フラットコーテッド・レトリーバー

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さていきなりですが、問題です。「フラッティ」の愛称(あいしょう)で呼ばれているイヌといえば何でしょう?
答えは「フラットコーテッド・レトリーバー」です。
フラッティはゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバーにそっくりなイヌですが、よく見ると微妙(びみょう)に違うところがあります。
それは性格だったり、外見だったり・・・。ちなみにフラッティは日本オリジナルの愛称なので、外国でフラッティと聞いても通じないためご注意を。
では早速いつものように、フラットコーテッド・レトリーバーの秘密について、一緒に覗いてみましょう!

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~基本情報~

原産国 イギリス

体高 オス: 58~62cm メス: 56~60cm

体重 27~32kg

フラットコーテッド・レトリーバーの最も古い祖先は、巻き毛の強いカーリーコーテッド・レトリーバーとラブラドール・レトリーバーが関係しているのでは?と考えられています。

のちに波状(なみじょう)の被毛を持つウェービー・コーテッド・レトリーバーが誕生しますが、改良が進むつれて被毛が少しずつ直毛になっていき、ここでウェービー・コーテッド・レトリーバーがフラットコーテッド・レトリーバーに変わって誕生したそうです。

ところがもうひとつ説があり、ニューファンドランドや古いウォータードッグ、プードルといったイヌたちを交配させた結果生まれたとも考えられています。

しかしどちらの説も、はっきりとした証拠は残っていないそうです。

優雅(ゆうが)な外見と性格の良さで人気が高まっていったフラットコーテッド・レトリーバー。ところが1915年以降、ゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバーの人気が上昇。

フラットコーテッド・レトリーバーは第二次世界大戦(だいじにせかいたいせん)の影響も重なって、一時は絶滅寸前(ぜつめつすんぜん)にまで追いつめられてしまいますが、終戦後は愛好家やブリーダーたちの努力によって、絶滅の危機から抜け出すことができました。

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フラットコーテッド・レトリーバーのQ&A

フラットコーテッド・レトリーバーの名前の由来は?

フラットコーテッドには「真っすぐな被毛」という意味があり、レトリーバーの「レトリーバー(レトリーブ)」には英語で「回収する」という意味があります。鳥猟犬(ちょうりょうけん)、別名ガンドッグとして人間がしとめた獲物(えもの)を回収する役割を担当していたことが、名前の由来になっています。

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フラットコーテッド・レトリーバーのカラーバリエーションは?

ブラック、もしくはレバー(茶色)のみです。

フラットコーテッド・レトリーバーは何グループ?

JKC(ジャパンケネルクラブ)やFCI(国際畜犬協会)のルールに従った分け方の場合、「第8グループ」になります。

撃ち落とした獲物を回収するレトリーバー、水の中に落ちた獲物を回収する水中作業が得意なウォータードッグ、隠れている鳥を追い立てるブラッシング・ドッグが所属しています。

第8グループの犬種は自分で獲物を狩るスタイルではなく、人間の指示に従って行動する性格のため、基本的に人懐っこい子が多いといわれています。

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フラットコーテッド・レトリーバーの外見はどんな感じ?

垂れ耳に穏やかな目つきをしたアーモンドアイ、マズル(口まわりから鼻先にかけて)は長く、鼻が大きいのが顔の特徴です。

光沢(こうたく)のある美しい被毛におおわれていますが、生え方が少し変わっていて、体全体の被毛は中くらいの長さであるのに対し、四肢(しし)やしっぽには部分的にフサフサの飾り毛が見られます。

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フラットコーテッド・レトリーバーの性格や特徴は?

①陽気で優しい性格!

基本的に人見知りせず、誰にでも明るい表情を見せてくれるフラットコーテッド・レトリーバー。子どもに対しても丁寧に接してくれるので、そこがフラットコーテッド・レトリーバーの優しい部分といえます。陽気で無邪気(むじゃき)な性格は老犬(ろうけん)になっても変わらないようです。また、猟犬、家庭犬、回収犬の役割をこなしていたので、ときには家族に甘え、ときには家族を守る番犬として活躍してくれることでしょう。

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②運動大好き!水を見ると飛び込みたくなっちゃうかも?

