ジャガー

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ジャガーは南アメリカに生息する、唯一のネコ科ヒョウ属の動物です。
大きな体と斑点模様が特徴のジャガーは、その見た目や強さからアメリカのヒョウやトラとも呼ばれることもあります。
見た目が似ていることからヒョウと間違えられやすいジャガーですが、
その秘密を知ると動物園でジャガーを見るのが楽しくなるかもしれません。
それではジャガーにはどんな特徴や秘密があるのか、こっそりのぞいていきましょう!


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~基本情報~

哺乳綱食肉目-ネコ科-ヒョウ属

体長112~185cm 体重55~120Kg

ジャガーの生息地(せいそくち)は北アメリカ(北米)の南部から南アメリカ(南米)の北部から中部です。かつてその生息地は南アメリカの南部からアメリカとメキシコの国境まで広がっていましたが、今は生息地が半分ほどに減ってしまいました。熱帯雨林や水辺を好みますが、時には標高3000mをこえるアンデス山脈や乾燥した砂漠地帯に姿を見せることもあります。

ジャガーは基本的に単独(たんどく)で暮らす動物で、子どもを作る時期と育てる時期以外は1頭で暮らしています。
決まった繁殖期(はんしょくき)はなく、子どもが生まれると子育てはメスだけで行います。子どもは1才半から2才くらいまで母親と一緒に過ごし、獲物を見つける方法や狩りの方法などを学びます。

ジャガーの狩りは獲物を追いかけて捕まえるのではなく、静かに忍び寄るか待ち伏せをして一撃で仕留める形で行われることが多いようです。獲物を待ち伏せする時は木の上ややぶの中に身を隠して、突然飛びかかったり、川に飛び込んだりして獲物に襲いかかってしとめます。

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ジャガーが食べるものは85種類以上あるといわれていて、ペッカリー(南アメリカに生息するイノシシに似た動物)やバク、シカやカピバラ、アルマジロやナマケモノなどの哺乳類やカメ、ワニ、ヘビ、魚などあらゆるものを食べています。


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ジャガーのQ&A

ジャガーの名前の由来は何?

ジャガーという名前の由来は、南アメリカのインディアンの言葉「ヤガー」「ヤグァラ」だといわれています。この言葉は“一突きで殺す者”“一跳びで獲物を殺す猛獣”といった意味で、ジャガーが獲物を狩る姿を表していると考えられています。

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ジャガーはインディアンの間で無限の力を具現化(ぐげんか)した夜の神様として、長く崇拝(すうはい)されていました。アステカ神話に登場する神様「テスカトリポカ」の象徴にもなっていることからも、ジャガーが神聖(しんせい)な存在とされていたことがよくわかります。

ちなみに日本(和名)では、「アメリカヒョウ」や「アメリカトラ」と呼ばれることもあります。


なぜジャガーは派手な斑点模様なの?

一見するとジャガーの斑点模様はとても派手で目立ち、獲物である動物に見つかってしまいそうに見えます。ではなぜジャガーは頭から尻尾まで、斑点模様なのでしょうか?

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実はジャガーが住んでいる場所は木が多く、葉っぱの隙間からぽつぽつと木漏れ日(こもれび)が差し込む場所が少なくありません。ジャガーがそんな木漏れ日の中にいると、斑点模様と木漏れ日がきれいに紛れて全く目立たないのです。

つまり斑点模様は私たちの目から見ると派手に見えますが、ジャガーにとっては身を隠すためにとっても便利な模様という訳です。


ジャガーとヒョウにはどんな違いがあるの?

ところでジャガーと同じような斑点模様を持つネコ科の動物、ヒョウを知っていますか?
ジャガーとヒョウは見た目が似ていますが、いくつかのポイントに注目すると見分けることができます。

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まずこの2種は生息地が全く異なり、住む場所が重なることはありません。ジャガーはアメリカ大陸に生息していますが、ヒョウはアフリカやインド、中国に生息しています。

また斑点模様はどちらもバラやウメの花のような模様ですが、大きさやパターンが異なります。ジャガーの斑点模様はヒョウより大きめで、よく見ると模様の中に黒い点があります。一方ヒョウの斑点模様は小さめで、模様の中に黒い点はありません。

そしてなんといっても、ジャガーとヒョウは体つきが大きく異なります。ジャガーはヒョウよりも頭が大きくて手足がやや短く、全体的に筋肉質でがっしりしています。一方のヒョウは全体的にすらりとしていて、ペットのネコを大きくしたような体型をしています。


ジャガーはワニも食べちゃうって本当?

