アデリーペンギン

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Adélie Penguin (5914011231).jpg

さてここで問題です。JR東日本のICカード乗車券Suicaのキャラクターモデルとなったペンギンの正体は何でしょう?答えは「アデリーペンギン」です。Suicaを持っている方はぜひ、確認してみてください!
さて、アデリーペンギンは体にタキシードをまとい、目の周りには白いアイラインを引いたような見た目が特徴的なペンギンです。
このページではそんなアデリーペンギンにまつわる不思議な秘密について、たくさんまとめています。早速、覗いてみましょう!

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~基本情報~

鳥網-ペンギン目-ペンギン科-アデリーペンギン属

■体長

70~75cm 

■体重の変化

オス:5.3kg メス:4.7kg(繁殖時期)

オス:4.3kg メス:3.8kg(産卵後)
※キング・ジョージ島で暮らす成鳥の場合

■フリッパー(翼)の長さ

オス:19.2cm メス:18.9cm
※モーソン基地で暮らす成鳥の場合

■くちばしの長さ

オス:4cm メス:3.6cm
※モーソン基地で暮らす成鳥の場合

■推定個体数(2017年度)

758万羽

アデリーペンギンの体は、全体的に黒と白の配色のみで構成されています。お腹側は白、背中側は黒い羽毛ですが、足はピンク色です。目の周りには白い「アイリング」と呼ばれる部分がありますが、これは白目ではなく羽毛になります。本当の白目は求愛行動や興奮した際目がギョロっと動くので、そのときに確認できるようです。オスもメスも全く同じ外見をしているため見分けがつきにくいですが、基本的にオスの方がくちばしや体が大きいといわれています。

アデリーペンギンは5~8月の間を北の海で過ごしますが、9~10月になると繁殖を行なうため、生まれ育った南極大陸沿岸に戻ってきます。その後ルッカリー(コロニー)と呼ばれる集団を作り、先に到着したオスが小石を集めて巣作り開始です。ですが、落ちていそうで落ちていない小石を集めて巣作りするのはなかなか大変な仕事。素敵な巣を作らないと後からやってくるメスの気を引くことができないので、オスたちは必死です。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Adelie_Penguin_at_eggs_IMG_1132.jpg

あまりにも大変なので、他のペンギンが集めている小石をいなくなった隙に横取りするという、悪知恵を働かせたオスも存在します。アデリーペンギンにとって小石は人間でいうところのお金と同等の価値があるので、自分が一生懸命稼いだお金を他人に盗まれるなんて想像したら、ひとたまりもないですよね。

その後メスが到着すると、お互い気に入った相手と繁殖行為にうつります。メスは10~11月の間に2個卵を産み、基本的にはオスから先に卵を温め、約2週間経過するとメスと交代します。交代とはいえ、オスもメスも飲まず食わずで温め続けるので、産卵後の体重は減少。抱卵合計期間は32~34日間となり、この期間をこえると無事にヒナ誕生となります。

出典:https://unsplash.com/photos/ujWrNI4mFww

ヒナの体は半分以上が胃袋でできているため、とても食欲旺盛。生まれてから約22日間は親鳥がお腹で包みながら育て、交代でエサを与えます。ある程度大きくなると、ヒナはクレイシ(共同保育所)と呼ばれる集団に預けられます。その期間も親鳥は海へエサを探しに行き、1~2日置きに食事を与え続けます。親鳥が不在の間ヒナは敵に狙われやすいため、若鳥や独身のオスに守られながら生活するのです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Adelie_penguin_colony.jpg

そして、生まれてから50~60日ほどで親鳥と同じぐらいの大きさに成長し、巣立ちのときを迎えます。灰色の綿毛に覆われていたヒナの体は少しずつ羽が抜け換わり、最終的には大人と同じ黒と白の配色へ変化します。この時期はまだアイリングが無く、成長するにつれて少しずつ見え始めるようです。大きくなった子どもたちはいったんその場所を離れますが、数年後、今度は自分たちが繁殖するために生まれた故郷へ戻ってきます。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Adélie Penguin chicks (5914019513).jpg

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アデリーペンギンのQ&A

アデリーペンギンの名前の由来は?