老犬になってもやんちゃな部分が残るフラットコーテッド・レトリーバーは、散歩をはじめとする運動が大好きです。普段の散歩はもちろん、ときにはボール投げやフリスビー遊びも行なってあげるとストレス解消になります。

また、ウォータードッグとし活躍していた歴史があるので、海や川など水辺を見ると本能的に飛び込んでしまう可能性があります。タオルも何も用意していない状態で水遊びをすると帰りが大変なので、水遊びはこの日にする!と決めて海や川、あるいはドッグプールへ連れて行ってあげましょう。

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③しつけは子イヌのときから行ないましょう!

まずはじめに、イヌには「社会化期(しゃかいかき)」という時期があります。生後3週~12週齢がイヌの社会化期といわれており、この時期に行なうしつけは今後愛犬と楽しく暮らしていくためにも必ず必要なトレーニングといえるでしょう。

性格が穏やかなフラットコーテッド・レトリーバーでも、最低限のしつけはとても大切です。賢いのでしつけがしやすいといわれていますが、個体差によってはやんちゃな部分が強く見られ、少々しつけに苦労するかも知れません。ここでは覚えさせたい基本的なしつけについてご紹介します。

⑴トイレトレーニング

トイレは指定の場所で上手にできたとき、褒めて覚えさせましょう。

⑵甘噛みをやめさせる

子イヌのときは良いのですが、成犬で甘噛みされるとケガのもとになってしまいます。人の手の代わりに噛んでも良いおもちゃを与え、もし飼い主さんの手を甘噛みしてきたら怒鳴らず低い声で「痛い」と一喝(いっかつ)した方が良いでしょう。

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⑶人に触られることに慣れされる

体調不良になったときはどうしても動物病院へ行かなければなりません。そのとき知らない人に体を触られても暴れないよう、普段から飼い主さんがたくさん愛犬とスキンシップをとって、人との触れ合いに慣れさせるのがベストです。

⑷クレートに入っても怖くないことを覚えさせる

動物病院に行くとき、あるいは災害が起きたときはどうしてもクレートの中へ愛犬に入ってもらう必要があります。フラットコーテッド・レトリーバーは体が大きいので、自分から入ってくれるようしつけるのが大切です。飼い主さんの指示で上手に入ってくれたら、おやつのご褒美をあげて、クレートの中は怖くないんだ!と認識させるのがコツです。

⑸散歩で外の世界に慣れさせる

散歩はイヌを飼うにあたって、必要不可欠なことです。そのため生後3ヶ月頃までは飼い主さんが抱っこして外に連れ出すことから始めてみましょう。少しずつ外の世界に慣れてきたら、リードを繋いで自分の足で歩いてもらうことを覚えさせます。歩くときもただ引っ張れば良いのではなく、最初は飼い主さんが愛犬の歩調にあわせてあげることからスタートさせるのがベストです。

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その他「コマンドトレーニング(お座りや待てといった指示に従わせること)」や「お留守番に慣れてもらう」といったことも大切なのですが、社会化期が過ぎてからでも覚えさせることができますので、子イヌのうちにやるべきことから始めていきましょう。

フラットコーテッド・レトリーバーは盲動犬や介助犬になれないの?

