コンドル

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Vultur gryphus -Franklin Park Zoo, Massachusetts, USA -female-8a.jpg

あなたはコンドルという、アンデス山脈に生息する最大3mをこえる巨大な鳥を知っていますか?
実際にコンドルを見たことがなくても、「コンドルは飛んでいく」という曲は知っているという人も多いことでしょう。
コンドルはアンデスの先住民にとって、非常に神聖な生き物だとされています。
そんな彼らはエクアドルとコロンビア、チリの国鳥に指定されていて、アンデスの神話にも登場します。
この記事で世界最大級の空を飛ぶ鳥、コンドルの特徴や秘密をのぞいていきましょう!

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~基本情報~

鳥綱タカ目-コンドル科

体長 100~130cm
体重 オス11~15kg・メス 8~11kg

コンドルはタカ目コンドル科に分類され、南アメリカのアンデス山脈(ベネズエラ、チリ、ペルーなど)に生息する大型の鳥です。空を飛べる鳥の中では最大級の大きさを誇り、翼を広げるとその大きさは3mをこえることもあります。

コンドルの大きな特徴の1つは、頭と首にほとんど羽根が生えていないことです。また成鳥になると首の周りには襟巻のような白い綿羽が生えること、オスには生まれた時から大きな肉冠(にくかん、とさかのこと)があることも特徴といえるでしょう。コンドルの羽根の色は大部分が黒色ですが、翼の先には白色の羽根が生えます。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tiergarten Nürnberg – 23.JPG
出典:https://pixabay.com/images/id-218099/

コンドルは鳥の仲間にしては珍しく嗅覚が発達しており、鼻の穴が非常に大きく、左右の鼻の穴がつながっていることが知られています。コンドルはこの鋭い嗅覚を生かして、臭いを頼りに食べ物を探し出します。

コンドルは生後6年ほどで性成熟を迎え、繁殖できるようになります。繁殖期は1年に1回で、巣は標高3,000~5,000mのところに作ります。メスは1回の産卵で1個の卵を産み、卵は54~58日ほど温めるとふ化します。ヒナは全身がベージュ色の羽根でおおわれていて、親と全く違う色合いをしています。

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コンドルのQ&A

コンドルの名前の由来は何?

ところでコンドルという名前には、どんな由来があるのでしょうか?

今回コンドルの名前の由来について調べましたが、残念ながらはっきりとした由来や語源に関する情報は得られませんでした。コンドルは英語で「Andean Condor」、学名は「Vultur gryphus」と表現されます。日本では「アンデスコンドル」と呼ばれることもあります。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Vultur gryphus -Franklin Park Zoo, Massachusetts, USA -male-8a.jpg



コンドルはどうしてそこに住んでいるの?

コンドルは南アメリカのアンデス山脈(ベネズエラ、チリ、ペルーなど)に生息しています。今回調査を行いましたが、なぜコンドルがこれらの地域に生息しているのか、はっきりとした理由はわかりませんでした。

しかしあくまで推測ではありますが、以下2つの理由も含め、コンドルにとってアンデス山脈は住みやすい環境なのではないかと考えられます。

まず1つ目の理由は「食べ物」です。
世界にはハゲワシやハイエナ、ジャッカルなどのように、動物の死肉(しにく)を食べる「腐肉食動物(ふにくしょくどうぶつ)」と呼ばれる動物がたくさん生息しています。動物の体は生きているうちであれば、基本的に腐ることはありません。しかし動物が死んでしまうとあっという間に水分が多い内臓が腐り、肉も腐っていきます。そして腐った内臓や肉にはいろいろな菌が繁殖したり、ウジやゴキブリといった虫が集まってきたりして、環境を不衛生にしてしまいます。

そこで大切なのが、腐肉食動物の存在です。腐肉食動物が死肉を食べると死体が自然に還るまでのスピードが速くなり、環境が衛生的に保たれるのです。アンデス山脈で腐肉食の役割を担ったのがコンドルであり、コンドルにとってアンデス山脈は独占的に死肉を食べられる良い環境だったのではないかと推測されます。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Avistamiento del cóndor de los Andes (Vultur gryphus).jpg

2つ目の理由は「上昇気流」です。
コンドルはとても体が重たいため、実は普通の鳥のように羽ばたいて空に浮かび上がることができません。そんなコンドルが空を飛ぶためには、山の斜面などで発生する「上昇気流」を利用する必要があります。実際にコンドルはアンデス山脈の強い上昇気流を利用して、ほとんど羽ばたくことなく長い時間、長い距離を飛んでいきます。食べ物を探している時、コンドルは1日に250kmも移動することがあるそうです。

出典:https://unsplash.com/photos/XRW0ryFeizI



コンドルは何を食べているの?

