アルパカ

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あなたはアルパカという、もこもこしたやわらかい毛が特徴的な動物を知っていますか?
動物園や牧場で飼育されていることも多いため、実際に見たことがある人も多いことでしょう。
アルパカはヒツジに似ていますが実はラクダの仲間で、なんと数千年も前から人間と一緒に生活してきたという長い歴史を持つ動物です。
この記事でアルパカにはどんな特徴や秘密があるのか、一緒にその暮らしをのぞいていきましょう!

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~基本情報~

哺乳綱(ほにゅうこう)鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)-ラクダ科

体長 1.2~2.25m
体重 55~65Kg

アルパカは主にアンデス山脈周辺で飼育されているラクダ科に属する家畜の1種で、質の良い毛を取るために何千年も前に野生のラクダ科動物から家畜化された動物だと考えられています。その最大の特徴は全身をおおうやわらかくてなめらかな被毛で、その毛は軽くてあたたかい高級素材として多くの国で愛されています。

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アルパカが飼育されているアンデス山脈は標高が3000~6000mで昼の最高気温は30℃以上、夜の最低気温はマイナス15℃ほどと非常に気温差が激しく、食べ物が豊富とはいえない過酷(かこく)な環境です。そんな環境の中でも少ない食べ物で健康に育ち、質の良い毛を生産してくれるアルパカは現地の人たちにとって、今も昔も自分たちの生活を支えてくれるとても貴重な存在となっています。

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なおアルパカのオスは生後30~36ヵ月ほど、メスは生後12~15カ月で性成熟(せいせいじゅく)を迎えて繫殖できるようになります。繁殖は年に1回で妊娠期間(にんしんきかん)は242~345日ほど、アルパカのお母さんは1回の出産で通常1頭の子どもを産みます。生まれたてのアルパカの赤ちゃんの体重は5~6Kgほどで、赤ちゃんは生後6~8カ月ほどまでお母さんのおっぱいを飲んで育ちます。

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アルパカのQ&A

アルパカの名前の由来は何?

「アルパカ」という名前について調べましたが、はっきりとした由来や語源がわかりませんでした。

しかし1つ「アルパカ(Alpaca)」という言葉はスペイン語であり、この言葉の語源は恐らくアイマラ語の単語「allpaca」であること、またケチュア語の“黄色がかった赤”という意味がある単語「p’ake」と何か関係があるらしいという説は見受けられました。

なおアルパカを英語で表すと「Alpaca」となり、学名は「Lama pacos」と表現されます。日本では別名「パコ」と呼ばれることもあり、漢字では「羊駱駝」と表現されます。

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アルパカはどうしてそこに住んでいるの?

アルパカは主に南アメリカにある、アンデス山脈の高地で飼育されています。

アルパカの祖先である野生のラクダ科の動物はかつて、現在のカナダ周辺に生息していたと考えられています。その後カナダからアジアに移動したラクダ科の動物は「ヒトコブラクダ」と「フタコブラクダ」に進化し、南アメリカに移動したものは「ビクーニャ」や「グアナコ」に進化したようです。そしてその後アンデス山脈周辺でビクーニャやグアナコが家畜化されて、現在の「アルパカ」や「リャマ(ラマ)」になったのではないかと考えられています。

なお現在アルパカは飼育に必要な費用が安いこと、質の良い毛が取れることから世界各国(アメリカ、スイス、ニュージーランドなど)で飼育されています。

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アルパカは何を食べているの?

アルパカは草食性の動物です。アンデス山脈周辺では草原に放牧されていて、自然に生えている草やコケを食べています。動物園では乾燥した牧草(チモシーやアルファルファなど)、草食動物用ペレットなどを食べています。

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ちなみにアルパカはウシやヤギと同じ、食べた物を何度も胃から口に戻してかんでから飲み込むという行動をする反芻動物(はんすうどうぶつ)の1種です。そのためアルパカをよく観察してみると、反芻をするために常に口をもぐもぐと動かしていることがわかります。

また立派な前歯が生えているように見えますが、実はアルパカの前歯は下にしか生えていません。アルパカは上の前歯がない代わりに歯茎の部分が固く丈夫になっていて、下の前歯と上の歯茎を使ってかみ切るようにして草を食べています。

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野生のアルパカっているの?

アルパカは野生のラクダ科動物(ビクーニャ、グアナコ)を家畜化した動物です。

野生動物ではなく家畜であることから、基本的に野生のアルパカは存在しません。しかしアンデス山脈では1年中アルパカが放し飼いにされているので、アンデス山脈のアルパカたちはある意味“半野生のアルパカ”といえるかもしれません。

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ちなみに南アメリカに生息する野生のラクダ科動物「ビクーニャ」は体長1.3~1.5mで体重は30~45Kgとアルパカよりやや小さく、そのやわらかくて肌触りが良い毛は最高級品として扱われています。「グアナコ」は体長2~2.3mで体重は80~120Kgほどとアルパカより大きな体を持っています。

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アルパカの毛にはどんな特徴があるの?

