グレート・ピレニーズ

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pyreneittenkoira.jpg

突然ですが「アルプス村の少年と犬」、「名犬ジョリィ」、「ベル&セバスチャン」この3つに共通することは何でしょう?
答えは作中(さくちゅう)に「グレート・ピレニーズ」というイヌが登場することなんです!
グレート・ピレニーズの第一印象は、とにかく大きい!白いモフモフ!といった感じです。
日本では2022年、あの有名なスパイ漫画に出てくるイヌのモチーフになっているとか、いないとか・・・
いろいろな作中のモデルになるグレート・ピレニーズの秘密、ここで一緒に覗いてみませんか?

Ads

動物完全大百科記事へコメント

~基本情報~

原産国 フランス

体高 オス:69~81cm メス:64~74cm

体重 オス:約45kg メス:約39kg

グレート・ピレニーズの歴史は大変古く、数千年前に遊牧民(ゆうぼくみん)などが連れてきたチベタン・マスティフ系のイヌが祖先と考えられています。

グレート・ピレニーズは持ち前の力強さと大きな体を活かし、フランスとスペインの国境にあるピレネー山脈(さんみゃく)で飼育されていた羊をクマやオオカミなどの野性動物から守る護羊犬(ごようけん)として活躍(かつやく)していたそうです。

そして17世紀に入ると、従順な性格と見た目の優雅(ゆうが)さからフランス王室に気に入られ、フランス王室公式の番犬として迎え入れられました。ちなみに、イギリスのビクトリア女王もグレート・ピレニーズを飼育していたことがあるそうです。

ところが徐々に上流階級(じょうりゅうかいきゅう)の人々も番犬を必要としなくなり、その結果フランスでの人気も急降下(きゅうこうか)し、一時は絶滅寸前(ぜつめつすんぜん)にまで追いつめられていたといわれています。

この状況をなんとかすべく、立ち上がったのがグレート・ピレニーズの愛好家やブリーダーたりです。彼らはわずかながら山岳地帯(さんがくちたい)で生き残っていたグレート・ピレニーズを発見し、このイヌたちをもとにして改良繁殖(かいりょうはんしょく)を始めました。

一般家庭でも飼えるよう、強すぎる警戒心は取り除かれ、最初は白い被毛のみで交配を行なっていたものの、近年ではイエローやオレンジといったマーキングをもつ個体も交配に使われているそうです。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Great_Pyrenees_Sheep_Dog_Guarding_the_Flock_(5113678413).jpg

Ads

動物完全大百科記事へコメント

グレート・ピレニーズのQ&A

グレート・ピレニーズの名前の由来は?

「グレート」には大きいという意味、「ピレニーズ」はピレネー山脈からきているそうです。つまり、ピレネー山脈で活躍していた大きなイヌだから、この名前がついたと考えられています。ちなみにヨーロッパでは、ピレニアン・マウンテン・ドッグと呼ばれることもあるそうです。意味はグレート・ピレニーズとほぼ同じになります。

出典:https://pixabay.com/images/id-2536899/

グレート・ピレニーズのカラーバリエーションは?

体全体はホワイトですが、ときどきグレーや薄いイエロー、オレンジやウルフといったマーキングが耳やしっぽなどに出る場合もあります。

グレート・ピレニーズは何グループ?

JKC(ジャパンケネルクラブ)やFCI(国際畜犬協会)のルールに従った分け方の場合、「第2グループ」になります。

番犬や警察犬、また人間と一緒に作業を行なう「使役犬(しえきけん)」として活躍しているイヌが所属しています。

第2グループの犬種は、番犬としての役割を担うことが多いため、大きくて強靭(きょうじん)、そしてたくましい体をもつ犬が多いのが特徴的です。

基本的に警戒心(けいかいしん)が強く、攻撃性も強い性格の持ち主ですが、自分の家族や飼い主に対しては愛情深く接し、従順で忠誠心(ちゅうせいしん)が高い一面もあります。 そのため飼育の際は、飼い主さんが第一位のリーダーであることを認識させる必要がありますが、しっかりと信頼関係を築ければ、とても頼りがいのあるパートナーになってくれることでしょう。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Międzynarowa_Wystawa_Psów_Rasowych_w_Poznaniu_2018_-_55.jpg

グレート・ピレニーズの外見はどんな感じ?

