オオカミ
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オオカミ
オオカミはイヌ科の動物の中でも一番大きくて強い、イヌ科の代表ともいえる動物です。 格好良い見た目に加えて他の動物にはない遠吠えする姿など、どこか神秘的な雰囲気を持っているオオカミは、 古くからいろいろなお話やキャラクターのモチーフにされてきました。 オオカミに格好良いというイメージを持っている人も逆に凶暴で怖いというイメージを持っている人も、 オオカミの特徴や歴史を知ると、オオカミに持っているイメージが変わるかもしれません。 それではオオカミにはどんな特徴や秘密があるのか、こっそりのぞいていきましょう!
オオカミ 基本情報
哺乳綱食肉目-イヌ科-イヌ属
体長82~160cm 体重18~80Kg
オオカミの生息地(せいそくち)はアメリカやカナダ、ロシアやインド、ヨーロッパなど北半球(きたはんきゅう)の北側の広い範囲です。 以前はもっと広い範囲に生息していましたが、人間による迫害(はくがい)によって生息地が大きく狭まってしまいました。 かつてオオカミは人間の次に生息地が広い哺乳類(ほにゅうるい)の動物でしたが、世界的に数や生息地を大きく減らしてしまったため、現在人間の次に生息地が広い哺乳類の動物はキツネになっています。
オオカミは基本的にオスとメスの番(つがい)を中心に、その子どもから構成される 「パック」と呼ばれる群れで暮らしています。オオカミは大体春に繁殖期を迎えて1~11頭の子どもを産みますが、子育ては番とパックのメンバー(ヘルパーと呼ばれる)が協力して、群れのみんなで行います。
オオカミの狩りは広大ななわばりの中を歩き回り、獲物を見つけることから始まります。 獲物を見つけると群れのみんなで追いかけて、自分たちよりも大きな獲物も倒して食べてしまいます。通常の狩りでは獲物を100m〜5kmほど追いかけて捕まえられるかどうか判断しますが、良い獲物を見つけるとなんとか捕まえようと夜通し追いかけることもあるそうです。
オオカミ Q&A
オオカミの名前の由来は何?
実は100年ほど前までは、日本にもオオカミが住んでいました。 農耕民族(のうこうみんぞく)である日本人にとって、畑や田んぼを荒らすシカやイノシシなどの草食動物を食べてくれるオオカミはとてもありがたい存在で、農耕の守り神として信仰(しんこう)されていました。
そんなオオカミは山の神様の使いとして、大神(おおかみ)や大口の真神(おおくちのまかみ) と呼ばれていて、そこから「オオカミ」と呼ばれるようになったのではないかと考えられています。
意外と知られていませんが、実は日本全国にオオカミを神様の使いとして祀る(まつる)神社があります。特に埼玉県秩父市(ちちぶし)にある三峯神社(みつみねじんじゃ)では、狛犬(こまいぬ)ではなくオオカミの像が鎮座(ちんざ)していることが知られています。
オオカミは家族を大切にするって本当?
本当です。オオカミの群れであるパックには、通常7〜13頭ほどのオオカミが所属しています。時にはもっとたくさんのオオカミが所属することもありますが、いずれにしてもパックの絆はとても強いと言われています。
特にパックの中心となるオスとメスの番は絆が強いことで知られていて、一度番になるとその関係は一生解消されることがありません。番のどちらかが死んでしまった場合も、一部の例外を除いて新しいパートナーを迎えることはありません。
しかしパックの中は厳密な順位付けがされていて、一番強い番のオスとメスしか子どもを作ることができません 。そのためパックの中にいればある程度安定した生活を送れますが、繁殖できる年齢になった子どもたちはパックから出ていきます。そして自分の番を見つけ、自分のパックを作るために必要ななわばりを探して広大な土地をさまよいます。
オオカミはどうして遠吠えをするの?
オオカミといえば目を閉じて上を向いて吠える、遠吠えしている姿をイメージする人も多いことでしょう。それではなぜ、オオカミは遠吠えをするのでしょうか ?
実はオオカミは遠吠えをすることによって、自分のなわばりを宣言しているのです。オオカミは体が大きいため、生きるためにはたくさんの肉を食べる必要があります。1回に食べる肉の量は7Kgとも9kgともいわれていて、それだけの獲物を捕まえるためには広いなわばりが欠かせないのです。
そのためオオカミは条件が良いと10km先にまで聞こえるという遠吠えを生かして、「ここは自分たちのなわばりだぞ」とアピールしているのです。
一匹狼(いっぴきおおかみ)って本当にいるの?
はい、本当にいます。 人間もオオカミも基本的には群れで暮らす動物ですが、他の人とあまり関わらずに暮らしている人のことを「一匹狼」と呼ぶことがあります。人間で一匹狼と呼ばれる人は格好良く思えますが、動物のオオカミの場合はあまり良い状態ではありません。
パックで生まれて大きくなったオオカミは、繁殖できる年齢になると自分の番を探してパックを出ていきます。そのパックから出た直後のオオカミが、いわゆる一匹狼という訳です。
オオカミの世界における一匹狼は私たちのイメージとは異なり、他のオオカミに見つからないようにひっそりと暮らしています。なぜなら他のパックに見つかってしまうとなわばりを侵略したと思われて攻撃され、最悪の場合は命を奪われてしまうからです。また1頭では大きな獲物を捕まえることができないため、死肉やカエルなど食べられる物はなんでも食べて、なんとか命を繋いでいきます。
そんな過酷な一匹狼生活に耐えたオオカミだけがいずれ番を見つけ、群れを作れるという訳です。
オオカミが草食動物を食べつくしてしまうことはないの?
