ホッキョクギツネ

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あなたはホッキョクギツネという、全身の毛が真っ白で耳が小さいキツネを知っていますか?
その名前の通り北極圏周辺に生息するホッキョクギツネは、日本の動物園ではあまり見かけることのない動物です。
そのため「初めて名前を聞いた」、「実際に見たことがない」という人も多いかもしれません。
ホッキョクギツネを知っている人も知らない人も、この記事で彼らにどんな特徴や秘密があるのか一緒に見ていきましょう!

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~基本情報~

哺乳綱(ほにゅうこう)食肉目-イヌ科

体長45~67cm 体重1.4~9kg

ホッキョクギツネの特徴は、全身がビロードのような短くて手触りの良い被毛に覆われていることです。被毛の色には季節と地域による差があり、冬は全身が真っ白、夏は灰褐色になる「白色型」と冬は青灰色、夏は暗褐色になる「青色型」の2つのパターンがあることが知られています。

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ホッキョクギツネは基本的に明るい時間に活動する昼行性(ちゅうこうせい)の動物で、単独または小さな家族単位の群れで暮らしています。野生では一度オスとメスのペアができると生涯連れそう「一夫一婦制」(いっぷいっぷせい)の動物ですが、ときおり1匹のオスに対して2匹のメスという組み合わせが見られることもあります。

ホッキョクギツネは生後9~10か月ほどで性成熟(せいせいじゅく)を迎え、繁殖できるようになります。妊娠期間(にんしんきかん)は49~57日ほど(平均52日)、1回の出産で2~15匹(平均7匹)の子どもを産みます。子どもは生後1か月ほどで肉を食べはじめ、生後1か月半ほどで離乳します。

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ホッキョクギツネのQ&A

ホッキョクギツネの名前の由来は何?

ホッキョクギツネはその名前の通り、北極周辺に生息しているキツネであることからこの名前が付けられたと考えられています。英語でも「Arctic Fox」(Arcticは北極のこと)と呼ばれていて、学名は「Vulpes lagopus (Alopex lagopus)」と表現されます。

日本においては「北極狐」(ホッキョクギツネ)のほか、「白狐」(シロキツネ、シロギツネ)や「青狐」(アオキツネ、アオギツネ、英語読みでブルーフォックスとも)と呼ばれることもあります。

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ホッキョクギツネはどうしてそこに住んでいるの?

ホッキョクギツネは北極圏(北アメリカ、ユーラシア大陸、スカンジナビア半島、アイスランド、グリーンランドなど)のツンドラや沿岸部に生息しています。

ホッキョクギツネがなぜ北極圏に住むようになったのか、詳しい理由はわかりませんでした。しかしホッキョクギツネは極寒の北極圏でも暮らせるように、体の作りを寒さに耐えることに特化させてきた動物です。彼らは他のキツネの仲間が住めない厳しい環境をあえて選ぶことによって、自分たちの種を存続させてきたのかもしれません。

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ホッキョクギツネは何を食べているの?

ホッキョクギツネは肉食性の強い雑食性の動物で、主に小型のほ乳類(レミングやツンドラハタネズミ、ホッキョクウサギなど)や鳥類(ウミスズメやライチョウなど)、魚や貝、果実や死肉などさまざまなものを食べています。

ホッキョクギツネが暮らす地域は冬になると雪と氷に覆われ、食べ物を見つけることが難しくなります。そのため彼らは食べ物が豊富な夏の間は余分に獲物を捕まえ、巣穴や石の下、岩の割れ目に貯蔵する習性があります。

またホッキョクギツネにとっては、ホッキョクグマの食べ残しも重要な食料の1つです。ホッキョクグマは主にアザラシを捕まえて食べますが、アザラシが豊富に取れる時期はその脂肪だけを食べて肉や内臓を残すことが知られています。そのため北極圏ではホッキョクグマの後をついて回り、おこぼれのアザラシの肉や内臓を頂こうとするホッキョクギツネの姿が良く見られます。

ホッキョクギツネはその他にも、セイウチやクジラ、トナカイなどのあらゆる動物の死体も食べます。ホッキョクギツネは他の動物の食べ残しや死肉を食べることによって、北極圏における掃除屋の役割を担っています。

なお動物園ではヒヨコやホッケなどの肉類や魚類を与えますが、時にはカキなどの果物を与えることもあるようです。

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ホッキョクギツネは寒さに強いって本当?

