ヤギ
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突然ですが、ここでクイズです。2本のツノを持っていてメーメーと鳴く動物といえば誰でしょうか?正解はそう、ヤギです。 ヤギはとても身近で、さまざまな歌やキャラクターのモチーフにもなっている動物です。 牧場や動物園などで飼われていることも多いので、実際に見たことがある人も多いのではないでしょうか。 しかしそんな身近な動物であるヤギがどんな暮らしをしているのか、歴史を持っているのか意外と知らない人も多いことでしょう。 この記事ではヤギにはどんな特徴や秘密があるのか、面白いヤギの世界について説明していきます。
ヤギ 基本情報
哺乳綱鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)-ウシ科-ヤギ属
日本ザーネン種 体重・50~90Kg シバヤギ 体重・20~40Kg
ヤギは人類が最初に家畜化(かちくか)した反芻動物(はんすうどうぶつ)です。彼らはイヌの次に家畜化された動物で、家畜としての歴史はウシやヒツジよりもずっと古いと考えられています。ヤギは最初お肉を取るために飼われていましたが、途中から乳を取るためにも飼われるようになり、人類にバターやチーズなどの乳製品をもたらしたといわれています。
そんなヤギの祖先は西アジアの山岳地帯に生息している野生のヤギ、「ベゾアール」もしくは「パサン」だと考えられています。その後他の野生ヤギ(らせん状に伸びた不思議なツノを持つ「マーコール」、長くて一定の感覚で結節(けっせつ)があるツノをもつ「アイベックス」など)の血が混ざって、さまざまな種類に分かれていきました。その結果、現在家畜のヤギは500をこえる種類があるとされています。
ヤギは種類にもよりますが、小規模な群れを作って生活することが多いものの(特にオスは)単独で生活することもあります。そんなヤギの妊娠期間は約150日(5カ月)で、1回の出産で1~2頭の子どもを産みます。
ヤギは草食性の動物で、家畜のヤギは牧草やサイレージをメインに、濃厚飼料と呼ばれるトウモロコシや大豆、麦などを食べています。野生のヤギは木の葉っぱや枝、地面に生えている植物などその地域で入手できるあらゆる植物を食べています。
ヤギはペットとしても飼える
ヤギはお肉や乳を取るために飼われることが多い動物ですが、ペットとして飼うこともできます。 ペットとして飼われるのは「ピグミーゴート」や「シバヤギ」などの小型のヤギが多いようです。
ヤギはペットとして飼うととても人になつくうえ、とても賢いので芸なども覚えてくれます。しかしイヌやネコと違い、ヤギは法律上“ペット”ではなく“家畜”の扱いになります。そのためヤギを飼い始める時に加え、定期的に飼育している頭数や飼育状況などを住んでいる都道府県に届け出なければなりません。
その他にも家畜ならではの注意点もあるので、飼い始める前にヤギについてはもちろん、家畜に関する法律について下調べしておくことをおすすめします。
ヤギを家で飼う時は何をあげたらいいの?
ヤギは粗食に強く、植物だけ食べていても問題なく成長できる動物です。 しかしペットとして飼う時はヤギに食事の時間を楽しんでもらうため、そしてコミュニケーションを深めるためにも牧草(乾草)を主食に、ペレットなどの濃厚飼料やキャベツやニンジンなどの野菜(野菜くず)も与えると良いでしょう。それらのエサに加えて鉱塩(こうえん)と呼ばれる家畜用の塩のブロックを用意し、自由になめてミネラルを補給できるようにしておいてあげてください。
ヤギはあらゆる植物を食べるので、雑草や木が生えている広い敷地があれば首輪とリードをつけてそこに放しておくと良いでしょう。雑草を食べてもらえばエサ代がかからず、雑草を刈る手間も省けます。ただし冬場は植物の成長が遅くなったり枯れたりして、ヤギが食べられるものがなくなってしまいます。そのため必ず牧草も用意しておいてください。 またヤギはあらゆる植物を食べますが、スズランやスイセン、アジサイなど食べてはいけない植物もあります。植物を食べさせる場合はそういった中毒の原因となる植物が生えていないか、また除草剤などの農薬がまかれていないかあらかじめ確認しておくことが大切です。
