カラカル

出典:https://unsplash.com/photos/BlLrC0j7WSI

あなたはカラカルという、耳の先に房状(ふさじょう)の毛が生えた野生のネコ科動物を知っていますか?
カラカルは特徴的な耳の毛やジャンプ力が優れていることで有名な動物で、日本でも一部の動物園で飼育されています。
そんな彼らは人になつきやすいため王族のウサギ狩りや鳥の猟に使われてきた、という変わった歴史を持っています。
この記事でカラカルにはどんな特徴や秘密があるのか、一緒にのぞいていきましょう!


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~基本情報~

哺乳綱(ほにゅうこう)食肉目-ネコ科-カラカル属

体長60~92cm 体重8~19kg

カラカルはオオヤマネコに似ている、中型の野生ネコ科動物です。被毛(ひもう)は短毛で色は赤みがかった黄褐色で、特に目立った模様はありません。そんなカラカル最大の特徴は、耳の先に黒色で房状の毛が生えることです。

出典:https://www.pexels.com/ja-jp/photo/2278165/

カラカルは基本的に単独(たんどく)で暮らし、交尾をする時だけオスとメスが一緒に行動します。生後2年ほどで性成熟(せいせいじゅく)を迎えますが、特に繁殖期(はんしょくき)が決まっておらず、熱帯に生息するものは1年中、亜熱帯に生息するものは春に出産することが多いようです。妊娠期間(にんしんきかん)は69~78日ほど、1回の出産で1~6頭(平均2~3頭)の子どもを産みます。

野生のカラカルは木の洞や岩の割れ目などの安全な場所に羽毛や動物の毛を敷いた巣を作り、そこで出産します。子どもは最大で1年ほど母親と一緒に生活し、狩りや身を守る方法などの生きる術(すべ)を学んでいきます。


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カラカルのQ&A

カラカルの名前の由来は何?

カラカルという名前の由来はトルコ語の「黒い耳」という意味がある単語、「kara」(黒い)と「kulak」(耳)だと考えられています。カラカルの耳の裏や耳の先にある房毛(ふさげ)が黒いことから、このような名前が付けられたようです。

なおカラカルは英語で「Caracal(カラカル)」もしくは「Desert Lynx(デザートリンクス・砂漠のオオヤマネコ)」、学名は「Caracal caracal」と表現されます。漢字の名前や別名は特に見当たりませんでした。


出典:https://pixabay.com/images/id-4022731/

カラカルはどうしてそこに住んでいるの?

カラカルはインド、パキスタン、アフガニスタン、アフリカ大陸の森林やサバンナ、やぶ地など比較的乾燥した地域に生息しています。基本的に夜行性で昼間は茂みや岩の割れ目、木の上などに身を隠して休み、夜になると狩りに出かけて優れた聴力と視力で獲物を上手に捕まえます。

カラカルが生息している地域にはライオンやヒョウ、ハイエナなどの大型~中型肉食動物と、その獲物となる草食動物がたくさん生息しています。大きな動物が暮らしていけるだけの獲物が生息していることから、たくさんの獲物を必要とするカラカルもこれらの地域に生息しているものと考えられます。

またカラカルには岩の割れ目や深い茂み、ヤマアラシやツチブタが掘って捨てた穴を巣穴として利用する習性があります。もしかするとカラカルには良い巣穴を確保するために住む場所を選んでいる、という一面もあるのかもしれません。


出典:https://www.pexels.com/ja-jp/photo/2278163/

カラカルは何を食べているの?

野生のカラカルは小型のレイヨウや小動物(ハイラックス、ネズミ、ウサギなど)、鳥類やトカゲなどさまざまな動物を捕まえて食べています。ネズミなどの小さなげっ歯類(げっしるい)を獲物にしている場合、なんと年間3000匹もの獲物を捕まえるといわれています。

カラカルの狩りは主に忍び寄り(しのびより)と待ち伏せ(まちぶせ)の手法が使われることが多く、獲物から2~3mほどの距離まで忍び寄り、獲物が油断したすきを見計らって飛びかかって一気に捕まえます。夜行性の傾向が強いといわれていますが、昼間に狩りを行うこともあります。

なお動物園ではエサとして馬肉や鶏肉、鶏頭(けいとう)を与えていることが多いようです。


カラカルの耳にはなぜ長い毛(飾り毛)が付いているの?

なぜカラカルの耳の先には、特徴的な長い毛が生えているのでしょうか?

実はこの毛がある理由ははっきりとわかっていませんが、音を集める「集音効果(しゅうおんこうか)」があり、カラカルはこの効果を利用して獲物が発するわずかな音や風の動きなどを感知しているのではないかと考えられています。特に鳥が発する、超音波の振動を感じ取る時に役立っているようです。

ちなみにこの毛は「リンクスティップ」と呼ばれていて、オオヤマネコの耳にも生えています。カラカルもオオヤマネコも耳の毛を切られてしまうと音が聞こえにくくなり、狩りの成功率が下がってしまうそうです。

なお耳の毛は仲間同士でコミュニケーションを取る時に使っているのではないか、という説もあります。


出典:https://unsplash.com/photos/w-AAV86xQN0

カラカルは運動能力が高いって本当?

