エンペラーペンギン

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ドキュメンタリー映画の主人公にもなったり、最近ではコウペンちゃんという可愛いキャラクターも登場しているのでペンギンといえばこの姿を思い浮かべる方も多いのでは?それが今回ご紹介する「エンペラーペンギン」です。
そんなエンペラーペンギンには、とあることが一番といわれています。果たしてそれは一体何なのか?
早速、その秘密を探ってみましょう!

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~基本情報~

鳥網-ペンギン目-ペンギン科-オウサマペンギン属

■体長

100~130cm 

■体重の変化

オス:36.7kg メス:28.4kg(繁殖時期)

オス:24.7kg メス:32kg(産卵から孵化するまでの時期)

■フリッパー(翼)の長さ

オス:36.8cm メス:35.5cm

■くちばしの長さ

オス:8.2cm メス:8.1cm

■推定個体数(2017年度)

59万羽

エンペラーペンギンは別和名「コウテイペンギン」や「皇帝ペンギン」と呼ばれていますが、このページでは基本的にエンペラーペンギンと名前を統一してご紹介します。

エンペラーペンギンはペンギンはペンギン界のなかで最も体が大きいといわれています。頭部から喉にかけては黒色、耳や胸の上部は黄色味がかっているのが特徴です。腹側は白、背中側は黒い羽毛におおわれ、足も黒色。くちばしの上部は黒ですが下部はピンク、もしくはオレンジ色です。

オスもメスも全く同じ外見をしているため見分けがつきにくいですが基本的にオスの方が体が大きく、最大で約130cmにもなる体長は人間でいう8~9歳の子どもとほぼ同じ高さです。

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エンペラーペンギンは3~4月になると繁殖を行なうため、まず先にオスが南極大陸や大陸沿岸の島々に上陸し、遅れて2~3週間後にメスが上陸します。これは産卵に備えて少しでも多くエサを食べておく必要があるからです。上陸後はなるべく海岸から100~200kmほど離れた内陸部の氷原へ移動します。理由は天敵から身を守り、そして吹き荒れる強風の影響を最小限に抑えるためです。

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その後、ルッカリー(コロニー)と呼ばれる集団を作り、お互い気に入った相手と繁殖行為にうつります。つがいの絆は比較的弱く、決まった巣を作らないのも特徴といえるでしょう。メスは3~6月の間に大きな卵を1個だけ産み、さらに産卵後は海へエサを探しに海へ向かうため、抱卵はオスのみが足の上にたまごをのせて行ないます。

他のペンギンはオスとメスで交代するのに対し、オス1匹で卵を温め続ける行為はエンペラーペンギン特有の光景です。抱卵期間は約2ヶ月といわれ、この期間を超えると無事にヒナ誕生となります。生まれてから約40~50日間は親鳥がお腹で包みながら育て、交代でエサを与えます。ある程度大きくなると、ヒナはクレイシ(共同保育所)と呼ばれる集団に預けられます。その期間も親鳥は海へエサを探しに行き、食事を与え続けます。

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その後は生まれてから約6ヶ月ほどで体重が親鳥の半分ぐらいまでに成長し、12月~1月ごろに巣立ちを迎えます。ふわふわの綿毛に覆われていたヒナの体は少しずつ羽が抜け換わり、最終的には大人と同じような姿に変化するのです。他のペンギンと比べて巣立ちの期間が長いのも、エンペラーペンギンの特徴といえます。

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エンペラーペンギンのQ&A

エンペラーペンギンの名前の由来は?

意外にもキングペンギンが名前の由来に関係しています。まだ誰も南極へ行けなかった時代、19世紀の初めごろまではキングペンギンが世界一大きいペンギンとして存在していました。月日は流れ、19世紀半ばになると人類も南極へ行けるようになり、当時の探検隊がキングペンギンによく似た鳥を発見します。

初めはキングペンギンの仲間だと思われていましたが、調べてみると別品種であることが判明。キングペンギンよりも体が大きいという特徴から、王様(キング)よりも位が高い皇帝(エンペラー)の名をとり、エンペラーペンギンと名づけられました。

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エンペラーペンギンはどうしてそこに住んでいるの?

エンペラーペンギンは主に南極大陸を繁殖地とし、さらにそのなかでも南緯66度~78度の大陸沿岸や沖にある島々を選びます。それ以外にも、南米のフエゴ島やフォークランド諸島、サウス・ジョージア島、サウス・サンドウィッチ島、ケルゲレン島、ハード島、ニュージーランド、南アフリカなどでもエンペラーペンギンの姿が目撃されているようです。

南極大陸以外で確認されているのは漂着してしまった可能性もありますが、一説によると、南極大陸沿岸や諸島の氷下にはナンキョクオキアミや魚類が大量に生息しており、そこで暮らせばエサが食べやすいから。と考えられています。

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エンペラーペンギンは何を食べているの?