ちなみに動物園で飼われているヤギはチモシー(イネ科の牧草)を中心に、草食動物用ペレットとニンジンやキャベツ、コマツナなどの野菜を食べています。休みの日には外に出して、通路などに生えている雑草を食べてもらうこともあります。
ヤギの飼育環境について
ヤギは室内でも屋外でも飼えますが、ペットとして飼う場合は室内で飼う人が多いようです。
室内で飼う場合はイヌと同じように、日頃は室内で自由にさせて夜はケージに入ってもらうような形で飼います。ヤギはきちんとしつければトイレの場所も覚えてくれますが、オシッコの量が多いのでトイレは大型犬サイズのものやプラ舟などを使った自作のものを使った方が良いかもしれません。
屋外で飼う場合は、家畜用の小屋や大きめの犬小屋などで飼います。どのような小屋でも構いませんが、雨や風がしのげて直射日光を避けられる頑丈な屋根が付いたものを選んであげてください。またヤギは意外とジャンプ力があるので、脱走しないように小屋は1.2~1.5mほどのフェンスで囲っておくと良いでしょう。
なおヤギはもともと単独でも群れでも暮らす動物であるためか、1頭で飼ってもあまりストレスを感じないといわれています。
その他の注意点
ヤギをペットとして飼う場合は、メスか去勢したオスのヤギがおすすめです。 なぜなら去勢していないオスのヤギは大人になるととてもツノが大きくなり、ニオイがきつくなるからです。どうしても去勢していないオスヤギを迎えたい場合は、特に頑丈な小屋を用意しておくことをおすすめします。
またヤギを飼っている人はとても少なく、ヤギの診察と治療ができる獣医さんも少ないと考えておいてください。普通の動物病院では診察を受けてもらえない可能性が高いため、ヤギを飼いたい人はあらかじめ家畜の診察ができる獣医さんを探しておきましょう。
ヤギ Q&A
ヤギの目はなぜ黒目が横向きなの?
ヤギの目を良く見てみると、黒目が貯金箱の口のような形で横向きになっています。私たち人間の黒目はまん丸ですが、なぜヤギの黒目は横向きなのでしょうか?
ヤギをはじめとした草食動物は野生において肉食動物に食べられてしまう、被捕食者(ひほしょくしゃ)の動物です。草食動物たちは肉食動物から身を守るために、いち早く肉食動物を見つけて逃げるために体のあちこちを進化させてきました。実は横向きの黒目は、その進化のうちの1つなのです。
黒目は正確には瞳孔(どうこう)と呼ばれていて、瞳孔は周りが明るい時は小さく、暗い時は大きくなって目の中に入る光の量を調整しています。草食動物の瞳孔は横長になっていることで、とても視野(しや・目を動かさずに見える範囲のこと)が広くなっているのです。
さらにヤギやウマなどは目が顔の横に付いているため、前を向いた状態でも体の真後ろ以外はほぼ見えているようです。人間の視野は100度程度ですが、一説にはウマやヤギの視野は約350度あるのではないかといわれています。
ヤギはなぜ高い所が好きなの?
ヤギは高いところが好きでソファに登ったり、ベンチに飛び乗ったりすることがあります。
なぜヤギが高い所を好むのかというと、野生のヤギは標高が高く、切り立った崖や足場の悪い岩場で暮らしているからだと考えられています。家畜のヤギもその性質を受け継いでいるようで、高いところを見つけると登りたがることが多いようです。ペットとして飼う時はブロックや土を積み、山を作ってあげると喜びます。
ヤギは本当に紙を食べるの?
有名な童謡「やぎさんゆうびん」のイメージで、ヤギはお手紙(=紙)を食べるというイメージがある人もいるのではないでしょうか。ではヤギは本当に紙を食べるのでしょうか?
実際ヤギは紙を見つけると、もぐもぐと食べてしまうことがあります。紙の原料は木材のパルプや植物の繊維なので、ヤギから見ると紙は食べられる物だと感じるようです。しかし紙にはのりや漂白剤などの薬品や印刷用のインクなど、何らかの薬品が含まれています。これらの薬品がヤギの健康に悪い影響を与えてしまう可能性があるため、食べるからといってヤギに紙をあげてはいけません。
ヤギは草だけ食べているのにどうして大きくなれるの?
