イリオモテヤマネコ
イリオモテヤマネコ
イリオモテヤマネコ
あなたはイリオモテヤマネコという、沖縄県の西表島(いりおもてじま)だけに生息している珍しいヤマネコを知っていますか? イリオモテヤマネコは生息数が少なく、絶滅の恐れがあることから絶滅危惧種と国の特別天然記念物に指定されています。 そんなイリオモテヤマネコは実は発見されてから50年ほどしかたっていない、いまだに謎が多い動物でもあります。 この記事でイリオモテヤマネコにはどんな特徴や秘密があるのか、一緒にのぞいていきましょう!
イリオモテヤマネコ 基本情報
哺乳綱(ほにゅうこう)食肉目-ネコ科-ベンガルヤマネコ属
体長50~60cm 体重3~4kg
イリオモテヤマネコは沖縄県の西表島のみに生息する、日本固有亜種の野生のネコ科動物です。被毛(ひもう)は淡褐色で暗褐色の斑点模様が全身に入り、後頭部から額にかけてと眼のまわりには特徴的な白色と黒色のしま模様が入ります。
イリオモテヤマネコは基本的に単独(1頭)で暮らし、交尾をする時だけオスとメスが一緒に行動します。12~3月頃に繁殖期(はんしょくき)を迎えて4~6月頃に出産と子育てを行い、10~11月頃になると子どもが独立していきます。妊娠期間(にんしんきかん)は約65日、1回の出産で1~3頭の子どもを産むのではないかと考えられていますが、いまだにはっきりとわかっていない点も少なくありません。
なおイリオモテヤマネコは基本的に夜行性だとされていますが、昼間に活動して狩りを行なうこともあるようです。
イリオモテヤマネコ Q&A
イリオモテヤマネコの名前の由来は何?
イリオモテヤマネコという名前は、西表島で発見されたヤマネコというところから名付けられました。
実は当初、イリオモテヤマネコを発見した動物作家・戸川幸夫氏に敬意を表して「トガワヤマネコ」と名付けてはどうか、という案もあったそうです。しかし戸川氏はその案を辞退し、イリオモテヤマネコと同じく日本の離島(長崎県の対馬)に生息するヤマネコ「ツシマヤマネコ」に習い、西表島に生息するヤマネコを「イリオモテヤマネコ」と名付けたそうです。
なおイリオモテヤマネコは英語で「Iriomote Cat(イリオモテキャット)」、学名は「Prionailurus bengalensis iriomotensis」、漢字では「西表山猫」と表現されます。
ちなみにイリオモテヤマネコが発見されたのは1965年、正式に新種の動物として発表されたのは1967年のことです。それまでイリオモテヤマネコは「ヤマピカリャー(山で光るもの)」「ヤママヤー(山にいる猫)」「メーピカリャー(目がぴかっと光るもの)」といった方言(別名)で呼ばれていたそうです。
イリオモテヤマネコはどうしてそこに住んでいるの?
イリオモテヤマネコは沖縄県にある離島・西表島にだけ生息している、世界で一番分布域(ぶんぷいき)のせまい野生ネコ科動物です。島の中でも標高200m以下の低地部分にあるシイやカシが生えた林やマングローブ林、湿地林、海岸林などさまざまな植物が生えていて水が豊富にある場所を好むといわれています。
西表島は面積が約284ヘクタール、周囲が約130kmで大体東京23区の半分くらいの大きさがある島です。島の面積のうち90%が原生林で覆われている自然豊かな島で、沖縄県の中で見れば沖縄本島の次に大きな島でもあります。しかし肉食動物であるヤマネコが生息するには十分な広さがある島とはいえず、西表島はヤマネコ(ネコ科の動物)の生息地としては世界最小の島ということで有名です。西表島の面積や生息する動物などの環境から考えると、イリオモテヤマネコは多くても250頭程度しか生息できないものと考えられています。
ではなぜ、イリオモテヤマネコはこれほど小さな島に生息しているのでしょうか。それは今から20万年ほど前、西表島が大陸と陸続きだった時に渡ってきた一部のヤマネコが西表島に取り残されてしまったからではないかと考えられています。そして西表島の環境に適応し、独自の進化をとげたヤマネコがイリオモテヤマネコという訳です。そんなイリオモテヤマネコは非常に原始的なヤマネコとされていて、時に「生きた化石」と呼ばれることもあります。
なおイリオモテヤマネコは発見されてからしばらくの間は独立種だと考えられていましたが、今はベンガルヤマネコの亜種だと考えられています。
イリオモテヤマネコは何を食べているの?
