ジャガランディ

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Jaguarondi_portrait.jpg

あなたはジャガランディという、イタチやカワウソのような見た目のネコ科動物を知っていますか?
日本の動物園では飼育されていないため、名前も知らなかったという人も多いのではないでしょうか。
南アメリカに生息するジャガランディはイタチとネコの習性をあわせ持つ、なんとも不思議な動物です。
この記事でジャガランディはどんな特徴や秘密を持っているのか、一緒にその暮らしをのぞいていきましょう!

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~基本情報~

哺乳綱(ほにゅうこう)食肉目-ネコ科

体長 50~77cm
体重 4.5~9Kg

ジャガランディは南アメリカに生息する、イエネコより少しだけ大きなヤマネコの1種です。体の色は鉄灰色か赤褐色のいずれかで、ネコ科に良く見られる斑点模様(はんてんもよう)やしま模様は全くないかほとんどありません。

体つきはほっそりとしていて首と胴体としっぽは長く、足が短いため、イタチやカワウソのような体型をしているのが特徴です。そのためジャガランディのことを知らない人が見たら、とてもネコの仲間だとは思わないことでしょう。しかし遺伝的には南~北アメリカに生息しているピューマと共通の祖先を持つ、れっきとしたネコ科の動物であることがわかっています。

出典:https://unsplash.com/photos/dyVgt5Rj798

ジャガランディには決まった繁殖期が無く、1年中繁殖できると考えられています。オスもメスも生後2~3年で性成熟(せいせいじゅく)を迎えて繁殖ができるようになり、メスの妊娠期間(にんしんきかん)は72~75日ほどで、1回の出産で1~4頭の赤ちゃんを産みます。ジャガランディの赤ちゃんは親と同じ色合いであることが多いものの、少しだけ斑点模様を持って生まれてくることもあるようです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:ZOO_Praha_(71).jpg

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ジャガランディのQ&A

ジャガランディの名前の由来は何?

ところでジャガランディという、ちょっと不思議な名前にはどんな由来があるのでしょうか?
ジャガランディという名前の由来は南アメリカの先住民の言葉、グアラニー語の「yaguarundi」という単語だといわれています。

ジャガランディの学名は「Herpailurus yagouaroundi」で、日本ではジャガランディのほか「ヤガランデ」と呼ばれることもあります。英語では基本的に「Jaguarundi」と呼ばれていますが、ブラジルの先住民・ツビ族の呼び名である「Eyra(アイラ)」という別名で呼ばれることもあります。

実はジャガランディには別名が多く、イタチのような見た目をしていることから英語では「Otter Cat(オッターキャット)」「Weasel Cat(ウィーゼルキャット)」、日本語では「カワウソヤマネコ」「イタチネコ」と呼ばれることもあります。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Jaguarundi_Zoo_Berlin.JPG



ジャガランディはどうしてそこに住んでいるの?

ジャガランディは南アメリカのメキシコ、ブラジル、アルゼンチンにかけた広い範囲に生息しています。かつては北アメリカのテキサス州にも生息していましたが、1986年を最後に目撃情報が途絶えているそうです。

ジャガランディは環境への適応力が高く、標高2,000mくらいまでの森林やサバンナ、沼沢地(しょうたくち)、草原など、さまざまな環境に適応できるといわれています。生息地を問わず日中に行動することが多い昼行性(ちゅうこうせい)の動物で、特に日中と明け方や、夕方に活発に行動すると考えられています。

ジャガランディがなぜアメリカ大陸に生息しているのか、詳しい理由はわかりませんでした。しかしアメリカには同じネコ科動物のピューマやジャガー、オセロットなどが生息していることを考えると、アメリカにはネコ科動物にとって生息しやすい条件が揃っているのかもしれません。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Puma_yaguarondi.jpg



ジャガランディは何を食べているの?

ジャガランディは肉食性の動物で、小~中型の哺乳類(ネズミやウサギなど)や鳥類(ウズラやハトなどの野鳥、ニワトリなどの家禽(かきん)、爬虫類(イグアナやトカゲなど)、両生類、魚類、昆虫などの動物を食べて暮らしています。完全なる肉食動物が多いネコ科動物の中では珍しく、イタチのようにイチジクなどの果実を食べる所も目撃されています。

ジャガランディの狩りは他のネコ科動物と同じように獲物にそっと忍び寄ったり、待ち伏せをしたりして行うことが多いようです。身体能力がとても優れているため、垂直方向に1.8mほどジャンプして飛ぶ鳥を捕まえてしまうこともあります。

またジャガランディは他のネコ科動物と比べると、とても忍耐強く狩りをすることが知られています。他のネコ科動物は一度狩りに失敗すると諦めてしまうことが多いものですが、ジャガランディの場合は獲物を逃してもしぶとく追い続ける傾向があります。そして獲物を追いかけ続け、疲れ果てたところを捕まえることも少なくないようです。

ちなみに海外の動物園においては、ジャガランディに鶏肉やヒヨコなどを与えているようです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Puma_yagouaroundi,_ZOO_Praha_254.jpg



ジャガランディはどんな性格なの?

