イエローアイドペンギン

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Yellow-eyed_penguin_hoiho.jpg

別名「失われた森の住人」。今回このページでご紹介するのはイエローアイドペンギンという、ちょっと珍しい鳥です。
頭部や目が黄色に輝き、とても神秘的な姿をしているペンギンといえるでしょう。ちなみに、ニュージーランドの5ドル札にも描かれているため、ニュージーランドでは最も有名なペンギンなんだとか。
日本から遠く離れた国で彼らはどんな生活を送り、命を繋いでいるのでしょうか?
早速、その秘密を覗いてみましょう!

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~基本情報~

鳥網-ペンギン目-ペンギン科-キンメペンギン属

■体長

65~78cm 

■体重

オス:8.5kg メス:7.5kg(換羽初期)

オス:4.4kg メス:4.2kg(換羽後期)

■フリッパー(翼)の長さ

オス:21.5cm メス:20.6cm
※オタゴ半島で暮らす成鳥の場合

■くちばしの長さ

オス:5.5cm メス:5.3cm
※オタゴ半島で暮らす成鳥の場合

■推定個体数(2017年度)

3,400羽

イエローアイドペンギンは別和名「キガシラペンギン」や「キンメペンギン」と呼ばれていますが、このページでは基本的にイエローアイドペンギンと名前を統一してご紹介します。

イエローアイドペンギンの外見は、背中側は黒い羽毛におおわれ、喉やお腹側は白い羽毛が生えています。ですがなんといっても最大の特徴は、輝きのある黄金の目と頭部に生えるくっきりとした黄色の羽といえるでしょう。そのため、イエローアイドペンギンは他に似た種類がいないことから1属1種という珍しい立ち位置にいます。

くちばしは茶色がかった赤、足の色はピンクです。オスもメスも全く同じ外見をしているため見分けがつきにくいですが、基本的にオスの方が体が大きいといわれています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Yellow-Eyed_Penguins_in_Dunedin,_NZ.jpg

イエローアイドペンギンは9~10月頃になるとニュージーランド南島を始めとする島々で巣作りを開始します。海より300mから1km離れた植物の生い茂った森の中や倒木の下に作ることが多く、完成後はオスは求愛行動を行ない、それに反応したメスも気に入ればめでたくカップル成立となり繁殖行為にうつります。ちなみに、つがいの絆はゆるやかとのこと。

メスは基本的に2個の卵を産み、抱卵はオスとメスが2日置きの交替で行ないます。抱卵合計期間は39~51日間となり、この期間をこえると無事にヒナ誕生です。孵化後、親鳥は生まれてきた2羽のヒナに分け隔てなくエサを与えて育てます。基本的には日の出とともにエサを採るため両親は海へと出発。夕方ごろには巣へ戻ってくるようです。

またイエローアイドペンギンは他のペンギンとは異なり、ヒナ同士が集まるクレイシ(共同保育所)を作ることはほとんどありません。巣は草や木がたくさん生えた森の中にあるので、空の天敵からは見つかりくくなっています。そのためヒナ同士が身を寄せ合って守らなくても大丈夫という訳です。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Yellow-eyed_Penguin_lying_in_nesting_hut.jpg

その後は生まれて106~108日ほどで親鳥と同じぐらいの大きさに成長し、ヒナは巣立ちのときを迎えます。2個の卵から生まれたヒナはぐんぐん成長し、2羽とも巣立ちできるのがイエローアイドペンギンの特徴です。ふわふわの綿毛に覆われていたヒナの体は少しずつ羽が抜け換わり、最終的には大人と同じ姿になりますが、巣立ちを迎えたばかりの若鳥は頭部がまだ黒っぽいまま。成熟するにつれて少しずつ頭部の羽毛が黄色に変化するのです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:MoltingYellowEyedPenguinChicks.jpg

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イエローアイドペンギンのQ&A

イエローアイドペンギンの名前の由来は?

文字通り目の周りが黄色いためこの名前がつきました。別和名のキガシラペンギンは、黄色い頭が特徴的だから、キンメペンギンは黄金色の目をしているのが由来だそうです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Yellow-eyed_penguin._(27046372062).jpg


イエローアイドペンギンはどうしてそこに住んでいるの?

イエローアイドペンギンは主に、ニュージーランド南島のバンクス半島やオアマル、オタゴ半島、ナゲット・ポイントやスチュアート島で繁殖や子育てを行ないます。亜南極にも繁殖地は存在し、中心はオークランド諸島やキャンベル島です。

このようにイエローアイドペンギンはニュージーランドの島々を好んでいるようですが、はっきりとした理由は見つかりませんでした。しかし、エサである小魚などが生息地周辺でたくさん食べられるからイエローアイドペンギンもその近くで繁殖する。といった可能性はあげられます。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Yellow-eyed Penguin – Stewart Island – New Zealand (39039196312).jpg


イエローアイドペンギンは何を食べているの?

海に潜って小型から中型の魚を食べます。具体的にはスプラットイワシやオパールフィッシュなどですが、たまにイカも食べるようです。ヒナの場合は、親が消化した魚などを口移しでもらっています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Megadyptes antipodes -Dunedin, New Zealand -adult feeding chick-8.jpg


イエローアイドペンギンはコロニー(ルッカリー)が嫌いって本当?

