ヨタカ
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あなたは日本にも生息している、「ヨタカ」という野鳥を知っていますか? ヨタカは夜行性なうえに地味な色をしていることから、実際に見たことがあるという人は少ないことでしょう。 一見地味に見えるヨタカですが、実は驚くほど口が大きく開く、ヒゲが生えているなど、なんとも面白い特徴を持った鳥でもあります。 ヨタカにはどんな特徴や秘密があるのか、この記事で一緒にヨタカの暮らしをのぞいていきましょう。
ヨタカ 基本情報
鳥綱ヨタカ目-ヨタカ科
体長29cm
ヨタカは日本をはじめとした世界の広い地域で観察される、ヨタカ目に属する野鳥の1種です。体の色は黒褐色(こっかっしょく)や灰褐色(はいかっしょく)で、全身に黒色の模様が入ります。地味に見える体の色は保護色になっていて、地面にうずくまると地面と同化して見えたり、木の枝にとまると木のコブのように見えたりして、敵から身を守るために役立っています。大きな特徴は口が大きく開くことで、口の端が裂けてしまうのではないかと思うほどくちばしが大きく開きます。また他の鳥と違い、木の枝に平行に止まることも特徴といえるかもしれません。
ヨタカは6月頃になると巣を作らず、地上に直接産卵します。メスは1回の産卵で通常2個の卵を産み、卵はメスが中心になってあたため、19日ほど経つとふ化します。ヒナはふ化後15日ほどで空を飛べるようになり、数日後には巣立っていきます。
ヨタカ Q&A
ヨタカの名前の由来は何?
ところでヨタカという名前には、どんな由来があるのでしょうか?
残念ながら、ヨタカの名前について具体的な由来や歴史ははっきりとわかりませんでした。しかし漢字では「夜鷹」と表現することから考えると、「夜に行動するタカのような鳥」ということでヨタカという名前がつけられたのかもしれません。
なおヨタカは英語で「Grey nightjar」、学名は「Caprimulgus indicus」と表現されます。日本では別名「蚊吸い鳥(かすいとり)」、「蚊母鳥(ぶんぼちょう)」と呼ばれることもあります。
ヨタカはどうしてそこに住んでいるの?
ヨタカは日本、インド、ネパール、東南アジア、ロシア、中国、朝鮮半島、マレー半島などに生息する渡り鳥です。
ヨタカは繁殖期の間を日本や中国、朝鮮半島で過ごし、冬になると東南アジア(インドシナ半島やマレー半島)で越冬をします。日本には4月頃に九州より北の広い範囲に夏鳥としてやってきて、標高2,000m以下の山地に住み着きます。深い森よりは明るい森林や人の手が入った里山など、地面が乾いた場所を好む傾向があるようです。
ヨタカがこれらの地域に住んでいるのは冬の間は暖かい場所で過ごし、夏の間は競争相手の少ない場所で十分な食べ物を確保するためだと考えられています。空を飛べる鳥にとっても長距離を移動するのはとても危険が多く、大変なことです。それでも渡り鳥は移動した方がより質が良い食べ物をたくさん確保できることを知っているため、季節ごとに渡りを繰り返します。
ヨタカは何を食べているの?
ヨタカは肉食性の動物で、主にガやカメムシ、バッタ、ガガンボなどの昆虫類を食べています。
ヨタカはフクロウのように音も立てずに空を飛び、口を大きく開けて口の中に入ってきた虫を吸い込むようにして食べます。基本的には飛びながら食事をしますが、地面に下りて虫を捕まえることもあるようです。
ヨタカの鳴き声は特徴的って本当?