盲動犬(もうどうけん)や介助犬(かいじょけん)として活躍しているイヌといえば、ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーが有名ですよね。フラットコーテッド・レトリーバーも同じ「レトリーバー種」なのだから補助犬になれそうですが、日本でフラットコーテッド・レトリーバーが補助犬として外を歩いていることは、まずないと思われます。

はっきりとした理由は見つかりませんでしたが、恐らく飼育頭数が少ないのと、性格が関係している可能性が考えられます。

まず2021年時点でのゴールデン・レトリーバーの国内飼育数は6,138頭、ラブラドール・レトリーバーは5,294頭、そしてフラットコーテッド・レトリーバーは351頭とかなり数が少ないため、補助犬候補になるには飼育頭数が足りないのです。

次に性格の関係ですが、「フラットコーテッド・レトリーバーの性格や特徴は?」のQ&Aでもご紹介したとおり、確かに穏やかな性格をしていますが、2~3歳で性格が落ち着いてくるゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバーに対して、フラットコーテッド・レトリーバーは歳をとってもやんちゃな部分が残りやすく、冷静沈着(れいせいちんちゃく)な対応が求められる盲導犬や介助犬には、やや不向きといえるでしょう。

ちなみに黒いイヌの盲導犬、もしくは介助犬を見た!という方がいるかも知れませんが、恐らくその犬は黒いラブラドール・レトリーバーの可能性が高いです。

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フラットコーテッド・レトリーバーとゴールデン・レトリーバーの違いは?

この2種類は見た目がとてもよく似ているため、ときどき黒いゴールデン・レトリーバーがいる!なんて誤解されてしまうほどです。では具体的にどのあたりに違いがあるのか比べてみましょう。

■顔つき

両方とも垂れ耳で、穏やかな表情のアーモンドアイをしており、どちらもマズルは長め(イングリッシュ・ゴールデン・レトリーバーは短めといわれています)で鼻は大きめです。

■被毛の色

フラットコーテッド・レトリーバーはブラックとレバーのみですが、ゴールデン・レトリーバーは、ダーク・ゴールド、ライトゴールド、クリーム、ゴールデンがあります。

■被毛の長さ

フラットコーテッド・レトリーバーは中くらいの長さ、そして四肢やしっぽに飾り毛があるのが特徴です。ゴールデン・レトリーバーは全体的にボリューミーな長毛です。

■性格の違い

両方とも基本的に陽気で明るく、優しい性格です。フラットコーテッド・レトリーバーは何歳になっても、ずっと子どものように無邪気な性格のままでいることが多いですが、ゴールデン・レトリーバーは2~3歳を過ぎた頃から少しずつ落ち着きを見せはじめます。どちらも違った魅力(みりょく)があって良いですね!

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フラットコーテッド・レトリーバーを購入するにはどれくらいかかるの?

フラットコーテッド・レトリーバーはペットショップだと30万円前後、ブリーダーから購入する場合は30~40万円ほどかかります。購入を検討する際、お気に入りの子が見つかったら、一度見学に行くのが良いでしょう。

さらに、ブリーダーには上段資格をもつ「シリアスブリーダー」と呼ばれている方たちがいます。日本には約2万犬舎があるといわれていますが、そのなかでもシリアスブリーダーはわずか5%にも満たないそうです。そのため一般ブリーダーから購入するよりも、シリアスブリーダーから購入する方が高額になります。

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フラットコーテッド・レトリーバーに必要な運動量やお手入れ方法は?

イヌは犬種を問わず、散歩を必要とする動物です。犬種によって散歩時間や回数は異なりますが、フラットコーテッド・レトリーバーは時間を分けて1時間を1回ずつ、合計2時間の散歩が必要です。

フラットコーテッド・レトリーバーの被毛は中くらいの長さですが、ピンブラシとコームを使って毎日お手入れをしてあげるのがベストです。ただし、春と秋の換毛期(かんもうき)は抜け毛が増えるので、より丁寧なお手入れが必要となります。シャンプーは月に1~2回で大丈夫でしょう。

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フラットコーテッド・レトリーバーのかかりやすい病気ってなに?