本当です。

ジャガーはネコ科動物の中でも一番噛む力が強く、噛む力は体重の約7倍もあるといわれています。ジャガーは本気で噛みつくとワニの頭蓋骨(ずがいこつ)やカメの甲羅(こうら)、アルマジロの甲羅なども簡単にかみ砕いてしまいます。

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また前足から繰り出されるパンチ(はたき)もとても強力で、ペッカリーやカピバラなどの固い頭蓋骨も簡単に砕きます。


ジャガーは泳ぎが得意なの?

ジャガーは泳ぎが得意で、水の中でもとても素早く動けます。

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ペットとして飼われているネコは水やお風呂が嫌い、というイメージがある方も多いかもしれません。しかしジャガーは水に入ることを好むようで水の中で暑さをしのいだり、川を泳いで移動したり、川の中にいるワニやカメなどを襲って食べたりすることがあります。


ジャガーは木登りが得意って本当?

本当です。

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ジャガーはライオンとトラに続き、世界で3番目に体が大きなネコ科の動物ですが、木登りがとても上手です。野生では狩りをする際に木の高さを利用するほか、暑さや虫を避けたり、身の安全を確保したりするために木の上で過ごすことも多いようです。


ジャガーはどのくらいの速さで走れるの?

ジャガーは他のネコ科動物と比べるとやや足が短く、全体的にずんぐりとした体型をしています。

しかし走る速度は意外と早く、本気を出すと時速50~60Kmで走れるといわれています。


黒いジャガーは普通のジャガーと違う種類なの?

いいえ、黒いジャガーも普通のジャガーと同じ種類です。

黒いジャガーは動物の体の色が黒く変わる突然変異の1つ「黒変種」(こくへんしゅ)で、クロジャガーと呼ばれることもあります。なぜ体の色が黒くなるのかはっきりとした理由はわかっていませんが、体の色以外は普通のジャガーと変わりません。

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ちなみにヒョウにも体の色が黒くなった「クロヒョウ」がいますが、こちらもヒョウと全く同じ種類です。クロジャガーもクロヒョウも一見真っ黒に見えますが、よく見ると黒い毛並みの中にきちんと斑点模様があることがわかります。


ジャガーにはどんな敵がいるの?

ジャガーは南アメリカで一番大きな体を持つネコ科の動物で、天敵といえる動物はほぼ存在しません。生息地が重なるネコ科の動物としては「ピューマ」がいますが、ジャガーの方が圧倒的に大きく力も強いため、ピューマはジャガーの敵にはなりません。

むしろジャガーの天敵は同じジャガーといえるかもしれません。特に子どもがいるメスのジャガーにとってオスのジャガーはとても危険で、うっかり出会ってしまうと子どもを殺されてしまうことがあるようです。

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しかし実は、ジャガーにとって最大の敵は私たち人間です。ジャガーはとても力が強く、人間が1対1で戦ったら絶対に勝てる動物ではありません。しかしジャガーがいくら強くても、銃や罠を使われてしまえばひとたまりもないのです。

私たちはジャガーのとてもきれいな毛皮を洋服や敷物にするため、また牙をお守りにするため、たくさんのジャガーを捕まえて殺してしまいました。また牛や羊などの家畜を襲うことから牧場の持ち主に嫌われ、害獣(がいじゅう)として殺されるという悲しい話も絶えません。それに加えて熱帯雨林が牧場や畑などに開発されてしまい、ジャガーが住める場所はどんどん減っています。

その結果ジャガーは数を減らし、すでにいくつかの国からは姿を消してしまいました。今はジャガーを捕まえることは法律(ほうりつ)で禁止されていて、毛皮や牙などの取引も禁止されています。現地ではジャガーを保護しようと活動している人もいますが、残念なことに今も密猟(みつりょう)が絶えません。このままではジャガーは更に数を減らし、絶滅(ぜつめつ)してしまうのではないかと心配されています。


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ジャガーの種類

・アリゾナジャガー
・テキサスジャガー
・メキシコジャガー
・ユカタンジャガー
・パナマジャガー
・アマゾンジャガー
・ペルージャガー
・パラナジャガー など


参考文献

今泉 忠明(2004年)『野生ネコの百科』データハウス

『ナショナルジオグラフィック 2017年12月号』日経ナショナル ジオグラフィック

環境省「9 大型ネコ類〈ライオン、ジャガー、ジャガー、トラ、ジャガー〉」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h1804/11.pdf

ナショナル ジオグラフィック「動物大図鑑 ジャガー」
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20141218/428843/

京都市動物園「Q.ジャガーやトラの走る速度はどれくらいですか?」
https://www5.city.kyoto.jp/zoo/uploads/image/Q217.pdf

平川動物公園「動物図鑑 ジャガー黒変種(クロジャガー)」
https://hirakawazoo.jp/zukan/bunrui/mammal/2447

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