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バビルサ

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バビルサ

あなたはバビルサという、上あごの皮膚から大きな犬歯が突き出した不思議な動物を知っていますか? バビルサはインドネシアの限られた場所にだけ生息するイノシシの1種で、日本の動物園では飼育されていません。 しかし彼らは見たことがない、名前も知らないという人であっても、一度その姿を見たら忘れられないほどのインパクトがある姿をしています。 この記事でバビルサにはどんな特徴や秘密があるのか、一緒にその暮らしをのぞいていきましょう!

バビルサ 基本情報

哺乳綱(ほにゅうこう)鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)-イノシシ科

体長:90~110cm 体重:60~100Kg

バビルサはインドネシアのスラウェシ島、トギアン島、スラ島、ブル島の熱帯雨林に生息する、イノシシの1種です。最大の特徴は顔の皮膚を突き破って後ろ向きにカールして生える巨大な上あごの犬歯(キバ)で、その長さは最大で30cmほどになります。また下あごの犬歯も長く伸びるため、バビルサのオスの顔は4本の巨大な犬歯が上向きに生えている状態になり、他の動物には見られない独特な見た目になります。なおこの特徴的な犬歯はオスのみに生え、メスには生えていないかほとんど見られません。

バビルサの体の色は茶色がかった黒色で、ほとんどの場合、毛はまばらにしか生えていません。他のイノシシの仲間と比べると四肢が長く、全体的にほっそりとした体つきをしています。また明るい時間に活動する昼行性(ちゅうこうせい)の動物で、通常単独か小さな家族単位のグループで生活しています。

バビルサは野生下では生後1~2年、飼育下では生後5~10カ月ほどで性成熟を迎え、繁殖できるようになります。妊娠期間(にんしんきかん)は150~164日ほどで、1回の出産で1~2頭の子どもを産みます。生まれたての赤ちゃんの大きさは15〜20cmほどで、イノシシの仲間にしては珍しく模様がありません。

バビルサ Q&A

バビルサ
バビルサの名前の由来は何?

ところで“バビルサ”というなにやら変わった名前には、どんな意味があるのでしょうか?

実はこのバビルサという名前には、インドネシア語で「ブタシカ(豚鹿)」という意味が込められているそうです。インドネシア語で「バビ」(babi)はブタのことを、「ルサ」(roesa)はシカのことを表します。バビルサ自体はブタの姿をしているけれど、上あごから生えるキバがシカの枝角に似ていることから、このような名前が付けられたと考えられています。

なおバビルサを英語で表すと「babirusa」、学名は「Babyrusa babirusa」となります。日本では別名「シカイノシシ」と呼ぶこともあります。

バビルサ
バビルサはどうしてそこに住んでいるの?

バビルサはインドネシアのスラウェシ島、トギアン島、スラ島、ブル島の熱帯雨林と、その周辺にある湿地や沼地にだけ生息しています。

なぜバビルサがこれらの限られた島々に生息しているのか調べましたが、残念ながらはっきりとした回答が得られませんでした。しかしどの生息地でも天敵がほとんどいないこと、十分な食べ物と皮膚を乾燥と寄生虫から守ってくれる水や泥が確保できることを考えると、バビルサにとってはこれらの島々が住みやすい環境だったのだと考えられます。

かつてバビルサはそれぞれの島の広い範囲に生息していましたが、環境破壊が進んでしまい、現在は残念ながら多くの個体が限られた保護区でしか見られなくなっているようです。

バビルサ
バビルサは何を食べているの?

バビルサは雑食性の動物で、野生では木の葉や果物、植物の種子、きのこ、昆虫、カタツムリなどさまざまな物を食べています。

実はバビルサと同じイノシシの仲間であるイノシシやブタの鼻には、「吻鼻骨(ふんびこつ)」と呼ばれる骨があります。イノシシやブタはこの骨のおかげで硬い地面を掘り返して食べ物(植物の根やミミズなど)を探すことができますが、バビルサの鼻にはこの骨がありません。そのためバビルサは地面を掘り返すことはせず、ひづめを使って腐った木を掘り、中にいる昆虫の幼虫を取り出して食べる姿がよく目撃されているそうです。

なお動物園ではチモシーやアルファルファなどの牧草、野菜や果物、食物繊維が豊富な草食動物用ペレットなどを与えているようです。

バビルサ
なぜバビルサの犬歯は大きいの?