海に潜ってイカやタコ、コオリウオなどの魚類、ナンキョクオキアミや甲殻類(こうかくるい)を食べています。ヒナの場合は、親が消化した魚などを口移しでもらっています。ヒナは一度になんと3~4kgほど食べるそうですよ。

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エンペラーペンギンが首を振っているのはなぜ?

結論からいうと、成鳥とヒナの場合で理由が異なるので分けてご紹介します。

■成鳥の場合

目の上に塩類腺(えんるいせん)という器官があり、体に溜まった余計な塩分を排泄するため、首(頭)を振るようです。

■ヒナの場合

親鳥からエサをもらうためのおねだりといわれています。

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エンペラーペンギンが極寒の冬に卵を産むのはどうして?

他のペンギンは春から初夏、つまり南極でいう11月~1月の間に産卵し子育てを行なうことが多いのですが、エンペラーペンギンは3月~6月に産卵し孵化(ふか)させてヒナを育てていきます。南極でいうと秋から冬に向かっていく季節ですが、なぜあえて辛い時期を選んでいるのでしょうか?

これはエンペラーペンギンの「大きな体」と主食である「ナンキョクオキアミ」が関係しています。

ひとつめの理由は、まず基本情報でもご紹介したとおりエンペラーペンギンは生まれてから独り立ちするまでの期間に6ヶ月かかります。南極の夏はとても短いので、小型ペンギンのように春先から初夏にかけての産卵だとヒナが独り立ちする前に再び冬を迎えてしまいます。あえて一度極寒の冬に産卵すれば、二度目の冬を迎える前にヒナは独り立ちできるということです。

そしてふたつめの理由であるナンキョクオキアミは、春先から初夏(11月~1月)に数が増えます。つまりこの季節はエンペラーペンギンの食べるエサが増える時期なのです。体の大きいエンペラーペンギンはエサもたくさん食べます。それは巣立ちヒナにもいえること。

巣立ちヒナがお腹いっぱいエサを食べるためには、エサが増える時期とヒナが巣立ちを迎える時期を被らせる必要があるため、逆算して冬に産卵しないとエサが豊富になる時期に間に合わなくなってしまうのです。

またそれ以外にも冬の南極には天敵がほぼいないので、そういう意味では冬の産卵も長所があるといえますね。

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エンペラーペンギンは世界一過酷な子育てをしているって本当?

本当です。それでは具体的にどのような子育てを行なうのかご紹介しましょう。

■試練はメスが産卵した直後から始まっている!

基本情報でもご紹介したとおり、抱卵はオスの役目なのでメスから卵を受け取るのですが、気をつけて足の上にのせないと割ってしまったり、長時間氷上に卵が触れると凍りついてしまう危険があります。

■吹き荒れるブリザードのなか、オスは命がけで卵を温める!

無事にメスから卵を受け取ったオスは、約2ヶ月の間何も食べずにひたすら抱卵を続けます。ところが実際、繁殖地のルッカリー(コロニー)まで移動する最中も絶食状態なので、性格には2ヶ月以上何も食べていないことになります。さらにこの時期の南極は「ブリザード」という吹雪も吹き荒れるため、極限状態に耐えられなくなったオスは死んでしまうこともあるそうです。

「ハドル」という円陣を作り、みんなで体を寄せ合いながら寒さを凌ぐ。そんな厳しい期間を乗り切ると、無事にヒナが産まれてきます。しかし、このときのオスペンギンは体重が約30%も減っています。60kgなら40kgになっている計算です。

■メスが帰ってくるのをひたすら待つ!でもエサが間に合わないときは・・・

メスは産卵後海へ向かい、自分のお腹を満たすのと同時にルッカリー(コロニー)で待つオスとヒナのためにエサをたくさん蓄えて帰ってきますが、メスの到着が間に合わない場合、非常手段としてオスが「ペンギンミルク」を与えることがあります。

ペンギンミルクとは、胃や食道の粘膜を剥がしたもので、たんぱく質が含まれています。繁殖期からこの時期まで数えるとオスは合計約4ヶ月間絶食していることになります。ここまで懸命に頑張ってきたものの、なかにはメスの到着まで体力が持たずヒナと一緒に死んでしまう場合も少なくありません。

■メスが帰ってきた!でも体力は本当に限界・・・

無事にメスが帰ってくると今度はオスがエサを食べに海へと向かいます。しかし海までの距離は100km前後。ここまで何も食べなかったオスの体力は限界を超えているため、エサを食べる前に力尽きてしまうこともあるのです。

メスが産卵しオスが温める。そして最初のエサをヒナにたっぷり食べさせ、海へ出かけたオスとの再会を果たし、家族みんなで暮らす。この過程を最後まで繋げるのはまさに奇跡といえるでしょう。

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エンペラーペンギンはヒナの奪い合いをするって本当?

