カナリア

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赤色や黄色、白色の美しい見た目とさえずりが特徴のペットとして飼われる小鳥、カナリア。
カナリアはかつて、インコや文鳥などとともに多くの家庭で飼育される、ごく一般的な小鳥でした。
しかしいつの間にか飼育する人が少しずつ減り、ペットショップでその姿を見かけることも少なくなってしまいました。
そんなカナリアにはどんな特徴や秘密があるのか、この記事で一緒にのぞいていきましょう!



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~基本情報~

鳥綱スズメ目-アトリ科-カナリア属

体長11~20cm 体重12~30g

カナリアはスペイン領のカナリア諸島に生息する、スズメくらいの大きさの野鳥です。ペットとして飼われているカナリアは野生のカナリアを飼いならして家禽化(かきんか)した鳥であり、野生のカナリアとは見た目や性質が大きく異なります。

実は野生のカナリアはおなかが緑色で背中は茶色のしま模様が入る地味な色合いで、羽の形にもこれといった特徴はありません。しかしペットのカナリアには赤色や黄色、白色などさまざまな色合いがあります。さらに巻き毛や目が隠れるほど顔の羽毛が長い品種がいると思えば、他の品種よりさえずりが美しい品種や、三日月のような形をした独特な体勢を取る品種もいて、野生のカナリアからは想像もできないほど非常にたくさんの品種が作られています。

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カナリアの歴史は意外と古く、14~15世紀にスペイン人によってカナリア諸島の侵略と支配が行われ、そこで多くの戦利品とともにカナリアもヨーロッパに持ち込まれたと考えられています。とても地味な小鳥であるカナリアを現在見られるような美しい見た目の小鳥に改良するには、大変な苦労があったことでしょう。しかしそのさえずりの美しさから、苦労してでもカナリアを飼育、改良したいと考えた人が多かったようです。

そんなカナリアはヨーロッパで飼育されはじめた当初は、貴族などの裕福な人しか買えないほど高価な小鳥だったそうです。日本には江戸時代末期にやってきたといわれていますが、日本においても当初はオスとメスのペアで現在の価格にして200万円ほどの値段がついていたそうです。なお「南総里見八犬伝」の作者である、滝沢馬琴(たきざわばきん)もカナリアの愛好家だったことが知られています。

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カナリアはペットとして飼える小鳥

カナリアはセキセイインコや文鳥と同じように、ペットとしても飼える小鳥です。

カナリアは基本的に丈夫で飼いやすく、美しい見た目とさえずりが魅力的な小鳥です。ただし基本的に美しい声で鳴くのはオスであり、メスはほとんど鳴きません。またカナリアはあくまでさえずりを聞き、目で見て楽しむ鑑賞用の小鳥であり、セキセイインコのようにおしゃべりができるわけでも、文鳥のようにふれあいができるわけでもないことを把握しておいてください。

昭和の時代にはカナリアをはじめとした小鳥を飼育する家庭が多く、カナリアを飼うことに憧れる子どもも多かったようです。しかしペットを飼う時に「鑑賞」より「ふれあい」を重視する人が増えたためなのか、カナリアはいつの間にか日本のペット市場から少しずつ姿を消していき、昔に比べるとブリーダーも飼育者も少なくなったといわれています。



家で飼う時は何をあげたらいいの?

カナリアの餌にはカナリア用、もしくはフィンチ用と書かれた皮付きのシード(種子)もしくはペレットを主食に、コマツナやチンゲンサイなどの青菜を与えます。

シードを主食にする場合はヒエ、アワ、キビ、カナリアシード(カナリーシード)の4種をメインに、脂肪分が多いナタネ、エゴマを与えると良いといわれています。自分でそれぞれのシードを買ってきてブレンドしても構いませんが、栄養バランスが偏ってしまう可能性もあるため、最初からシードがブレンドされた“シードミックス”を購入するのも良い方法です。なおシードは必ず皮付きの物を選び、必要に応じてボレー粉や小鳥用のサプリメントを与えてください。

