アイリッシュ・ウルフハウンド

皆さんは「アイリッシュ・ウルフハウンド」という犬種を知っていますか？すべての犬種の中で1番大きい体を持っている犬なんです。そのため日本でも飼われていることはありますが、あまり多くありません。見たことがないという方も多いと思うので、アイリッシュ・ウルフハウンドのことを紹介していきます！

アイリッシュ・ウルフハウンド基本情報

〜基本情報〜

原産国：アイルランド体高：オス　79〜86cm 　　　メス　71〜76cm 体重：オス　54〜70kg 　　　メス　40.5〜61kg アイリッシュ・ウルフハウンドは「世界で最も大きな犬」として有名で、体高が100cmを超えた記録もあるんだそうです。２本足で立った時には身長が2mにもなるんです。そんな大きな体を持ったアイリッシュ・ウルフハウンドはとても優雅に歩き気品もあり堂々としていますが、途端に走ると気迫を感じる犬種です。体はとても筋肉質で、硬い剛毛の被毛になっています。色はグレーやレッド、ブラック、ピュアホワイト、フォーンなど様々です。頭と首は長く高い位置にあるのですが、アイリッシュ・ウルフハウンドは昔、オオカミを狩っていた狩猟犬なので、高い位置に頭があることによってオオカミを見つけやすくなっているんです。オオカミを追うために大きな心臓と肺があるので胸が大きくなっています。目の上や口周りの毛が長く、耳も垂れ耳なので、気品や気迫に加えて可愛らしさも持っているんですよ。

アイリッシュ・ウルフハウンドの歴史

アイリッシュ・ウルフハウンドは、とても古い歴史のある犬種です。先祖は紀元前273年前にはいたと言われており、紀元前14世紀ごろにギリシアからアイルランドに来たと言われています。最初はアイルランドのケルト人がオオカミ狩りのための猟犬として飼っていました。その頃は森に狼がたくさんいて、狼による被害が多かったそうです。オオカミだけではなく、体重が800kg以上にもなるヘラジカなども倒していたそうです。15世紀にはアイルランドの農民は24頭のアイリッシュ・ウルフハウンドを飼うようにと言われていたそうです。ケルト人だけではなく、アイルランドの農民にとって、アイリッシュ・ウルフハウンドは必要不可欠な存在になっていたんですね。ローマ帝国時代には、贈り物として王室に献上されていたそうです。大きく堂々としたアイリッシュ・ウルフハウンドを見たローマの人々はとても驚いたそうで、「全てのローマ人が驚いた」と文献に残されているほどです。昔もこんなに大きな犬はいなかったんですね。そんな必要不可欠だったアイリッシュ・ウルフハウンドは、数を少なくしていきます。17世紀〜18世紀に森の伐採が行われ、人間がオオカミに対抗できるような武器を持ち始めたこともあり、オオカミは数を減らしていきました。それと同時にアイリッシュ・ウルフハウンドの需要も無くなっていったのです。さらに19世紀には、アイルランド全土が大飢饉（だいききん）になってしまったのです。その影響もあり、絶滅（ぜつめつ）寸前のところまで数を減らしてしまいました。 19世紀後半、愛好家たちが残っているアイリッシュ・ウルフハウンドを保護し、救助犬としても活躍できるようにと他の大型犬の血を混ぜながら数を増やすことに成功したのです。そして今の大きな姿のアイリッシュ・ウルフハウンドが誕生しました。大飢饉（だいききん）もあり、自分たちも大変な中、アイリッシュ・ウルフハウンドを絶滅（ぜつめつ）させないようにと頑張ってくれた方々のおかげで、今も姿形はあまり変わらずに堂々としたアイリッシュ・ウルフハウンドが生き残っているんですね。

