アイリッシュ・セター

皆さんは「アイリッシュ・セター」という犬種を知っていますか？引き締まった体に、気品を感じさせる美しい赤い毛、かと思えば母性本能をくすぐられる子どものような性格と、さまざまな面を持ち合わせている犬なんです。そんなアイリッシュ・セターのことを紹介していきます！

アイリッシュ・セター基本情報

〜基本情報〜

原産国：アイルランド体高：オス　67〜69cm 　　　メス　62〜64cm 体重：オス　32〜33kg 　　　メス　27〜28kg アイリッシュ・セターは元々狩猟犬なので、賢く従順で高い運動能力を持っています。風になびく美しい赤色の毛に、優しい顔をしています。肩幅があまり広くないのでスリムに見えますが、無駄のない筋肉のつき方をしています。大きく垂れた耳で首が長いです。美しい赤色の毛は、赤色に近い栗赤色の「マホガニーレッド」、栗赤色の「チェストナット」、濃い栗赤色の「リッチチェストナット」など栗赤色の中でもさまざまな種類があります。胸やのど、指などが白色になっている子もいます。この毛色は大人になるにつれて色が深くなりもっと美しい色になるんですよ。栗赤色の毛は、長く光沢があり、耳や脚の後ろ、お腹、胸、しっぽなどには飾り毛があるので他の場所よりも毛が長くなり、この毛が風になびくことでより一層美しく見えているんですね。この飾り毛は、見た目の美しさだけではなく草木の多い場所に入っても引っかかることなく、体を守るためのものでもあるんです。狩猟犬でたくさんの運動ができるように心臓や肺が大きくなっています。そのため胸は大きく、前に出ています。スリムな体に大きな心臓と肺を収めるために独特な胸の形をしているんですね。

アイリッシュ・セターの歴史

アイリッシュ・セターは、セター種の中でも古い犬種で昔から人間のそばで暮らしてきました。鳥を狩る鳥猟犬として「ガンドック」と呼ばれていて、ハンターの側で一緒に仕事をしていました。ただ、アイリッシュ・セターの正確な起源はわかっていません。祖先はヨーロッパ大陸の「レッド・スパニエル」という犬種だと言われていて、そこに「イングリッシュ・セター」や「イングリッシュ・ポインター」などの血を混ぜて、アイリッシュ・セターが誕生したと言われています。ポインターの血を加えたことによって、特徴である美しい毛になったのではないかと考えられています。たくさんの犬種が混ざって今の美しく強いアイリッシュ・セターが誕生したんですね。今のアイリッシュ・セターは栗赤色の毛が基本ですが、最初は白色に赤色の模様のあるアイリッシュ・セターもいたようです。毛色の違いで区別できるようにと栗赤色のみの犬を「アイリッシュ・セター」と呼び、白色が入っている犬を「アイリッシュ・レッド・アンド・ホワイト・セター」と呼ぶようになったそうです。今ではほとんどが栗赤色で、ところどころに白色が入っている子もいるぐらいなので、特に色の違いで分けることはなくどちらもアイリッシュ・セターと呼んでいます。今のアイリッシュ・セターは首が長いですが、最初は特に長いわけではなかったそうです。美しい毛と引き締まった体を持っているアイリッシュ・セターは19世紀ごろから、ドックショーに参加し始めました。すると首の長いアイリッシュ・セターが評価されたので、首の長い子が選ばれるようになり、首の長いアイリッシュ・セターになっていきました。このようにアイリッシュ・セターはいろんな犬種が混ざり、長い歴史の中で賢く美しい体と、高い運動能力を持っていったんですね。

アイリッシュ・セター Q&A

アイリッシュ・セターの名前の由来は？

アイリッシュ・セターの由来は、原産国と仕事内容から来ています。アイリッシュ・セターは先ほどもお話ししたように「ガンドック」と呼ばれる鳥猟犬でした。鳥をハンターと一緒に狩るとき、アイリッシュ・セターの仕事は鳥を見つけてそれをハンターに知らせることです。鋭い嗅覚で鳥を見つけたアイリッシュ・セターは、姿勢を低くして「伏せ」の状態で待ち、この先に鳥がいることをハンターに知らせていました。この「伏せ」の状態を「set（セット）」と言うことから「セター」や「セッター」と呼ばれていました。「アイリッシュ」というのは「アイルランドの」という意味です。「アイルランドのセター」であることから「アイリッシュ・セター」という名前になったそうです。ちなみにアイリッシュ・セターの名前が使われた商品もあります。男性用ブーツが有名な「レッド・ウィング社」は、1952年にハンティング用に男性用ブーツを発売しました。このブーツに使われていたレザーの色が、アイリッシュ・セターの毛色のような色をしていたので、ブーツの名前を「アイリッシュ・セッター」としたそうです。色から連想するほど、美しい毛色、毛並みなんですね。