本当です。 ヨタカは特徴的な声で鳴くことが知られていますが、性別による鳴き声の違いがあるかどうかはわかっていません。
一番有名な鳴き声は「キョキョキョキョキョ」という鳴き声で、この鳴き声はなわばりの主張をする時の鳴き方だと考えられています。近くに他のヨタカがいる時は先ほどの鳴き声ではなく、「ポウポウポウ」や「コウコウコウ」と聞こえる鳴き方をすることもあるようです。また興奮した時や警戒している時は「ゴア」「ゲッ」といった、短い声で鳴くこともあります。
ヨタカを観察するにはどうしたらいいの?
ヨタカは夜になると活発に活動する、夜行性の動物です。夜に足場が悪い森の中に入り、ヨタカのように暗闇に紛れてしまう色合いの野鳥を探し出して観察するのは、非常に危険で難しいことです。
そのためヨタカを観察したい時は明け方にヨタカの餌となる昆虫がたくさんいる場所(街灯や自動販売機など)に張り込む、ヨタカの鳴き声が聞こえる場所でヨタカが卵を産みそうな場所を探してそこに張り込む、といった努力が必要となります。ヨタカは非常に警戒心が強いため、長期戦で挑むか偶然を狙わないとなかなかお目にかかれません。
もし幸運にも間近でヨタカを観察する機会に恵まれたら、驚かさないようにそっと観察してください。
ヨタカのくちばしにはなぜヒゲが生えているの?
ヨタカの顔をじっと見てみると、他の鳥ではあまり見られない物が生えています。そう、なんとヨタカのくちばしの周りにはヒゲがたくさん生えているのです。それではなぜ、ヨタカにはヒゲが生えているのでしょうか?
実はヨタカのヒゲには網のような役割があり、大きく口を開けて小さな虫を捕まえる時に役立っていると考えられています。昆虫を食べるために口が裂けそうなほど大きくくちばしを開けるところも、くちばしの周りにヒゲをはやしているところも、ヨタカならではの面白い特徴だといえます。
江戸時代にあった「夜鷹蕎麦」ってどんなもの?
江戸時代には「夜鷹蕎麦(よたかそば)」もしくは「夜鳴き蕎麦(よなきそば)」と呼ばれる蕎麦屋がいたそうです。
夜鷹蕎麦とは“夜に町で蕎麦を売り歩く商人”、もしくは“その商人が売る蕎麦そのもののこと”を示します。この名前は夜になると活動するヨタカの習性から名付けられたとも、夜に街で客引きをしていた娼婦のことを俗に夜鷹と呼び、彼女たちが好んで食べていたことから名付けられたともいわれています。とても安価で手軽に食べられた夜鷹蕎麦は庶民にはなじみ深い存在だったようで、歌舞伎や落語にもよく登場します。
ちなみに夜鷹蕎麦と同じように、夜間に売られたうどんのことは夜鳴きうどん(夜叫きうどんとも)と呼んだそうです。
ヨタカはペットとして飼えるの?
ところで個人がペットとして、自宅でヨタカを飼うことはできるのでしょうか?
日本国内に生息しているヨタカは捕獲が許可されている狩猟鳥獣(しゅりょうちょうじゅう)ではないため、狩猟免許を持っているかどうかに関わらず捕獲することはできません。どうしても捕獲したい時は環境省や住んでいる都道府県知事に許可を求めることになりますが、ペットとして飼う目的で許可が下りることはほぼないと考えられます。
ただし同じヨタカ目でオーストラリアに生息する、「オーストラリアガマグチヨタカ」はペット向けに少数流通しているようです。オーストラリアガマグチヨタカを飼育する際は特に許可や申請は必要ないと考えられますが、簡単に飼える鳥だとは考えない方が良いでしょう。
オーストラリアガマグチヨタカを飼う時はまず猛禽類(フクロウやタカなど)の飼い方をしっかり学び、珍しい動物(エキゾチックアニマル)を診察・治療できる獣医師を探しておきましょう。エサにはマウスやウズラ、ヒヨコなどを与えることになるため、毎日血や内臓を見る覚悟を持っておく必要もあります。
ヨタカが見られる動物園はあるの?