アイリッシュ・ウルフハウンド Q&A

アイリッシュ・ウルフハウンドの名前の由来は？

アイリッシュ・ウルフハウンドの名前の由来は、原産国と仕事内容を組み合わせて付けられています。「アイリッシュ」というのは「アイルランドの」という意味、「ハウンド」というのは「猟犬」という意味になります。「ウルフ」は「オオカミ」という意味なので、「アイルランド生まれのオオカミを狩猟する犬」という意味で名前がつけられました。アイリッシュ・ウルフハウンドは別名もあります、「ジェントル・ジャイアント」とも呼ばれていて、人にも犬にも紳士で友好的な背格なので、この別名がつけられたそうです。性格と体の大きさをうまく掛け合わせた名前になっていますね。

アイリッシュ・ウルフハウンドには伝説があるの？

アイリッシュ・ウルフハウンドはオオカミ狩りをして農民に飼われていましたが、王と貴族だけが飼うことを許されていた時代もありました。それだけ昔から貴族、そして農民に広く愛されたアイリッシュ・ウルフハウンドは様々な伝説があります。その中でも最も有名な伝説は、ウェールズの王子ルウェリンが登場する物語です。王子は、「ゲレルト」という名前のアイリッシュ・ウルフハウンドを飼っていて、とても大切にしていました。ある日王子は、息子と子守とゲレルトと一緒に狩りに出かけました。しかし子守が恋人と会う為にいなくなってしまったので、小屋で息子を守るようにとゲレルトにお願いしました。王子が狩りから戻ると息子の姿がありません。ただ口と前足が血で汚れたゲレルトがいるだけなのです。王子はゲレルトが息子を殺したのだと思い、怒ってゲレルトを殺してしまいました。しかしその時、息子の声が聞こえてきたのです。そして息子の横には死んだオオカミがいました。ゲレルトは息子を殺したのではなく、息子を襲うオオカミを殺し守っていたのです。勘違いでゲレルトを殺してしまったことを後悔した王子は、ゲレルトのお墓を建て、その場所は「ベズゲレルト（ゲレルトの墓）」と呼ばれるようになった。というお話です。このゲレルトのお墓は、今でもイギリスのウェールズ州にあるそうです。悲しい物語ですが、アイリッシュ・ウルフハウンドの忠誠心がよくわかる伝説ですね。

アイリッシュ・ウルフハウンドの性格は？

アイリッシュ・ウルフハウンドは「家庭では子羊のようで、獲物（えもの）を追っているときにはライオンのよう」と言われるほど、大きな体とは裏腹に普段はとても穏やかな性格をしています。おっとりと優しい性格に加えて、力強く活発で辛抱強いです。飼い主さんにも忠実で愛情深く、人間とも他の動物とも仲良くすることができます。ただ、フレンドリーな性格すぎて警戒心があまりありません。知らない人が来ても吠えたりしないので番犬にはならないかもしれませんが、見慣れない大きい犬がいるというだけで、人間の方が警戒してくれそうですね。超大型犬に多い性格なのが、好奇心旺盛でチャレンジ精神があるところです。アイリッシュ・ウルフハウンドもそのような性格があり、自分の体の大きさを分からずにチャレンジすることがあるので、ハラハラしますがそんなところも可愛いと思えそうですね。

アイリッシュ・ウルフハウンドはどうやって飼うの？

アイリッシュ・ウルフハウンドは、日本では珍しいのでペットショップで売られていることはほぼありません。飼うときにはブリーダーさんを探して飼うことになります。日本でも100頭ほど、ペットとして飼われているそうです。海外から輸入するよりは、日本でブリーダーさんを探す方が簡単かもしれません。ただ、体の大きさが超大型なので都心部で飼うのは難しいかもしれません。しっかりスペースの取れる大きな家と、遊び回れるような広い庭があるといいと思います。長時間の散歩も必要なので、それだけ歩ける場所と飼い主さんの体力も必要になってきます。小型犬や中型犬を飼うのとは、全然変わってくるので飼育の仕方や大きさ、性格をしっかり把握して飼うかどうかを決めた方がいいかもしれませんね。