顔はアーモンド形の目に真っ黒い鼻、小さな垂れ耳が特徴です。超大型犬なので体はとても大きく、真っ白い毛でおおわれている姿はまるで小さなシロクマのようです。モフモフ&ふわふわした被毛は、思わず触りたくなってしまいますね。

子イヌのグレート・ピレニーズはぬいぐるみのような本当に愛らしい姿をしていますが、成犬(せいけん)になると大人の女性1人分の体重にまで大きくなります。一人暮らしでも飼えなくはないのですが、かなり大きながっしり体型に成長するため、緊急時の移動などを考えるとできれば複数人で飼育した方が良いかも知れません。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pyrenean_Mountain_Dog_Kennel_Romtat_Farm.jpg

グレート・ピレニーズには後ろ足に狼爪(ろうそう)があるって本当?

そもそも狼爪とは前肢(ぜんし)と後肢(こうし)についている親指のことであり、イヌがオオカミだった頃の名残といわれています。

狼爪の役割は主に何かを食べるときや、山や岩場といった場所を登り降りする際に使われていましたが、最近はイヌを番犬としてではなく、家族の一員として迎え入れることが多いため、室内飼育が増えています。

そのため、狼爪の役目がほとんどなくなり、犬種標準(スタンダード)にそってブリーダーが生まれてすぐ切り落とすケースが増えています。

ところが前肢と後肢、両方の狼爪を残すことをスタンダードとしている犬種がいます。それがグレート・ピレニーズという訳です。(ちなみにブリアードというイヌも残すことが望ましいとされています。)

しかしこれはJKC基準のため、国によってはグレート・ピレニーズでも前肢と後肢、両方の狼爪を切り落とす場合も増えているそうです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:3_year_old_rescue_Great_Pyrenees_from_Cleveland_Ohio_USA.jpg

グレート・ピレニーズはよだれが多いって本当?

本当です。といっても実はグレート・ピレニーズだけでなく、基本的に大型犬はよだれが口元からたくさん出てくる特徴があります。特にマスティフ系と呼ばれる犬種や垂れ耳の犬種は、口角がゆるくてたるんでいるため、よだれがだらだらと出やすいようです。

ところが、同じ大型犬でもボルゾイのような口角が締まっている犬種は、口元からよだれがだらだら出ることはあまりないといわれています。

グレート・ピレニーズの口角は、どちらかというとゆるくてたるんでおり、祖先がマスティフ系ということもあってよだれが多く出てしまうのでは?と考えられています。 そのため飼い主さんは愛犬によだれかけをする、もしくはこまめに口周りを拭いてあげる必要があります。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Can_montaña_Pirineos.JPG

グレート・ピレニーズを購入するにはどれくらいかかるの?

グレート・ピレニーズはペットショップだと20万円前後ですが、なかには50万円以上で販売されているケースもあります。ブリーダーから購入する場合は30~50万円ほどです。購入を検討する際、お気に入りの子が見つかったら、一度見学に行くのが良いでしょう。

さらに、ブリーダーには上段資格をもつ「シリアスブリーダー」と呼ばれている方たちがいます。日本には約2万犬舎があるといわれていますが、そのなかでもシリアスブリーダーはわずか5%にも満たないそうです。そのため一般ブリーダーから購入するよりも、シリアスブリーダーから購入する方が高額になります。

出典:https://www.pexels.com/ja-jp/ja-jp/photo/10017998/

グレート・ピレニーズの性格や特徴は?

①優しくて温厚な性格!

基本的に穏やかで優しい性格の持ち主です。飼い主さんや家族はもちろん、一緒に暮らしているペットに対しても温かく接してくれます。飼い主さんには甘えん坊な一面を見せてくれる一方、警戒心が強く番犬として活躍していた歴史もあるため、知らない人には用心して吠えてしまうこともあるようです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Beautiful_(big!)_doggy_(50879166027).jpg

②涼しい山で暮らしていたから暑いのは苦手

もともとピレネー山脈で飼育されていたグレート・ピレニーズは、暑いのが苦手です。そのため、日本の夏は彼らにとって、とても辛い季節といえるでしょう。

注意すべきポイントとして、夏の時期はクーラーのきいた涼しい部屋で飼育をする、気温が最も高くなる時間の散歩や運動は禁止して、早朝や夜間といった涼しい時間を選んで散歩に連れていくなどがあります。

自宅や近所にドッグプールがあれば、そこで遊ばせてあげるのも良いでしょう。ただし水が苦手な子もいるので、無理矢理泳がせようとするのはやめましょう。

③しつけは子イヌのときから行ないましょう!