令和3年現在、ヨタカを飼育している動物園はありません。ときおりケガや病気で弱ったところを保護され、一時的に飼育されることはあるようです。
ちなみに先ほど「ヨタカはペットとして飼えるの?」でお話しした、「オーストラリアガマグチヨタカ」は東京都の多摩動物公園、栃木県の那須どうぶつ王国、兵庫県の神戸どうぶつ王国などで飼育されています。
オーストラリアガマグチヨタカは見た目がフクロウに似ているもののヨタカの仲間で、大きく口を開けたところが「がま口」に似ていることからこの名前が付けられたようです。主食はヨタカと同じ昆虫ですが、小型の哺乳類や鳥類、爬虫類なども食べます。エサを食べる姿がかわいらしいことから、動物園では隠れた人気者になっているようです。
ヨタカはどのくらい生きるの?
ヨタカの寿命について調べましたが、残念ながら信頼できるデータや回答が見つかりませんでした。
野生動物の寿命、特に空を自由に飛べる鳥の寿命を調べるのは簡単なことではありません。なぜなら野生動物の寿命を調べようと思ったら、その動物が生きている間見失うことなく、ずっと追いかけ続けなければならないからです。なお資料によって記述がまちまちでしたが、同じヨタカ科の鳥である「ヨーロッパヨタカ」の寿命は4~10年とされているようです。
ヨタカにはどんな敵がいるの?
ヨタカの天敵はイタチやヘビ、ネコなどの肉食動物だといわれています。ヨタカは巣を作らず地上に卵を産むことから、卵を産んでいる時や抱いている時に、これらの動物に食べられてしまうことがあるようです。
しかしヨタカにとって、最大の敵は私たち人間です。ヨタカは1970年代までは普通に見られる身近な鳥の1種でしたが、1980年以降になると生息環境が悪化し、なかなか見られない鳥になってしまいました。ヨタカが数を減らしている原因としては冬を過ごす東南アジアにおける森林の減少、夏を過ごす日本における里山の荒廃(こうはい)が影響しているのではないかと考えられています。ヨタカの数は年々減少していて、2012年には保護が必要な動物として「準絶滅危惧種」に指定されています。
ヨタカが再び身近な存在になるように、日本の自然や環境にも目を向けていきたいものですね。
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ヨタカ 参考文献
- 認定NPO法人バードリサーチ「ヨタカの基礎的生態とモニタリング調査」 https://www.bird-research.jp/1_event/aid/img/BR-aid2012plans.pdf
- 認定NPO法人バードリサーチ「バードリサーチニュース 生態図鑑 ヨタカ」 https://db3.bird-research.jp/news/201804-no3/
- 旭川市旭山動物園「ゲンちゃん日記・令和2年1月「『よだかの星』のヨタカを保護」」
- https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/news-blog/genchannikki/d068342.html
- Japaaan「江戸時代の麺といえば「夜鷹そば」名前の由来は遊女と鷹匠」 http://news.line.me/issue/oa-japaaan/21e3756f4149
- 倉敷市「倉敷市立自然史博物館友の会の行事」 http://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/tomoevent/2017/20170701yotaka/20170603.htm
- 国土交通省近畿地方整備局「食と農」の博物館「ヨタカ展~ヨタカを地域資源とした生物産業の創出~」 https://www.kkr.mlit.go.jp/asuwa/pdf/eco/hyouka2/hyoukasyo_06107-2.pdf
- 愛知県環境WEB情報提供システム「ヨタカ Caprimulgus indicus Latham」 http://kankyojoho.pref.aichi.jp/rdb/pdf/animals/species/cyou/ヨタカ.pdf
- 岐阜市「岐阜市の注目すべき生きものたち」 http://www.city.gifu.lg.jp/secure/26893/3honyurui-ichiran.pdf
- 日本野鳥の会京都支部「ヨタカ」 https://wbsj-kyoto.net/yachoulist/ヨタカ/
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