テナガザル
テナガザル
テナガザル
皆さんは「テナガザル」という動物を知っていますか?動物園などでも見られるので知っている方は多いかもしれませんね。「類人猿(るいじんえん)」と呼ばれており、ゴリラやチンパンジーなどと同じで、最も人間に近い動物と言われています。そんなテナガザルのことを紹介していきます。
テナガザル 基本情報
項目名 | 内容 |
---|---|
保全状況 | 特定の脅威は記載されていませんが、環境変化や破壊により影響を受けやすいとされています。 |
綱 | 哺乳綱 (Mammalia) |
分類地位 | 受理されている |
科 | ギボン科 (Hylobatidae) |
ランク | 科 |
科学名 | Hylobatidae |
門 | 脊索動物門 (Chordata) |
目 | 霊長目 (Primates) |
界 | 動物界 (Animalia) |
一般名 | Gibbons, Lesser apes |
基本情報
哺乳綱(ほにゅうこう)霊長目(れいちょうもく)ヒト上科テナガザル科
体長:45〜90cm
体重:5.5〜10.5kg
テナガザルはテナガザル科を総称した呼び方で、種類がたくさんいます。インドの東から中国の南の方まで広く住んでいいて、バングラデシュやミャンマー、タイ、マレーシア、インドネシア、カンボジア、ベトナム、ラオス、中国、インドシナ半島、マレー半島、ジャワ島、ボルネオ島までいろんな場所に住んでいます。
最初にお話ししたように、テナガザルは類人猿(るいじんえん)と呼ばれていて、ゴリラやオランウータンが大型類人猿(おおがたるいじんえん)と呼ばれているのに対して、テナガザルは小型類人猿(こがたるいじんえん)と呼ばれています。
名前に「サル」とついていますが、サルではなく「類人猿(るいじんえん)」に分類されるんですね。テナガザルが人間とは別の種類に進化していったのは、2000万年〜1600万年前と言われていて、類人猿(るいじんえん)のなかで、1番最初に「人間じゃなくてテナガザルとして生きよう」と決めた種類なんだそうです。
テナガザルはその名の通り、体に対して手が長いのが特徴です。種類によっても変わってきますが、手は後ろ脚の約1.7倍の長さがあるんですよ。
尻だこや座りだこと呼ばれる、ボコっとしたものがお尻についており、クッションのような役割をしてくれるので、どんな場所でも痛い思いをせずに座ることができるんです。
毛は、手足や顔まわりだけが白かったり、全身焦げ茶色や黒色、黄色っぽい色までいろんな色の種類がいます。
テナガザル Q&A
テナガザルの名前の由来は?
テナガザルの名前の由来は、やはり手の長さからですね。漢字も「手長猿」と特徴を表した漢字になっています。
種類によっても見た目から名前がつけられていたりするんです。「シロテテナガザル」という、最も日本の動物園で見られる種類は、手が白いことから名前がつけられました。漢字だと「白手手長猿」と書きますが、「テ」が2つあるのでややこしくなりますね。
「フクロテナガザル」という種類も、あごの下に大きな袋を持っていることからその名がつけられました。「ボウシテナガザル」は、これはメスだけの特徴になりますが、体がグレーなのに対して、頭から胸の辺りだけが黒いのでまるで頭巾(ずきん)をかぶっているように見えることからこの名前がつけられたそうです。見た目が特徴的なので、そこからつけられていることが多いですね。
学名では「Hylobates」と書きます。「hylo」は「森」、「bates」は「〜を行くもの、出没するもの」という意味があります。住んでいる場所からつけられたのかもしれませんね。
テナガザルはどうしてその地域に住んでいるの?
テナガザルは基本的に熱帯雨林(ねったいうりん)に住んでいて、場所や種類によって森や竹林、湿った林、泥や沼の多い森などに住んでいます。
動物園などでも見られるように、一日のほとんどの時間を木の上で過ごしています。特徴である長い手で木から木へと移動していきます。子どもの頃に公園にあったうんていで遊んだ人もいるかと思いますが、うんていを渡るように体の反動を利用して渡っていきます。ジャンプもするのですが、その時も10mは飛ぶことができるそうなので、森の中を早く移動することができるんですね。
木登りも高い場所も得意で、例えばタイだと木にエサがついている場所が地上から23.7mととても高い場所ですが、そこに登り座ったりすることもできるんです。
地上を歩くことはあまりないですが、歩くときには長い腕を広げて歩きます。手と足の長さが違うので、広げないと歩きづらいのかもしれませんね。
テナガザルは群れで行動します。群れといっても家族で構成されたものなので、パートナーや子どもと一緒にいます。危険が迫ると大声で叫び、危険を知らせます。みんなを守るために叫んでいるんですね。
苦手なことは泳ぐことです。そもそも水が怖いので、水に入ることもしません。カナヅチなんですね。
テナガザルは何を食べているの?
