アイアイ
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あなたはアイアイという、マダガスカル島だけに生息する原始的なサルの仲間を知っていますか? 有名な童謡「アイアイ」で歌われているので、名前だけは知っているという人が多いのではないでしょうか。 アイアイは童謡で歌われているかわいらしいイメージとは裏腹に、実は生息地では悪魔の化身と恐れられている動物でもあります。 この記事でアイアイにはどんな特徴や面白い秘密があるのか、一緒にのぞいていきましょう!
アイアイ 基本情報
哺乳綱(ほにゅうこう)霊長目(れいちょうもく)-アイアイ科-アイアイ属
体長30~40cm 体重2~3kg
アイアイは非常に原始的なサルの仲間で、私たち人間と同じ霊長目に分類される動物です。体の色は黒色やこげ茶色で、大きな目に針金のように細長い指、ふさふさした長いしっぽなどリスとコウモリとサルを足したような不思議な見た目をしているのが特徴です。
アイアイは18世紀に発見された当初は見た目や前歯が伸び続けるという特徴から、リスの仲間だと考えられていました。しかしその後100年ほどたってようやく、リスではなくサルの仲間だということが判明しました。アイアイはもともと生息数が少なく、1980年頃には野生のアイアイを撮影した人は誰1人としておらず、中にはもう絶滅したのではないかと考えている人もいるような状況だったそうです。
アイアイは繁殖期や子育て中以外は単独で生活する夜行性の動物で、1日のほとんどを木の上で過ごし地上に降りることはほぼありません。生後2~3年ほどで性成熟(せいせいじゅく)を迎えて繁殖できるようになり、155日前後の妊娠期間(にんしんきかん)を経て、1回の出産で通常1頭の赤ちゃんを産みます。
アイアイ Q&A
アイアイの名前の由来は何?
アイアイという名前は“よく知らない”という意味がある、マダガスカル語の「ハイハイ」という言葉が由来だといわれています。
アイアイは英語でも「Aye-aye」と表現され、学名は「Daubentonia madagascariensis」と表現されます。日本では別名「指猿(ユビザル)」と呼ばれることもあります。
アイアイはどうしてそこに住んでいるの?
アイアイはマダガスカル島の固有種で、原始的な特徴を持ったサルの1種です。
アイアイを含むサルの仲間たちは数千年前にマダガスカル島に渡り、他の大陸とは離れたマダガスカル島で独自の進化を遂げて今もそこに生息しているものと考えられています。しかしアフリカのエジプトやケニアでアイアイに近いと考えられる動物の化石が発見されていて、“アイアイの祖先はマダガスカル島に渡ってから他のキツネザルと分かれてアイアイになった”のではなく、“アイアイの祖先は他のサルとは別のタイミングでマダガスカル島に渡ってきてアイアイになった”という説もあるそうです。
なおかつてマダガスカル島には今のアイアイよりも体が大きい「ジャイアント・アイアイ」と呼ばれるアイアイも生息していましたが、残念ながら絶滅してしまったものと考えられています。
アイアイは何を食べているの?
アイアイは雑食性の動物で、野生では「ラミー」と呼ばれる木の実の種子を主食にしています。他には果実、昆虫の幼虫、花の蜜などを食べますが、昆虫の成虫を食べることはありません。
動物園では野菜(アボカド、キュウリなど)、果実(パパイヤ、ライチ、マンゴー、オレンジ、柿など)のほか、クルミやピーナッツ、ミルワーム、ハチミツなどを食べています。
アイアイの指は変わった形をしているって本当?
本当です。 アイアイの指は5本ありますが、中指は他の指と比べてとても細長く、まるで針金のような見た目をしています。中指の先端は自由自在に動かせますが、その代わりに物をつかむことができません。実はアイアイのこの変わった中指は彼らの主食である、ラミーの種子の中身をかきだすために使われています。
ラミーの種子はとても硬く、クルミの3倍もの硬さがあるといわれています。アイアイがラミーの種子を食べる時はまず両手でしっかりと持ち、種子が見えるまで果肉を吹き飛ばします。そして種子を下あごの鋭い前歯を使ってかじって穴をあけ、穴に中指を突っ込んで器用に中身だけをかきだして食べます。
そんなアイアイには物を食べる前に中指でたたき、その硬さや厚さを見極めて自分が食べられるものかどうか判断してから食べる習性があります。これはラミーの種子の中には3つの部屋があり、3つのうち大きな部屋にしか中身が入っていないことから、アイアイが確実に食べ物を得られるように発達させた習性だと考えられています。
アイアイの器用さは動物園でも見られ、オレンジの薄皮や柿の薄い皮だけを残して中身だけをきれいに食べたり、竹筒の中に入れたミルワームを指でたたいて探して正確に穴を開けて食べたりするといった行動が観察されています。
アイアイは悪魔の化身だといわれているって本当?