ペレットを主食にする場合はいくつかのペレットを見比べて、栄養成分や原材料のチェックをすることをおすすめします。そしてできれば着色料や香料といった余計な物が使われていないもの、そして信頼できるメーカーのものを選ぶと良いでしょう。



飼育する環境について

カナリアは基本的に、小鳥用のケージや鳥かごで飼育します。

カナリアは観賞用の小鳥であるためか、“カナリア用”として販売されているケージは機能性よりも見た目を重視したものが多いようです。確かに美しいケージと美しいカナリアは非常に合いますが、できればカナリアを飼う時は運動不足にならないようにできる限り大きく、掃除がしやすいケージを選んであげてください。

またカナリアのオスは本来なわばりを持って1羽で暮らす習性があるため、オスを同じケージに入れるとケンカをしてしまいます。そのためオスを飼う時は基本的に1羽のカナリアに対し、1つのケージを用意するようにしてください。メスは複数の個体を一緒に飼うこともできますが、複数のカナリアを1つの鳥かごやケージで飼う場合は、羽数に合わせた大きさのケージを用意してあげてください。

ケージは直射日光が当たらないけれど太陽の光が感じられる場所、かつ適度に換気がされていて騒音や振動がない場所に置くと良いでしょう。そして1度ケージを設置する場所を決めたら、基本的に動かさないようにします。



カナリアにはどんな種類がいるの?

カナリアは大きく分けて「カラーカナリア」「タイプカナリア(スタイルカナリア)」「ソングカナリア」という、3つのタイプに分類されます。

カラーカナリアは色や模様の美しさを求め、改良されてきたカナリアのことで「赤カナリア」や「レモンカナリア」、「白カナリア」などが有名です。カナリアは本来とても地味な小鳥ですが、真っ赤な羽を持つ野鳥・ショウジョウヒワとのブリーディングの結果、赤色や黄色といった色を持つものが生まれました。

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タイプカナリアは巻き毛や独特な体型を持つカナリアのことで、「巻き毛カナリア」や「日本細カナリア」、「ノリッジファンシー」や「リザードカナリア」などが有名です。とてもゴージャスな見た目の巻き毛カナリアや、すらりとした美しい体型を持つ日本細カナリアなど、他のカナリアと比べると見た目が非常に華やかという特徴があります。

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ソングカナリアは美しい鳴き声をさらに磨いたカナリアのことで、最も有名なのは「ローラーカナリア」です。ローラーカナリアは他のカナリアと違う独特な鳴き方をすることが知られていて、世界各国でさえずりの美しさを競うコンテストが開催されています。コンテストに出場する場合は若いうちから十分に運動をさせて体力をつけ、さえずりの訓練をしなければなりません。



その他の注意点

カナリア最大の魅力は、オスの美しいさえずりです。しかしカナリアは小さな体の割に鳴き声が大きく、特に繁殖期のオスは想像以上に大きな声で鳴きます。そのためアパートやマンションなどの集合住宅でカナリアを飼育する場合は、近所迷惑にならないように配慮しなければなりません。

なおメスは基本的にほとんど鳴かないといわれているため、集合住宅でカナリアを飼いたい時はメスを選んだ方が良いかもしれません。ただしときおりオスかと思うほど大きい声で鳴くメスもいるため、メスだから安心とも言い切れないのが実際のところです。

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カナリアのQ&A

カナリアの名前の由来って何?

ところでなぜ、カナリアにはカナリアという名前が付けられたのでしょうか?

