
日本でもっとも身近な爬虫類と言えば、ヤモリが挙げられます。昔から日本に生息し、窓の外側に張り付く姿にビックリしたことがある人も多いのではないでしょうか。
「爬虫類」というだけで苦手意識を持つ人は多いですが、クリッとした目と小柄な体から「かわいい」と人気があることも事実です。
しかし、身近でありながらも一般的にヤモリの生態はあまり知らない人がほとんど。そこでヤモリの生態や、ちょっとした疑問を見ていきましょう。
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〜基本情報〜
爬虫綱有鱗目ヤモリ科ヤモリ属
体長:10-14センチ
体重:2.3~4.0g
日本でヤモリと言えば、「ニホンヤモリ」を指すことがほとんどです。しかし、ニホンヤモリという名前でありながら、外来種と考えられており日本固有種ではありません。日本に定着した時期は不明ですが、平安時代以降と考えられています。
現在でも日本以外に中国の東部や朝鮮半島に生息しているようです。
体色は灰色や褐色のような地味な色がほとんどです。さらに、不鮮明で暗い色のまだら模様を持っています。見た目からはわかりづらいですが細かい鱗に覆われ、触ってもザラザラとした感触はありません。

環境に応じて体色を変化させられますが、カメレオンほどではないようです。濃淡を変化させられる程度ですが、天敵から隠れるときに役に立つのではないでしょうか。
おもに住宅や周辺地域に生息しており、郊外では少なく、都市部で多く見かけます。意外に思う人もいるかと思いますが、原生林のような自然が生い茂る場所にはあまり生息していません。窓の外側に張り付いている姿を見たことがある人も多いのではないでしょうか。
また、ヤモリは夜行性で、昼間に見かけることはあまり多くありません。冬になると冬眠のため、壁の隙間や縁の下で潜み、姿を見ることは皆無でしょう。
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ヤモリのQ&A
ヤモリの名前の由来は何?
ヤモリは漢字で書くと「家守」や「守宮」となります。どちらの表記も「守る」という漢字がキーポイントです。
「家守」はイメージしやすく、家にいる害虫を捕食し、家を守るとされることから名付けられました。
一方で「守宮」には2つの説があります。
1つは「家守」と同じく、宮廷にいる害虫を捕食することから名付けられたとされる説です。
もう1つは中国の伝説に由来します。ヤモリに朱砂という砂を食べさせると真っ赤になり、そのヤモリをすりつぶして女性の体に塗ると取り除けませんでした。ただし女性と男性が肉体関係をもつと消えてしまいます。皇帝が後宮にに仕える官女を独占するために利用していたようです。したがって、後宮を守るという意味合いで「守宮」となりました。
中国では漢方薬がありますし、どちらの説もあり得そうですね。

ヤモリは何を食べているの?
ヤモリは肉食で、おもに昆虫やクモなどの節足動物を獲物とします。基本的に生きている虫を食べるため、死んだ虫に興味を持ちません。
また、飼育する場合は生き餌が必要です。コオロギなどを与える必要があり、虫が苦手ではなかなか大変でしょう。

ヤモリはどうしてそこに住んでいるの?
ヤモリは一般的に自然あふれる場所ではなく、人間の住む街中に生息します。なぜなら人間が住む場所のほうが、かんたんにエサを捕食できるからです。
ヤモリのエサである虫のほとんどは街灯の明かりなどに群がるため、ヤモリにとってはこれ以上ない格好のエサ場というわけです。群がる虫に嫌悪感を抱く人は多いため、ある意味ではWIN-WINの関係と言えるでしょう。

ヤモリはなぜ壁に張り付けるの?
ヤモリの最大の特徴は、壁などの垂直な場所に落ちずに張り付けることです。初めて見たときに、ビックリした人も多いのではないでしょうか。
ヤモリが壁に張り付くのは、吸盤でも粘液でもありません。趾下薄板(しかはくばん)と呼ばれる器官がヤモリの体を支えます。
趾下薄板には超微細な剛毛があり、壁やガラスなどの凸凹に噛み合わさるとファンデルワールス力という力が発生します。ファンデルワールス力は「もっとも弱い化学結合」と呼ばれ、この「弱い力」がヤモリを自由自在に動ける理由となるのです。

