コクチョウ
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あなたは全身の色が真っ黒な、不思議なハクチョウ(白鳥)がいることを知っていますか? コクチョウ(黒鳥)と呼ばれる黒色のハクチョウは、オーストラリアやニュージーランドに生息しています。 彼らはかつて存在するはずがない生き物だと考えられ、無駄な努力の象徴にされていた時期もあったそうです。 そんなコクチョウにはどんな特徴や秘密があるのか、この記事で一緒にその暮らしをのぞいていきましょう!
コクチョウ 基本情報
鳥綱カモ目(ガンカモ目)-カモ科(ガンカモ科)ハクチョウ属
体長110~140cm 体重3.7~8.7Kg
コクチョウはオーストラリアとニュージーランドに生息する、ハクチョウの1種です。体が非常に大きく、翼を広げるとなんと200cmもの大きさになります。
コクチョウは名前の通り体の色が黒いこと、くちばしが目にも鮮やかな赤色であることが特徴です。全身の色は真っ黒ですが風切羽(かざきりばね)の部分だけは白いため、空を飛ぶと翼の先に白い羽が見えることも特徴といえるかもしれません。
コクチョウは一夫一妻制(いっぷいっさいせい)で、一度ペアになると生涯同じ相手とペアを続けます。繁殖期はオーストラリアでは夏頃、日本では秋から冬頃で、地上か水生植物の上に枝や草を使った大きな巣を作って卵を産みます。1回の産卵で4~10個の卵を産み、卵はオスとメスが交代であたためると30日ほどでふ化します。ヒナは生後1年ほど親と一緒に生活し、やがて独立していきます。
コクチョウ Q&A
コクチョウの名前の由来は何?
ところでコクチョウという名前には、どんな由来があるのでしょうか?
コクチョウの名前の由来は体の色で、体の色が黒いことからそのまま「黒鳥」と名付けられました。ちなみにハクチョウも体が白いという理由から、「白鳥」と名付けられています。
なおコクチョウは英語で「Black Swan」、学名は「Cygnus atratus」と表現されます。
コクチョウはどうしてそこに住んでいるの?
野生のコクチョウはオーストラリアの乾燥地帯をのぞくほぼ全域と、ニュージーランドに生息しています。
ただしかつてニュージーランドに生息していた亜種(Cygnus atratus sumnerensis)は残念なことに、絶滅してしまっています。現在はオーストラリアに生息する亜種(Cygnus atratus atratus)が人の手でニュージーランドに持ち込まれて、野生下で繁殖しています。
なぜコクチョウがオーストラリアに生息しているのか、詳しい理由はわかりませんでした。しかしコクチョウがオーストラリア大陸の中で移動はするものの、他の大陸に渡ることなく暮らしているところを見ると、オーストラリアはコクチョウにとって食べ物が豊富で暮らしやすい場所なのではないかと考えられます。
コクチョウは何を食べているの?
コクチョウは草食性で、主に水草を食べて暮らしています。しかし地上に生えている植物も好きで、時に芝生などを食べている姿も目撃されています。
動物園では水鳥用の配合飼料や白菜、コマツナなどの野菜を与えているようです。
コクチョウはどんな性格なの?
コクチョウはとても穏やかで、大人しい性格だといわれています。
全身の色が真っ黒いことや映画「ブラック・スワン」の影響などを受けて、コクチョウに対してなんとなく怖いイメージを持っている人もいるかもしれません。しかしコクチョウは見かけによらず穏やかで、人懐こい性格の個体も多いようです。
実はコクチョウよりもハクチョウ(コブハクチョウ)の方がやや気が荒く、特に繁殖期は気性が荒くなるといわれています。
コクチョウはどんな声で鳴くの?
コクチョウは大きな体からは想像できない、「クークー」「キューキュー」といった、かなり高めの声で鳴きます。
見た目と鳴き声のギャップに思わずときめいてしまい、コクチョウが大好きになってしまったという人もいるようです。
コクチョウとハクチョウにはどんな違いがあるの?
コクチョウはハクチョウの1種ですが、コクチョウとハクチョウにはどんな違いがあるのでしょうか?コクチョウと日本でよく見かけるハクチョウの1種、「コブハクチョウ」の違いを見てみましょう。
コクチョウとコブハクチョウは外見がそっくりですが、まず色が異なります。コクチョウは全身の羽が真っ黒でくちばしの色は目が覚めるような赤色で、くちばしの先端には白い斑点があります。コブハクチョウは全身の羽根が真っ白で、くちばしの色はオレンジ色と黒色の2色に分かれています。
大人になると全く色が異なるコクチョウとコブハクチョウですが、実はどちらもヒナの時の体の色は灰色です。成長すると真逆の色になるコクチョウとコブハクチョウのヒナが同じ色だと考えると、なんだか面白いですね。
ちなみに大きさはコブハクチョウの方がやや大きく、コクチョウの体長は110~140cmほど、コブハクチョウの体長は150cmほどです。
コクチョウは存在しない動物だと思われていたって本当?
