ラクダ
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ラクダ
背中に大きなコブを持ち、長いまつ毛の優しい目をしたラクダ。 このラクダのコブや長いまつ毛、そしてその大きな体には、過酷な環境を生き抜いて進化してきた、驚きの知恵と歴史が隠されています。
ラクダ 基本情報
ラクダの体には砂漠や荒れ野でも生きていける仕組みが備わっています。 指は2本で蹄は小さいけれど、足の裏には、クッションのようにやわらかく平たい大きな肉球(蹠球・しょきゅう)があり、砂漠の砂の上でも沈み込まずに、じょうずに歩けます。
ラクダの長い二重のまつ毛やボサボサの眉毛(まゆげ)は、砂漠の砂嵐から目を守ります。また、ラクダの目がうるんでいるのは、目を乾燥から守る粘液(ねんえき・ねばりけのある液)が目をおおっているから。この粘液には脂肪分(しぼうぶん・水にとけない成分)が含まれているので、砂漠のように乾燥した場所でも、水分が蒸発しにくいのです。また、ラクダの目には哺乳類には珍しい「瞬膜(しゅんまく)」があります。この透明の膜は左右に開閉し、ゴーグルのような役目をします。
最初のラクダはウサギぐらいの大きさだった
ラクダの祖先は約4500万年前、現在の北アメリカ大陸に現れたウサギぐらいの大きさの動物だったと考えられています。その後、北米大陸が寒い時期に向かうと、寒冷化に耐えるために体を大きくしていったグループと、寒さを避けて南アメリカ大陸まで移動したグループがありました。大型化したほうのグループの一部は、その後2〜300万年前ごろにベーリング陸橋(今のベーリング海峡が陸でつながっていた時の二つの大陸をつなぐ道)を渡り、ユーラシア大陸に移動していきました。このラクダが現在のラクダへと進化していったのです。
アルパカやラマはラクダの親戚だった!
寒さを避けて南米まで移動していったグループは、互いに近縁の4種、ラマ・アルパカ・グアナコ・ピクーニャが生き残っています。そういえば、体の大きさやコブの有無は違うけれど、ラクダと似ているところがありますよね。 さて、北米に残ったラクダたちはその後どうなったでしょう。実は北アメリカに残ったラクダたちは約1万2000年~ 1万年前、氷河期の終結する時期に最初のヒトが北アメリカ大陸に移住したのと同時期に姿を消しました。絶滅の理由は、ヒトに狩りつくされたため、環境の変化に適応できなかったため、とも考えられますが、正確なところはわかっていません。
ラクダの肉球・かわいい目にも意味がある!
ラクダの体には砂漠や荒れ野でも生きていける仕組みが備わっています。 指は2本で蹄は小さいけれど、足の裏には、クッションのようにやわらかく平たい大きな肉球(蹠球・しょきゅう)があり、砂漠の砂の上でも沈み込まずに、じょうずに歩けます。
ラクダの長い二重のまつ毛やボサボサの眉毛(まゆげ)は、砂漠の砂嵐から目を守ります。また、ラクダの目がうるんでいるのは、目を乾燥から守る粘液(ねんえき・ねばりけのある液)が目をおおっているから。この粘液には脂肪分(しぼうぶん・水にとけない成分)が含まれているので、砂漠のように乾燥した場所でも、水分が蒸発しにくいのです。また、ラクダの目には哺乳類には珍しい「瞬膜(しゅんまく)」があります。この透明の膜は左右に開閉し、ゴーグルのような役目をします。
鼻と耳は砂漠の砂嵐だって怖くない!
ラクダの鼻と耳も砂漠の砂嵐をも物ともしません。長いマツゲ同様に、耳毛も鼻毛も長く、砂が入り込むのを防ぎます。さらにラクダの鼻は開閉自在。激しい砂嵐が起きるとピタッと閉じて砂塵をシャットアウト。だから激しい砂嵐にあってもラクダは大丈夫なのです。
ラクダは砂漠の熱い砂の上に座ってもへいちゃら!