野生のイリオモテヤマネコは哺乳類(クマネズミ、ヤエヤマオオコウモリなど)鳥類(シロハラクイナやアオバズクなど)やは虫類(キノボリトカゲ、サキシママダラなど)、両生類(サキシマヌマガエル、ヤエヤマハラブチガエルなど)、魚類や甲殻類(テナガエビ、カニなど)、昆虫類(バッタやコオロギなど)などさまざまな動物を捕まえて食べています。
イリオモテヤマネコはネコの仲間にしては珍しく、水を怖がらないことが知られています。むしろ魚類や甲殻類を捕まえるために、川や沢に積極的に飛び込む姿が目撃されています。
イリオモテヤマネコとペットのネコにはどんな違いがあるの?
イリオモテヤマネコとペットのネコ(以下イエネコ)には、どんな違いがあるのでしょうか?
わかりやすい違いとしては、耳の形と模様があげられます。 イリオモテヤマネコの耳は丸い形をしていますが、イエネコの耳は先がとがった三角形になっていることがほとんどです。またイリオモテヤマネコの耳の裏には、「虎耳状斑(こじじょうはん)」と呼ばれる白い模様があります。これはイエネコには見られない、野生のネコ科動物だけに見られる特徴です。
その他の違いとしては、しっぽの形と鼻の大きさがあげられます。 イリオモテヤマネコのしっぽは毛が長く、イエネコと比べると太くて長く見えます。イリオモテヤマネコはこのしっぽと筋力を生かし、上手に木登りや狩りをします。また鼻はイエネコと比べると幅が広く、トラやライオンに近い形をしています。
イリオモテヤマネコはどんな鳴き声なの?
イリオモテヤマネコの子ネコはイエネコと似た「ミャオ」「ニャオ」といったかわいらしい声で鳴きますが、大人はかなり野太い「ニャー」や「ガオー」というほえ声に近い声で鳴いたり、うなり声をあげたりします。
とはいえ野生のイリオモテヤマネコはめったに鳴かず、彼らが鳴くのは威嚇する時や繁殖期など限られた時だけです。そのため西表島の原生林の中で野生のイリオモテヤマネコを探しても、なかなか見つけることができないそうです。
イリオモテヤマネコを保護するための施設があるって本当?
本当です。 西表島にある「西表野生生物保護センター」はイリオモテヤマネコをはじめとした、西表島の貴重な野生生物を保護するための活動拠点として環境省が整備した施設です。
西表野生生物保護センターではケガや病気になってしまったイリオモテヤマネコを保護・治療し野生に復帰させる活動や、西表島を訪れた人たちに西表島の自然や野生生物、そしてその保護への関心を深めてもらうといった活動をしているそうです。
イリオモテヤマネコはペットとして飼えるの?
ところで個人がペットとして、イリオモテヤマネコを飼うことはできるのでしょうか?
イリオモテヤマネコは国の「特別天然記念物(とくべつてんねんきねんぶつ)」に指定されていて、厳重に保護されています。そのため日本国内においてイリオモテヤマネコを捕まえること、そしてペットとして飼うことはできません。万一イリオモテヤマネコを意図的に傷つけたり殺したりした場合は法律違反となり、懲役刑(ちょうえきけい)もしくは罰金刑(ばっきんけい)に処される可能性があります。
もし西表島でケガをしている、もしくは死んでいるイリオモテヤマネコを見つけた時は西表野生生物保護センターの「ヤマネコ緊急ダイヤル」に連絡をして指示を受けるようにしてください。
イリオモテヤマネコはどのくらい生きるの?
