ブタ
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ブタはくるんと巻いたしっぽと大きな鼻が特徴的な、誰もが知っているとても有名な動物です。 とても身近な動物であるブタですが、意外と近くで見たことがないという人も多いのではないでしょうか? ブタの秘密を知ると、牧場や動物園でブタに会った時に今までと違う見方ができるかもしれません。 それではブタにはどんな特徴や秘密があるのか、こっそりのぞいていきましょう!
ブタ 基本情報
哺乳綱鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)-イノシシ科-イノシシ属
大ヨークシャー 体重・オス370Kg メス340Kg ランドレース 体重・オス330Kg メス270Kg
ブタは野生のイノシシを家畜化(かちくか)した動物で、野生には生息していません。ブタの祖先(そせん)であるイノシシはヨーロッパからアジアにかけて広く生息している動物で、私たち人間は古くからイノシシを捕まえてそのお肉を食べていました。 しかしもっとお肉を安定的に、かつたくさん欲しいと考えた私たちの祖先は1万年ほど前から捕まえたイノシシを飼うようになりました。世界中の人間が同じことを考えたようで、ヨーロッパや西アジア、中国などでイノシシの家畜化が行われた形跡(けいせき)が残っているそうです。
ブタもイノシシも基本的に母親とその子どもを中心とした、数頭の群れで暮らす動物です。イノシシの場合オスは生まれて1年ほどで群れから離れて1頭で暮らすようになり、繁殖期になるとメスを探して山の中を歩き回ります。
ブタには決まった繁殖期(はんしょくき)はなく、1年を通して妊娠と出産ができます。妊娠期間(にんしんきかん)は約114日で、1回の出産で10頭ほどの子どもを産みます。一方イノシシの繁殖期は春から夏に限られ、妊娠期間はブタと同じ約114日で1回の出産で5頭ほどの子どもを産みます。
ブタもイノシシも雑食性(ざっしょくせい)の動物で、基本的にどんな物でも食べます。家畜のブタは配合飼料(はいごうしりょう)と呼ばれるトウモロコシや大豆かす、フスマなどの主原料(しゅげんりょう)にブタの成長に必要なビタミンやミネラルなどを加えた専用のエサを食べています。野生のイノシシは植物の葉や根、果実、種子、昆虫やカエルなどあらゆる物を食べています。
ブタはペットとしても飼える
ブタはお肉を取るために飼われることが多い動物ですが、ペットとして飼うこともできます。
ペットとして飼われるのは「ミニブタ」や「マイクロブタ」(※)と呼ばれるブタで、どちらもお肉用のブタに比べると体が大きくならないという特徴を持っています。お肉用のブタは体重が200~300Kgくらいになりますが、ミニブタは大人になっても体重が50Kgほど、マイクロブタは大人になっても体重が40Kgほどにしかなりません。
ブタはとても知能が高いことで知られていて、イヌと同じかそれ以上に賢いといわれています。その賢さやかわいらしさから、近年ブタをペットとして飼う人が増えているそうです。
(※)ミニブタとマイクロブタについて ミニブタには「ゲッチンゲン」や「ポットベリー」といった品種がありますが、実はマイクロブタにはこれといった品種がありません。マイクロブタのブリーダーは体が特に小さいブタのことをマイクロブタと呼んでいるようですが、今のところマイクロブタにはっきりとした定義(ていぎ)はありません。
ブタを家で飼う時は何をあげたらいいの?
