エレクトクレステドペンギン
エレクトクレステドペンギン
エレクトクレステドペンギン
飾り羽がついているペンギンは何種類かいますが、今回は「エレクトクレステドペンギン」についてご紹介します。別和名「マユダチペンギン」とも呼ばれており、ペンギン好きの方ならご存知かも知れませんね! ですが、実際このペンギンを間近で見た経験のある方は少ないようです。 それもそのはず。実はある秘密が隠れているためといわれています。果たしてその秘密とは一体何なのか? 早速、探りに出かけましょう!
エレクトクレステドペンギン 基本情報
鳥網-ペンギン目-ペンギン科-マカロニペンギン属
50~95cm
オス:約6.3kg(換羽前)
メス:約5.4kg(換羽前)
※アンティピィティーズ諸島で暮らす成鳥の場合
オス:21.2cm メス:20.4cm
※オタゴ半島で暮らす成鳥の場合
オス:5.8cm メス:5.2cm
※オタゴ半島で暮らす成鳥の場合
15万羽
キングペンギンは別和名「シュレーターペンギン」や「マユダチペンギン」と呼ばれていますが、このページでは基本的にエレクトクレステドペンギンと名前を統一してご紹介します。
エレクトクレステドペンギンはマカロニペンギン属のなかで唯一黄色い飾り羽が逆立って生え、その飾り羽も自由に動かせるのが特徴です。腹側は白、頭部や背中側は黒い羽毛におおわれ、足は薄いピンク色。くちばしは赤身のかかったオレンジ色をしています。オスもメスも全く同じ外見をしているため見分けがつきにくいですが、基本的にオスの方が体が大きいです。
エレクトクレステドペンギンは9月頃になると繁殖を行なうため、まずオスが先にバウンティー島やアンティピィティーズ諸島などに上陸します。メスが来るのは約2週間後です。到着後は沿岸や岩礁(がんしょう)などにルッカリー(コロニー)と呼ばれる集団を作ります。また、巣作りも同じ場所です。巣の素材は主に小石や土、植物を利用し、その後お互い気に入った相手と繁殖行為にうつります。つがいの絆については詳しく分かっていません。
メスは10月頃に2個卵を産みますが、最初に産んだ卵は2個目に産んだ卵よりも小さい場合が多く、2個目の卵しか温めないこともあるようです。抱卵合計期間は約35日間となり、この期間をこえると無事にヒナ誕生となります。
生まれてからしばらくは親鳥がお腹で包みながらエサを与えて育てます。ある程度大きくなると、ヒナはクレイシ(共同保育所)と呼ばれる集団に預けられ、その期間も親鳥は海へエサを探しに行き食事を与え続けます。 その後は生まれてから約70日ほどで親鳥と同じぐらいの大きさに成長し、巣立ちのときを迎えます。
ふわふわの綿毛に覆われていたヒナの体は少しずつ羽が抜け換わり、最終的には大人と同じ姿に変化するのです。巣立ちから1年経過した若鳥にも飾り羽は生えていますが、まだ少し短めなのであどけなさが残っています。しっかり生え揃うと長さは約6cmになるようです。
エレクトクレステドペンギン Q&A
エレクトクレステドペンギンの名前の由来は?
エレクトクレステド(Erect-crested)には「逆立った冠羽」という意味があり、まさに特徴的な飾り羽を見て名づけられたとされています。別和名マユダチペンギンも眉毛が逆立っているように見えるためこの名前がついたそうです。ちなみに学名の「Eudyptes sclateri」はイギリスの動物学者だったフィリップ・スクレーターが由来とのこと。
エレクトクレステドペンギンはどうしてそこに住んでいるの?
