オランウータン

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オランウータンはインドネシアに生息する、私たち人間と同じ霊長類(れいちょうるい)の動物です。
彼らは非常に知能が高く、他の類人猿には見られない面白い特徴を持っていることで知られています。
国内の動物園でも飼育されていますが、あまり派手な動きをしないためじっくり観察したことがある人は少ないかもしれません。
この記事でオランウータンにはどんな特徴や面白い秘密があるのか、一緒にのぞいていきましょう!


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~基本情報~

哺乳綱霊長目(れいちょうもく)-ヒト科-オランウータン属

ボルネオオランウータン
オス 体長120~140cm 体重70~90Kg
メス 体長80~100cm 体重50~70Kg

オランウータンは私たち人間と同じ霊長目の動物で、霊長類の中でも特に人間に似た知能の高い動物として「類人猿(るいじんえん)(※)」とも呼ばれます。(※類人猿はオランウータン、チンパンジー、ゴリラ、ボノボ、テナガザルの5種)類人猿は基本的に群れを作り集団行動をしますが、オランウータンだけは群れを作らず単独行動を好むという特徴があります。

オランウータンのオスは生後11年ほど、メスは生後7~8年ほどで性成熟(せいせいじゅく)を迎えて繁殖できるようになります。性成熟を迎えたオスは1年中交尾ができますが、メスは1カ月に1回排卵して2~3日の間だけオスを受け入れ、妊娠が成立しないと人間と同じように生理が起こります。オランウータンのメスは233~275日の妊娠期間を経て、平均して7年に1回、1頭の子どもを産みます。母親と子どもの絆はとても強く、子どもは母親が次の子どもを産むまでずっと一緒に暮らします。なお野生ではメスだけが子育てを行いオスが関わることはありませんが、動物園ではオスが子育てに協力しようとする姿が目撃されています。

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オランウータンのオスは大人になると、顔の周りに「フランジ」と呼ばれる特徴的なヒダができることがあります。フランジは全てのオスにできるわけではなく、他のオスたちと戦っていくうちに“自分が強い”と思ったオスだけにできて、自信が付けばつくほど大きくなっていくという面白い特徴があります。フランジがある強いオスはメスにモテますが、他のオスに負けて自信がなくなるとフランジは小さくなってしまいます。


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オランウータンのQ&A

オランウータンの名前の由来は何?

オランウータンという名前の由来は、マレー語の「森の人」という意味がある言葉だと考えられています。「オラン」が人、「ウータン」が森を表す単語で、オランウータンは英語でも「Orangutan」と呼ばれています。

なおオランウータンは漢字では「猩猩(しょうじょう)」と表現されます。猩猩はオランウータンに似ている想像上の生き物で、全身に赤い毛が生えていてお酒が大好きだといわれています。ちなみにオランウータンと同じ類人猿の動物であるチンパンジーは「黒猩猩(くろしょうじょう)」、ゴリラは「大猩猩(おおしょうじょう)」と呼ばれることもあります。


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オランウータンはどうしてそこに住んでいるの?

オランウータンはインドネシアのスマトラ島とボルネオ島だけに生息しています。ではなぜ、オランウータンはこの限られた場所にだけ生息しているのでしょうか?その答えはオランウータンの生活を見ていくと明らかになります。

オランウータンは植物食の動物で、食べ物の99%が果実や木の葉などの植物だといわれています。また眠る時も木の上に葉っぱや枝でベッドを作ってその上で眠るなど、1日の大半を木の上で過ごします。そのためオランウータンの体は腕が足よりも2倍ほど長い、手の親指が短く他の指は長いなど地上30mほどの樹上で暮らすことに適した作りになっていて、地上では早く走ったりジャンプしたりといった動きができません。つまりオランウータンは食べる物や住む場所など生活のほとんどを熱帯雨林に依存していて、スマトラ島やボルネオ島のような豊かな熱帯雨林でないと生きていけないのです。

かつては現在の生息地に加え、マレーシア半島やジャワ島にもたくさんのオランウータンが生息していたそうです。しかし私たち人間は木材を利用するためや牧場や畑を作るために森林を切り開き、オランウータンが住める場所をどんどん減らしてしまいました。ジャワ島のオランウータンははっきりした理由や時期は不明ですが、17世紀頃に絶滅したのではないかと考えられています。


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オランウータンは何を食べているの?

野生のオランウータンは植物の葉や果実、樹皮や花、キノコやコケなどの植物を食べています。食べ物の99%が植物で、生息地にもよりますが少なくとも160種類以上をこえる植物を食べているようです。

果実としてはイチジクやドリアンなどを食べますが、人間と同じく甘くて果汁がしたたるような物を好む傾向があるとされています。食べ物の残り1%は昆虫(アリやシロアリ、ハチなど)ですが、ミネラルを補給するために土をなめるところやごくまれにサル類の死体や小鳥、卵などの動物を食べるところも目撃されています。

なお動物園で暮らしているオランウータンは野菜(キャベツ、ニンジン、サツマイモ、ハクサイ、トマトなど)や果物(リンゴ、バナナ、オレンジ、パイナップルなど)、動物性のもの(ゆで卵、煮干し、牛乳、ヨーグルトなど)などさまざまなものを食べています。


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オランウータンにはどのくらいの知能があるの?

