ボノボ
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ボノボ
あなたはボノボという、チンパンジーにそっくりな類人猿の1種を知っていますか? 日本の動物園では飼育されていないため、初めて名前を聞いたという人もいるのではないでしょうか。 彼らは遺伝子的に人間に近くてとても知能が高く、争いを避ける平和主義な動物であることが知られています。 この記事でボノボにはどんな特徴や面白い秘密があるのか、一緒にのぞいていきましょう!
ボノボ 基本情報
哺乳綱(ほにゅうこう)霊長目(れいちょうもく)-ヒト科-チンパンジー属
オス 体長90~100cm 体重50kg メス 体長90~100cm 体重30~40kg
ボノボは私たち人間と同じ霊長目の動物で、霊長類の中でも特に人間に似た知能の高い動物とされる「類人猿(るいじんえん)(※)」の1種です。(※類人猿はボノボ、チンパンジー、ゴリラ、ボノボ、テナガザルの5種)ボノボは木登りが上手で木の上で食事をしたり休んだりしますが、長い時間二本足で立ち上がって歩くこともできます。彼らが二本足で立ち、歩く姿はまるで人間のようです。
ボノボはチンパンジーとそっくりな見た目をしていますが、体はボノボの方がチンパンジーより一回り小さめです。そんなボノボとチンパンジーは人間と共通の祖先を持っていて、遺伝子的に最も人間に近い動物だとされています。
ボノボのメスは生後12年ほどで性成熟(せいせいじゅく)を迎え、繁殖ができるようになります。ボノボの妊娠期間(にんしんきかん)は220~230日ほど、1回の出産で通常1頭の赤ちゃんを産みます。通常メスは子どもを4~5歳になるまで大切に育て、生涯で5~6頭の子どもを産みます。
ボノボ Q&A
ボノボの名前の由来は何?
ボノボという少し変わった名前は、ボノボが最初に捕獲された村の名前に由来するといわれています。 実はその村の名前は「Bolobo」だったのですが、うっかり「Bonobo」と書き間違えられてしまい、そのまま間違った名前が広く伝わってしまいました。そして「Bonobo(ボノボ)」がこの動物の名前になってしまった…という面白い経緯があるそうです。
ボノボは英語では「Bonobo」もしくは「Pygmy chimpanzee」、学名は「Pan paniscus」と表現されます。和名では「ピグミーチンパンジー」と呼ばれることもありますが、漢字での表現方法があるかどうかはわかりませんでした。
実はチンパンジーは今から300年以上前に発見され、その存在が広く認知されていました。しかしボノボはチンパンジーと見た目が非常に良く似ていること、そして人が立ち入りにくいアフリカの中央部にあるコンゴ盆地の熱帯雨林にだけ生息していることから、長い間チンパンジーと別の動物だと考えられることすらなかったそうです。
その後1928年になってようやくコンゴ盆地に生息する動物はチンパンジーと別の特徴を持つことがわかり、1929年になってようやく新種の動物だと認められました。ボノボは当初チンパンジーの亜種だと考えられて「ピグミーチンパンジー」と呼ばれていましたが、今は「ボノボ」と呼ばれることが一般的になっています。
ボノボはどうしてそこに住んでいるの?
ボノボはアフリカの中央部の赤道付近に広がる、コンゴ盆地の熱帯雨林にだけ生息しています。
コンゴ盆地にはコンゴ川という普通の動物は渡れないほど大きな川があり、チンパンジーやゴリラはコンゴ川の外側に生息しています。そんなコンゴ川には100~180万年ほど前に川の水位が低くなった時期があったと推測されていますが、なぜかボノボの祖先はその時期にコンゴ川を渡り、今の生息地であるコンゴ盆地にたどり着いたと考えられています。
そしてコンゴ川に守られたボノボの祖先は他の類人猿たちと混じることなく、独自の進化を遂げて今の姿になったようです。
ボノボは何を食べているの?