本当です。
野生のホッキョクギツネが暮らしている北極圏は、気温が-50℃以下になることも少なくありません。そんな環境で暮らすホッキョクギツネは非常に寒さに強く、-70℃を下回るとようやく少しだけ寒がる様子を見せるものの、-80℃でも特に問題なく生きられます。

ホッキョクギツネが寒さに強い理由は熱を逃がさないふわふわの毛皮と、体にたっぷりとため込んだ脂肪にあります。また体の熱が外に逃げないように口吻(こうふん・鼻の先から口周辺の突き出した部分のこと)や四肢(しし)が短いこと、耳が小さくなっていること、足の裏まで毛が生えていることなど、彼らの体には寒さに対応するための工夫がたくさん隠されています。

また彼らはふさふさのしっぽを防寒具のように使ったり、巣穴をシェルターにして猛吹雪をしのいだりと、寒さから身を守るために使えるものはなんでも使いこなします。

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ホッキョクギツネと他のキツネにはどんな違いがあるの?

「ホッキョクギツネは寒さに強いって本当?」でも説明した通り、ホッキョクギツネの体には寒さに対応するための工夫がたくさん隠されています。それではホッキョクギツネと温帯に生息しているアカギツネ、昼は暑く夜は寒い砂漠に生息しているフェネックにはどんな違いがあるのでしょうか。

ホッキョクギツネとアカギツネ、フェネックを見比べてみると、耳の大きさが違うことがわかります。ホッキョクギツネの耳は顔の大きさの割に小さく、フェネックの耳は顔の大きさの割に大きくなっています。そしてアカギツネの耳はホッキョクギツネより大きく、フェネックより小さくなっていることがわかります。

実は動物の耳には音を聞くという役割に加え、体の熱を外に逃がすという役割もあります。そのため寒い場所に住んでいて体の熱を外に逃がしたくないホッキョクギツネの耳は小さく、暑い場所に住んでいて体の熱を外に逃がしたいフェネックの耳は大きくなっているのです。

このように寒い地域に生息する動物ほど体から突き出した部分(耳や鼻など)が小さくなることを、生物学では「アレンの法則」といいます。

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ホッキョクギツネはとても長い距離を移動するって本当?

本当です。ホッキョクギツネは他のキツネと比べても、非常に長い距離を移動することが知られています。

その移動距離はすさまじく、1974年~1975年には同じホッキョクギツネがカナダからアメリカにかけての直線距離1530kmを、2018年~2019年にはメスのホッキョクギツネがノルウェーからカナダまでの3500kmもの距離を移動していることが確認されています。

ホッキョクギツネは徒歩のほか、泳いだり海氷を利用したりと、あらゆる手段を使って移動を行うと考えられています。

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ホッキョクギツネはペットとして飼えるの?

ところで日本国内において、個人がペットとしてホッキョクギツネを飼うことはできるのでしょうか?

ホッキョクギツネは国際的に野生動植物を守るための取り決めである、「ワシントン条約」(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)のリストに掲載されていない動物です。また日本の法律で人の命や財産に危険を及ぼす可能性がある、「特定動物(とくていどうぶつ)」にも指定されていません。

これらの条件を考えると、ホッキョクギツネを飼うこと自体は不可能ではなさそうです。しかし非常に寒い地域に生息するホッキョクギツネは暑さに弱いこと、野生動物であることから力が強く動きが素早いこと、一般的に飼育されてきた動物ではないことから、ペットに向く動物とはいえません。

それでも「どうしてもホッキョクギツネが飼いたい!」という人は、まずホッキョクギツネの診察・治療ができる動物病院を探してください。その後野生動物の輸出入や販売を行っている動物商を探し、ホッキョクギツネの輸入ができるか、また飼育する環境や設備をどのようにすべきか相談すると良いでしょう。

なおキツネをはじめとしたイヌの仲間を輸入する際は、狂犬病の検疫を受ける必要があります。そのため輸入元の国にもよりますが、ホッキョクギツネは輸入した後に一定期間の係留検査を受けなければなりません。

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ホッキョクギツネが見られる動物園はあるの?