オランウータンはチンパンジーと並び、非常に高い知能を持っている動物だといわれています。その知能は人間に例えると、大体5歳児と同じくらいではないかと考えられています。

人間に何かを教えられた訳ではない野生のオランウータンも、非常に知的な行動をすることが知られています。野生下のオランウータンでは豪雨の時に葉っぱがたくさんついた木の枝を傘のように使う、寄生虫の感染をコントロールするために薬草を食べる、痛み止めや炎症の治療を行うためにかんで汁を出した薬草を体にすりこむといった行動が目撃されています。

なお動物園で飼育されているオランウータンの中には、なんとiPadを使いこなす個体もいるそうです。他のオランウータンの動画を見ることを好む個体が多いようですが、他にもアニメを見たりお絵描きやゲームアプリを使いこなしたりと人間顔負けの行動をすることが知られています。


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オランウータンの新種が発見されたばかりって本当?

本当です。
2001年より前、オランウータンは生息地を問わず1つの種類だとされていました。しかしさまざまな研究の結果、2001年以降はスマトラ島に分布する「スマトラオランウータン」(学名:Pongo abelii)とボルネオ島に分布する「ボルネオオランウータン」(学名:Pongo pygmaeus)を別種とし、オランウータンを全2種だとする考え方が主流になりました。

その後の2017年11月2日、スマトラ島で新種のオランウータンが確認されて世界中の人たちを驚かせました。なぜならオランウータンのように体が大きい動物で、新種が発見されることは非常に珍しいからです。

新たに確認された3種目のオランウータン「タヌパリオランウータン」(学名:Pongo tapanuliensis)は、かつてスマトラオランウータンの1個体群とされていました。しかし骨を調査した結果、タヌパリオランウータンは他のオランウータンよりも犬歯が大きくそれまで化石として発見されていた古いタイプのオランウータンに近いことが判明し、新種だということが明らかになったのです。

タヌパリオランウータンは800頭ほどしか現存していないと考えられていて、他2種のオランウータンと比較しても近い将来絶滅してしまう可能性が高いと心配されています。


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オランウータンはどんな性格なの?

オランウータンは比較的大人しく、控えめな性格だとされています。

もちろんメスを巡ってオス同士がケンカをすることはありますが、オスはメスと交尾をしている時に子どもが邪魔をしても怒ったり傷つけたりすることはないそうです。またチンパンジーやゴリラなどの他の類人猿と異なり、人間が野生のオランウータンに襲われた、ケガをさせられたといった事例は知られていません。


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オランウータンはどうして単独で生活しているの?

オランウータンは類人猿の中で唯一、群れを作らずに単独で暮らす動物です。群れで暮らした方が天敵を発見しやすく、また天敵に襲われた時に有利というメリットがあります。ではなぜ、オランウータンは群れを作らないのでしょうか?その答えはオランウータンが暮らす森の食料事情を見ていくとわかってきます。

オランウータンが暮らす熱帯雨林は一見豊かに見えますが、彼らが主食にしている果実は数年に1回しか実をつけないという性質があります。森には果実がない時期が長いため群れを作ってしまうと十分な食べ物が得られない可能性が高くなってしまいますが、それぞれが単独で暮らせばなんとか暮らせるだけの食べ物を確保できるという訳です。このような理由からオランウータンは基本単独で生活し、あまり他の個体と遭遇しないように生活していると考えられています。

ちなみにオランウータンは果実がたくさんなる時期は1日に数万キロカロリー分もの果実を食べて脂肪を蓄え、果実がない時期は蓄えた脂肪を燃やして生き延びているそうです。


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オランウータンはどのくらい生きるの?

オランウータンの寿命ははっきりとわかっていませんが、野生下のスマトラオランウータンの寿命はオスで58歳以上、メスで53歳以上ではないかと考えられています。

飼育下での世界最高齢記録は東京都の多摩動物公園で飼育されていたメスのボルネオオランウータンの「ジプシー」と、オーストラリアのパース動物園で飼育されていたメスのスマトラオランウータンの「Puan」で、ともに推定62歳で亡くなっています。


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オランウータンはペットとして飼えるの?

とても賢く、時に人間のような仕草を見せるオランウータンを見て、ペットとして飼いたい!と考えたことがある人もいるかもしれません。では実際に、オランウータンはペットとして飼えるのでしょうか?