イリオモテヤマネコの寿命はよくわかっていませんが、野生下でも飼育下でも10年未満だと考えられています。
飼育下で一番長生きしたイリオモテヤマネコは西表野生生物保護センターで飼育されていた「W-48」、「よん」という愛称のオスの個体です。よんは生後約5カ月で交通事故にあってケガをしてしまい、動けなくなっているところを保護されました。野生復帰を目指してリハビリしていましたが後遺症が残ってしまったため、センター内で14年8ヶ月と3日の間終生飼育されていたそうです。
イリオモテヤマネコの平均的な寿命が10年未満であると考えられている中、推定15年1ヶ月まで生きたよんは非常に長生きな個体だったといえるでしょう。
イリオモテヤマネコを見られる場所ってあるの?
イリオモテヤマネコはとても貴重で個体数が少ない動物であるため、令和3年現在動物園などの施設では飼育されていません。
イリオモテヤマネコが飼育された例は少ないものの、1966年に捕獲されたオス1頭とメス1頭は1967年から少しの間は動物学者・今泉吉典氏の自宅で、その後約2年の間は戸川幸夫氏の自宅で、さらに1969年から1975年にかけての間は上野にあった国立科学博物館の研究部で飼育されていたそうです。この時飼育されていたオスの「リオ」は仮はく製(かりはくせい)に、メスの「モコ」は本はく製(ほんはくせい)に姿を変えて今も国立科学博物館に保存されています。
また西表野生生物保護センターにおいては、ケガや病気をして保護されたイリオモテヤマネコが飼育されていることがあります。ただしあくまで野生復帰を目指すための保護であり、人に慣れてしまうと困ることからイリオモテヤマネコの一般公開は行っていないそうです。なおセンター内には先ほどお話したイリオモテヤマネコ、「よん」の剥製が展示されています。
なおイリオモテヤマネコと同じく日本に生息するヤマネコ、「ツシマヤマネコ」はよこはま動物園ズーラシアや井の頭自然文化園などいくつかの動物園で飼育されています。
イリオモテヤマネコにはどんな敵がいるの?
西表島で暮らすイリオモテヤマネコには、天敵といえる天敵はいないといわれています。
そんな向かうところ敵なしに思えるイリオモテヤマネコにとって、唯一かつ最大の敵は私たち人間です。 イリオモテヤマネコは特別天然記念物かつ絶滅危惧種に指定されて厳重に保護されていますが、その生息数は減少傾向にあると考えられています。イリオモテヤマネコが数を減らしてしまっている原因は、主に環境破壊と交通事故にあります。
西表島では原生林や湿地が開発されてしまっていて、イリオモテヤマネコが住める場所や食べ物を探す場所がどんどん減っています。また交通事故の被害にあうことも多く、ほぼ毎年1頭以上のイリオモテヤマネコが交通事故の犠牲になってしまっています。
そのため西表島では道路の制限速度を40kmに設定し、イリオモテヤマネコがよく見られる場所には「ヤマネコ注意」の看板を設置しています。また一部の道路には音と振動でイリオモテヤマネコに車の存在を知らせる「ゼブラゾーン」と呼ばれるでこぼこをつけたり、道路下に道路を横切らずに通行できる「アンダーパス(ネコボックス)」と呼ばれる動物用のトンネルを設置したりとさまざまな対策を行っています。
今も豊かな自然が残り、多くの野生動物が生息する西表島は観光地としてとても魅力的な場所です。西表島を訪れる際はイリオモテヤマネコやカンムリワシなどの動物たちに配慮して、決められた速度で注意しながら車を走らせたいものです。
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イリオモテヤマネコ 種類
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セルカークレックス
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ソマリ
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ターキッシュアンゴラ
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ターキッシュバン
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デボンレックス
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トイガー
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トンキニーズ
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ネコ
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ブリティッシュ・ショートヘア
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ボンベイ
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マンクス
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マンチカン
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ミヌエット
さてここで問題です。マンチカンとペルシャの良いとこ取りをした、人気急上昇中のネコといえば?そう、ミヌエットです! 初めてこの名前を聞いた!という方もいるのではないでしょうか?実はこのネコ、最近登録されたばかりで新しめの品種なんです。 そしてその名前については少し面白い歴史も隠されています。そんなまだ見ぬミヌエットの世界について、早速ご案内しましょう!