アイリッシュ・ウルフハウンドは室内で飼っても大丈夫なの？

アイリッシュ・ウルフハウンドは超大型犬ですが、飼い主さんと過ごすことが大好きなので家の中で飼ってあげた方がいいかもしれません。それにアイリッシュ・ウルフハウンドの原産国、アイルランドは涼しい気候で夏でも30度を超えることはありません。なので、寒さには強いですが暑さには弱いんです。それも考えると、家の中の方が快適に過ごせるかもしれません。アイリッシュ・ウルフハウンドは大きいので、サークルやフェンスだけだと簡単に飛び越えてしまう可能性があります。屋根のついたゲージを用意するか、部屋があれば1部屋をアイリッシュ・ウルフハウンド用にしてあげてもいいかもしれません。そのとき壊されたくないものや危険なものは隠しておくようにしましょう。人間は体温調節ができますが、アイリッシュ・ウルフハウンドを含めて犬は体温調節が苦手です。なのでエアコンなどで快適な温度を保ってあげる必要があります。アイリッシュ・ウルフハウンドは重心が不安定なので、滑りやすいフローリングなどの床だとこけてしまう可能性があります。しかも体重が重いので、硬い床の上ばかりを歩かせていると足にタコができてしまう可能性があります。出血やひび割れを起こしてしまうので、クッション性のある床や寝床を用意してあげましょう。アイリッシュ・ウルフハウンドは体高が高いので、水やご飯用の食器を床に置いてしまうと無理な体勢をしてしまいます。無理な体勢で食べたり飲んだりしてしまうと余計に空気を飲み込んでしまったり病気にもつながってしまうので、高さを合わせてあげた方がいいです。アイリッシュ・ウルフハウンドも人間も快適に過ごせるような空間にすることが大切ですね。

アイリッシュ・ウルフハウンドはたくさん運動するの？

アイリッシュ・ウルフハウンドは超大型犬で筋肉質なので、運動は欠かせません。1日に２回、1時間ぐらい散歩させてあげる必要があります。ただ、激しい運動は特に必要なく、長めの散歩やジョギングで十分です。逆に運動をさせすぎてしまうと関節を痛めてしまうので、適度な運動量にしてあげてください。長めの散歩に加えて、力も強いので急な動きなどに対応できるような体力と力が必要になってきます。子どもやお年寄りだけで散歩に出かけるのは危険なので、しっかりと力のある方が家族にいると安心です。道を歩いているといろいろなことが起こると思います。人間が歩いていてもびっくりするような音や出来事に合いますよね。人間社会に慣れていない犬だともっとびっくりしてしまいます。急に引っ張られることがないように人間社会を見せて小さい頃から慣れさせてあげるといいかもしれません。アイリッシュ・ウルフハウンドの大きさは、慣れてない人も多いです。道行く人を驚かさないためにも、どんなことでも動じないように育てられたらいいかもしれませんね。アイリッシュ・ウルフハウンドは、人間だけでなく他の犬とも仲良くすることができます。小型犬とも仲良くすることができるので、公園やドックランなどで犬社会にも慣れさせてあげるといいかもしれませんね。運動量が多く大変ですが、運動不足になると筋肉が十分に発達しなくなり、大きな体を支えることが難しくなります。足腰や背中など痛めてしまうかもしれません。しっかり運動ができないとストレスも溜まってしまいます。ストレスを溜めないためにも、怪我をしないようにするためにもしっかり運動させてあげましょう。

アイリッシュ・ウルフハウンドはたくさんご飯を食べるの？

アイリッシュ・ウルフハウンドは体が大きいので、食べる量も多いです。ご飯は「総合栄養食」と書かれたものをあげるといいと思います。小さい頃も大きくなっても食べる量が多いですが、食べさせすぎるのはいけません。成長に合わせたドックフードで、量を守って健康を守りましょう。栄養バランスを考えてご飯を食べさせた方がいいのですが、栄養を与えすぎるのもやめましょう。特にカルシウムを与えすぎるのはいけないので、バランスをしっかり考えて食べさせてあげましょう。たくさん食べますが1度にたくさん食べさせてしまうと危険なので、1日2〜3回に分けて食べさせてあげてください。運動も大切ですが食事も健康を保つためには重要なことです。愛犬の健康の為にバランス良く食べさせてあげてください。

