ユキヒョウ

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あなたはユキヒョウという、白い毛皮と太くて長いしっぽが特徴の大型ネコ科動物を知っていますか?
動物園で飼育されているほか、SNSで話題になることもあるので見たことがある人もいることでしょう。
ユキヒョウはネコ科動物の中で唯一高山帯での暮らしに適応し、最も標高が高いところで生活する特徴的な動物です。
この記事でユキヒョウにはどんな特徴や秘密があるのか、一緒にのぞいていきましょう!


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~基本情報~

哺乳綱(ほにゅうこう)食肉目-ネコ科-ヒョウ属

体長1~1.5m 体重35~55kg

ユキヒョウは中央アジアの雪深くて乾燥した高山(こうざん)に生息する、野生の大型ネコ科動物です。外見の特徴としては被毛(ひもう)が黄褐色から灰色で全身に黒色の斑点模様があること、非常に太くて長いしっぽを持っていることがあげられます。ユキヒョウは基本的に夜行性で昼間は物陰に潜んで休んでいることが多いものの、人間が少ない地域では昼間に活動することもあります。

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ユキヒョウは基本的になわばりを持ち、単独(1頭)で暮らす動物です。彼らは性別を問わず生後2~3年ほどで性成熟(せいせいじゅく)を迎え、交尾をする時だけオスとメスが一緒に行動します。繁殖期(はんしょくき)は10月~5月頃までですが、日本の動物園の場合は12~2月が多いようです。妊娠期間(にんしんきかん)は90~103日ほどで、1回の出産で2~3頭の子どもを産みます。

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ユキヒョウのメスは出産が近づくと自分の毛を敷き詰めた巣穴を作り、その中で子どもを産みます。生まれたてのユキヒョウは体重が500g程度で目も開いていませんが、生後7日ほどで目が開き、生後40~60日ほどで肉を食べ始めます。子どものユキヒョウは少なくともはじめての冬が終わるまでは母親と一緒に生活し、高山で生き抜くための狩りや生活の方法などを学んでいきます。


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ユキヒョウのQ&A

ユキヒョウの名前の由来は何?

ユキヒョウという名前の具体的な由来や、いつからこの名前で呼ばれていたのかを示す具体的な資料や証拠は見つかりませんでした。恐らく雪の中で暮らすヒョウのような動物、というところからこの名前が付けられたのではないかと考えられます。

なおユキヒョウは英語で「Snow leopard(スノーレオパード)」、学名は「Panthera uncia」、漢字では「雪豹」と表現されます。


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ユキヒョウはどうしてそこに住んでいるの?

ユキヒョウは中央アジア(中国、ブータン、ネパール、インド、パキスタン、アフガニスタン、ロシア、モンゴルなど計12カ国)の高山地帯に生息しています。夏は標高2,700~5,800mの高地で暮らしていますが、冬は獲物を追いかけて標高1,800mくらいの森林に移り住みます。

ユキヒョウはネコ科動物の中で唯一高山帯に生息している動物です。なぜユキヒョウが寒くて獲物が少ない高山帯で暮らしているかというと、ヒョウとの競合に負けた結果、生活しづらい高山に生活の場所を移さなければならなかったのではないかと考えられています。しかしユキヒョウは高山で暮らすうちに体を適応させ、見事に生き延びることに成功したのです。

なお通常人が暮らしたり訪れたりする場所ではないところで生活しているユキヒョウは、長らく謎に包まれた存在でした。かつては「幻の動物」とも呼ばれていて、その姿が初めて撮影されたのはなんと1970年のことだったそうです。


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ユキヒョウは何を食べているの?

野生のユキヒョウは野生のヤギやヒツジ(アイベックス、マーコール、バーラル、アルガリなど)、イノシシやシカ、げっ歯類、ノウサギなどさまざまな動物を捕まえて食べています。

ユキヒョウは待ち伏せをして獲物を捕まえることもありますが、どちらかというと獲物にそっと近づいて一気に飛びかかって捕まえることが多いようです。彼らは強靭(きょうじん)な後脚を使って6~15mもの距離を一気に飛び、時に自分の体の3倍もある動物でも捕まえてしまいます。

ただしユキヒョウが住む場所は足場が悪くて雪が深いという、非常に生活しにくい環境です。そのため野生動物よりも簡単に捕まえられるという理由から、家畜を襲ってしまうことも少なくないようです。

なお動物園では馬肉や鶏肉、鶏頭(けいとう)などを食べています。


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ユキヒョウのしっぽはなぜ長くて太いの?