ホッキョクギツネは北海道の「旭山動物園」と、宮城県の「蔵王キツネ村」で飼育されています。

特に蔵王キツネ村では毎年のようにホッキョクギツネの赤ちゃんが生まれていて、タイミングが良ければだっこもできます。実際にホッキョクギツネに触れてみたいという人は、遊びに行ってみると良いでしょう。

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ホッキョクギツネはどのくらい生きるの?

ホッキョクギツネの寿命は野生下で3~6年ほどだと考えられていますが、飼育下では15年生きた個体もいるそうです。

とはいえ野生のホッキョクギツネが生息する地域は非常に厳しい環境であることから、生後1年以内に死んでしまうことも珍しくありません。そのためホッキョクギツネは1匹でも多くの子どもが生き残れるように、1度にたくさんの子どもを産みます。

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ホッキョクギツネにはどんな敵がいるの?

野生におけるホッキョクギツネの天敵は、ホッキョクグマやオオカミ、アカギツネだといわれています。

特にほぼ同じ物を食べるアカギツネとは競合関係にあると考えられていて、食べ物を巡って争うと体がより大きいアカギツネに負けてしまうことが多いようです。また子どもがアカギツネに食べられてしまい、数を減らしている地域もあります。

しかしホッキョクギツネにとって最大の敵は、私たち人間です。ホッキョクギツネは昔からその暖かくて質の良い毛皮を取るために、たくさん捕獲されてきました。特にスカンジナビア半島(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド)に生息するホッキョクギツネは毛皮目的で狩られてきたことから生息数が300頭程度と極端に少なく、絶滅してしまうのではないかと心配されています。

しかしそれ以上にホッキョクギツネを脅かしているのは、地球温暖化による気候変動や環境破壊です。特に気候変動によって北極圏の氷や雪が解けてしまい、ホッキョクギツネの白い毛皮が目立ってハンティングの妨げとなってしまっているといわれています。また気温が上がった影響で競合関係にあるアカギツネが生息域を広げ、ホッキョクギツネの生息地に侵入してその生活を脅かしています。

このような状況から、ホッキョクギツネの生息数は減少傾向にあると考えられています。スカンジナビア半島のホッキョクギツネ以外はすぐに絶滅が心配される状況ではないものの、残念ながら彼らの未来は明るいとはいえない状況が続いているのが現状です。

出典:https://unsplash.com/photos/ezgtejDRFHc

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参考文献

今泉 忠明(2007年)『野生イヌの百科』データハウス 

WWW.GREELANE.COM「魅力的なホッキョクギツネの事実」https://www.greelane.com/ja/%e7%a7%91%e5%ad%a6%e6%8a%80%e8%a1%93%e6%95%b0%e5%ad%a6/%e5%8b%95%e7%89%a9%e8%87%aa%e7%84%b6/arctic-fox-facts-4171585/

旭山市「モユク☆カムイ65」
https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/2200/p008794_d/fil/moyuku1-moyuku065.pdf

ナショナルジオグラフィック「動物大図鑑 ホッキョクギツネ」
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20141218/428902/

旭川市旭山動物園「動物図録 ホッキョクギツネ」
https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/zuroku/arctic/d056203.html

THE GREAT STATE of ALASKA 「Arctic Fox」
https://www.adfg.alaska.gov/static/education/wns/arctic_fox.pdf

HUFFPOST「ホッキョクギツネ、3500kmの大移動に研究員衝撃。「最初は信じられなかった」ノルウェーカナダ間」
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5d3becaee4b0ef792e0c699a

アイキャッチ画像
https://unsplash.com/photos/Q4m5QdibJls