ジャガランディは用心深く、警戒心が強い性格だといわれています。

野生におけるジャガランディの生態はあまり研究が進んでいませんが、基本的に単独もしくはオスとメスのペアで行動しているものと考えられています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Jaguarundi-tob-2007-01-09.jpg



ジャガランディは泳ぎが得意って本当?

本当です。
ジャガランディはネコの仲間ですが泳ぎが上手く、川を泳いで渡っている姿が目撃されています。敵に襲われた時に水に入って逃げることもあるようですが、水中で狩りをしているかどうかはわかっていません。



ジャガランディにはどうして2種類のカラーがあるの?

ジャガランディの体の色には不思議なことに、全く同じ動物であるにもかかわらず鉄灰色(薄い青灰色から濃い黒灰色)と赤褐色(淡黄褐色から明るいレンガ色)の2パターンのカラーが存在します。

かつては鉄灰色のジャガランディと赤褐色のジャガランディは別の種類だと考えられていて、鉄灰色のものは「ジャガランディ」、赤褐色のものは「アイラ」と呼び分けられていました。しかし1頭のメスが出産した子どもの中に2種類のカラーの個体がいたことから、どちらも同じ動物であることが判明しました。

なぜ同じ種類の動物であるにもかかわらず、ジャガランディの体の色にこれほどまでの違いがあるのかは今もはっきりとはわかっていません。ただし開けた土地では赤っぽいカラーの個体が多く、熱帯雨林では黒っぽいカラーの個体が多いといわれています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Zoo_Ostrava,_jaguarundi,_jaro_2009.jpg



ジャガランディはペットとして飼えるの?

ところで日本国内において、ジャガランディをペットとして飼うことはできるのでしょうか?

ジャガランディは日本の法律で人の命や財産に危険を及ぼす可能性がある、「特定動物(とくていどうぶつ)」に指定されています。令和2年6月1日以降新たに特定動物を愛玩目的(あいがんもくてき・ペットとして飼うこと)で飼うことは全面的に禁止されたため、日本国内においてジャガランディをペットとして飼うことはできません。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Puma_yagouaroundi.jpg



ジャガランディが見られる動物園はあるの?

残念ながらジャガランディは令和3年現在、日本国内の動物園では飼育されていません。

2011年までは愛知県の東山動植物園にて、オスとメスのペアが飼育されていました。しかし2010年にオスが、2011年にメスがともに腎不全が原因で亡くなってしまい、それ以降新たに飼育されていません。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Laika_ac_Berlin_Zoo_(10994848163).jpg



ジャガランディはどのくらい生きるの?

ジャガランディの野生下における寿命は不明ですが、飼育下における寿命は10~15年ほどだといわれています。

野生においては天敵がいること、また自分で獲物を捕らなければ生き延びていけないことから、飼育下よりも寿命が短いのではないかと考えられます。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Jaguarondi_2.jpg



ジャガランディにはどんな敵がいるの?

野生におけるジャガランディの天敵は、同じネコ科動物であるピューマや大型のヘビだといわれています。また民家の近くではイヌに襲われることもありますが、実はジャガランディにとって一番の敵は私たち人間です。

ジャガランディは生息地である南アメリカにおいては、狩りの対象とされることがあります。ジャガランディの毛皮はトラやジャガーといった動物と比べると地味であり、その価値はあまり高くありません。そのためジャガランディは毛皮を目的として狩られるというよりも、家禽を殺した害獣(がいじゅう)として、報復に殺されてしまうことが多いといわれています。

ジャガランディは他のネコ科動物よりも環境の変化に強く、ある程度の環境の変化には適応できるのではないかと考えられています。しかし生息地が破壊されつくしてしまえば、適応する前に命を落としてしまうことでしょう。また最近はジャガランディが生息する場所の開発が進んだことから、交通事故にあう個体も増えているといわれています。

自然の中ではジャガランディのような肉食動物は草食動物を食べて、草食動物は植物を食べて生きています。つまりジャガランディのような肉食動物がいるということは、その地域には草食動物が生息していること、多くの植物が生えていることの証明になります。ジャガランディの生息数は減少傾向にあるものの、現在のところはすぐに絶滅が心配されるような状況ではありません。最近では農作物を食べてしまうネズミやウサギを食べてくれる益獣(えきじゅう)として、経済的に重要な動物だという考えも出てきたようです。自然が豊かであることの証明となり、間接的に人間の生活を助けてくれるジャガランディが迫害されることなく、平和に暮らしていける環境になることを願いたいものですね。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Herpailurus yagouaroundi Jaguarundi ZOO Děčín.jpg

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参考文献

今泉 忠明(2004年)『野生ネコの百科』データハウス

ルーク・ハンター,プリシラ・バレット(2018年)『野生ネコの教科書』エクスナレッジ

THE BELIZE ZOO「The Jaguarundi (Herpailurus yagouaroundi)」
http://www.belizezoo.org/mammals/jaguarundi.html

AMAZONA ZOO「Jaguarundi」
https://amazonazoo.co.uk/our-animals/jaguarundi/

アイキャッチ画像
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Puma_yagouaroundi,_melanism.jpg