ブタを飼う時はミニブタ用のペレットを主食にして、副食に野菜や果物をあげましょう。 1つ覚えておいて欲しいのが、ペットとして飼うブタにはお肉用のブタの飼料(配合飼料)をあげてはいけないということです。なぜなら配合飼料は早くたくさんのお肉を取るために作られたエサなので、あまり太らせずに長生きをさせたいペットのブタには向かないからです。
ブタはとにかく食欲がすさまじく、エサをたくさん食べたがります。しかしかわいいからといってたくさん食べさせてしまうとあっという間に体重が増え、どんどん体が大きくなってしまいます。太りすぎは病気の原因にもなるため、ペレットは必ず決められた量をあげるようにしましょう。 お腹が減っている時間をなるべく短くするためにエサは1日に複数回に分け、少量ずつあげると良いでしょう。お腹が減ると騒ぎだすこともありますが、そんな時は野菜や果物(カロリーが低くて食物繊維や水分が多い物)を少しあげると落ち着きます。
ブタの飼育環境について
ブタは室内でも屋外でも飼えますが、室内で飼っている人が多いようです。 室内で飼う時は中型犬~大型犬のケージで、屋外で飼う時は雨や風がしのげる犬小屋などで飼います。どちらにしてもブタはとても力が強く、意外と器用なのでなるべく丈夫なケージや小屋を用意した方が良いでしょう。
ブタはもともと群れで暮らす動物であるため、1頭で過ごすことが苦手な傾向があります。長時間の留守番をさせる可能性が高い場合は、最初から複数頭で迎えた方が良いでしょう。
その他の注意点
ブタは食べることが大好きな動物で、口に入る物なら何でも食べようとします。 しかしイヌやネコなどと同じように、生のタマネギやじゃがいもの芽など食べさせてはいけない物もあります。ブタを飼う前に、あらかじめブタが食べていい物と悪い物を調べておくようにしてください。
またブタはどんな種類であっても、子豚の時の大きさがほぼ変わらないということを知っておいてください。 海外ではミニブタだと思って子豚を引き取ったところ、実は肉用のブタで体重が200Kgを超えてしまったというとんでもない事例もあります。 ミニブタやマイクロブタを迎える時は、必ず信頼できるブリーダーやペットショップから迎えるようにしましょう。
ブタ Q&A
ブタの名前の由来は何?
ブタがいつから「ブタ」という名前になったのか、その歴史や由来ははっきりとわかっていません。
しかしおそらくその由来は“ブーブー”というブタの鳴き声に加え、まるまると太った姿から“太い”“ぶっとい”と呼ばれていたことではないかと考えられています。これらの呼び方が少しずつ変化していった結果、「ブタ」という名前になったようです。
ブタとイノシシにはどんな違いがあるの?
先ほどブタはイノシシを家畜にした動物だと説明しましたが、ブタとイノシシにはどんな違いがあるのでしょうか?
ブタの毛はごわごわした手触りでとても硬く、毛色には白色(淡いピンク色)、黒色、茶色、褐色などがあります。 お肉をたくさん取るために改良されたため、体に占める頭の割合がイノシシよりも小さく、おしりやももの部分がイノシシよりも大きくなっています。またイノシシよりも早く体が大きく育つことも知られていて、生後半年程度で体重が100Kgを超えます。
イノシシもブタと同じようにごわごわとした硬い毛でおおわれていて、毛色には茶色や茶褐色などがあります。 山や野原を駆けまわっているため体の前半分がブタよりも大きく、体に占める頭の割合が大きくなっています。またブタよりも成長が遅く、生後1年以上たってようやく体重が90Kg近くになります。
日本にもイノシシはいるの?
日本には「ニホンイノシシ」と「リュウキュウイノシシ」という、2種類のイノシシが生息しています。 どちらも家畜化された形跡はなく、日本で古くから飼われている「アグー」などのブタは中国からやってきたブタが祖先だと言われています。
ブタのしっぽはなぜ丸まっているの?
「ブタのしっぽの絵を描いてください」といわれたら、くるんと巻いたしっぽを描く人が多いのではないでしょうか?ではなぜ、ブタのしっぽは丸まっているのでしょうか。
ブタのしっぽが丸まっている理由は、今もはっきりとわかっていません。しかしブタの祖先であるイノシシはしっぽが丸まっていないことを考えると、家畜になる過程の中でいつしか丸まっていったと考えられています。ちなみに元気があるブタのしっぽは上に向かってくるんと巻いていて、機嫌が良い時はしっぽをゆらゆらと振り、リラックスしている時や元気がない時はしっぽをまっすぐに垂らします。
ちなみにお肉用に飼われているブタは基本的に、生まれてすぐにしっぽを切ってしまいます。なぜならブタは好奇心が旺盛な動物なので、目の前で長くてゆらゆらとゆれるしっぽを見るとかじりついてしまうことがあるからです。しっぽをかじられるとそこから雑菌(ざっきん)が入って病気になってしまう可能性があるため、お肉用に育てられているブタはあらかじめしっぽを切ることが多いのです。
断尾(だんび)と呼ばれるこの作業はかわいそうにも思えますが、ブタの健康を守るためには必要だとされています。
ブタはきれい好きって本当?
本当です。 もしかするとブタに汚い、不衛生(ふえいせい)で臭いというイメージを持っている人もいるかもしれません。しかしブタは本来きれい好きで、トイレと寝る場所をきちんと分ける動物です。十分なスペースがあれば、ブタがトイレで寝ることはありません。 ペットとして飼う場合はこの習性を活かして、トイレのしつけができます。しかしウンチとオシッコの量が多めなので、こまめにペットシーツを変えてあげる必要があります。
ブタはどんな声で鳴くの?