テナガザルは果実を主食としていますが、木の実や葉っぱ、花、茎、つぼみ、カマキリやハチなどの昆虫、小鳥やその卵、小動物も食べることがあります。これは手に入りやすい時期で変わってくるのですが、夏は果物がたくさんなるので果物を食べますが、冬は果物がならなくなるので他のものを食べているんです。
動物園では果物の他に、サツマイモやキャベツ、レタス、白菜なども食べているそうです。植物だと基本的になんでも食べられるので、時期や場所で食べられるものが変わるので100種類以上の植物を食べることができるんだそうです。
果物を食べるときは種も一緒に飲み込みます。すると種はフンと一緒に出てきて、その種がまた新しい木になるんです。テナガザルはこうして森を作ることもしているんですね。
テナガザルはどうやって増えるの?
テナガザルは一夫一妻制(いっぷいっさいせい)で、一生一緒にいる仲良し夫婦です。たまに一妻多夫制(いっさいたふせい)や一夫多妻制(いっぷたさいせい)も見られるそうですが、基本的にはオスとメスが一頭ずつでパートナーとなります。
相手が先に亡くなってしまったり、夫婦になったのに放棄されたり、パートナーを取られたりすると新しいパートナーを探します。
妊娠の期間は約7ヶ月で、9〜10月の雨季から乾季になる間に一頭、出産します。この出産は2〜3年ごとに行われます。人間の妊娠は十月十日(とつきとおか)と言われているので、テナガザルは人間より少し早く産まれていますね。
基本的にメスが育児を行いますが、オスや兄弟も参加してみんなで育てていきます。最初はおっぱいを飲んで育ちますが、生後4ヶ月くらいから固形の餌を食べ始めます。人間でいう離乳食(りにゅうしょく)のようなものですね。
ずっと母親にくっついて行動していますが、生後9ヶ月ごろになると、腕を使って木を渡ったりして、親や兄弟の行動を見よう見まねで成長していきます。
生後6年で大人として認められるようになり、生後8年目までにパートナーを探し家族の群れをでていき、自分で家族を作るようになります。ただ、タイムリミットの8年目までに群れをでていないと、父親から群れを出るようにと言われてしまいます。
子孫を残すために早くパートナーを探して一人前にならなければいけないんですね。
テナガザルは愛を歌うって本当?
テナガザルはオスとメスが交互に歌を歌うんです。これはなわばりをアピールする場合や夫婦のコミュニケーション、絆を深めるために歌い合うのです。
基本的にはオスとメスが交互に歌い分けてデュエットをしています。種類によって音程の違いやパート分けがあったりして、それぞれ特色があります。
シロテナガザルはオスとメスでパート分けがされていて、メスが歌い始めサビのような1番盛り上がる場面に入ります。この部分を「グレートコール」と言い、このグレートコールが終わるとオスが歌い始めるのですが、これを「コーダー」と言います。
メスが歌の1番を歌ってオスが2番を歌ってるような感じでしょうか。鳴き方や音程、声色などは一頭一頭変わってくるので、人間と同じですね。
このデュエットは1日、2回から5回と言われていますが、これも種類や状況によって変わってきます。なわばりの境界線で出会ってしまうと、1回で35分間もの超大作デュエットをするんです。警戒(けいかい)の意味が込められているのでしょうが、大きく響き渡るような美しい歌声なので聴き入ってしまいそうですね。
テナガザルが絵になっているって本当?