オオカミが獲物となる動物を食べつくしてしまうことはありません。 なぜならオオカミが日頃食べているのは体が弱かったりケガをしたりして、弱っている動物がほとんどだからです。健康的な動物はオオカミに襲われても、逃げたりあるいは立ち向かったりしてなんとか難を逃れようとします。そのためオオカミも相手が健康で力が強い動物だとわかると、さっさと諦めて次の獲物を探しに行きます。そしてどうしても獲物にありつけなかったオオカミは、最終的には餓死(がし)してしまいます。
実はオオカミがいなくなってしまった場所ではシカやイノシシなどが増えすぎてしまい、動物たちは深刻なエサ不足に悩まされています。そのため動物たちが木の皮や根っこまで食べて木が枯れてしまう、人間が暮らす場所に下りてきて畑や田んぼを荒らしてしまうという被害が起きて問題になっています。
つまりオオカミが獲物となる動物を食べつくすことはなく、むしろオオカミがいることによって不健康な動物が間引かれて、健康的な動物が適切な数で生き残るのです。山の健康が保たれるためには、オオカミやシカなど全ての動物の存在が欠かせないということがわかりますね。
オオカミは人間を襲うの?
オオカミは本来慎重な動物なので、積極的に人間を襲うことはありません。 実際に江戸時代の作家・西村白烏が書いた「煙霞綺談」(えんかきだん)の中にも、“山の中で暮らす人にとってオオカミは見慣れた存在なのでむやみに怖がることはなく、こちらから手を出さなければ人を噛むものではない”(要約)という記述があります。
ただし狂犬病(きょうけんびょう)という病気にかかってしまうと、人間をはじめとした全ての動物に襲い掛かってしまうことが知られています。
狂犬病は人間にも感染するうえ、一度かかるとほぼ100%治らないとても恐ろしい病気です。そのため犬をペットとして飼う時は、年に1回狂犬病の予防接種(よぼうせっしゅ)を受けることが法律で義務づけられています。
どうしてオオカミはお話の悪者になることが多いの?
先ほども説明した通り、オオカミはほとんど人間を襲うことはない動物です。 しかしアメリカやヨーロッパにおいてオオカミは、シカやバイソンなどの人間がハンティングの獲物にする動物を食べることからハンターにとても嫌われていました。また牛や羊などの人間が飼っている家畜を襲って食べてしまうことも少なくなかったため、牧場の持ち主にもとても嫌われていました。
そんな背景があって、海外ではオオカミを悪者に仕立てることが多かったようです。 日本ではかつて神様の使いと考えられていたオオカミですが、海外から輸入されてきた赤ずきんちゃんや3匹のこぶたなどの物語を読んで、“オオカミはずるくて凶暴で危険な動物だ”と思っている人も多いのではないでしょうか。
昔の日本にはオオカミが2種類もいたって本当?
本当です。100年ほど前の日本には「ニホンオオカミ」と「エゾオオカミ」という2種類のオオカミがいました。 かつて日本人やアイヌの人たちはオオカミと良い関係を築いていましたが、家畜を襲って食べてしまうこと、狂犬病にかかって人間を襲うオオカミが増えてしまったことから少しずつその関係は崩れていってしまいました。
江戸時代から明治時代にかけては政府がオオカミを捕まえることを推奨(すいしょう)していて、捕まえるとたくさんの懸賞金(けんしょうきん)がもらえたそうです。狂犬病と人間に捕まったことが重なって、ニホンオオカミは1905年に、エゾオオカミは1900年頃に捕まえられた個体を最後に絶滅してしまったと考えられています。
残念なことですが、今では2種とも剥製(はくせい)でしかその姿を見ることができません。
オオカミにはどんな敵がいるの?
オオカミは大きくてとても強い肉食動物ですが、無敵という訳ではありません。 オオカミの敵は意外なことに同じオオカミで、なわばりをめぐるパック同士の争いで大ケガをしたり、時には命を落としたりしてしまうこともあります。 またオオカミが獲物にしている草食動物は体が大きい物も多いため、反撃されてうっかり大ケガをしてしまうこともあります。
しかし実はオオカミにとって、一番の敵は私たち人間です。 オオカミは家畜を襲うことから害獣(がいじゅう)として駆除(くじょ)されたり、毛皮を使うために捕まえられたりして世界中で数を減らしてしまいました。 先ほどニホンオオカミやエゾオオカミが絶滅してしまったと説明しましたが、カナダのニューファンドランド島に住んでいたニューファンドランドシロオオカミも私たち人間が絶滅させてしまったことで知られています。またメキシコに住んでいるメキシコオオカミは数が減ってしまい、絶滅してしまうのではないかと心配されています。
年々オオカミが自然環境を守る存在であることが明らかになって、世界中のあちこちでオオカミを守ろうという保護活動が進められています。しかし今でもオオカミの保護に反対し、駆除すべきだと考えている人も少なくありません。
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オオカミ 種類
・シベリアオオカミ(ツンドラオオカミ) ・アラビアオオカミ ・カスピオオカミ ・シンリンオオカミ ・ホッキョクオオカミ ・メキシコオオカミ ・ニューファンドランドシロオオカミ(絶滅) ・ニホンオオカミ(絶滅) ・エゾオオカミ(絶滅) など *亜種が多く、また学説によって分類が異なるため10種のみ記載しました。
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オオカミ 参考文献
- 今泉 忠明(2007年)『野生イヌの百科』データハウス
- 今泉 忠明(2000年)『絶滅動物誌 人が滅した動物たち』講談社
- 東京大学総合研究博物館「哺乳類 32ニホンオオカミ」 http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DKankoub/Publish_db/1995collection2/tenji_honyurui1_32.html
- ナショナルジオグラフィック「動物大図鑑 オオカミ」 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20141218/428809/
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