ユキヒョウといえばしっぽが特徴的な動物ですが、なぜユキヒョウのしっぽは長くて太いのでしょうか?
ユキヒョウのしっぽは大型のネコ科の中でも特に長く、長さは0.9~1mほどと体長と同じくらいです。また他のネコ科動物と比べてみると、体の大きさの割にしっぽが太いのがよくわかります。

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ユキヒョウはこの特徴的なしっぽを「バランスを取るため」、そして「体を暖めるため」に使っています。
ユキヒョウはジャンプをする時はしっぽを伸ばし、方向転換をする時はしっぽを振って急な斜面でも上手にバランスを取ってジャンプしたり駆け降りたりします。また休む時には足や鼻にしっぽを巻きつけて、マフラーのように使うこともあります。

ちなみに動物園で飼育されているユキヒョウは、自分のしっぽをくわえる(かむ)ことがあります。なぜしっぽをくわえるのかその理由ははっきりとわかっていませんが、何かしらのストレスを感じて安心するためにこのような行動をしているのではないかと考えられています。


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ユキヒョウの毛皮はなぜ白いの?

大型のネコ科動物はヒョウやトラ、チーターのように体の色が黄色や黄褐色をしている動物ばかりですが、ユキヒョウの毛皮はなぜ白っぽい色をしているのでしょうか?

その答えは、ユキヒョウが住んでいる場所を見てみるとわかります。
ユキヒョウが生息する場所は雪と岩に覆われた高山地帯であり、草木が青々としげっているような場所ではありません。そう、一見派手に見えるユキヒョウの白い(正確には黄褐色から灰色)毛皮と斑点模様、しっぽのしましま模様は中央アジアの厳しい山の岩肌にそっくりでカモフラージュに役立っているのです。

実際にユキヒョウは背景に溶け込むのが上手くなかなか見つけられないため、観察や調査をするのが難しいといわれています。


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ユキヒョウの体には高山で暮らすための秘密が隠されているって本当?

本当です。
標高が高くて酸素も少なく、非常に寒い場所で暮らすユキヒョウの体にはたくさんの秘密が隠されています。

1つ目の秘密は鼻にあります。
ユキヒョウの鼻はたくさん空気を取り込むために太く、鼻の穴が大きくなっています。また鼻の中には冷たい空気を暖め、湿度を加えてから体に取り込むための仕組みが備わっています。さらにより酸素を取り込みやすくするため、肺の血管を増やす特殊な遺伝子も持っているそうです。

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2つ目の秘密は毛にあります。
ユキヒョウの被毛は長く密に生えていて、雪山の寒さにも負けないような作りになっています。ユキヒョウは大型のネコ科動物で最も毛が長いことが知られていて、一番長い毛は12cmにもなるそうです。

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3つ目の秘密は脚にあります。
ユキヒョウの脚はとても大きく、雪の上を歩いたり走ったりしても脚が沈みこまないような作りになっています。人間に置き換えてみると、かんじきやスノーブーツを履いているようなものだと考えるとわかりやすいかもしれません。また雪や岩の上ですべらないように、足の裏にも毛が生えています。

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4つ目の特徴は骨にあります。
ユキヒョウの背骨はとてもしなやかで柔らかく、後脚が長いため1回のジャンプでとても長い距離を飛ぶことができます。彼らは助走をつけずに垂直に2mも飛び上がれるうえ、足場の悪い岩場でも最高時速65kmで走れるそうです。


ユキヒョウは鳴き声がかわいいって本当?

本当です。
ユキヒョウは大型のネコ科動物ですが、トラやライオンのようにほえることができません。そのため大人のユキヒョウでもペットのネコと同じように、「ニャー」「ミャオ」といったかわいらしい声で鳴きます。トラやライオンはなわばりを主張するために大きな声でほえることがありますが、大きな声を出せないユキヒョウは糞やオシッコ、爪痕(つめあと)でなわばりの主張をします。

なおユキヒョウは基本的に単独で暮らす動物ですが、繁殖期にオスとメスが鳴きかわす声や赤ちゃんが母親を呼ぶ声など、いくつか鳴き声のバリエーションがあることが確認されています。そのため野生のユキヒョウは鳴き声を使い、仲間と何かしらのコミュニケーションを取っていると考えられています。

ちなみにユキヒョウの赤ちゃんは生まれてすぐは「グェー」といった低い声で鳴きますが、少し成長すると「ピヨピヨ」「ピィ」といった小鳥のような声で鳴いて母親を呼びます。その鳴き声がとてもかわいいとSNSで話題になったこともあります。


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ユキヒョウはペットとして飼えるの?