エレクトクレステドペンギンは、主にニュージーランド東南にあるバウンティー島やアンティピィティーズ諸島を繁殖地としています。またオークランド諸島、キャンベル諸島でのルッカリー(コロニー)も発見されているようです。その他マッコーリー島、チャタム島、オーストラリアでもエレクトクレステドペンギンの姿が目撃されていますが、ニュージラーンド周辺の島々以外で確認されているのは漂着してしまった可能性が高いとのこと。
しかし、なぜ好んでそこに暮らしているのかは詳しく分からないようです。というのもエレクトクレステドペンギンを守るため、繁殖地である島々は限られた研究者しか入ることができません。さらに、人間が簡単に近づけない断崖絶壁や荒れ狂う海の近くで巣を作ることから生態を詳しく調べるチャンスも少なく、ミステリアスな部分が多いペンギンなのです。
エレクトクレステドペンギンは何を食べているの?
海に潜ってイカやタコ、甲殻類を食べています。ヒナの場合は親が消化した甲殻類などを口移しでもらっています。
エレクトクレステドペンギンのヒナは1羽しか育たないって本当?
本当です。なぜなら基本情報でも少しご紹介したとおり、最初に産まれた卵は2個目に産まれた卵よりも小さく、親鳥が温めない。もしくは卵を蹴り割って死なせることが多いためなんだそうです。
運良く2個の卵からヒナが孵ったとしても、エレクトクレステドペンギンはエサを積極的に求める方しか育てようとしません。厳しい自然界で確実に子孫を残すためには、少しでも体力があって元気のいい1羽を選んで育てるしか方法がないのです。
エレクトクレステドペンギンが見られる場所はあるの?
2021年11月現在、残念ながらエレクトクレステドペンギンが日本で見られる場所はありません。ですが唯一、北海道の稚内市にある「わっかりうむノシャップ水族館」で展示されていた記録が残っています。
野生での最高寿命は約17年といわれていますが、この水族館で飼育されていたエレクトクレステドペンギンは、なんと合計28年も生きたそうです。2001年11月2日に死んでしまいましたが、その後ペンギンの遺体は貴重な標本として鳥類研究所で保管されているとのこと。
さらにこのエレクトクレステドペンギンは絶滅危惧IB類に指定されているため、今後輸入して飼育することもできません。さらに生息地への立ち入りも禁止されているので、バウンティー島やアンティピィティーズ諸島の近くを船で通りかかった際、船の上から眺めるしか方法はないようです。
エレクトクレステドペンギンには天敵がいるの?
エレクトクレステドペンギンにも敵は存在し、主にオオトウゾクカモメやオオフルマカモメです。ですが、エレクトクレステドペンギンにとって一番の敵は人間かも知れません。
先ほども少しご紹介しましたが、エレクトクレステドペンギンは現在IUCN(国際自然保護連合)によって絶滅危惧度を「絶滅危惧IB類」に指定されています。ミステリアスな部分が多いので詳しい原因はよく分かっていませんが、恐らく「漁業によってエサとなる資源の乱獲」や「ネズミなどの移入捕食者」によって卵やヒナが襲われている可能性があるようです。
詳しい原因解明と対策が急がれるものの、私たちにまずできることは現在の状況を知ることです。この機会にぜひ、人間とペンギンとのより良い関係作りを一緒に考えてみませんか?
エレクトクレステドペンギンの寿命は?
厳しい自然界で生きるエレクトクレステドペンギンの寿命は、最高で約17年です。
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エレクトクレステドペンギン 参考文献
- ペンギンガイドブック 著者:藤原幸一
- ペンギンライブラリー ホシザキ株式会社 https://www.hoshizaki.co.jp/penguin_island/penguin/
- Pew Charitable Trusts世界のペンギンの保護 https://www.pewtrusts.org/-/media/assets/2015/05/penguinoverviewfinaljp.pdf
- BirdLife International Tokyo もっとも絶滅リスクの高いペンギンはどの種でしょうか? https://tokyo.birdlife.org/archives/world/13126
- わっかりうむノシャップ水族館 マユダチペンギンメモリー https://www.city.wakkanai.hokkaido.jp/suizokukan/photogallery/pengin.html
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