本当です。 かつてヨーロッパでは無駄な努力を表す言葉として、「黒いハクチョウを探すようなものだ」ということわざがあったそうです。
しかしその後黒いハクチョウであるコクチョウが発見され、コクチョウは「常識を疑うこと」、「物事を一変させること」、「自分を絶対視しないこと」の象徴になったそうです。
コクチョウはペットとして飼えるの?
ところで個人がペットとして、自宅でコクチョウやハクチョウを飼うことはできるのでしょうか?
今回調査を行いましたが、実際にコクチョウやハクチョウをペットとして飼っている人の情報は見つかりませんでした。しかしSNSの情報によると、一般的なペットショップでコクチョウやハクチョウが販売されていたところを見たことがある人はいるようです。
かつてコクチョウはお肉を取るためやペットとして飼うための鳥として、人の手によって日本に連れてこられました。そんなコクチョウはもともと日本にはいない「外来生物(外来種)」ではありますが、「特定外来生物」(※)ではありません。そのため飼育するにあたっては、特に法律面での制限はないものと推測されます。しかし実際にコクチョウを入手して飼育したい人は、住んでいる都道府県や環境省などに問い合わせることを強くおすすめします。
(※)「特定外来生物」は生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼす、又は及ぼすおそれがある外来生物のこと
なおコクチョウは現在茨城県の千波湖を中心に定着・繁殖していることが確認されていて、このまま繁殖し続けると日本の在来植物を食べて生態系に影響を与える可能性があると考えられています。そのため今後ブラックバスやアライグマのように飼育や運搬が禁止される、「特定外来生物」に指定するべきではないかという意見も出ているようです。
コクチョウが見られる動物園はあるの?
コクチョウは丈夫で飼いやすく、見た目も美しいことから宮城県の「八木山動物公園」、埼玉県の「智光山公園 こども動物園」、鹿児島県の「鹿児島市平川動物公園」など多くの動物園や観光施設などで飼育されています。
エサやりができる施設もあるので、ふれあいをしてみたい人はそういった施設を探してみても良いかもしれません。
コクチョウはどのくらい生きるの?
コクチョウはとても長生きで、その寿命は30~40年だといわれています。
ちなみにハクチョウ(コハクチョウ、オオハクチョウ)の寿命は、15~20年だといわれています。ハクチョウと比べてみても、コクチョウがとても長生きする鳥であることがわかりますね。
コクチョウにはどんな敵がいるの?
野生におけるコクチョウの天敵は、キツネやイヌ、ネコなどの動物だといわれています。動物園で飼育されている場合は、ヒナや卵がカラスにさらわれてしまうこともあるようです。
しかしコクチョウにとって一番の敵は、私たち人間かもしれません。本来の生息地であるオーストラリアでは、開発が進んでコクチョウが生息する場所や繁殖する場所が減ってしまっているそうです。
また本来コクチョウは植物だけを食べる鳥ですが、野生のコクチョウにパンなどの加工食品を与える人が後を絶たないのも現状です。本来の食べ物ではない加工食品を食べ続けた結果、栄養バランスを崩したり窒息したりして、弱ってしまうコクチョウや命を落とすコクチョウも少なくないようです。
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コクチョウ 参考文献
- 八木山動物公園「コクチョウ」 http://www.city.sendai.jp/zoo/dobutsu/chorui/kamo/059.html
- 西日本新聞「「奇跡の水鳥」老衰で死ぬ 名古屋、鳥インフル感染も生存」 https://www.nishinippon.co.jp/item/o/467933/
- 国立研究開発法人 国立環境研究所 侵入生物データベース「コクチョウ」 https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/20480.html
- Department of Biodiversity, Conservation and Attractions「Fact Sheet Black Swan (Cygnus atratus)」 https://www.dpaw.wa.gov.au/images/documents/conservation-management/riverpark/fact-sheets/Fact sheet - black swan.pdf
- コトバンク「コクチョウ」 https://kotobank.jp/word/コクチョウ-64121
- 天王寺動物園「コクチョウ」 https://www.tennojizoo.jp/picturebook/bird/blackswan/
- 東京ズーネット「コクチョウの産卵」 https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=8411
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