ラクダの体には胼胝(たこ)とよばれる皮膚が厚く硬くなった部分があります。その場所は、左右の前脚の付け根、後脚の膝(ひざ)、胸の5か所。ラクダは砂漠の熱い砂の上に座るとき、この5か所を地面につけて座ります。胼胝は断熱性に優れているので、ここを接地して座れば、高温に熱された砂漠の砂の上でも平気で座って休めるのです。
ラクダは、体の中の水分も再利用しちゃうエコな体を持っている
開閉自在なラクダの鼻は、水分を節約する役割も果たしています。鼻を閉じることによって大切な水分も逃がさないだけでなく、肺から出る呼気の水分を一部回収することもできます。この役割を果たすのは鼻の中と鼻の奥にあるにあるたくさんの粘膜のヒダ。ヒダが広がると空気と触れる面積が増え、そこに空気を吸い込むと、粘膜の水分が蒸発して冷え、そこに肺から吐き出される湿った息が通ると冷えた粘膜で水分が結露し、その結露を回収するのです。 また、ラクダは他の動物とは違う肝臓機能(かんぞうきのう)・腎臓機能(じんぞうきのう)を持ち、尿をろ過してリサイクルすることができます。そのため、ラクダのオシッコは他の動物よりも濃いオシッコとなります。さらにラクダは塩分濃度の高い水でも飲むことができるんです。このように必要な水分は逃がさず、取れる水分は最大限に利用するので、体の3割から4割の水分を失っても生存できるのです。
ラクダは赤血球に水分を貯められる
ラクダは砂漠の中でどのように水分補給をしてるのでしょうか。実はラクダは一度にとてもたくさんの水を飲むことができます。そして余分な水分は、血液の中にためこまれます。普通の動物は血液の中の水分が多すぎると赤血球(せっけっきゅう)が破裂してしまいます。しかしラクダは大丈夫! なんとラクダの赤血球は、はちきれることなく約2倍の大きさまでふくらむことができるのです。
ラクダは汗をかかない
さらにラクダは、水分を逃がさない仕組みを体に持っています。 ラクダの体温は通常は36℃ぐらいですが、34℃~40℃まで体温を調節することができます。この体温調節もまた、水分を逃がさない役割の一端を担っています。気温が高い時には熱をため込み、体温を上げることによって汗をかくのを防ぎ、水分を逃がさないで暑さに耐えることができます。また砂漠の寒い夜には熱を放出し体温を下げて寒さをしのぎます。だから気温差の激しい砂漠でも生きていけるのですね。
ラクダのコブは、ぷにゅぷにゅしてる
そして、ラクダといえば背中のコブ! 動物園でラクダライドなどをするときに触ってみるとわかるのですが、ラクダのコブって、ぷにゅぷにゅしてやわらかいんです。じつはラクダのコブの中身は脂肪分。コブがいっぱいの時は50kg近い脂肪分が入っているんですよ。 この脂肪分は食べ物を食べてカロリーを蓄積して作ります。この脂肪分をエネルギーに変えることができるので、ラクダはコブがいっぱいになると、食べ物がなくても4~5か月は生きのびることができるそうです。すごいですね!
ラクダ Q&A
ラクダの名前の由来は?
ラクダの名前の由来にはいろいろな説がありますが、中国名の「駱駝(らくだ)」と、その正式名「橐駝(たくだ)」から来ているという説が有力視されています。「橐(たく)」は袋を意味し「駝」は獣、つまり、”荷物を背負う獣”を意味しています。おそらく、この「たくだ」がの音が転化してラクダとなったのではと考えられています。
ラクダはどうしてそこに住んでいるの?
ラクダは、砂漠気候やステップ気候など、乾燥した気候の地域に住んでいます。ヒトコブラクダは西アジア原産でインド・イラン・アフリカ大陸に、フタコブラクダは中央アジア原産でトルコ・イラン・モンゴルに住んでいます。 ラクダは砂漠などの乾燥した厳しい自然環境の中でも生きていけるように進化しましたが、逆に湿潤(しつじゅん・湿度が高い)な気候では生きていけません。足が湿地帯を歩くには不向きで、また、湿潤気候に多く発生する伝染病への抵抗力もないからです。
ラクダは何を食べているの?
野生のラクダは主に木の葉や草、豆、トウモロコシなどを食べて生きていますが、トゲのあるサボテンを食べることもあります。サボテンを食べるなんて、痛そうですよね。また、動物園など、飼育下にあるラクダは、干し草や木の葉、にんじんなどの野菜、パンやペレットなどを食べます。
ラクダはサボテンを食べても大丈夫なの?
はい。ラクダはサボテンを食べても大丈夫な口を持っています。ラクダは大きく硬い唇を使ってサボテンを口の中に運び、硬い上顎(うわあご)にサボテンを押しつけ、歯ですりつぶします。また、ラクダの口の中には、乳頭(にゅうとう)と呼ばれる円すい形の突起がたくさんあり、この乳頭を使って食べ物を一方向に整え、トゲが刺さらない様に胃に流し込みます。この乳頭の一部は人間の爪と同じ硬い物質「ケラチン」でできています。そのおかげでラクダは、サボテンを食べることができるのです。
ラクダは口から胃袋を出すってウワサがあるけど本当?