ところでヤギはなぜ植物だけ食べていても、大きくなれるのでしょうか? それはヤギがウシの仲間で、私たち人間と違って胃が4つもあるからです。ヤギは胃の中でたくさんの微生物を飼っていて、食べた草からたんぱく質や炭水化物など体に必要な栄養素を取り出せます。そのため草だけ食べていても大きくなれるのです。
ちなみにヤギがいつも口をもぐもぐさせているのは反芻(はんすう)と呼ばれる行動で、胃の中の物を口に戻してもう一度噛み、消化吸収しやすい状態にするために行っています。
なおヤギはウシやウマよりも好き嫌いがなく、硬い植物でも平気で食べて栄養にしてしまいます。これは野生のヤギがもともとエサの少ない険しい山岳地帯に生息していたことから、粗食に耐える必要があったためだと考えられています。
ヤギのおっぱいは飲めるの?
ヤギが出すおっぱい(乳)はヤギ乳と呼ばれていて、牛乳と同じように飲めます。
実は日本国内にもヤギ牧場がいくつもあり、ヤギ乳やヤギ乳を使ったチーズやヨーグルトなどが牧場や通信販売で販売されています。ただし牛乳と比べると圧倒的に生産数が少ないため値段が高く、スーパーやコンビニなどでこれらの製品を見かける機会はほぼありません。
ヤギ乳は牛乳と比べると消化吸収がしやすく、アレルゲンになりにくいので牛乳アレルギーの人も飲める可能性があるといわれています。ただし独特のニオイとニオイを吸収しやすい特性があるため、牛乳に慣れている人がヤギ乳を飲むと臭いと感じることがあります。ヤギ乳のニオイを抑えるためには新鮮なうちに飲むことはもちろん、ヤギが食べる草の種類を変えると良いとされています。
意外と知られていませんが、メスのヤギは大人になっても急に乳を出しはじめる訳ではありません。乳はメスが子どもを育てるために出すものなので、妊娠と出産をしないと乳が出ることはないのです。つまりヤギに乳を出してもらうためにはメスのヤギを飼い、妊娠と出産をさせなければなりません。
ヤギのウンチはどうして丸いの?
あなたはヤギのウンチを見たことがありますか?ヤギのウンチはウシやウマと違い、丸くてころころとした形をしています。
なぜヤギのウンチが丸いのかというと、ウンチに含まれる水分が少ないからです。ウシのウンチには80~90%ほど水分が含まれていますが、ヤギのウンチには45%ほどしか含まれていません。
ヤギのウンチはニオイも少なくて取り扱いしやすいため、たい肥(肥料)の原料として使われています。乾燥させると良く燃えるため、モンゴルの遊牧民などは燃料としても使っているそうです。
ヤギにはなぜヒゲが生えているの?
ヤギのヒゲは種類や個体によって量の差がありますが、オスにもメスにも生えてくることが知られています。それではなぜ、ヤギにはヒゲが生えるのでしょうか?
実は残念なことに、今もその理由ははっきりとわかっていません。人間のヒゲもなぜ生えるのか、どういった意味があるのかわかっていないため、いつかその理由や意味が明らかにされることを期待したいものです。
ちなみにヤギのあごから首にかけて、もしくは耳のあたりにツノのようなひげのような不思議な物体が1本か2本垂れさがっていることがあります。これは「肉髯(にくぜん)」もしくは「肉垂(にくすい)」と呼ばれるもので、ヒゲと同じくなぜあるのかわかっていません。今のところ特に機能はないと考えられていますが、ザーネン種というヤギでは比較的良く見られることが知られています。
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ヤギ 種類
・日本ザーネン ・アルパイン ・トカラヤギ ・トッゲンブルク ・アングロ・ヌビアン ・シバヤギ ・ピグミーゴート ・アンゴラ ・カシミア など
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ヤギ 参考文献
- 天野 卓・一谷勝之・上埜喜八・大石孝雄・永島俊夫・横濱道成(2004年)『生物資源とその利用(第2版)』三共出版
- 中西良孝(2014年)『シリーズ〈家畜の科学〉 3 ヤギの科学』朝倉書店
- 中西 良孝(2009年)『ヤギ飼いになる―飼い方から実例、グッズ、ミルクレシピまで』誠文堂新光社
- 名古屋大学「古代家畜ヤギのDNA系統を解析」 http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20160601_num.pdf
- 京都市動物園「御意見箱に寄せられた御質問への回答 H28.7.21~H28.8.20」 https://www5.city.kyoto.jp/zoo/uploads/image/anone164.pdf
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