コンドルは肉食性の動物で、野生では主に動物の死体(陸の大型哺乳類や海獣、家畜など)を食べています。

コンドルはタカやワシといった動物の肉を食べる鳥、猛禽類(もうきんるい)の1種です。しかしコンドルのくちばしや足の爪は獲物を捕まえる、肉を引き裂くといった行動には向かない形をしています。そのためまれに弱った家畜や鳥のヒナを捕まえたり、卵を奪って食べたりすることはあるものの、自分で狩りをすることはほとんどありません。

なおコンドルは死体の皮にくちばしで穴を開けてその中身を食べますが、皮が硬くて穴を開けられない場合は肛門にくちばしを突っ込んで中身を食べるそうです。そして最終的には骨以外の部位は全て食べつくし、アンデス山脈の環境を衛生的に保ってくれています。

なお動物園では腐った肉ではなく、新鮮な鶏頭(けいとう)、馬肉、アジなどの肉類や魚類を食べています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cóndores no se entierran a diario.JPG



コンドルの頭に羽根が生えていないのはなぜ?

コンドルの特徴は?と聞かれたら、羽根が生えていない、まるでハゲているような頭を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。それではなぜ、コンドルの頭には羽根が生えていないのでしょうか。その答えは、コンドルの食事の仕方を観察するとわかります。

コンドルは動物の死体を食べる動物です。そして食事をする時は動物の死体の中に顔を突っ込んで食べるため、どうしても顔に血液や腐った内臓などが付いてしまいます。そう、もしコンドルの頭に羽根が生えていたら血液や内臓などの汚れが付きやすく、不衛生になってしまいます。しかしコンドルの頭には羽根が生えていないため、汚れが付きにくく菌などが繁殖しにくい仕組みになっているのです。さらに皮膚を直接太陽の光に当てて、殺菌を行っているのではないかと考えられています。

出典:https://pixabay.com/images/id-2851650/



コンドルはなぜ腐った肉を食べても食中毒にならないの?

「コンドルは何を食べているの?」で説明した通り、コンドルは主に動物の死体を食べています。

しかし動物の死体は腐っていることも多く、普通の動物であれば食べたらおなかを壊してしまうような状態のものも少なくありません。人間も腐った物を食べると食中毒になってしまいますが、なぜコンドルは冷蔵庫にも入っていない腐った肉を食べても食中毒にならないのでしょうか。

実はその秘密は、コンドルの消化器官に隠されています。動物の死肉には炭そ菌やクロストリジウム菌といった、たくさんの細菌と細菌が作りだす強力な毒素が含まれています。他の動物であればこれらの細菌や毒素で食中毒を起こしてしまいますが、死肉を食べるために進化してきたコンドルの消化器官はこれらの細菌を殺菌してしまうか、あるいはそのまま消化器官に住みつかせて共存してしまうそうです。なお同じ腐肉食動物であるハイエナやハゲワシも、コンドルと同じように強い消化器官を持っています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Madame_andes_condor_(290851926).jpg



コンドルはどんな性格なの?

コンドルは個体差があるものの、温和な性格で好奇心が強く、知能も高いようです。

動物園で飼育されている個体の中にはエサを与える時や作業をしている時などに近くに寄ってきて、飼育員の動きをじっと観察する個体もいるそうです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Guillem Chacon amb un Còndor Andí a Colòmbia.jpg



コンドルとハゲワシにはどんな違いがあるの?

ところで「ハゲワシ」という動物を知っていますか?ハゲワシはコンドルと同じく死肉を主に食べる、頭に羽根が生えていない大きな鳥です。それでは「コンドル」と「ハゲワシ」にはどんな違いがあるでしょうか?

この記事の主人公であるコンドルはタカ目コンドル科の動物で、南アメリカのアンデス山脈に生息しています。一方のハゲワシはタカ目タカ科の動物で、ヨーロッパ南部、中央アジア、チベット、モンゴル、中国東北部などに生息しています。

つまりコンドルとハゲワシは食べるものや見た目は似ていますが、分類と生息地が違う動物ということになります。このように種の系統が違うにも関わらず、動物が似たような見た目や体型になることを「収斂進化(しゅうれんしんか)」と呼びます。

なおコンドルでもハゲワシでもなく、「ハゲタカ」という名前を聞いたことがある人もいるかもしれません。しかし実はハゲタカというのはコンドルやハゲワシの俗称であり、実際にはハゲタカという動物は存在しません。



コンドルはペットとして飼えるの?