1840年、フランス人探検家であるデュモン・デュルヴィルが南極大陸の1部を見つけます。彼は妻の名前を取って「アデリーランド」と呼ぶようになりました。その後、そこで暮らすペンギンたちにもアデリーという名前をつけたといわれていますが、同時につけたのか別々につけたのかは分かっていません。

いずれにしても、アデリーさんという女性がきっかけになったのは間違いないようです。ちなみに、騒がしいペンギンの鳴き声を聞いて、自分の奥さんがわめいているようだから名づけた。という変な説もあるとかないとか。

出典:https://unsplash.com/photos/9k9tNQTwMEA


アデリーペンギンはどうしてそこに住んでいるの?

アデリーペンギンは南極大陸沿岸を含め、さまざまな島で繁殖や子育てを行ないます。南極沿岸以外での繁殖地は、サウス・シェットランド諸島、サウス・サンドウィッチ諸島、ブーベ島、スコット島、バレニー諸島、ピーターI世島などです。

さらに最も南ではロイズ岬という場所にも移動します。それ以外にも、フォークランド諸島やサウス・ジョージア島、インド洋や太平洋の亜南極島でも姿が確認され、南アフリカやオーストラリアの沿岸でもアデリーペンギンの姿が目撃されているようです。

広範囲で確認されているのは漂着してしまった可能性もありますが、一説によると、南極大陸沿岸や諸島の氷下にはナンキョクオキアミが大量に生息しており、そこで暮らせばエサが食べやすいから。と考えられています。

出典:https://unsplash.com/photos/0eYHcCrcFNM


アデリーペンギンは何を食べているの?

海に潜ってイカやタコ、ナンキョクオキアミや甲殻類(こうかくるい)を食べています。ヒナの場合、親が消化した甲殻類などを口移しで食べさせるのですが、水族館で人工飼育されている場合、オキアミなどをミキサーにかけ、その後コーヒーミルク等で調整したペースト状のものを与えています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Antarctic, adelie penguins (js) 20.jpg


アデリーペンギンは仲間を海に突き落とすって本当?

結論からいうと、本当です。と、その前に皆さんは「ファースト・ペンギン」という言葉を聞いたことがありますか?実はこれ、ビジネス用語のひとつとして登場し、「挑戦者」という意味があるんだとか。そして由来となったのが、アデリーペンギンのある習性からきているのでご紹介します。

アデリーペンギンは普段、海に潜ってエサを食べますが、海には天敵のアザラシが泳いでいることもあります。状況を確認するためには、一番最初に誰かが海へ潜らなくてはなりません。誰でも一番最初に潜るのは怖いのですが、そうすると徐々に仲間同士で押し合いが始まってしまいます。その結果、最初に海へ落ちたペンギンは「ファースト・ペンギン」扱い、つまり実験台とされるのです。

そして最初に落ちたペンギンがアザラシに食べられなかったら安全と判断し、他の仲間も次々に海へ潜っていくのですが、反対に食べられて血の海が見えたら危険と判断し、その場所から海へ入るのを中止します。少しでも生きる確率を上げるための手段とはいえ、自然界で生きるのは私たちの想像以上に大変なのでしょう。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Adélie penguins in Antarctica, Antarctic Peninsula.JPEG


アデリーペンギンのメスは浮気しちゃうって本当?

ペンギンといえば「一夫一妻制(いっぷいっさいせい)」で、素敵な絆で結ばれている動物!というイメージが強いですが、アデリーペンギンの場合はちょっと事情が異なるようです。

基本情報でも少しご紹介しましたが、アデリーペンギンたちにとって小石はとても大切で貴重な物。それはオスだけでなく、パートナーとなったメスも同様です。ときにはそんな小石を巡って盗みが起きることも日常茶飯事。

そんなとき、メスはオスと違った方法で小石を盗みに行きます。それは、まだ「パートナーに出会えていない独身のオス」から小石をこっそりいただくのです。分かりやすくいうと、夫のいる妻が独身男性のところへ会いに行く。といった感じです。

素敵なメスに出会えていないオスからすると、目の前に突然素敵なメスが現われたらとってもラッキーなハプニング。メスはそんな気持ちを利用し、オスに近づいていきます。まさかその子が他のオスのパートナーだとも知らずに、オスは喜んで繁殖行為を行なうのです。

そしてメスは隙を見計らって独身オスの巣から小石を持ち去って行き、何事もなかったかのように、本来のパートナーであるオスのもとへ帰ってきます。さて、ここでちょっと気になるのが、このメスがこれから産む卵の父親は一体どっちなの?ということです。人間と違ってDNA検査はできませんし、もしかしたら独身オスの子どもという可能性もあります。真実は神のみぞ知る。といったところでしょう。

こうしてみると、アデリーペンギンのメスはとんでもない性格だ!と思われそうですが、実際本来のパートナーがいるのに、他の独身オスと繁殖行為を行なうのは全体の5%以下なんだそうです。また、このような行動を起こすのも一応理由があり、複数のオスと繁殖行為をした方が、産まれてくるヒナの子育て成功率が上がるとのこと。つまり、少しでも丈夫で強い遺伝子の子孫を残すためには、ある意味必要な行動?と考えられているのです。

出典:https://unsplash.com/photos/dXQHxSt2ShM


アデリーペンギンの性格を詳しく知りたい!