アイリッシュ・ウルフハウンドには「待て」を教えた方がいいの？

アイリッシュ・ウルフハウンドはとても穏やかな性格をしていますが、狩猟犬なので本能で動いているものに反応してしまう可能性があります。なので「待て」をしっかりできるようにしつけてあげる必要があります。「待て」を覚えるのはアイリッシュ・ウルフハウンドにとって大事なことです。散歩中、急に動いてしまった時や他の犬と遊んでいる時、通行人にじゃれている時など、超大型犬なのでアイリッシュ・ウルフハウンドは遊んでいるつもりでも怪我をさせてしまう可能性があります。そんなときに「待て」を覚えて動きをコントロールできるようになると、外でも安心して遊ぶことができると思います。アイリッシュ・ウルフハウンドをしつける場合、飼い主さんとの関係性も重要になってきます。アイリッシュ・ウルフハウンドは人の反応に敏感です。きちんと飼い主さんを主人だと思わせるようにする必要がありますが、心ない扱いをしてしまうと、体調を崩してしまいます。アイリッシュ・ウルフハウンドも人間と同じように褒められることは嬉しいので、できたらたくさん褒めてあげるようにしましょう。アイリッシュ・ウルフハウンドの優しく穏やかな性格は、元々持っている性質にもよりますが、子犬の時にどれだけ幸せな時間を過ごしたかで性格が決まっていくようなんです。なので、しつける事も大事ですが、いつも穏やかな気持ちで接してあげてくださいね。

アイリッシュ・ウルフハウンドのお手入れは大変なの？

アイリッシュ・ウルフハウンドはゴワゴワとした被毛を持っているので普段から軽くブラッシングしてあげる必要がありますが、他の犬と同じように週1〜2回ぐらいのペースでしっかりブラッシングしてあげるくらいで十分です。ただ、なんといっても体が大きいので範囲が大きく、そういった点では大変かもしれませんね。シャンプーもする必要がありますが、家のお風呂では難しくなるのでプロに頼む方がいいかもしれません。家でシャンプーをする場合は外でしてあげて下さい。アイリッシュ・ウルフハウンドがブルブルと体を振るうだけで、広い範囲がびしょ濡れになる可能性があるので濡れてもいい場所でシャンプーしてあげて下さいね。もう一緒にびしょ濡れになってしまおう！という気持ちでシャンプーをすると楽しくできるかもしれませんね。

アイリッシュ・ウルフハウンドがかかりやすい病気は？

アイリッシュ・ウルフハウンドだけではなく、ペットはさまざまな病気にかかってしまう可能性があります。アイリッシュ・ウルフハウンドがかかりやすい病気を知っておきましょう。「股関節形成不全（こかんせつけいせいふぜん）」大型犬や超大型犬に多く、生まれつき股関節が異常な形をしている病気です。遺伝性なので、飼う時に親犬の情報を知っておくことが大切です。「胃捻転（いねんてん）」胃がねじれてしまう病気で、アイリッシュ・ウルフハウンドのように胸が大きい犬がかかりやすい病気です。食べ過ぎや食後すぐの運動が原因になる可能性があるので、気をつけていきましょう。「拡張型心筋症（かくちょうがたしんきんしょう）」心臓の筋肉が弱くなり、うまく体に血液を回せなくなる病気です。これも大型犬や超大型犬に多い病気で、遺伝や加齢によって起きるので、飼う時に親犬の情報を知っておくこと、シニア犬になったときによく観察していつもと違うところがあればすぐに病院に行くことが大切です。アイリッシュ・ウルフハウンドの寿命はあまり長くありません。小型犬や中型犬の平均寿命が12〜15歳なのに対して、アイリッシュ・ウルフハウンドは６〜8年、長くて10年と一緒にいられる時間が少ないです。アイリッシュ・ウルフハウンドを飼う時には、短くても一生幸せにできるように時間を過ごしてあげて下さいね。