まずはじめに、イヌには「社会化期(しゃかいかき)」という時期があります。生後3週~12週齢がイヌの社会化期といわれており、この時期に行なうしつけは今後愛犬と楽しく暮らしていくためにも必ず必要なトレーニングといえるでしょう。

温和なグレート・ピレニーズでも、最低限のしつけはとても大切です。もともと賢いので、万が一しつけを怠る(おこたる)と、実は独立心(どくりつしん)が強いグレート・ピレニーズはいうことを聞かなくなってしまう可能性があります。ここでは覚えさせたい基本的なしつけについてご紹介します。

⑴トイレトレーニング

トイレは指定の場所で上手にできたとき、褒めて覚えさせましょう。

⑵甘噛みをやめさせる

子イヌのときは良いのですが、成犬で甘噛みされるとケガのもとになってしまいます。人の手の代わりに噛んでも良いおもちゃを与え、もし飼い主さんの手を甘噛みしてきたら怒鳴らず低い声で「痛い」と一喝(いっかつ)した方が良いでしょう。

出典:https://pixabay.com/images/id-4352728/

⑶人に触られることに慣れされる

体調不良になったときはどうしても動物病院へ行かなければなりません。そのとき知らない人に体を触られても暴れないよう、普段から飼い主さんがたくさん愛犬とスキンシップをとって、人との触れ合いに慣れさせるのがベストです。

出典:https://unsplash.com/photos/Ziuo9zxhTog

⑷クレートに入っても怖くないことを覚えさせる

動物病院に行くとき、あるいは災害が起きたときはどうしてもクレートの中へ愛犬に入ってもらう必要があります。グレート・ピレニーズは体が大きいので、自分から入ってくれるようしつけるのが大切です。飼い主さんの指示で上手に入ってくれたら、おやつのご褒美をあげて、クレートの中は怖くないんだ!と認識させるのがコツです。

⑸散歩で外の世界に慣れさせる

散歩はイヌを飼うにあたって、必要不可欠なことです。そのため生後3ヶ月頃までは飼い主さんが抱っこして外に連れ出すことから始めてみましょう。少しずつ外の世界に慣れてきたら、リードを繋いで自分の足で歩いてもらうことを覚えさせます。歩くときもただ引っ張れば良いのではなく、最初は飼い主さんが愛犬の歩調にあわせてあげることからスタートさせるのがベストです。

その他「コマンドトレーニング(お座りや待てといった指示に従わせること)」や「お留守番に慣れてもらう」といったことも大切なのですが、社会化期が過ぎてからでも覚えさせることができますので、子イヌのうちにやるべきことから始めていきましょう。

信頼できる人間に対しては従順なグレート・ピレニーズですが、自分より格下(かくした)だと判断された場合、指示を出しても従ってくれないので日常生活に大変な支障が出てしまいます。体が大きく力も強いので、振り回されっぱなしになってしまう可能性もあります。

そして万が一誰かに噛みついてしまったらトラブルの原因にもなりかねません。成犬になってからしつけをやり直すのは大変なので、子イヌのうちにやるべきことから始めていきましょう。

もし超大型犬のしつけは初めてで自信がないという方は、超大型犬のしつけが得意なドッグトレーナーに相談してみるのもオススメです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Female_Pyrenean_Mountain_Dog.jpg

グレート・ピレニーズに必要な運動量やお手入れ方法は?

イヌは犬種を問わず、散歩を必要とする動物です。犬種によって散歩時間や回数は異なりますが、グレート・ピレニーズは時間を分けて60分を1回ずつ、合計2時間の散歩が必要です。

グレート・ピレニーズは被毛が多いので、ピンブラシとコームを使って毎日お手入れをしてあげるのがベストです。シャンプーは月に1度で大丈夫ですが、春と秋の換毛期(かんもうき)は抜け毛が増えるので、2~3週間に1度のペースでシャンプーをしてあげましょう。

出典:https://www.pexels.com/ja-jp/ja-jp/photo/213232/

グレート・ピレニーズのかかりやすい病気ってなに?

