チンチラ

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チンチラは南米のアンデス山脈に生息している、ふわふわの毛と大きなしっぽがかわいいネズミの1種です。
ペットとして飼っている人もいるため、SNSやテレビなどで見かけたことがある人もいることでしょう。
しかしチンチラにはどんな特徴があるのか、飼う時にはどんなところに気を付ける必要があるのかなど、意外と知らないことも多いのではないでしょうか?
この記事でチンチラにはどんな特徴や秘密があるのか、一緒にのぞいていきましょう!


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~基本情報~

哺乳綱げっ歯目(げっしもく)-チンチラ科-チンチラ属

体長25~35cm 体重400~600g

チンチラは南米のアンデス山脈に生息する、げっ歯目の動物です。野生のチンチラは標高2000~5000メートルにもなる、植物もほとんど生えない寒くて乾燥した岩場で12~100頭ほどの群れを作って暮らしています。顔にはとても長いヒゲが生えていて、このヒゲですき間の大きさや幅などをチェックしています。

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野生のチンチラには生息地によって発情期がある、もしくは決まった発情期(はつじょうき)はないという説がありますが、ペットのチンチラには決まった発情期がないことが多いようです。オスは生後8.5か月、メスは8カ月ほどで性成熟(せいせいじゅく)を迎え、メスは性成熟を迎えるとそれ以降は30~50日の周期で発情を繰り返します。

妊娠期間(にんしんきかん)は105~118日ほどで、1回の出産で1~5頭(平均2頭)の子どもを産みます。チンチラの妊娠期間は他のげっ歯類よりも長いため、チンチラの赤ちゃんはしっかりと目が開き、毛が生えた状態で生まれてきます。(参考情報・ハムスターの妊娠期間は15~16日、ハツカネズミの妊娠期間は20日、モルモットの妊娠期間は60日ほど)

チンチラは昼間巣穴で休み、夜になると活動する夜行性の動物です。野生のチンチラは植物の葉や茎、根、樹皮、サボテンやコケなどあらゆる植物質を食べています。また水がほとんど存在しない場所に生息しているため、水分は雪解け水(ゆきどけみず)や霜(しも)、露(つゆ)から摂取していると考えられています。


チンチラはペットとしても人気の動物

チンチラはもともと野生動物ですが、ペットとしても人気があります。

チンチラは長生きするうえに病気になりにくく、とても賢いため正しく飼えばとても良いパートナーになってくれる動物です。しかしもともとアンデス山脈の高地に住んでいたチンチラには、チンチラならではの注意点がたくさんあります。そのためチンチラは誰にでもおすすめできるペットとはいえません。


チンチラを家で飼う時は何をあげたらいいの?

チンチラにはイネ科植物の牧草(※)を主食に、副食としてチンチラ用のペレットや野菜や果物をあげましょう。

草食動物であるチンチラが健康的に暮らすためには低カロリーで低タンパク質、食物繊維がたっぷり含まれた牧草をたくさん食べる必要があります。そのためチンチラの主食はペレットではなく牧草である、ということを覚えておきましょう。そしてチンチラがたくさんの牧草を飽きずに食べられるように、牧草の香りが飛ばないようにしっかりと封をして保管する、いろいろな種類やメーカーの牧草をあげるなどの工夫をしてください。

野菜や果物は人間にとっては害がなくても、タマネギやニンニクなどチンチラにとっては害があるものもあります。そのため野菜や果物をあげる時はそれをチンチラにあげても良いかどうか、必ず調べてからあげるクセを付けましょう。野菜はコマツナやチンゲンサイ、ニンジン、キャベツ、ブロッコリー、パセリ、カリフラワーなど、果物はリンゴ、メロン、バナナ、パイナップルなどはチンチラに与えても良いといわれています。

(※)一口にイネ科の植物といってもチモシーをはじめ、イタリアンライグラス、オーチャードグラス、バミューダグラスなどさまざまな種類があります。できれば入手しやすくて繊維質が多い、1番刈りのチモシーを主食にできるとベストです。


チンチラを飼育する環境について

チンチラはとてもジャンプ力があり、上下に移動する運動が好きな動物です。そのためケージはなるべく大きめで、高さがある物を選びます。ケージの中にはステップやロフト、ハンモックなどを設置して、上下移動がしやすいようにすると良いでしょう。体を動かすことが好きなので、つるすタイプのおもちゃや回し車などを設置すると喜んでくれるかもしれません。

チンチラに適する温度は20~25℃で、室温が26℃をこえると体調を崩しやすくなってしまいます。そのためチンチラを飼うと基本的に1年中(最低でも4月から10月くらいまで)エアコンをつけっぱなしにして、温度管理をする必要があります。

またチンチラは基本的に、トイレを覚えないものだと考えておいた方が良いでしょう。ただし中には完璧にトイレを使いこなす個体もいるため、ケージにトイレを設置しても構いません。なおチンチラのオシッコやウンチはそこまでニオイが強くないといわれています。


その他の注意点

チンチラはとても聴力(ちょうりょく)が優れているため、騒音や生活音でストレスを感じやすいといわれています。そのためチンチラにストレスがかからないように、ケージはなるべく静かで安定した場所に置いてください。

またチンチラをお風呂に入れる必要はありませんが、1日1回は砂浴びをさせてください。砂浴びをさせないと皮脂(ひし)で毛がからまってぼさぼさになったり、毛玉になったりして毛づやが悪くなってしまいます。なお砂浴び用の砂は皮脂やオシッコ、ウンチなどで汚れるため、定期的に交換してください。

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チンチラのQ&A

チンチラの名前の由来は何?