フラットコーテッド・レトリーバーに限らず、ほとんどの犬種でイヌは人間よりも体毛が多く、その分皮膚がデリケートなため「皮膚病(ひふびょう)」になりやすいといわれています。

また顔の作りから眼球が人間よりも前に出ていることも多いため、目を怪我してしまう、もしくは遺伝的な理由が原因で「眼疾患(がんしっかん)」にもなりすいです。

上記の特徴を踏まえた上で、ここではフラットコーテッド・レトリーバーが注意したい病気について詳しく見ていきましょう。

まずフラットコーテッド・レトリーバーは皮膚病である「外耳炎(がいじえん)」、眼疾患である「進行性網膜萎縮(しんこうせいもうまくいしゅく)」、そして「股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)」にかかりやすいといわれています。

①外耳炎

耳の耳介や外耳道が赤くなり、黒い耳垢の発生あるいは悪臭などの症状が見られる病気です。見た目でもはっきりと異常が分かる病気ですが、耳に触れられるのを嫌がる、頭を振ってかゆみをとろうとする、耳をこすりつけるといった行動が見られるようでしたら外耳炎にかかっている可能性があります。

この病気はアトピー性皮膚炎と併発しやすいため、もし飼っているワンちゃんが外耳炎になってしまったら、アトピー性皮膚炎にもなっていないか皮膚の状態をよくチェックしてあげてください。

②進行性網膜萎縮

眼の中には光を受ける網膜という部分があります。これが何らかの原因で変性(へんせい)して悪くなってしまい、最終的には失明(しつめい)してしまうという、大変な病気です。

この病気の原因は遺伝(いでん)によるものといわれているため、現時点での予防法は見つかっていません。

具体的な症状として、暗い場所を歩いていて壁や物にぶつかることが多くなった、階段でつまずきやすくなった、暗い場所を避けるようになった、おもちゃを投げてもどこにあるか分からなくなることが増えた。などがあります。

残念ながら有効な治療法もまだ見つかっていないため、できることは少しでも病気の進行を遅らせることです。

ビタミンEやアスタキサンチンといった抗酸化(こうさんか)作用のあるサプリメントが網膜組織の変性を遅らせるといわれているので、愛犬が進行性網膜萎縮と診断された場合、このようなサプリメントの摂取を推奨(すいしょう)するケースもあります。

③股関節形成不全

生まれつき股関節がゆるみやすくなってしまう病気で、生後4ヶ月~12ヶ月の子犬期に発症しやすいといわれていますが、なかには2~3歳頃になってから発症するケースもあります。また、セント・バーナードやレトリーバー種に見られることが多いです。

症状は、お尻や腰を振るようにして歩く、後ろ足を一緒にして引きずるようにして走る、高い所や階段の昇り降りなどといった運動を嫌がるなどといったものが見られます。

初期の場合、痛み止めの薬を服薬(ふくやく)、レーザー治療にて痛みを緩和する方法や運動制限などで治療を進めますが、症状が良くならない場合は外科的治療による手術を行ないます。手術方法は数種類あるため、手術後の生活やケア方法なども考えながら獣医さんと相談して決めるのが良いでしょう。

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フラットコーテッド・レトリーバーの寿命は?

フラットコーテッド・レトリーバーの寿命は8~10年といわれています。小型犬~大型犬までを含めたイヌ全体の平均寿命はおよそ14年なので、平均より短いといえるでしょう。

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参考文献

よくわかる犬種図鑑ベスト185 動物ジャーナリスト藤原直太朗

まるごとわかる犬種大図鑑 監修 若山動物院院長 若山正之

AMERICAN KENNEL CLUB
https://www.akc.org/dog-breeds/flat-coated-retriever/

THE KENNEL CLUB
https://www.thekennelclub.org.uk/search/breeds-a-to-z/breeds/gundog/retriever-flat-coated/

JAPAN KENNEL CLUB
https://www.jkc.or.jp/archives/world_dogs/2006

犬との暮らし大百科
https://www.anicom-sompo.co.jp/inu/

みんなの犬図鑑
https://www.min-inuzukan.com/

Pet Smile news forワンちゃん
https://psnews.jp/dog/

子犬のへや
https://www.koinuno-heya.com/

アイキャッチ画像
https://pixabay.com/images/id-3687461/