本当です。これはオスが抱卵中に死んでしまい卵を孵化させられなかった。あるいは、卵が孵ってもヒナが途中で死んでしまったりなど、何らかの理由で母親になれなかったメスが暴走して自分もお母さんになりたいがために、よその母親からヒナを奪おうとするのです。

しかし、この暴走に巻き込まれたヒナはつつかれ過ぎて死んでしまったり、仮にそのメスが盗みに成功したとしても、途中で育児放棄してしまうため結果ヒナは死んでしまいます。エンペラーペンギンはとても過酷な環境で繁殖を行なうことから、このような出来事が発生しやすいようです。

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エンペラーペンギンの性格を詳しく知りたい!

エンペラーペンギンの性格はひとことで表わすと「落ち着きがあり、穏やかな鳥」です。どこか気品を感じるたたずまい、その姿はまさに皇帝の名にふさわしいペンギンといえます。さらにブリザードの吹き荒れる日はハドルを作り寒さから身を守るため、社会性も持ち合わせているようです。

ちなみに、エンペラーペンギンの巣立ちヒナがアデリーペンギンに追い掛け回されている動画がときどき見られます。巣立ちヒナの方が大きいのに、本気になって反撃しないところが、穏やかな性格の証拠かも知れませんね。



エンペラーペンギンが見られる場所はあるの?

現在、日本でエンペラーペンギンを飼育している場所は「名古屋港水族館(愛知県名古屋市)」、「アドベンチャーワールド(和歌山県白浜市)」の2箇所のみです。

また、エンペラーペンギンはもちろん、いろいろなペンギンたちを野性のリアルな姿で見てみたい!という本格派の方には、南極クルーズに参加するという方法もあります。旅費は高額になってしまいますが、旅行代理店を通じて申し込むことができます。ひとつの参考にしてみてはいかがでしょうか。

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エンペラーペンギンには天敵がいるの?

ペンギンのなかで体長が一番大きいエンペラーペンギンにも敵は存在し、主にシャチやサメ、ヒョウアザラシなどです。また、ナンキョクオオトウゾクカモメという鳥はヒナを狙ってきます。しかし、エンペラーペンギンにとって一番の敵は人間かも知れません。

エンペラーペンギンは現在、IUCN(国際自然保護連合)によって絶滅危惧度を「準絶滅危惧(じゅんぜつめつきぐ)」に指定されています。主な原因は「地球温暖化によるエサや繁殖場所の減少」です。

温暖化により氷が溶け氷原の面積が減ると、そこに生息している藻類も減ります。そして藻類を食べているナンキョクオキアミも数が減ってしまいます。そしてナンキョクオキアミを食べているエンペラーペンギンも、エサの減少という影響を受けてしまうのです。さらにエンペラーペンギンは産卵からヒナが独り立ちできるまで時間を要します。また氷原が減少すると、ヒナが独り立ちする前に氷が全部溶けてしまう恐れもあるのです。

このように、近年の地球は地球温暖化によって昔では考えられなかった現象が起きるのでは?と心配の声があがっています。この機会にぜひ、人間とペンギンとのより良い関係作りを一緒に考えてみませんか?

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エンペラーペンギンの寿命は?

厳しい自然界で生きるエンペラーペンギンの寿命は、最高で約20年です。

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参考文献

ペンギンガイドブック 著者:藤原幸一

ペンギンライブラリー ホシザキ株式会社
https://www.hoshizaki.co.jp/penguin_island/penguin/

Akiko KATO’s page
http://docyaounde.free.fr/akatoHP/

南極動物図鑑
http://polaris.nipr.ac.jp/~penguin/oogataHP/zukan/zukan.htm

Pew Charitable Trusts世界のペンギンの保護
https://www.pewtrusts.org/-/media/assets/2015/05/penguinoverviewfinaljp.pdf

BirdLife International Tokyo もっとも絶滅リスクの高いペンギンはどの種でしょうか?
https://tokyo.birdlife.org/archives/world/13126

宇宙地球環境研究所 極地50のなぜ
https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/50naze/kyokuchi/38.html

NATIONAL GEOGRAPHIC 第4回コウテイペンギンの子育て
https://natgeotv.jp/special-contents/opencampus/column04.html

アイキャッチ画像
https://pixabay.com/images/id-429128/