本当です。 アイアイはマダガスカルでは昔から悪魔や悪霊の化身であり、不吉で縁起が悪く、不幸を連れてくる怖い動物だと考えられていました。
今でこそ世界中で動物の研究が進み、アイアイの名前や姿も世界中で知られています。しかし動物に関する研究が進んでいなかった時代に森の中で大きな丸い目で見つめてくるなんともいえない見た目のアイアイに出会ったら、怖いと思ってしまったり、驚いてしまったりしても不思議はないかもしれません。
なぜ童謡「アイアイ」と現地のイメージに差があるの?
アイアイは日本ではとても有名な童謡、「アイアイ」の中で歌われています。
そのため本物のアイアイを見たことはなくても、名前だけは知っているという人が多いことでしょう。とても明るいこの歌を聞くとアイアイはかわいらしいイメージの動物に思えますが、なぜ現地では悪魔の化身だと思われている動物が日本ではかわいいイメージになったのでしょうか?
これは作詞家の方がこの歌の歌詞を作る時に図鑑でアイアイを見て、かわいらしいその名前の響きから歌詞を作ったからだとされています。マダガスカルにしか生息しない動物のことを多くの日本人が歌い、知っているというのはなんだか面白いですね。
アイアイはペットとして飼えるの?
ところでアイアイはペットとして、個人が飼うことはできるのでしょうか?
アイアイはとても貴重な動物なので、「ワシントン条約」という条約で “絶滅のおそれのある種で取引による影響を受けている又は受けるおそれのあるもの“として「付属書Ⅰ」(ふぞくしょ)に分類されています。付属書Ⅰに分類されている動物は世界的に保護されていて、研究などの特別な目的がない限り国と国の間で取引できないと決められています。
特にアイアイは法律で保護されているため、動物の保護や繁殖を目的とする動物園のような施設であっても入手すること自体が非常に困難です。このような理由から、個人がアイアイを入手して飼育することはほぼ不可能だと考えられます。
アイアイを見られる場所ってあるの?
令和3年時点で、日本国内の動物園でアイアイを飼育展示しているのは東京都の上野動物園のみです。
アイアイは国際的に保護されている動物であり、やや古い情報ですが2001年時点では世界中で40頭しか飼育されていませんでした。このような状況を考えると、今後国内で飼育する施設が簡単に増えることはないと思われます。
なお上野動物園ではマダガスカル国立チンバザザ動物園と協力してアイアイの共同研究を行っていて、2001年に1つがいが贈られて以降10回の繁殖に成功しています。
アイアイはどのくらい生きるの?
野生下におけるアイアイの寿命は不明ですが、飼育下では20年ほど生きることが確認されています。
アイアイはまだまだ研究が進んでいないため、今後野生における寿命を含めたより詳しい生態が明らかになることを期待したいものです。
アイアイにはどんな敵がいるの?
野生のアイアイはマダガスカル島だけに生息する肉食動物、フォッサに捕食されることがあるようです。
しかしアイアイにとって、最大の天敵はフォッサではなく私たち人間です。 「アイアイは悪魔の化身だといわれているって本当?」でも説明した通り、アイアイはマダガスカル島では昔からとても縁起の悪い動物だと考えられてきました。それに加えてアイアイが農作物(マンゴーやココナッツなど)を食べてしまうことがあるため、現地ではアイアイを見つけたらすぐに殺すのが当然のこととされていました。悲しいことにアイアイは人間を怖がらないため、捕まえて殺すことは難しくなかったようです。
その他にも熱帯雨林が農業をするために焼き払われたり、家畜の放牧(主にウシ)や畑を作るために伐採されたりして、アイアイが生息できる場所がどんどん減ってしまった結果、アイアイは絶滅寸前の状態におちいってしまいました。現在は国際的に保護されているもののマダガスカル島の環境破壊は日々進んでいて、その将来は明るいとはいえないのが現状です。
アイアイは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは“近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの”として、「絶滅危惧(EN)」に分類されています。
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アイアイ 参考文献
- 島泰三(2014年)『なぞのサルアイアイ』福音館書店
- 島泰三(2006年)『マダガスカル アイアイのすむ島』草思社
- 東京ズーネット「マダガスカルから初来園、アイアイ」 https://www.tokyo-zoo.net/topics/profile/profile13.shtml
- 東京ズーネット「アイアイの「ヒーラ」を台北市立動物園へ移動します」 https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=ueno&link_num=25704
- 東京ズーネット「どうぶつ図鑑 アイアイ」 https://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/species_detail?code=354
- 日本アイアイ・ファンド「アイアイ・ファンド活動報告 【No.10 平成15年6月】」 http://www.ayeaye-fund.jp/reports/report10.html
- Twitter「東京ズーネット[公式]」 https://x.com/TokyoZooNet_PR/status/1033680861210636288
- 須坂市動物園日記「2012/11/29ワオキツネザルからアイアイの現地のはなし。」 https://blog.suzaka.jp/zoo/2012/11/29/p21757
- 朝日新聞DIGITAL「(ユリイカ!)アイアイのルーツは」 https://digital.asahi.com/articles/DA3S13666357.html
- DENVER ZOO「Aye-Aye」 https://denverzoo.org/animals/aye-aye/
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