グレート・ピレニーズに限らず、ほとんどの犬種でイヌは人間よりも体毛が多く、その分皮膚がデリケートなため「皮膚病(ひふびょう)」になりやすいといわれています。

また顔の作りから眼球が人間よりも前に出ていることも多いため、目を怪我してしまう、もしくは遺伝的な理由が原因で「眼疾患(がんしっかん)」にもなりすいです。

上記の特徴を踏まえた上で、ここではグレート・ピレニーズが注意したい病気について詳しく見ていきましょう。

まずグレート・ピレニーズは皮膚病である「アトピー性皮膚炎(あとぴーせいひふえん)」、眼疾患である「眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)」、そして「胃捻転(いねんてん)」にかかりやすいといわれています。

①アトピー性皮膚炎

ダニや花粉あるいはハウスダストといったアレルゲン物質が原因で皮膚にアレルギー反応が起き、顔やお腹、脇や肛門周りといった部位に強いかゆみが発生してしまう病気です。

比較的3歳以下のイヌがかかりやすいといわれていますが、地面に体をこすりつけることが多くなったり、自分の体を噛んだり舐めたりする行動が頻繁に見られる場合、この病気にかかっている可能性があるので、動物病院での診察をオススメします。

基本的には飲み薬や塗り薬で治療していくケースが多いです。

②眼瞼内反症

瞼(まぶた)が内側にめくれてしまった状態の病気です。瞼がめくれるとまつ毛などが角膜や結膜に刺激を与えてしまうため、それがきっかけで結膜炎(けつまくえん)や角膜炎(かくまくえん)を引き起こす原因ともなります。

初期の場合、目薬やまつ毛を抜くことで治る場合もありますが、改善が見られないときは瞼の矯正手術を行ないます。

眼瞼内反症は生まれつきにより発症することが多いので、具体的な予防方法は今のところ見つかっていません。ですので瞼に少しでも異常が見つかったら、早めに動物病院へ行った方が良いでしょう。

③胃捻転

捻転とは「ねじれて向きが変わる」という意味があります。つまり、胃捻転とは胃がねじれてしまう病気のことです。何らかの原因で胃がねじれてしまうと、食べたエサや空気が腸に送られなくなり、胃がパンパンに膨らんでしまいます。

胃が膨らみ過ぎると周りの臓器や血管などを圧迫(あっぱく)し始め、最悪の場合死んでしまうこともある大変恐ろしい病気です。また、胃捻転は大型犬や、胸が深いイヌに発症することが多いといわれています。(※胸が深いとは、胸の縦幅が横幅よりも大きいことです)

最初にお話しした何らかの原因についてですが、残念ながらはっきりしたことは分かっていません。胃捻転の具体的な予防法は、食後すぐに運動させない、一気にたくさんのエサや水を与えない、など胃に負担がかかる行為を避けるのが重要となります。

お腹が異常に膨らんでいる、吐きたそうなのに上手く吐き出せていない、普段よりもよだれが大量に出ている、といった症状が表われたら急いで動物病院に連れて行きましょう。

出典:https://pixabay.com/images/id-4138085/

グレート・ピレニーズの寿命は?

グレート・ピレニーズの寿命は10~12年といわれています。小型犬~大型犬までを含めたイヌ全体の平均寿命はおよそ14年なので、平均より短いといえるでしょう。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pyrenäen-Berghund_Rüde_2-jährig.jpg

Ads

動物完全大百科記事へコメント

参考文献

よくわかる犬種図鑑ベスト185 動物ジャーナリスト藤原直太朗

まるごとわかる犬種大図鑑 監修 若山動物院院長 若山正之

AMERICAN KENNEL CLUB
https://www.akc.org/dog-breeds/great-pyrenees/

THE KENNEL CLUB
https://www.thekennelclub.org.uk/search/breeds-a-to-z/breeds/pastoral/pyrenean-mountain-dog/

JAPAN KENNEL CLUB
https://www.jkc.or.jp/archives/world_dogs/2828

犬との暮らし大百科
https://www.anicom-sompo.co.jp/inu/

みんなの犬図鑑
https://www.min-inuzukan.com/

Pet Smile news forワンちゃん
https://psnews.jp/dog/

子犬のへや
https://www.koinuno-heya.com/

アイキャッチ画像
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Great_Pyrenees_Mountain_Dog.png