カナリアの名前の由来は生息地である「カナリア諸島」で、カナリア諸島に生息している小鳥ということで、カナリアという名前が付けられたと考えられています。なおカナリア諸島という名前は、スペイン人がこの島に上陸した時に犬がたくさんいるのを見て、「Insula Canum」(ラテン語で“犬の島”という意味)と言ったことが由来になっていると考えられています。

なおカナリアは時にカナリヤと呼ばれることもあり、漢字では「金糸雀」もしくは「金絲雀」と表現されます。学名は「Serinus canaria」で、英語では野生のカナリアのことを「Wild canary」、ペットのカナリアのことを「Domestic canary」と呼び分けています。

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カナリアはどうしてそこに住んでいるの?

カナリアは大西洋にあるカナリア諸島とマデイラ諸島、アゾレス諸島に生息しています。

残念ながらなぜカナリアがこれらの場所に生息しているのか、詳しい理由はわかりませんでした。しかしどの島も自然が豊かな場所であることから、カナリアが食べる物や住む場所が十分にあった、ということもカナリアが生息している理由の1つなのではないかと考えられます。

ちなみにヨーロッパとアフリカの地中海沿岸には、カナリアと別の種類ながら外見がよく似ている「セリン」と呼ばれる野鳥が生息しています。

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野生のカナリアは何を食べているの?

野生のカナリアはペットのカナリアと同じく、植物の種子や熟した果実などの植物質を食べているといわれています。

ちなみに動物園では皮付きのシードミックスや小鳥用の配合飼料、コマツナや白菜などの野菜、リンゴやミカンなどの果物を与えているようです。

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カナリアは毒ガスを感知できるって本当?

本当です。
ヨーロッパでは産業革命の頃、炭鉱で働く多くの労働者が炭鉱内の酸素不足や毒ガス(メタンガスや一酸化炭素など)の発生を知るために、仕事場にカナリアを連れて行きました。なぜなら炭鉱の中で異常が起きると、常にさえずっているはずのカナリアがさえずることをやめる、ぐったりするなどの行動の変化を起こすからです。炭鉱の労働者はカナリアの行動が変化したらすぐに炭坑内から脱出することで、酸素不足や毒ガスから身を守っていたそうです。

カナリアは当時、鳥の中でも特に酸素不足や毒ガスの検知に優れた種類だといわれていました。しかし現在では、カナリアが特別に酸素不足や毒ガスを感知する能力に優れている訳ではないということがわかっています。実際にカナリアがペットとして一般的な小鳥になる前は、カナリアではなくネズミや他の野鳥が同じ役割を果たしていたそうです。

とはいえ日の光も入らず、場所によっては気温が30~40℃、湿度が100%にもなる過酷な炭鉱の環境で1日10時間以上も過ごすことに耐えられず、死んでしまう動物も多かったようです。しかしカナリアはこのような過酷な環境に耐えるうえ、さえずりも見た目も美しいという素晴らしい性質を持っています。そのためカナリアは毒ガスから身を守る仕事道具である以上に、過酷な環境で仕事をする中での大切ないやしとなり、炭鉱で働く人たちのパートナーとして大切にされていたのではないかと考えられています。

なお英語ではこのような歴史から「警告」や「予兆」という意味がある、「canary in a coal mine」(炭鉱のカナリア)という言葉が広く使われています。

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カナリアはどのくらい生きるの?

カナリアの寿命は10年ほど、最長で24年ほどだといわれています。

カナリアと同じようによく飼育される小鳥の寿命は、セキセイインコが5~10年、文鳥が8~10年だといわれています。カナリアの寿命はこれらの小鳥と同じくらいか、やや長生きする傾向にあると考えると良いでしょう。

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参考文献

島森 尚子(2011年)『ザ・カナリア―最新の品種・飼育法・繁殖・ケアがわかる (ペット・ガイド・シリーズ)』誠文堂新光社

国土交通省「カナリア事情 平成30年3月現在 在ラスパルマス領事事務所」
https://www.mlit.go.jp/common/001243903.pdf

環境省「ペット動物販売業者用説明マニュアル」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/manu_dealer/bird.pdf

コトバンク「カナリア」
https://kotobank.jp/word/カナリア-45815

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