オランウータンは日本の法律で人の命や財産に危険を及ぼす可能性がある、「特定動物(とくていどうぶつ)」に指定されています。令和2年6月1日以降特定動物を新たに愛玩目的(あいがんもくてき・ペットとして飼うこと)で飼うことは全面的に禁止されたため、日本国内においてオランウータンをペットとして飼うことはできません。

またオランウータンは「ワシントン条約」という条約で、付属書Ⅰ(ふぞくしょ)に分類されています。付属書Ⅰに分類されている動物は世界的に保護されているため、研究などの特別な目的がない限り国と国の間で取引ができないと決められています。そのためオランウータンは本来、ペットとして飼う目的であれば売ることも買うこともできません。

しかし残念なことに、オランウータンをペットとして飼いたいと考える人は少なくないようです。特にインドネシアではオランウータンを飼うことがお金持ちのステータスだと考えられているそうで、条約や法律を犯してまで密猟(みつりょう)し購入しようとする人が今も後を絶たないのが現状です。

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オランウータンは小さいうちは人間の赤ちゃんと同じようにかわいらしいものの、成長に伴って人の言うことを聞かなくなります。そうとは知らずに飼い始め、飼いきれなくなって手放すことになったという事例もまた後を絶たないのです。小さいうちに人間に捕まり、ペットとして育てられてきてしまったオランウータンは野生で生き延びる術や子育ての方法を知りません。そのため手放されたオランウータンは野生にも戻れず、子どももつくれず、一生を保護施設や動物園で過ごすことになってしまいます。

オランウータンの人生を台無しにしてまでペットとして飼う必要があるのか、今一度野生動物との関わり方を考えたいものですね。


オランウータンにはどんな敵がいるの?

野生のオランウータンの天敵はヘビだといわれています。ボルネオ島やスマトラ島には多くの毒ヘビが生息しているため、オランウータンは時にヘビの犠牲になってしまうことがあるようです。なおスマトラ島にはトラも生息していますが、オランウータンは地上にはめったに降りないためトラに襲われることは少ないようです。

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しかしオランウータンの最大の敵はヘビやトラではなく、私たち人間です。私たちは熱帯雨林を切り開き、オランウータンの住みかをどんどん奪ってしまいました。その結果ここ100年余りで、オランウータンの個体数は80%も減少してしまったのです。

オランウータンは現地でも保護の対象になっていますが、生息地の減少やペット向け、お肉にするための密猟が絶えず将来が明るいとはいえない状況が続いてしまっています。現地では動物や植物が守られているはずの国立公園でさえ、違法に木々が伐採される事態が後を絶たないのです。

なおオランウータンの生息地を減少させている大きな要因の1つに、アブラヤシという植物があるといわれています。アブラヤシはパーム油という油が取れる植物で、パーム油は“植物油脂”という名前で食べ物や化粧品などあらゆるものに使われています。とても便利で使いやすいパーム油を大量生産するために、スマトラ島やボルネオ島の熱帯雨林が大量に切り開かれてしまっているのです。

日本に住んでいる私たちが直接オランウータンの保護に関わることは難しいのですが、間接的に保護に関わることはできます。私たちができることはあらゆる資源を無駄にしないように心がけること、そして自然を守る取り組みを行っている製品を購入することです。自然への負荷が少ない方法で生産された紙製品には「FSC認証」、パーム油を使った製品には「RSPO認証」というマークが付いているので、そのような製品を選んで使うことでオランウータンが住む森を守る手伝いができます。


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オランウータンの種類

・ボルネオオランウータン
・スマトラオランウータン
・タパヌリオランウータン


参考文献

久世 濃子(2018年)『オランウータン: 森の哲人は子育ての達人』東京大学出版会

金森 朝子(2013年)『フィールドの生物学11 野生のオランウータンを追いかけて マレーシアに生きる世界最大の樹上生活者』東海大学出版会

日本オランウータンリサーチセンター「オランウータンQ&A」
https://www.orangutan-research.jp/qa/

東京ズーネット「ボルネオオランウータン」
https://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/species_detail?code=25

よこはま動物園ズーラシア「ボルネオオランウータン」
http://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/zoorasia/animal/asia/BorneanOrangutan/

静岡市立日本平動物園「あらかると 「オランウータンの食生活」」
https://www.nhdzoo.jp/sp/newspaper/naka.php?newspaper_uid=612&newspaper_num=118

WWFジャパン「スマトラ島で確認された「第三」の新種オランウータン”タパヌリオランウータン”」
https://www.wwf.or.jp/activities/news/193.html

WWFジャパン「オランウータンの生態と、迫る危機について」
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3564.html

京都大学霊長類研究所「霊長類についての質問」
https://www.pri.kyoto-u.ac.jp/PRI-QandA/Bqanda.html

イーアイデム ジモコロ「孤独を愛する ふしぎな動物―「オランウータン」のすべてを研究者に聞いた」
https://www.e-aidem.com/ch/jimocoro/entry/galaxy023

日本経済新聞「オランウータンがiPad 夢は人間と意思疎通」
https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1000Q_Q3A110C1CR0000f

特定外来生物・特定(危険)動物へのマイクロチップ埋込み技術マニュアル 3大型サル類〈ゴリラ、オランウータン、チンパンジー〉
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h1804/05.pdf

千葉市動物公園「オランウータンのかんさつシート」
https://www.city.chiba.jp/zoo/school/documents/10orangutan-worksheet.pdf

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