口からピンク色の大きな袋状のものを出している、ラクダの写真を見たことがある人もいるかもしれません。でもそれは、胃袋でも内臓でも舌でもありません。これは喉の「口蓋(こうがい)」奥の方の部分で、ラクダは発情のときや興奮したときに、これをブクブクと膨らませて口から出すことがあります。
ラクダはいつごろから人間に飼われるようになったの?
ヒトコブラクダが家畜化されたのは、おそらくアラビアで行われたものと考えられています。家畜化された時期は、紀元前2000年以前~紀元前4000年、紀元前1300 -~1400年などの説があります。その後、アラビアから北アフリカ、東アフリカなどへと広がっていきました。フタコブラクダは紀元前2500年頃、イラン北部からトルキスタン南西部にかけての地域で家畜化され、イラク、インド、中国へと広がったものと推測されています。
ラクダはどのくらい重い荷物を運べるの?
ラクダは1頭あたり200kg~500kgもの荷物を運べます。しかも他の動物では越えることができない乾燥地域(かんそうちいき)でもラクダは重い荷物を背負って歩くことができるので、特にアラブ世界では自動車が普及するまでは、重要な移動手段として使われて「砂漠の船」「神様からの贈り物」とも呼ばれてきました。
また、現代でもアフリカのマリ共和国では2000頭から3000頭ものラクダのキャラバンが、往復1500km、計40日もかけて砂漠を超え、「タウデニ」の塩を運んでいます。
野生のラクダはいるの?
野生のヒトコブラクダは絶滅してしまいました。ただオーストラリアや中国の奥地では、家畜化されたヒトコブラクダが逃亡したりして野生化したものがいます。フタコブラクダには野生種が生き残っていますが、世界中で約1000頭しかいないとされ、絶滅危惧種に指定されています。
ラクダの寿命はどのくらい?
ヒトコブラクダの半野生での寿命は30~40年、飼育下では40~50年程度の寿命と言われています。また、フタコブラクダの寿命は20~30年程度と考えられていますが、40年近く生きることもあります。ヒトコブラクダの方が長生きなんですね。
ラクダの鳴き声は?
ラクダの声は、低めの声で「ゴ~~~~」とも「ウオ~~~~」とも聞こえる、よく響く声です。
ラクダはどのくらい速く走れるの?
ラクダは時速40~60kmもの速さで走ることができます。アラビア半島やオーストラリアでは、競馬ならぬ競駝(けいだ)があり、ヒトコブラクダによる競争が行われています。競馬よりも長い10km程度の砂漠コースを周回して順位を競います。砂漠の中を自動車のような速さで、しかも長い距離を走れるなんてすごいですよね。
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ラクダ 種類
- ラクダ属 Camelus ・ヒトコブラクダ Camelus dromedarius。 ・フタコブラクダ(Camelus ferus(野生種) ・フタコブラクダCamelus bactrianus(家畜種)。
- 絶滅種 ・カメルス・ギガス Camelus gigas ・ カメルス・ヘステルヌス Camelus hesternus ・カメルス・シヴァレンシス Camelus sivalensis
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ラクダ 参考文献
- wikipedia フリー百科事典 ラクダ https://ja.wikipedia.org/wiki/ラクダ
- weblio辞書 https://www.weblio.jp/wkpja/content/ラクダ_牧畜
- 横浜ズーラシア http://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/zoorasia/details/post-2411.php
- アニマル雑貨けものやさん http://kemonoyasan.web.fc2.com/ar0camelidae01.html
- ナショナルジオグラフィック 動物図鑑
- 名古屋学院大学論集/ユーラシア大陸におけるラクダ科動物の家畜化jinbun_vol5402_05.pdf
- 雑学カンパニー https://zatsugaku-company.com/camel-eyelids-triple/
- 水知識 砂漠に生きるラクダの生態 https://www.aquas5.com/knowledge/30/001335.php
- ナゾロジー https://nazology.net/archives/72152
- キッズネット https://kids.gakken.co.jp/kagaku/kagaku110/science0142/
- ログミーBiz https://logmi.jp/business/articles/323104
- サントリー 水大辞典 https://www.suntory.co.jp/eco/teigen/jiten/science/08/
- 地質ニュース ラクダと石 https://www.gsj.jp/data/chishitsunews/04_11_09.pdf)
- 写真でイスラーム https://mphot.exblog.jp/920365/
- pet pedia ひとこぶらくだ.com https://petpedia.net/article/425/camel
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