人間が近づいてもあまり逃げることがなく、その場に居座るのである意味大胆な性格です。ですが、自分の巣に侵入する個体に対しては攻撃を仕掛けます。それ以外にも、実は腹黒い一面があり、コウテイペンギンのヒナを助けた代償として彼らを崖から突き落とし、縄張りを奪い取ったこともあるんだとか。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:2007_Snow-Hill-Island_Luyten-De-Hauwere-Explorers-16.jpg


アデリーペンギンが見られる場所はあるの?

2021年11月現在、日本でアデリーペンギンを飼育している場所は、「八景島シーパラダイス(神奈川県横浜市)」、「名古屋港水族館(愛知県名古屋市)」、「アドベンチャーワールド(和歌山県白浜市)」、「海遊館(大阪府大阪市)」の4箇所です。

また、野性下でのリアルなアデリーペンギンを見てみたい!という本格派の方には、南極クルーズに参加するという方法もあります。旅費は高額になってしまいますが、旅行代理店を通じて申し込むことができます。ひとつの参考にしてみてはいかがでしょうか。

出典:https://unsplash.com/photos/-_GsVJIH4fE


アデリーペンギンには天敵がいるの?

アデリーペンギンの敵は、海に潜んでいるシャチやヒョウアザラシなどです。また、オオトウゾクカモメという鳥は卵やヒナを狙ってきます。しかし、アデリーペンギンにとって一番の敵は人間かも知れません。

現在、IUCN(国際自然保護連合)によってアデリーペンギンの絶滅危惧度は「軽度懸念(けいどけねん)」に指定されていますが、実は2017年、アデリーペンギンのとあるルッカリーにてヒナが大量に死んでしまい、生き残ったのはわずか2羽のみという悲しい出来事が起こりました。

原因は、ルッカリー周辺海域に季節外れの海水が流れ込んだためと考えられています。つまり、普段ならルッカリーの近くで食べられるオキアミも、海水の変化でオキアミが遠くに行ってしまい、親鳥がルッカリーに帰ってくるまでヒナが空腹に耐えらえれず、命を落としたということです。

今回の海水流れ込み現象は、直接地球温暖化に関係しているかどうかは不明ですが、近年の地球は気候変動により、昔では考えられなかった現象があちこちで発生しているのも事実。この機会にぜひ、人間とペンギンとのより良い関係作りを考えていただけたら幸いです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Adelie_penguin_(Pygoscelis_adeliae)_and_chick.jpg


アデリーペンギンの寿命は?

厳しい自然界で生きるアデリーペンギンの寿命は、最高で約20年です。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Adélie Penguin (5917118757).jpg

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参考文献

ペンギンガイドブック 著者:藤原幸一

ペンギンライブラリー ホシザキ株式会社
https://www.hoshizaki.co.jp/penguin_island/penguin/

Akiko KATO’s page
http://docyaounde.free.fr/akatoHP/

名古屋港水族館 ペンギンのヒナの餌を紹介します
https://nagoyaaqua.jp/news/staff/4624/

海遊館 巣立ちの時・・・
https://www.kaiyukan.com/connect/blog/2013/09/post-244.html

南極動物図鑑
http://polaris.nipr.ac.jp/~penguin/oogataHP/zukan/zukan.htm

Pew Charitable Trusts 世界のペンギンの保護
https://www.pewtrusts.org/-/media/assets/2015/05/penguinoverviewfinaljp.pdf

WWFジャパン 残された2羽のアデリーペンギンのヒナ
https://www.wwf.or.jp/staffblog/news/229.html

BirdLife International Tokyo もっとも絶滅リスクの高いペンギンはどの種でしょうか?
https://tokyo.birdlife.org/archives/world/13126

宇宙地球環境研究所 極地50のなぜ
https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/50naze/kyokuchi/38.html

アイキャッチ画像
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Adelie Penguin (Pygoscelis adeliae) – Flickr – Gregory “Slobirdr” Smith.jpg