ところで個人がペットとしてユキヒョウを飼うことはできるのでしょうか?

ユキヒョウは日本の法律で人の命や財産に危険を及ぼす可能性がある、「特定動物(とくていどうぶつ)」に指定されています。令和2年6月1日以降新たに特定動物を愛玩目的(あいがんもくてき・ペットとして飼うこと)で飼うことは全面的に禁止されたため、日本国内においてユキヒョウをペットとして飼うことはできません。

ちなみにユキヒョウの生息地では子猫を拾って連れ帰り、育てていたところ実はその子猫がユキヒョウだったという事例があったそうです。


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ユキヒョウはどのくらい生きるの?

ユキヒョウの寿命は野生下で約15年、飼育下で約20年だといわれています。

日本最高齢のユキヒョウは2010年2月まで愛知県の東山動植物園で飼育されていたメスの「パトラ」で、21歳9カ月まで生きました。世界最高齢のユキヒョウはアメリカのブロンクス動物園で飼育されていた個体で、なんと22歳と5カ月まで生きたそうです。


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ユキヒョウにはどんな敵がいるの?

野生において子どものユキヒョウはオオカミや猛禽類(もうきんるい・イヌワシなど)に狙われることが少なくありませんが、大人になったユキヒョウには目立った天敵はいないといわれています。

しかしそんなユキヒョウにとって、唯一かつ最大の天敵がいます。そう、それは私たち人間です。
ユキヒョウは昔から家畜(ヤギ、ヒツジ、ウマ、ヤク、イヌなど)を襲う動物として現地の人たちに恐れられ、嫌われてきました。現在ユキヒョウは絶滅危惧種に指定されていて、国際的に保護されています。しかし家畜を殺された農民の報復として殺されたり、毛皮や伝統薬の原料となる骨を取るために密猟(みつりょう)されたりして、今も1年の間に最大450頭ものユキヒョウが殺されているといわれています。

また地球温暖化の影響を受け、ユキヒョウが生息する地域の森林や植生(しょくせい)に影響が出ているといわれています。その結果ユキヒョウの獲物となる動物やユキヒョウが住める場所がどんどん減り、より人間との衝突が起きやすくなるのではないかと心配されています。

ユキヒョウの生息地は環境が厳しく、人間が簡単に立ち入ることができない場所ばかりです。そのため十分に調査されているとは言い難い状況ですが、ユキヒョウの推定生息数は3,500~7,000頭ほどだと考えられています。そしてこのまま密猟や温暖化が進んでしまった場合、詳しい生態が判明する前に野生のユキヒョウが絶滅してしまうかもしれないといわれています。


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参考文献

今泉 忠明(2004年)『野生ネコの百科』データハウス

ピーター・クヴィン「峡谷の村で出会ったユキヒョウ」『ナショナルジオグラフィック』、2020年第26巻第7号、p89-107

東山動植物園「ユキヒョウパトラへの献花の御礼」
http://www.higashiyama.city.nagoya.jp/blog/2010/02/post-3171.html

東京ズーネット「ユキヒョウの鳴き声コミュニケーション」
https://www.tokyo-zoo.net/topics/profile/profile01.shtml

東京ズーネット「“ネコ科の女王”ユキヒョウ来園──多摩 2005/02/04」
https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=2250

札幌市円山動物園「ユキヒョウ」
https://www.city.sapporo.jp/zoo/b_f/b_08/db123.html

東京都「多摩動物公園 ユキヒョウの「エナ」がカナダへ旅立ちます~希少動物の繁殖を目指して~」
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2015/09/21p9a302.html

ワイルドライフ「161モンゴル アルタイ山脈 ユキヒョウ親子天空の断崖をゆく」
https://www.nhk.or.jp/wildlife/archive/p161.html

smartFLASH「アンタッチャブル・柴田が聞く「ネコ科動物」がっかり雑学(1)」
https://smart-flash.jp/lifemoney/10276

アイキャッチ画像
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