アルパカの毛にはアンデス山脈の厳しい環境を生き抜くためにとても細く、ヒツジの毛よりも柔らかくしっとりしていてなめらかという特徴があります。毛の内側には空洞があって空気をためこむことができるため保温性に優れていますが、暑い時は余計な熱を放出する性質も持っています。日本国内においてアルパカ毛はセーターやカーディガン、マフラーや靴下などの衣料品に使われています。

実はアルパカの毛には、「ワカイヤ」と「スリ(スーリ)」という種類があります。ワカイヤはぬいぐるみのようにもこもこになる毛のこと、スリは毛がワカイヤよりも細くて長く、やわらかさや光沢がある毛のことを表します。生産されるアルパカ毛のほとんどがワカイヤであることからスリは希少ですが、スリの方が編み物に適しているとされています。

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なおアルパカ毛といえば白色のイメージがある人も多そうですが、実はアルパカの毛には25種類以上ものカラーがあることが知られています。また生まれて初めて刈り取ったアルパカの毛は“ベビーアルパカ”と呼ばれていて、1頭のアルパカから1回しか取れないことからアルパカ毛の中でも特に貴重で高級な物とされています。

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アルパカはどんな性格なの?

アルパカは基本的にとても臆病ですが、好奇心旺盛な面もあるという不思議な性格をしています。

臆病ではありますが小さい頃から育てるとなつきやすく、人になれると体にさわる、手からエサを食べてもらうといったふれあいができるようになります。

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アルパカの首はどうして長いの?

ところでアルパカはキリンのように高いところにある葉っぱを食べる動物ではないのにも関わらず、なぜ首が長いのでしょうか?

残念ながら今のところアルパカの首がなぜ長いのか、その理由はわかっていません。ラクダの首が長い理由もはっきりとわかっていませんが、ラクダの首が長い理由には「キリンのように高いところにある葉っぱを食べていた祖先の名残なのではないか」、「熱を持った地面から頭を遠ざけて守るために首が長くなったのではないか」、「敵から素早く逃げるために足が長くなった結果、地面に生えている草を食べるために首も長くなったのではないか」、といったさまざまな説があるようです。

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アルパカのつばは臭いって本当?

本当です。
正確にいうとアルパカが吐くものは「つば」ではなく「胃液」であり、アルパカには身の危険を感じたり怒ったりすると相手に勢いよく胃液を吐きかける習性があります。これは他のラクダの仲間でも見られる習性で、するどいツメやキバなどの武器を持たないラクダたちにとっての唯一の武器となっています。

反芻動物であるアルパカの胃の中には、常に消化途中の食べ物(草など)が入っています。消化途中の食べ物が入った胃液はとても臭いうえ、細かい草の破片が大量に含まれているため、洋服に吐きかけられてしまうと悲惨なことになります。

なおアルパカが胃液を吐く前は耳を後ろに伏せる、唇をひっくり返して歯を見せる独特な表情をすることが多いといわれています。アルパカは臆病な動物なので、よほどのことがない限り胃液を吐いてくることはありません。しかしアルパカの近くにいる時は念のため、アルパカの表情や行動に注目しておくことをおすすめします。

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アルパカはペットとして飼えるの?

ところでアルパカを自宅で、ペットとして飼うことはできるのでしょうか?

アルパカは日本国内の動物園や牧場で一般的に飼育・繁殖されている家畜であり、個人がペットとして飼うことも可能であると考えられます。ただし飼育をしようとする都道府県、市町村によっては何らかの届け出が必要になるかもしれません。

アルパカを飼育する場合は最低限、アルパカが休める十分な大きさの小屋とアルパカが歩き回れるだけの敷地が必要です。体の大きさの割にエサを食べる量は少ないため、食費はそこまでかからないものと考えられます。

なおアルパカの値段について調べてみましたが、はっきりとした値段はわかりませんでした。あくまで参考情報となりますが、アルパカをペットとして飼う人がいるアメリカにおいて、その平均的な値段は1頭あたり250万円ほどのようです。

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アルパカが見られる動物園はあるの?

アルパカは東京都の上野動物園や北海道の釧路市動物園、長崎県の長崎バイオパークなど多くの動物園で飼育されています。

また長野県の八ヶ岳アルパカ牧場や栃木県の那須アルパカ牧場など、各地にアルパカを飼育している牧場があり、中には餌やり体験やアルパカのレンタルなどを行っている施設もあります。アルパカとふれあいたい時はこういった施設を訪ねてみると良いでしょう。

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アルパカはどのくらい生きるの?

アルパカの寿命は15~20年ほどだといわれています。

しかし消化器系の病気や肺炎になってしまうことが多く、またアンデス山脈よりも高温多湿な日本では熱中症や熱射病を起こして突然死んでしまうことも少なくないようです。

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参考文献

那須アルパカ牧場「アルパカとは」
https://nasubigfarm.com/alpaca/

那須アルパカ牧場「アルパカ毛について」
https://nasubigfarm.com/alpaca/hair.html

トータス株式会社「繊維用語集 アルパカウール」
https://www.ttsmile.co.jp/glossary/category/natural/animal/alpaca.html

動物検疫所「偶蹄類の動物の家畜衛生条件」
https://www.maff.go.jp/aqs/hou/require/guteirui.html

Bibgraph「スウェーデンのアルパカの疾患と死因:遡及的研究」
https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/31205721

Online Etymology Dictionary「alpaca (n.)」
https://www.etymonline.com/search?q=alpaca

公益財団法人一宮地場産業ファッションデザインセンター「■連載 縄文以来の伊達心⑪ 高度3~6千に生息するアルパカ」
https://www.fdc138.com/tex&fas/22/02/06date.pdf

みんぱくリポジトリ「アンデスのラクダ科動物とその利用に関する学際的研究 : 文化人類学と遺伝学の共同」
http://doi.org/10.15021/00001662

那須どうぶつ王国「アルパカ」
https://www.nasu-oukoku.com/animals/farm/alpaca/alpaca.html

アイキャッチ画像
https://unsplash.com/photos/xgQZ1rXbYa4