本当です。
カラカルは四肢が長くて後肢(あとあし)の筋肉がよく発達しているため、助走をつけずに2~3mの高さまでジャンプできます。なんと地上からジャンプして、空を飛んでいる鳥を捕まえることもできます。

また体の割に前肢(まえあし)が大きく、爪が鋭く発達しているため自分の体重の3倍くらいある獲物も倒せるといわれています。実際にカラカルの生息地では自分より体が大きいレイヨウや、地上最大の鳥であるダチョウに襲い掛かる姿も目撃されています。


出典:https://unsplash.com/photos/7bfQMyGBQZg

カラカルは人に慣れやすいって本当?

本当です。
カラカルは精悍(せいかん)な顔つきをしていますが、特に若いうちは人に慣れやすいといわれています。そのためかつてインドやイランの王族はカラカルを飼いならし、ウサギ狩りや鳥の猟をする時のパートナーとして使っていたそうです。


出典:https://www.pexels.com/ja-jp/photo/789584/

カラカルはペットとして飼えるの?

とても魅力的な動物であるカラカルですが、個人がペットとして飼うことはできるのでしょうか?

カラカルは日本の法律で人の命や財産に危険を及ぼす可能性がある、「特定動物(とくていどうぶつ)」に指定されています。令和2年6月1日以降新たに特定動物を愛玩目的(あいがんもくてき・ペットとして飼うこと)で飼うことは全面的に禁止されたため、日本国内においてカラカルをペットとして飼うことはできません。しかし令和2年5月より前は決められた条件をクリアすれば個人でも特定動物を飼えたため、今もカラカルをペットとして飼っている人はいるかもしれません。

出典:https://unsplash.com/photos/HgIu6cX-Yhw

なおカラカルはアジアに生息する個体は「ワシントン条約」(※)という条約の附属書(ふぞくしょ)Iに、その他の地域に生息する個体は付属書Ⅱに掲載されています。少しだけ難しい話になってしまいますが、付属書Ⅰに掲載されている動物は商業目的(しょうぎょうもくてき)での輸出入(ゆしゅつにゅう)が禁止されていて、付属書Ⅱに掲載されている動物は商業目的での輸出入はできますがその際輸出許可書などの書類が必要だと決められています。

つまりアフリカなどに生息するカラカルを購入することは不可能ではありませんが、現在の日本ではカラカルをペットとして飼うことはできません。

(※)ワシントン条約
正式な名前は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」で、絶滅が心配されている動物そのもの、動物の体の一部もしくは全部を使った製品を輸出・輸入する時の国同士の取り決めのことを指します。


カラカルは鳴き声がかわいいって本当?

本当です、カラカルにはさまざまな鳴き声があることが知られています。

カラカルはイエネコと同じように「ニャー」「ニャーオ」と鳴くほか、威嚇(いかく)する時は「シャー」という音を出します。また「ミャルルル」「ピルルル」といった不思議な声で鳴くこともあり、SNSで赤ちゃんカラカルの鳴き声がポケモンのようだと話題になったこともあります。


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カラカルはどのくらい生きるの?

カラカルの寿命は野生下で10~12年、飼育下で15~18年だといわれています。

2007年まで北海道の札幌市円山動物園で飼育されていたオスのカラカル、「ケン」は15才8ヶ月まで生きました。


出典:https://pixabay.com/images/id-1352255/

カラカルにはどんな敵がいるの?

野生のカラカルの天敵はライオンやヒョウ、ハイエナなどの自分よりも体が大きな肉食動物です。カラカルは時にこれらの動物に捕食(ほしょく)されてしまうこともあります。

しかしカラカルにとって、最大の敵は私たち人間です。カラカルは昔からペットとして飼うためや狩りに使うために、たくさんの個体が捕まえられてきました。またヤギやヒツジ、子ウシやニワトリなどの家畜や家禽(かきん)を襲うことから農民に嫌われて際限(さいげん)なく駆除(くじょ)されてしまい、地域によってはかなり数を減らしてしまっているのが現状です。


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参考文献

今泉 忠明(2004年)『野生ネコの百科』データハウス

東京ズーネット「どうぶつ図鑑 カラカル」
https://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/species_detail?species_code=29

大内山動物園「動物図鑑 カラカル」
http://www.oouchiyama-zoo.com/animals/6547/

札幌市円山動物園「カラカルの「ケン」が天国へ旅立ちました」
https://www.city.sapporo.jp/zoo/topics/topics2-19.html

CAROLINA TIGER RESCUE「Caracal」
https://carolinatigerrescue.org/species/caracal/

SmartFLASH「アンタッチャブル・柴田が聞く「ネコ科動物」がっかり雑学(2)」
https://smart-flash.jp/lifemoney/10283

アイキャッチ画像
https://pixabay.com/images/id-4971633/