ボノボは雑食性の動物で、果実を主食に植物の種子や葉っぱ、花や昆虫を食べています。時には小型の哺乳類を捕まえて食べることもありますが、積極的に狩りを行うことは少ないようです。
ボノボが暮らす熱帯雨林は非常に豊かなところで、ボノボの好物である果実が食べきれないほどなっているそうです。そのためかボノボには“食べ物をおすそ分けする”という面白い習性があることが知られています。野生のボノボは“ボリンゴ”と呼ばれるラグビーボールくらいの大きな果実を見つけると、自分の群れのメンバーはもちろん、他の群れのメンバーにも分け隔てなくおすそ分けをします。この時おすそ分けをされる側が大きなかけらを取ってしまい、少しだけ険悪な雰囲気になることはありますが、その後争いが起きることはほとんどありません。
ボノボとチンパンジーにはどんな違いがあるの?
ところでボノボとチンパンジーには、どんな違いがあるのでしょうか?ボノボとチンパンジーは同じ祖先をもつ動物で見た目もそっくりですが、さまざまな違いがあることが知られています。
まずボノボは争いを避ける平和主義な動物でメスの方が社会的な地位が高く、メスは一番順位が高いオスに交尾に誘われても相手にしないこともあります。また子どものうちから顔の色が黒いこと、野生では道具を使わないこと、水を怖がらないこともボノボの特徴とされています。
一方のチンパンジーは争いを避けない攻撃的な動物でオスの方が社会的な地位が高く、メスは一番順位が高いオスに交尾を迫られたら応じるほかありません。また子どものうちは顔の色が肌色であること、野生でも道具を使うこと、水が嫌いで体が水につかることを嫌がることがチンパンジーの特徴とされています。
ボノボはどんな性格なの?平和主義な動物って本当?
「ボノボとチンパンジーにはどんな違いがあるの?」でも少しお話しましたが、ボノボはとても穏やかな性格で争いを避ける平和主義な動物です。
チンパンジーはかわいらしく賢いイメージとは裏腹に、実は攻撃的で凶暴な一面を持っています。野生では時にオス同士のメスをめぐる争いが殺し合いに発展したり、オスによる子殺しや共食いが起こったりすることがありますが、ボノボではこのような争いが起きることはめったにありません。
ボノボは仲間同士での争いを避けるため、さまざまな方法で仲間とコミュニケーションを取ります。彼らは鳴き声を使い分けて自分の気持ちを仲間に伝えるほか、性的な行動(性行動)をコミュニケーションに使うという面白い習性を持っています。
中でも特に有名なのは「ホカホカ」と呼ばれる、メス同士で性器をこすりあわせる行動です。オス同士でも「尻つけ」「チャンバラ」と呼ばれる尻や性器をぶつけあう行動が、また子どもが大人に対して(大人が子どもに対して)交尾のまね事をする行動もよく見られます。 ボノボにとってこれらの行動はあくまで挨拶やコミュニケーションの1つの方法であり、人間でいうハグに近い意味を持つようです。どの行動にもいやらしい意味がこめられていることはなく、お互いの気持ちを緩めて平和的に争いや緊張を解決するために行われていると考えられています。
またボノボはよそ者にも敵対心(てきたいしん)を示さず、むしろよそ者に興味を示して交流を持とうとする傾向があります。チンパンジーはよそ者を見ると敵対心をむき出しにして、なわばり争いともなれば時に殺し合うこともあります。こうやって見てみるとボノボとチンパンジーは遺伝的に非常に近く、見た目もそっくりな動物であるにも関わらず、全く違う性格であることがわかりますね。
ボノボにはどのくらいの知能があるの?
ボノボは他の類人猿と同じく、非常に高い知能を持っている動物だといわれています。特にアメリカのジョージア州立大学言語研究センターで暮らす、「カンジ」というオスのボノボとその妹「パンバニーシャ」は人の言葉を理解できることで有名です。
カンジは300個以上の図形文字を覚えていて、人の話す言葉(英語)を正確に聞き取って理解できるそうです。またカンジとパンバニーシャは図形文字が描かれたキーボードを操り、自分の意思や欲しい物を人間に伝えられます。パンバニーシャは手先がとても器用でハサミを使ってカンジや自分の子どものグルーミングを行ったり、マウスを上手に操って大好きなパソコンのゲームで遊んだりするそうです。
カンジとパンバニーシャは野生出身ではなく、アメリカで生まれて小さなころから人間に育てられたボノボです。そのため野生で暮らす全てのボノボが、この2頭と同じことができるかどうかわかりません。しかしさまざまなコミュニケーションの方法を使って争いを避けることを見ても、ボノボは非常に高い知能を持っているものと考えられます。
ボノボはペットとして飼えるの?