本当です。だいたいのペンギンは密集して巣を作るのに対し、イエローアイドペンギンの巣はプライバシーが保てるよう、150m前後の間隔をおいて巣作りします。

面白いのが、あるカップルが作った巣のすぐ近くに別のカップルが引っ越ししてくると、最初に巣を作ったカップルは別の場所へ移動してしまうんだとか。それだけ自分たちの視界には、例え同じ種のペンギンであっても入って欲しくないからといわれています。

ところが草が生い茂り過ぎて周りの視界が悪すぎると、さっきとは逆にお互い近くに巣を構えることもあるようです。近すぎてもダメ、離れすぎてもダメ、この絶妙な距離感はイエローアイドペンギンでないと分からないかも知れませんね。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:DSC_0022_(10741152686).jpg


イエローアイドペンギンってどんな鳴き声なの?

トランペットのような甲高い声で「キーキー」と鳴きます。また、イエローアイドペンギンはマオリ語(マオリとはニュージーランドの先住民族)で「ホイホ」ともいいます。ホイホは騒音発声者という意味があるとのこと。

彼らの鳴き声は相互ディスプレー」と呼ばれる、両親が無事に海から巣へ戻ってきたときの挨拶を行なう際、聞けることが多いです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Yellow-eyed_Penguin_crying_MC.jpg


イエローアイドペンギンの性格について詳しく知りたい!

繊細で用心深い性格です。そのため人間にはほとんど近づこうとしません。また、巣立ちヒナはある日突然親鳥の前から巣立っていくのですが、急な出来事のため、親鳥はしばらく鳴いて自分の子どもを探すんだそうです。

本当に繊細で優しそうなイエローアイドペンギンですが、オス同士の戦いになると話は別で、自分のテリトリーやメスを守るため容赦なく攻撃します。大きく口を開けながら威嚇の叫び声を上げます。それでも決着がつかないときは、フリッパー(翼)で叩き合うようです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Megadyptes antipodes -Otago Peninsula, Dunedin, New Zealand -family-8.jpg


イエローアイドペンギンが見られる場所はあるの?

2021年現在、残念ながらイエローアイドペンギンが日本で見られる場所はありません。

ですが、ひとつの手段としてニュージーランドを巡るツアーに参加するという方法があります。ツアーオプションに「イエローアイドペンギンにも会える!」と記載があれば、より出会える可能性も高くなります。旅費は高額になってしまいますが、旅行代理店を通じて申し込むことができます。どうしてもイエローアイドペンギンが見たい!という方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tučňák žlutooký – Penquin Yellow Eyed na Curio Bay – panoramio.jpg


イエローアイドペンギンには天敵がいるの?

イエローアイドペンギンの敵は、主にオットセイやアシカなどです。また、フェレットや野良ネコはヒナを狙ってきます。しかし、イエローアイドペンギンにとって一番の敵は人間かも知れません。

イエローアイドペンギンは現在、IUCN(国際自然保護連合)によって絶滅危惧度を「絶滅危惧IB類(ぜつめつきぐいちびーるい)」に指定されています。

ニュージーランド南島を始めとするイエローアイドペンギンの生息地は、もともと広大な森林地帯でした。ところが19世紀頃、人々が新しい生活圏となる場所を求めてこの地にやってきた際、森林伐採にて牧草地と変えてしまったのです。その結果、イエローアイドペンギンの住みかは奪われ数は減少してしまいました。現在は残されたわずかな森でひっそりと暮らしている彼らですが、天敵といわれているフェレットや野良ネコも、もともとは人間が連れてきた動物です。

かつてハンティング用に連れてこられたウサギが大繁殖してしまい、これをなんとかするために導入されたのがフェレットやネコ。しかし、フェレットやネコはウサギを捕まえるだけでなくイエローアイドペンギンのヒナまで襲うようになってしまったのです。

現在は地元のレンジャーによって保護活動が行なわれているものの、もとを辿れば私たち人間がまいてしまった種。少しでもペンギンたちを助けるためには今の状況を知ることが大切です。それだけでも何か力になれるヒントが得られるかも知れません。この機会にぜひ、人間とペンギンとのより良い関係作りを一緒に考えてみませんか?

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Yellow Eyed Penguin. (Megadyptes antipodes) (9868019174).jpg


イエローアイドペンギンの寿命は?

厳しい自然界で生きるイエローアイドペンギンの寿命は、最高で約20年です。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Yellow-eyed_Penguin,_Catlins,_New_Zealand.JPG

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参考文献

ペンギンガイドブック 著者:藤原幸一

ペンギンライブラリー ホシザキ株式会社
https://www.hoshizaki.co.jp/penguin_island/penguin/

Pew Charitable Trusts世界のペンギンの保護
https://www.pewtrusts.org/-/media/assets/2015/05/penguinoverviewfinaljp.pdf

BirdLife International Tokyo もっとも絶滅リスクの高いペンギンはどの種でしょうか?https://tokyo.birdlife.org/archives/world/13126

アイキャッチ画像
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Yellow-eyed_Penguin_(Megadyptes_antipodes).jpg