はあるの?

ニホンキジは東京都の「上野動物園」や「井の頭自然文化園」、京都府の「京都市動物園」など、全国各地の動物園で飼育されています。

ちなみに同じキジの1種で、全身が美しい虹色の羽根でおおわれている「ニジキジ」というキジは神奈川県の「よこはま動物園ズーラシア」や、兵庫県の「神戸市立王子動物園」で飼育されています。東京都の「多摩動物公園」ではニホンキジとニジキジの両方が飼育されているので、見比べてみたい人は遊びに行ってみると良いかもしれません。

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キジはどのくらい生きるの?

ニホンキジの寿命は、飼育下で約10年だといわれています。
ただし野生のキジには天敵が多いため、10年も生きられない個体も多いのではないかと考えられます。



キジにはどんな敵がいるの?

ニホンキジには天敵が多く、タヌキやキツネ、テンやハクビシンなどのほ乳類やワシやタカなどの猛禽類(もうきんるい)、ヘビなどに食べられてしまうことがあります。

しかしニホンキジにとって、最大の敵は私たち人間だといえるかもしれません。ニホンキジはその見た目の美しさと肉の美味しさから、古くから狩猟の対象とされてきました。とはいえ現在は1人のハンターが捕まえられるニホンキジの数は1日2羽までであること、メスは基本的に捕まえてはいけないと決まっていることから、狩猟圧がニホンキジの数を極端に減らしているということはなさそうです。

実は狩猟の対象となっているニホンキジはその生息数を維持するために、古くから人工繁殖した個体が全国各地で放鳥されてきました。その中で外来種であるコウライキジが放鳥されて在来種のニホンキジと交雑してしまい、在来種のニホンキジの特徴が消えてしまった地域があるそうです。現在も放鳥は続けられていますが、地域ごとに放鳥できるニホンキジの亜種は決められています。

なおニホンキジの生息数に関する詳しい情報は見当たりませんでしたが、東京都の一部では生息数が減少していることから地域によっては「絶滅危惧種」に指定されています。

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参考文献

語源由来辞典「キジ/雉/雉子/きじ」
https://gogen-yurai.jp/kiji/

認定NPO法人バードリサーチ「バードリサーチニュース 生態図鑑 キジ」
https://db3.bird-research.jp/news/201701-no2/

日本野鳥の会京都支部「キジ」
https://wbsj-kyoto.net/yachoulist/%E3%82%AD%E3%82%B8/

サントリーの愛鳥活動「日本の鳥百科 キジ」
https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1345.html

コトバンク「焼け野の雉夜の鶴」
https://kotobank.jp/word/%E7%84%BC%E3%81%91%E9%87%8E%E3%81%AE%E9%9B%89%E5%A4%9C%E3%81%AE%E9%B6%B4-648109

京都市動物園「どうぶつ図鑑 ニホンキジ」
https://www5.city.kyoto.jp/zoo/animals/birds/p_colchicus

千葉県「野鳥は捕まえたり飼ったりできません。」
https://www.pref.chiba.lg.jp/shizen/choujuu/yachou.html

日本キジ・ヤマドリ繁殖センター「商品紹介」
https://www.torihiko.jp/original.html

NHK for School「色あざやかなキジ」
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005400635_00000

新潟県立自然科学館「『科学館日記』 新潟県立自然科学館 -スタッフコラム-」
http://sciencemuseum.jp/cp-bin/wordpress/2019/05/03/%E5%AE%9F%E3%81%AF%E8%BC%89%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%EF%BC%81/

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