ヤモリの「トカゲの尻尾切り」?
「尻尾切り」と言えばトカゲが有名でしょう。天敵などの危険から逃げるために、あえて自分の尻尾を切断して囮にする特徴的な行動です。
自切(じせつ)と呼ばれるこの行動は、ヤモリも行います。自切した尻尾は10分程度、くねくねと動いたり跳ねたりして、相手の注意を引き付けます。
トカゲ同様に尻尾は再生しますが、完全に再生はできません。骨は再生できませんし、再生された尻尾は色が少し違ったり短くなったりするため、見た目からでも判別が可能です。

ヤモリと人間の関係は?
ヤモリはもともと臆病な性格なので、人間に対して危害を加えず、すぐに逃げてしまいます。食害もないため有益な動物とされ、縁起物とされる風習もあります。
飼育する場合も、慣れるまではなかなか姿を見せてくれません。じっと見つめたり、大きな物音を立てるとストレスになってしまうので注意しましょう。
ペットとして飼育されるほどの人気がある一方で、不快な生き物として扱う人も一定数います。人気がはっきり別れるのは爬虫類ならではと言えるかもしれませんね。

ヤモリは弱い?
ヤモリは非常に弱い存在で、小型のうえに骨格が頑丈ではありません。たとえば人間に噛みつくと逆に顎の骨が砕けてしまう恐れがあります。
捕まえる場合に強い力で扱うとケガをしてしまうので、直接触ることはせず、棒などで追いやるといいでしょう。

ヤモリは鳴くの?
ヤモリはめったに鳴きませんが、まったく鳴かないわけではありません。驚いたときは高い声で「ピッ」と鳴いたり、威嚇するときは「ケケケ」と低い声で鳴きます。
ただし、どちらもストレスを感じているので、鳴いた場合はそっとしてあげましょう。

ヤモリは脱皮するの?
爬虫類であるヤモリは、成長するにつれて脱皮を繰り返します。子どものときは2週間に1回ほど、大人になってからは不規則です。2週間に1回という頻度は高頻度に感じますが、もともと小型なので脱皮殻はあまり見かけません。
さらに、抜け殻にはカルシウムが多く含まれているため、食べてしまうことも珍しくありません。人間の感覚では少しホラーな印象も受けますが、生きていくために必要なのでしょうね。

ヤモリとイモリとの違いは?
ヤモリとイモリは名前が似ていることもあって、よく混同されます。もっとも違う点は分類であり、ヤモリが爬虫類にたいして、イモリは両生類です。したがってイモリの生息域は水辺。カエルなどと同様です。
見た目の違いとして、指の数が挙げられます。ヤモリの前後の足は指が5本ありますが、イモリの前足は指が4本しかありません。また、イモリは「井守」とされ、田んぼや井戸などで害虫を捕食し、守るとされています。
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ヤモリの種類
※ニホンヤモリが属するヤモリ属の種類です。
- Gekko athymus
- Gekko auriverrucosus
- Gekko badenii
- Gekko chinensis
- Gekko gecko トッケイヤモリ Tokay Gecko
- Gekko gecko azhari
- Gekko gecko gecko
- Gekko gigante
- Gekko grossmanni マーブルゲッコー
- Gekko hokouensis ミナミヤモリ
- Gekko japonicus ニホンヤモリ
- Gekko kikuchii
- Gekko mindorensis
- Gekko monarchus
- Gekko nutaphandi
- Gekko palawanensis
- Gekko palmatus
- Gekko petricolus
- Gekko porosus
- Gekko romblon
- Gekko scabridus
- Gekko siamensis
- Gekko similignum
- Gekko smithii スミスヤモリ Smith’s Green-eyed Gecko
- Gekko subpalmatus
- Gekko swinhonis
- Gekko taibaiensis
- Gekko tawaensis タワヤモリ
- Gekko taylori
- Gekko ulikovskii バナナヤモリ Golden Gecko
- Gekko verreauxi Gekko verreauxi
- Gekko vittatus ヤシヤモリ Lined Gecko
- Gekko wenxianensis
- Gekko yakuensis ヤクヤモリ
参考文献
Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/ニホンヤモリ
https://ja.wikipedia.org/wiki/アカハライモリ
E関心
https://e-concern.com/gekko-japonicus-kanji/#toc5
夢ナビ
https://yumenavi.info/lecture.aspx?GNKCD=g005003
生物モラトリアム
https://namamono-moratorium.com/tokage-yamori-872
アイキャッチ画像
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gekko_japonicus_remaining_stationary_on_the_ground_-_2.jpg