メインクーン
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ラガマフィン
今回このページでご紹介するのは「ラガマフィン」というネコです。ネコ種としてはまだ新しく、お家で見かけることはあまりないかも知れませんね。 第一印象は柔らかそうなふわふわのネコといった感じですが、実はこの外見、ラグドールと大きな関係があるんですよ。 ラガマフィンとラグドールの関わりも含めたネコの秘密、こっそり覗いてみませんか?
ラグドール
ふわふわの毛並みにモフモフしたしっぽが特徴的なネコといえば・・・ そう!ラグドールです!触り心地がよさそうな体に、キレイな青い瞳はなんともかわいらしいネコですよね。 そんなラグドールについて、少し意外な歴史や名前のひみつなどを探ってみませんか?
ラパーマ
皆さんはラパーマというネコを知っていますか?まだ日本での知名度は低く、初めて名前を聞いた!という方も多いはず。 ここで簡単にご説明すると、見た目はセルカークレックスによく似ている巻き毛ネコですが、「世界一美しい猫たち、ラパーマ」という写真集も存在し、その外見に見惚れてしまう方もいるんだとか。 そんなラパーマの魅力的な特徴や秘密について、早速探りに行きませんか?
ロシアンブルー
高級じゅうたんのような毛並みと、気品あふれるスラリとした体型。皆さんも一度は耳にしたことがあるのでは? その名もネコのロシアンブルーです!ペットショップでも見かけることが多いのでメジャーな品種のひとつになります。 一見すると冷静で何事にも応じない落ち着いた雰囲気の持ち主に見えるのですが、実はロシアンブルーには・・・ 意外な性格が隠れているのです!
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イリオモテヤマネコ 参考文献
- 今泉 忠明(2004年)『野生ネコの百科』データハウス
- 横塚眞己人(1994年)『イリオモテヤマネコ―亜熱帯の島に野生猫を追う』ブロンズ新社
- 環境省「イリオモテヤマネコ飼育下個体の死亡について」 http://kyushu.env.go.jp/okinawa/pre_2011/0413a.html
- 国立科学博物館「イリオモテヤマネコ」 https://www.kahaku.go.jp/special/past/nihon/infomation/chapter_1/neko.htm
- 未来をつくるSDGsマガジン ソトコト「連載 | 標本バカ | 64 イリオモテヤマネコ礼賛」 https://sotokoto-online.jp/740
- 環境省 アクティブ・レンジャー日記 [九州地区]「2017年02月08日 イリオモテヤマネコ調査体験会」 https://kyushu.env.go.jp/blog/iriomote/a-iriomote/index_3.html
- 環境省 自然環境局 生物多様性センター「イリオモテヤマネコの交通事故 田口麻子(西表野生生物保護センター)」 https://www.biodic.go.jp/relatedinst/18th/P-6.pdf
- Wikipedia「イリオモテヤマネコ」 https://ja.wikipedia.org/wiki/イリオモテヤマネコ
- note「イリオモテヤマネコ:その偶然と必然 久保田康裕(琉球大学理学部 久保田研究室 シンクネイチャー)」 https://note.com/thinknature/n/nb0bd35c2133f
- 沖縄県 環境部 自然保護課「3.3 哺乳類」 https://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/shizen/hogo/documents/honyuurui.pdf
イリオモテヤマネコ 使用メディア紹介
生息地
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食べ物
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