ところで「チンチラ」という少し変わったこの動物の名前には、どんな由来があるのでしょうか?その由来を知るためには、今から500年ほど前にさかのぼる必要があります。

野生のチンチラが生息するアンデス山脈には、「チンチャ族」という先住民族が住んでいました。チンチャ族の人たちは昔からチンチラを捕まえてその肉は食料に、毛皮は衣服や敷物に使っていたそうです。そして1500年代にスペイン人がアンデス山脈を植民地にした際、この動物はチンチャ族にちなんで「チンチラ」と呼ばれるようになったそうです。


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チンチラにはどんなカラーがあるの?

チンチラにはとても多くのカラーがあります。全部を紹介することはできませんが、チンチラのカラーとその特徴をいくつか見てみましょう。

ノーマル(スタンダードグレー)
一番有名でよく見かける、野生のチンチラと同じカラーです。全身が少し青みがかった灰色で、おなかの色は白色です。

バイオレット
全身が淡いすみれ色がかった灰色で、おなかの色は白色です。

ブラックエボニー
全身が黒色で、おなかの色も黒色です。黒色が薄い場合は“チャコール”や“マホガニー”と呼ばれることもあります。

モザイク(パイド)
白色の体に灰色や他の色の柄や模様が入ったカラーです。色や柄、模様の出方には個体差があります。

ホワイト
全身が白色で、耳や手足に灰色が入る個体もいます。

その他にもピンクホワイト、ベージュ(シナモン)、ブラックベルベット、サファイヤ、ゴールドバー、タンなど数多くの種類があります。


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チンチラは明るい性格で賢いって本当?

本当です。
チンチラは野生では肉食動物に食べられてしまう立場ですが、精神的にタフでいつも前向き、とてもポジティブな性格だといわれています。またとても感情や表情が豊かで、喜怒哀楽(きどあいらく)がはっきりしています。

そしてとても好奇心が旺盛で賢く、学習能力も高いため個体差はあるものの人になつきやすい傾向が強いといわれています。


出典:https://pixabay.com/images/id-1897799/

チンチラはとっても長生きって本当?

本当です。
チンチラの寿命はげっ歯類や小動物としてはとても長く、おおよそ10~15年だといわれています。しかし日々チンチラに関する研究が進み、専用のフードや医療が発達したことによって15歳をこえ、さらに20歳をこえて生きるチンチラも増えているといわれています。

ちなみにチンチラの寿命のギネス記録は、アメリカのカリフォルニア州で飼育されていた「RADAR」くんというオスのチンチラが持っています。RADARくんは驚くことに、29歳と229日まで生きたそうです。


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チンチラのしっぽにはどんな役割があるの?

チンチラのしっぽはとても大きく、体の毛より長くて硬い毛が生えています。ではチンチラの大きなしっぽには、どんな役割があるのでしょうか?

チンチラの大きなしっぽには、体のバランスを取るという役割があります。チンチラはしっぽを振ってバランスを取ることによって、足元が不安定な岩場でも驚くほどのスピードで飛び回れるのです。

なおチンチラもイヌやネコと同じように、しっぽを振ることがあります。しかしチンチラは機嫌が良い時や嬉しい時にしっぽを振るというよりは、機嫌が悪い時やオスが発情した時にしっぽを振ることが多いようです。チンチラがしっぽを振っている時は表情や鳴き声をよく確認して、どんな気持ちになっているか考えてみると良いでしょう。


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野生のチンチラは絶滅の危機にあるって本当?

本当です。
1500年頃にアンデス山脈がスペインに侵攻された時、チンチラの毛皮がヨーロッパに送られました。するとその質の良さからチンチラの毛皮は大人気になり、チンチラの毛皮を使ったコートが富裕層の間で大流行しました。するとアンデス山脈にはチンチラを捕まえようと、たくさんのハンターが押しかけたのです。

なんとチンチラのコートを1着作るためには、数百から1000匹ものチンチラの毛皮が必要なのだそうです。そのためハンターはたくさんのチンチラを捕まえる必要がありましたが、野生のチンチラは人を怖がらないため捕まえることは簡単だったといわれています。

チンチラは毛皮を取るために乱獲(らんかく)され続けたうえ、同時に生息地を開発されて住む場所や食べ物も失ってしまいました。あっという間に絶滅寸前に追い込まれてしまったチンチラですが、幸いなことに1910年にチンチラを保護するための条約が作られました。そしてそれ以降、チンチラは国際的に保護される対象となったのです。

なお現在はチンチラの飼育・繁殖の方法が確立していて、野生のチンチラを捕まえなくても毛皮を入手できるようになっています。実はチンチラの毛皮を利用しようと飼育と繁殖を行う中でその愛らしい見た目や性質が注目されて、ペットとしても飼われるようになったのだそうです。


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チンチラの種類

・オナガチンチラ
・タンビチンチラ
・コスチナチンチラ


参考文献

鈴木 理恵(2017年)『チンチラ完全飼育:飼育管理の基本からコミュニケーションの工夫まで (Perfect Pet Owner’s Guides)』誠文堂新光社

霍野晋吉(2019年)『カラーアトラスエキゾチックアニマル 哺乳類編 増補改訂版 ─種類・生態・飼育・疾病─』緑書房

河野 朝城(2011年)『小動物の飼い方図鑑 (ワイド版・動物図鑑シリーズ)』日東書院本社

Guinness World Records「Oldest chinchilla ever」
https://www.guinnessworldrecords.com/world-records/oldest-chinchilla-ever/

アイキャッチ画像
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