テナガザルは昔からいる動物なので、寓話や絵にもなっています。日本人にも身近な仏教の戒律書(かいりつしょ)、「摩訶僧祇律(まかそうぎりつ)」の中に「猿猴捉月(えんこうそくげつ)」という教えがあるのですが、これの「猿猴(えんこう)」はテナガザルのことなんです。
あるところに500匹のテナガザルが木の上で暮らしていました。その木の下には井戸があり、その水面に映った月を見て、群れのボスが「月を救い出して世に光を取り戻してやろう!」とみんなで木の枝から井戸の水面に届くまで、手を繋いで列を作りました。
もう少しで手が届くというところで木が折れてしまい、みんなが水に落ちて死んでしまった、というお話です。このことから「身の程知らずが望みを叶えようと行動すると失敗や破滅を導く」と説いているんです。少し怖いお話ですが、仏教の教えに出てくるほど、昔からテナガザルは人間に知られていたんですね。
この「猿猴捉月(えんこうそくげつ)」は絵でも描かれていて、水墨画になっていたり、それを元にお茶碗などにも絵が描かれています。その絵はサルとしてではなく、ちゃんと手が長いテナガザルとして描かれているんです。
教えに出てくるほどなので、人間の起源をさかのぼるとテナガザルと同じ動物で、どこか親近感のようなものもあったのかもしれませんね。
テナガザルは絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)に指定されているの?
テナガザルは全ての種類が絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)に指定されています。そして「地球上で最も絶滅に近く、最も希少な哺乳類」とまで言われているんです。なぜそんなにも数が減ってしまったのでしょうか。
テナガザルの住んでいる場所である熱帯雨林が伐採(ばっさい)で少なくなってしまっているんです。道路や大規模な農地にするためだったり、家やダムを建てたり、紙の原料や油、加工食品、洗剤などに使われるなど、人間が使うものに変わるために森が壊されてしまっているんです。
低地の森が壊されるとテナガザルは高い場所の森にいきますが、その高い場所にはテナガザルの食べ物である果物などがならないのです。
こうして東京ドーム30万個以上の面積の森が伐採され、今でもその面積は広くなっているんです。
また、昔からテナガザルはペットになったり、食用としても狩猟されることがあります。中国の医学ではテナガザルは薬になると信じられていました。このこともあり、今でも密猟(みつりょう)されてしまうのです。
この現状を多くの人に知ってもうために10月24日が「国際テナガザルの日」と制定されました。国立保護区や自然保護区もあり、現地住民が密猟(みつりょう)されないように監視するなどして、密猟者(みつりょうしゃ)の数は減っていっています。
森を復活させるために人工林を植えるなどして、対策がとられています。遠い国の話ではなく、日本人が普段使っているものの中にも、森を伐採(ばっさい)してできたものもあるので、身近な問題として考えていきたいですね。
テナガザルは日本でも見られるの?
テナガザルは野生ではいませんが、動物園などでも見ることができます。野生下で生きているテナガザルの寿命が16〜25年と言われている一方で、飼育下だと30〜40年と長く生きるのだそうです。自然界か飼育かどちらがいいとは言えませんが、食べ物がなくならない安心はあるかもしれませんね。
では日本のどこの動物園で見られるのか紹介していきます。
[シロテテナガザル]
・上野動物園(東京都)
・福岡市動物園(福岡県)
・金沢動物園(横浜市)
・円山動物園(北海道札幌市)
・旭山動物園(北海道旭川市)
・釧路市動物園(北海道釧路市)
・ときわ動物園(山口県)
・京都市動物園(京都府)
・王子動物園(兵庫県神戸市)
[フクロテナガザル]
・千葉市動物公園(千葉県)
・東山動物園(愛知県名古屋市)
・天王寺動物園(大阪府大阪市)
・到津の森公園(福岡県北九州市)
文面や写真だけでは、その姿や大きさ、生態はわからないものです。実際に会いに行ってみると感じることがあるかもしれませんね。
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テナガザル 種類
テナガザルは全ての種類が絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)に指定されています。その種類とレベルを紹介していきます。
- [フーロックテナガザル属]
- ニシフーロックテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠB類
- ヒガシフーロックテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)Ⅱ類
- [テナガザル属]
- アジルテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠB類
- ボルネオシロヒゲテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠB類
- クロステナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠB類
- シロテテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠB類
- ワウワウテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠB類
- ミュラーテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠB類
- ボウシテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠB類
- [クロテナガザル属]
- カンムリテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠA類
- キホオテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠB類
- ハイナンテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠA類
- キタホオジロテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠA類
- カオヴィットカンムリテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠA類
- ミナミホオジロテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠA類
- [フクロテナガザル属]
- フクロテナガザル:絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠB類
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