ところで個人がペットとして、自宅でコンドルを飼うことはできるのでしょうか?

コンドルは日本の法律において、人の命や財産に危険を及ぼす可能性がある「特定動物(とくていどうぶつ)」に指定されています。令和2年6月1日以降新たに特定動物を愛玩目的(あいがんもくてき・ペットとして飼うこと)で飼うことが全面的に禁止されたため、日本国内においてコンドルをペットとして飼うことはできません。

なおコンドル科(コンドルの仲間)で特定動物に指定されているのはカリフォルニアコンドル、トキイロコンドル、コンドルの3種類であるため、他の種類(ヒメコンドルなど)であればペットとして飼育できる可能性はあります。

ただし体が大きく、もともと野生動物であるコンドルを飼育することは簡単なことではありません。どうしてもコンドルが飼いたい方はコンドルについてよく勉強し、コンドルが安心して過ごせる大きさのスペースを用意し、コンドルの診察と治療ができる動物病院や獣医師を探してからお迎えするようにしてください。

出典:https://pixabay.com/images/id-1682982/



コンドルが見られる動物園はあるの?

コンドルは神奈川県の「野毛山動物園」、静岡県の「静岡市立日本平動物園」、大阪府の「天王寺動物園」など、多くの動物園で飼育されています。

なお動物園のイベントの一環として、コンドルに害獣として駆除されたシカやイノシシを丸ごとエサとして与える「屠体給餌(とたいきゅうじ)」をやっていることがあります。コンドルがどのように獲物の肉を食べるのか観察できる貴重な機会なので、興味がある人はイベント情報を探してみても良いかもしれません。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:AndeanCondorOKCZoo.JPG



コンドルはどのくらい生きるの?

コンドルの寿命はとても長く、なんと50~70年も生きるといわれています。

鳥類は長生きする種類が多いものの、なぜコンドルがこれほど長生きするのかはっきりとした理由はわかっていません。一般的に動物は体が大きいほど寿命が長くて体が小さいほど寿命が短いこと、また他の鳥と比べると空を飛ぶ時に消費するエネルギーが少ないことなども、寿命の長さに関係しているのかもしれません。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tiergarten Nürnberg – 24.JPG



コンドルにはどんな敵がいるの?

コンドルにとって、最大の敵は私たち人間です。

なぜならコンドルが生息する地域では、コンドルが病気やケガで弱った家畜(ヒツジやヤギなど)を襲うことがあるため、キツネやピューマといった肉食動物と一緒に毒殺されてしまうことがあるからです。

コンドルは1回の産卵で卵を1個しか産まない、繁殖のスピードが非常に遅い動物です。そのため繁殖できる年齢のコンドルが1羽でも殺されてしまうと、コンドルの生息数に大きな影響が出てしまうのです。

そんなコンドルは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは絶滅の危険が増大している種である「危急種(VU)(ききゅうしゅ)」に、ワシントン条約では“必ずしも絶滅のおそれはないが取引を規制しなければ絶滅の恐れがあるもの“として「附属書II(ふぞくしょ)」に分類されています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Condor_en_Cajas.jpg

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参考文献

静岡市立日本平動物園「コンドル」
https://www.nhdzoo.jp/animals/naka.php?animal_uid=220

公益財団法人 つくば科学万博記念財団「コンドルはほとんど羽ばたかずに飛んでいた!!」
http://www.tsukuba-sci.com/?column02=コンドルはほとんど羽ばたかずに飛んでいた

一般社団法人バードライフ・インターナショナル東京「アンデスコンドルのために毒薬を使用中止に」
https://tokyo.birdlife.org/archives/world/14629

徳島市「アンデスコンドル」
https://www.city.tokushima.tokushima.jp/smph/zoo/gallery/kantai/andean_condor.html

AFPBB News「死肉食べても食中毒にならないコンドルの謎、国際チームが解明」
https://www.afpbb.com/articles/-/3032710

福岡市動物園「コンドル」
https://zoo.city.fukuoka.lg.jp/animals/detail/56

ナショナルジオグラフィック「動物大百科 コンドル」
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20141218/428944/

札幌市円山動物園「アンデスコンドル」
https://www.city.sapporo.jp/zoo/b_f/b_03/db342.html

那須どうぶつ王国「アンデスコンドル」
https://www.nasu-oukoku.com/animals/farm/forestraptor/andean-condor.html

アイキャッチ画像
https://pixabay.com/images/id-3539312/