アイリッシュ・セターはどんな性格なの？

アイリッシュ・セターは賢く忠誠心があり、精神の強さも持っています。狩猟犬として働いてきた体の強さと心の強さを持っているんですね。また陽気で優しく、社交的で愛情深いので人間とも他の犬とも仲良くすることができます。争うことが嫌いなのでみんなと仲良くしたいと思っているのかもしれませんね。大型犬なので体は大きいですが、大人になっても甘えん坊で子どものような性格も持っています。母性本能をくすぐられますね。ただ、ヤンチャなのでイタズラをしてしまったりすることもあります。可愛いので許してしまいそうになりますね。狩猟犬の血が騒ぐ時もあります。動くものに反応してしまうので、猫や他の小動物などを見つけたときに急に動いてしまうこともあるそうです。いろんな面を持っている犬なんですね。

アイリッシュ・セターはどうやって飼うの？

アイリッシュ・セターは基本的にはブリーダーや里親から迎え入れることになるかと思います。アイリッシュ・セターは遺伝性の病気に気をつけなければいけないので、選んだ子の親の情報も聞いておく必要があります。アイリッシュ・セターは家族と過ごすことが大好きな犬なので、家の中で飼う方が快適に過ごせるかもしれません。もしも外で飼うことになったとしてもコミュニケーションをしっかり取ってあげましょう。大型犬で運動量も多いので、比較的広いお家の方が飼いやすいと思います。アイリッシュ・セターは、暑すぎるのも寒すぎるのも得意ではありません。外で飼っていたとしても暑い夏や寒い冬は家の中で飼うようにしましょう。もしも赤ちゃんや小さいお子さんがいる家庭で飼うことになった時には、アイリッシュ・セターは大型犬なので悪意なく赤ちゃんにぶつかってしまう可能性があります。そういう場合は飼い主さんがよく見てあげるようにして、アイリッシュ・セターも赤ちゃんも快適に過ごせるようにしてあげて下さい。子どもと遊ぶことも好きなので、遊び相手になってくれるかもしれませんね。

アイリッシュ・セターはたくさん運動をするの？

アイリッシュ・セターは猟犬なのでスピードとスタミナがあります。運動欲求を満たせてあげられるくらいに運動させてあげる必要があります。狩猟の時には、1日100km以上の距離を走っていました。ですので、毎日2回、それぞれ30〜60分散歩をさせてあげてください。それに加えて、ドッグランなどで走らせてあげる必要があります。遊ぶことも大好きなので、ボールやフリスビーを使って遊びながら運動させてあげるのもいいかもしれません。泳ぐことも大好きなので、水泳をさせてあげるのもいいと思います。運動量が多いので、飼い主さんもその運動量に付き合える体力を持っている必要があります。アウトドアが好きな方だと、一緒にジョギングをしたり自転車と並走したり、海や川、プールで一緒に遊ぶこともできますね。飽きないように、いろんな道や遊びを取り入れて楽しく運動させてあげましょう。アイリッシュ・セターは暑すぎるのも寒すぎるのも苦手なので、夏は朝の早い時間や夕方の日が落ちた時などにお散歩に行くようにしましょう。ネッククーラーなどもあるので使うといいかもしれません。冬は洋服を着せてあげて暖かくしてから散歩に行きましょうね。運動不足になるとストレスが溜まり、乱暴な行動をしてしまう可能性があるので、たくさん遊んで運動させてあげてくださいね。

アイリッシュ・セターはどんなご飯を食べるの？

アイリッシュ・セターのご飯は、フードと水だけで栄養が取れるようになっている「総合栄養食」と書かれているものがいいと思います。運動量と筋肉が多いので、主原料が「肉類」と書かれているものがいいです。裏面などを見て選ぶようにしましょう。量はドックフードに書かれている量を与えてあげてください。ただ、体重の多い少ないで量は調整する必要があります。たくさんの量を1回で与えるのではなく、数回に分けてあげるようにしましょう。胃の病気を防ぐことに繋がります。健康を守ってご飯を食べさせましょう。