ところでボノボはペットとして飼えるのでしょうか?
ボノボを含む“チンパンジー属”の動物は全て日本の法律において人の命や財産に危険を及ぼす可能性がある、「特定動物(とくていどうぶつ)」に指定されています。令和2年6月1日以降特定動物を新たに愛玩目的(あいがんもくてき・ペットとして飼うこと)で飼うことは全面的に禁止されたため、日本国内においてボノボをペットとして飼うことはできません。
またボノボは「ワシントン条約」という条約で、“チンパンジー属全種”というくくりで付属書Ⅰ(ふぞくしょ)に分類されています。付属書Ⅰに分類されている動物は世界的に保護されているため、研究などの特別な目的がない限り国と国の間で取引ができないと決められています。ボノボはアフリカから野生の個体を輸入することが厳しく制限されているため、動物園でもボノボを輸入すること自体が難しいのが現状です。
ボノボを見られる場所ってあるの?
令和3年時点で、日本国内の動物園でボノボを飼育展示している施設はありません。
熊本県にある京都大学の野生動物研究センター熊本サンクチュアリで6頭のボノボが暮らしていますが、あくまで研究施設であることから動物園のように気軽に遊びに行ける場所ではありません。しかしときおり見学ツアーが開催されることがあるようなので、興味がある人はチェックしてみると良いでしょう。
なおボノボは非常に繊細でストレスを感じやすく、飼育下に置くと毛が抜けやすいそうです。
ボノボはどのくらい生きるの?
実はボノボの寿命は、今もはっきりとわかっていません。非常に近い動物であるチンパンジーの寿命が40~60年程度だといわれているので、ボノボの寿命も同じくらいなのかもしれません。
ボノボは新種の動物だと明らかになってからまだ100年程度しかたっていないため、野生下はもちろん飼育下の情報も多いとはいえない動物です。今後研究が進み、寿命をはじめとしたさまざまな情報が明らかになることを期待したいですね。
ボノボにはどんな敵がいるの?
野生のボノボにはほとんど天敵はいませんが、ヒョウやニシキヘビがボノボを捕食している可能性があるとされています。
しかし実はボノボにとって、最大の天敵は私たち人間です。 1980年代のコンゴ国内の熱帯雨林には10万頭のボノボが生息していましたが、現在は2万頭ほどしかいないと考えられています。ボノボが激減してしまった原因はコンゴ民主共和国で長く内戦が続いていたこと、ブッシュミート(食用にするための野生動物の肉のこと)やペットにするために密猟(みつりょう)されたこと、開発により環境が破壊されたことなどがあげられます。
コンゴでは世界遺産にも登録されている「サロンガ国立公園」という大きな国立公園を設立し、貴重な野生動物、特にボノボを保護しようとしています。しかし人口の増加により、国立公園周辺の環境が悪化してしまうのではないかと心配されています。
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ボノボ 参考文献
- 古市剛史(2013年)『あなたはボノボ、それともチンパンジー?』朝日選書
- ミツカン 水の文化センター「ヒトが「ボノボ」から学ぶこと~コンゴ川を渡った平和主義者たち~」 http://www.mizu.gr.jp/images/main/fudoki/people/058_furuich/058-furuichi.pdf
- WWF「Bonobo」 https://wwf.panda.org/discover/knowledge_hub/endangered_species/great_apes/bonobo/?
- 参議院「地図にない動物研究施設を訪れて ― 京都大学野生動物研究センター熊本サンクチュアリ訪問記 ―」 https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2016pdf/20160601041.pdf
- 京都大学霊長類研究所 チンパンジー・アイ「ボノボのカンジとパンバニーシャが描いた絵」 https://langint.pri.kyoto-u.ac.jp/ai/ja/album/bonobo-kanzi-panbanisha-drawing.html
- 京都大学霊長類研究所 チンパンジー・アイ「果実を分け合うボノボ」 https://langint.pri.kyoto-u.ac.jp/ai/ja/k/127.html
- AFP BB News「ボノボを絶滅から救え、コンゴに新たな保護区」 https://www.afpbb.com/articles/-/2607598
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