バビルサ最大の特徴は?と聞かれたら、あまりにも大きすぎるオスの犬歯を思い浮かべる人が多いことでしょう。それではなぜ、バビルサの犬歯は大きいのでしょうか。

バビルサの犬歯の役目については、今のところ「オス同士の戦いにおいて、防御をする時に役立っている」、あるいは「犬歯が大きく立派なほどメスにモテるのではないか」といったいくつかの説が唱えられています。

しかし実はバビルサの犬歯がなぜこれほどまでに長く伸びるのか、今もその詳しい理由はわかっていません。というのも多くの動物は犬歯を戦いや狩りに使いますが、バビルサの犬歯は戦いや狩りに使おうとするとややもろく、丈夫さが足りないのではないかと考えられているからです。

なお年を取ったオスの犬歯は30cmをこえ、最終的に頭に突き刺さってしまうことがあります。そのため時にバビルサは「自分の死を見つめる動物」と呼ばれることがありますが、実際に自分の犬歯が頭に突き刺さって死んでしまったバビルサがいるかどうかは今もわかっていません。

バビルサ
バビルサとイノシシにはどんな違いがあるの?

バビルサはイノシシの1種ですが、その中でも特に原始的な種類だと考えられています。それではバビルサとイノシシには、どんな違いがあるのでしょうか。

まず見た目の違いとしては、バビルサにはほとんど毛が生えていないこと、イノシシにはしっかりと毛が生えていることがあげられます。野生のバビルサは皮膚が乾燥しないように、よく泥浴びや水浴びをする姿が観察されています。

また「バビルサは何を食べているの?」でも説明した通り、バビルサには他のイノシシの仲間が持っている「吻鼻骨(ふんびこつ)」を持っていません。またイノシシやブタと胃の形が大きく異なるため、反芻動物なのではないかと疑われていた時期もあったようです。

バビルサ
バビルサはどんな性格なの?

バビルサは慎重で、用心深い性格だといわれています。

バビルサは熱帯雨林に生息している上に慎重な性格であるため、野生でその姿を見つけること自体が非常に困難です。そのため野生のバビルサの生活については、今もその多くが謎に包まれています。

ただし子どもがいる母親は非常に神経質になっていて、子どもを守るためであれば非常に攻撃的な性格になるそうです。

バビルサ
バビルサはペットとして飼えるの?

ところでバビルサは、個人が自宅でペットとして飼うことはできるのでしょうか?

バビルサは絶滅してしまうのではないかと心配されていて、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)という条約において「付属書Ⅰ」に分類されている動物です。付属書Ⅰに掲載されている動物は基本的に学術研究を目的とした取引のみ可能で、商業目的の取引は不可能であると定められています。

そのためバビルサを個人がペットとして飼育するために、購入(輸入)すること自体が不可能だと考えられます。

バビルサ
バビルサが見られる動物園はあるの?

残念ながら、現在日本国内でバビルサを飼育している動物園はありません。

海外にはいくつかバビルサを飼育している動物園があり、確認できる範囲ではアメリカの「サンディエゴ動物園」「ロサンゼルス動物園」「ルイビル動物園」や、シンガポールの「シンガポール動物園」などで飼育されているようです。

バビルサ
バビルサはどのくらい生きるの?

バビルサの寿命は飼育下で24年ほど、野生下で7~12年ほどであると考えられています。

日本に生息するイノシシの寿命は1~2年、長くて10年ほどであることを考えると、バビルサは非常に長生きであることがわかります。

バビルサ
バビルサにはどんな敵がいるの?

バビルサの生息地には大型の肉食動物がいないため、大人になったバビルサにはほとんど天敵がいないと考えられています。小さいうちはニシキヘビやジャコウネコなどに捕食されてしまうこともあるようですが、実はバビルサにとって最大の敵は肉食動物ではありません。バビルサにとって最大の天敵、それは私たち人間です。

まず野生のバビルサは食用にするために、現地の人たちに捕獲・密猟されています。さらに生息地である熱帯雨林の開発が続いていることも重なって、4種類に分類されている全てのバビルサがその生息数を減らしています。

またバビルサが数を減らしている理由として、彼らの繁殖力も関係しているといわれています。というのもイノシシの仲間は基本的に1回に産む子どもの数が多く、イノシシは通常4~5頭(種類によって異なる)、ブタは10頭程度(品種によって異なる)の子どもを産みます。しかしバビルサは1回に1~2頭の子どもしか産まないため、どうしても個体数が増えにくいのです。

バビルサは1931年にインドネシアの法律で保護動物に指定され、1978年には国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにおいては「危急種(VU)」に掲載されています。

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バビルサ 種類

・バビルサ

・ボラバツバビルサ

・スラウェシバビルサ(セレベスバビルサ)

・トギアンバビルサ

※分類は研究者や論文によって異なる可能性がある。

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