アイリッシュ・セターは猫を見ると飛びついてしまうの？

アイリッシュ・セターは狩猟犬なので、猫や小動物など動くものについ反応してしまうことがあります。ハンターから見ると大切な本能ですが、家庭で飼うには問題もあるので小さい頃からしつける必要があります。家に迎えたその日からしつけをするようにして、自分が住んでいる社会に慣れさせてあげてください。活発で甘えん坊なところもあるので、しつけに苦労するかもしれませんが、飼い主さんのいうことを聞かなければいけないと教えて、根気よく訓練してあげてください。教え初めは大変かもしれませんが、アイリッシュ・セターは賢いので1度覚えたことは忘れません。アイリッシュ・セターに向き合って教えてあげましょう。猫や小動物に飛びついてしまわないように、子犬の頃から社会を見せて、人に慣れさせたり、どんな音がするか、どんな動物がいるかわかってもらいましょう。その上で、リードを急に引っ張ったりしないように、飼い主さんと同じペースで歩く事を教えてあげましょう。そうやって自分の気持ちや行動をコントロールできるようになれば、赤ちゃんや子ども、家族以外の人間や他の犬とも上手に遊ぶことができると思います。

アイリッシュ・セターの美しい毛は保つのが大変なの？

アイリッシュ・セターの毛のお手入れは特別な事をする必要はありません。他の犬と同じようにブラッシングやシャンプーで美しい毛を守ってあげましょう。ブラッシングは2〜3日に1回してあげてください。特にお腹の部分は毛が長く汚れやゴミがつきやすいので、散歩から帰ってきたら確認して軽くブラッシングしてあげるのもいいかもしれません。換毛期（かんもうき）と呼ばれる、毛が生え変わる時期にはたくさんの毛が抜けるので、毎日ブラッシングしてあげてください。仕上げに獣毛（じゅうもう）ブラシを使うと光沢のある毛が保たれますよ。シャンプーは月１回で汚れが気になった時にするくらいで大丈夫です。プロに任せて綺麗にしてもらうのもいいかもしれません。アイリッシュ・セターは垂れ耳なので、耳の通気性が悪く汚れが溜まりやすくなっています。定期的に耳の掃除をしてあげましょう。お手入れはアイリッシュ・セターの体を綺麗にするだけではなく、大事なコミュニケーションの１つです。愛情込めてお手入れしてあげましょうね。

アイリッシュ・セターがかかりやすい病気は？

どんな動物でもかかりやすい病気があります。遺伝性のものもありますが、飼い主さんが気をつけて防ぐことができる病気もあるので紹介していきます。「胃捻転（いねんてん）」胸の大きな大型犬がなりやすく、胃が広がったりねじれたりしてしまう病気です。この病気は、１度にたくさんのエサを上げるのではなく数回に分けてあげたり、運動の前後4時間ほどはご飯を食べさせないようにしたり、早食いや水のがぶ飲みもさせないようにするなど、飼い主さんが気をつけるようにすることで防ぐことができます。「股関節形成不全（こかんせつけいせいふぜん）」骨の変形や関節の緩みなどで起こる病気で大型犬に多いです。ほとんどが遺伝性なので、親を確認しておくことと、子犬の時に太ってしまったり過度な運動をさせてしまうと起こりやすくなることもあります。運動や食事量は年齢に合わせて調節してあげてください。「進行性網膜萎縮症（しんこうせいもうまくいしゅくしょう）」光や映像を感じ取る網膜（もうまく）が変質して視力が落ちる病気で、遺伝性です。この病気は他の犬よりアイリッシュ・セターに多く、親の病気をしっかり確認する必要があります。この病気の怖いところは治療法がなく最終的には失明してしまうというところです。決定的な予防法もありませんが、今はビタミンEやアスタキサンチンが含まれているサプリメントなどを使うことが多いそうです。まずは親を確認し病院でも検査してもらい、この病気があるか、もしあればどのように過ごすのがいいかなど病院と話し合う必要があります。「外耳炎（がいじえん）」この病気は垂れ耳の犬種に多く、飼い主さんのケアで防ぐこともできます。定期的に綿棒とイヤーローションを使って掃除をしてあげてください。耳垢が多かったりいつもより臭いがするなど何か変化があったら病院で診てもらうようにしましょう。アイリッシュ・セターの寿命は12〜15歳と、大型犬の中だと少し長いかなというくらいです。長いとはいっても人間に比べると短いですよね。いつまでも健康で愛情たっぷりに過ごしてあげてください。