ブタは日頃、私たちがイメージする通り「ブッブッ」「ブウブウ」といった声で鳴いています。 しかし身の危険を感じたり嫌なことがあったりすると、「ブヒー!」「プギー!」といった大きな声で叫ぶように鳴きます。ブタの金切り声はとてもよく響くので、初めて聞いた人はびっくりしてしまうかもしれません。
ブタは鼻がいいの?
ブタはとても鼻が良くて、その嗅覚(きゅうかく)は人間の100倍もあるといわれています。 かつてブタはその嗅覚を生かして、高級食材で世界の三大珍味の1つであるトリュフを探す仕事をしていました。しかしブタはさがしたトリュフを食べてしまうことから、今はブタではなくイヌがトリュフ探しの仕事をすることが多いそうです。 また古い記録を紐解いていくと、税関で麻薬を探す仕事をしていたブタもいたようです。
ブタはとっても力が強いって本当?
本当です。 ブタはとっても力が強く、体の大きなブタは簡単に人間を持ち上げてしまいます。ミニブタでも十分に力が強いので、思いきり鼻で突き上げられたり、突進されたりすると大人も転んでしまいます。
ブタは抱っこできるの?
ブタは基本的に、抱っこが嫌いなことが多いようです。 ネコやイヌは親が子どもの首をくわえて移動させる習性があるため、抱っこに抵抗(ていこう)が無いことが多いといわれています。しかしブタは親が子どもをくわえて移動する習性がないため、普通に生活していると足が地面から離れることがありません。 そのため足が地面から離れることに慣れておらず、また足が空中に浮く姿勢は肉食動物に捕まってしまった時の姿勢と同じであることから、抱っこをされるととても不安を感じるようです。
動物園のミニブタはどんな物を食べているの?
動物園で暮らしているミニブタは草食動物用のペレットとチモシーなどの牧草、野菜(キャベツやニンジン)、果物(リンゴ、オレンジ、バナナ)などを食べています。
ミニブタに触ったりエサをあげたりできる、ふれあい体験を実施している動物園もあります。
国宝(こくほう)に指定されているブタがいるって本当?
本当です。 ハンガリーには「マンガリッツァ」という、もこもこした毛を持つ不思議なブタがいます。マンガリッツァは一般的な配合飼料ではなく、カボチャやドングリなどを食べさせながらゆっくりと時間をかけて育てられます。そのためお肉の脂肪がとても上質でおいしいといわれています。
そんなマンガリッツァは一時期とても数が減ってしまい、絶滅(ぜつめつ)を防ぐために国宝に指定されました。今はしっかりと保護・繁殖されて絶滅の心配がなくなったことから、国内外でとてもおいしい“食べられる国宝”として重宝されています。
ちなみにスペインには、マンガリッツァと同じような育て方をされるブタ「イベリコ豚」がいます。
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ブタ 種類
・大ヨークシャー ・中ヨークシャー ・ランドレース ・バークシャー ・デュロック ・ハンプシャー ・マンガリッツァ ・金華豚(きんかとん) ・梅山豚(めいしゃんとん) など
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ブタ 参考文献
- 田中 智夫(2019年)『アニマルサイエンス4 ブタの動物学』東京大学出版会
- (公社)茨城県畜産協会いばらきの畜産情報「家畜名の由来を探る」 http://ibaraki.lin.gr.jp/chikusan-ibaraki/25-09/08.html
- 株式会社埼玉種畜牧場 SAIBOKU「ぶたのしっぽ」 http://www.saiboku.co.jp/museum/college/seitai/seitai9.html
- 農林放送事業団アグリワールド「なるほど畜産情報豚のしっぽの話」 https://www.agriworld.or.jp/agriworld1/tikusan/chikusan/lint070206.html
- ナショナルジオグラフィック「小さなミニブタの大きな問題」 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9823/
- 農研機構「イノシシの生態」 http://www.naro.affrc.go.jp/org/narc/chougai/ino-HP/ino-eco.htm
- 桐生が岡動物園「動物園の人気者(ブタ)」 http://www.city.kiryu.lg.jp/zoo/ninki/honyurui/1004730.html
- 株式会社協同インターナショナル「Pick(ピック)、マンガリッツア豚について」 https://www.kyodo-inc.co.jp/food/brand/pick/brandstory.html
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