フクロウオウム

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Strigops_habroptilus_1.jpg

皆さんは「フクロウオウム」という生き物を知っていますか?別名を「カカポ」とも呼び、こちらの方が聞き慣れているかもしれません。世界で唯一飛ぶことのできないオウムだと言われています。
オウムなのに飛べないのは不思議に感じますね。フクロウオウムは、珍しい生態を数多く持っている生き物です。また、絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)に含まれており保護されているのです。
フクロウオウムは、人間にも求愛(きゅうあい )行動をするほどに人懐っこい性格をしています。しかし、実際に見ることが難しい動物のため知っている人は多くありません。1人でも多くの人に、フクロウオウムの魅力(みりょく)を知っていただきたいです。
フクロウオウムについて、一緒に詳しく探ってみましょう!

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〜基本情報〜

鳥綱−オウム目−インコ科−フクロウオウム亜科−フクロウオウム属

フクロウオウム 体長:約60cm 体重:約3〜4kg

フクロウオウムは、ニュージーランドの固有種(こゆうしゅ)です。
人間が移り住んでくる前から、ニュージーランドに生息していました。

その時代の天敵は、猛禽類(もうきんるい)しか存在していません。
フクロウオウムは、猛禽類の対策さえしていれば生き残ることができました。
しかし、移り住んできた人間が他の動物を持ち込んでしまったのです。
その動物たちによって、フクロウオウムは絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)にまで追い込まれてしまいました。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kākāpō head.jpg

これ以上、個体数を減らさないために1894年に政府が動きだしました。
1987年には環境保全省が中心となり、「カカポリカバリー活動」が始まったのです。
その活動の1つとして、ニュージーランド近くの3つの島で保護と管理をしています。

フクロウオウムの個体数は、2020年の5月のデータによると211羽です。
それだけしか存在していないのと驚く人もいると思います。
しかし、2008年頃の個体数は91羽でした。
約10年で倍の数に増加することができたのです。

フクロウオウムは、どのように繁殖(はんしょく)するのでしょうか?
個体数を急激に増加させられないのは、繁殖が難しいからかもしれません。
フクロウオウムの繁殖について探ってみましょう!

フクロウオウムは、毎年繁殖を行うわけではありません。
2〜3年に1度だけ、リムという木の実が豊作(ほうさく)になります。
リムの実というのは、フクロウオウムの大好物です。

その年を迎えると、リムの実をたくさん食べて繁殖に備えます。
普段の状態でも体重はかなりありますが、繁殖前にはさらに脂肪を1kgほど溜めるのです。
そして、「レック」と呼ばれる繁殖方法を行います。

「レック」という繁殖方法は、フクロウオウムしか行いません。
そのため、あまり知られていない方法なので簡単に流れをご説明します。

フクロウオウムのオスは、メスにアピールするためのステージに集まります。
そして、メスのためにステージにたどり着く通路を作るのです。

夏の夜になると、オスは一斉に体を膨らませて音を出し始めます。
この行為を「ブーミング」と呼びます。
ブーミングは、2〜4ヶ月の期間は毎日7〜8時間ほど繰り返し続けます。
音は5kmほど離れていても聞こえるくらいの音量です。

メスは作られた通路を辿って、オスが集まっている場所へ向かいます。
メスが到着すると、オスはダンスを踊ってアピールを始めます。
ブーミングとダンスを気に入られると、メスと交尾することができるのです。

巣作りから子育てまで、全て母親がひとりで行います。
産卵をする前に、地面の穴や木の洞窟(どうくつ)に巣を作ります。

1回の産卵で1〜4個ほどの卵が産まれ、約30日で孵化(ふか)します。
残念ながら、全ての卵が孵化できるわけではありません。
孵化せずに亡くなってしまうこともあります。

その後、巣立ちするまでに2ヶ月間はかかります。
子供が巣立ちをしても、6ヶ月間は母親がエサを与え続けるのです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kakapo_chicks_(8529664804).jpg

毎年のように繁殖を行うわけではないため、個体数を増やすのは簡単ではないことが分かりましたね。
現在はフクロウオウムの繁殖に、人間も協力してサポートしています。
子供の中には、母親の力だけでは育てるのが難しい子もいます。
そのような子供がいる場合は、母親に代わり人間が子育てを行なっているのです。

また保護されているフクロウオウムには、1羽ずつ発信機(はっしんき)が付けられています。
1年に1度発信機を交換する際に、健康診断も行われています。
絶滅に最も近いオウムだからこそ、厳重(げんじゅう)に守られているのですね。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Organising_feeds_for_kakapo_chicks_(8529405482).jpg

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フクロウオウムのQ&A

フクロウオウムの名前の由来は?

フクロウオウムという名前は、日本で呼ばれている和名です。
フクロウのような顔つきをしているオウムということで名付けられました。
顔が似ている動物の名前を、そのまま使ったのですね。

ちなみに、学名はラテン語で「strigops habroptilus」と言います。
これは「フクロウのような」という意味です。
和名と似た考え方から付けられています。

カカポという名前は、ニュージーランドの先住民族であるマオリ族の言葉から付けられました。
「夜のオウム」という意味です。
「カカ」はオウムで、「ポ」は夜を表しています。

なぜ、夜が関係あるのか不思議に感じる方もいると思います。
その理由は、フクロウオウムは唯一夜行性(やこうせい)のオウムだからです。
天敵が行動しない時間が夜であったため、夜に行動するようになりました。
夜に行動するオウムだから、カカポと名付けられたのです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Stephen_Bragg_with_kakapo_chicks.jpg

フクロウオウムはどうしてそこに住んでいるの?

フクロウオウムは、ニュージーランド近くにある3つの島に分けて保護しています。

・コッドフィッシュ島
・アンカー島
・リトルバリア島

上記の3つの島に分けている理由は、絶滅させないためです。
1つの島だけで飼育をすると、天敵や病気によって絶滅してしまう恐れがあります。
そのような状況に陥らないように、分散させて保護しています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kakapo_%22Sirocco%22_at_feeding_station.jpg

フクロウオウムは何を食べているの?

フクロウオウムは草食動物です。
普段食べているのは、木の実、種、花粉、樹液、木の芽、木の皮、葉っぱ、根っこなど、木の隅々まで食べることができます。

フクロウオウムは飛ぶことができないので、エサは足を使って木を登ります。
稀(まれ)に昆虫や無脊椎動物(むせきついどうぶつ)を食べることもあるそうです。

最も好んで食べるのは、リムと呼ばれる木の実です。
2〜3年に1度くらいのペースで、豊作(ほうさく)になる年があります。
その年には、フクロウオウムの繁殖(はんしょく)が活発的に行われるため重要なことなのです。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kakapo_Trevor_feeding_on_poroporo_fruit.jpg

フクロウオウムの寿命はどれくらいなの?

フクロウオウムは、世界で最も長生きなオウムとも言われています。
その寿命の長さは約80〜95年です。
人間と同じくらい生き続けることができるのですね。

他のオウムの寿命と比較すると、よりフクロウオウムが長生きであることがわかります。
寿命が短いオウムで約15年、長生きなオウムで約60年です。
この数字を見ると、確かに最も長生きなオウムであることに納得できますね。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Two_month_old_kakapo_chick_(8528264257).jpg

フクロウオウムはどうして飛ぶことができないの?

昔のニュージーランドでは、天敵となる巨大なワシが上空を飛んでいました。
そのため、フクロウオウムは地上を歩いて移動する生活に変えたのです。

もし上空から天敵に狙われても、フクロウオウムは隠れることができます。
どのように隠れるのかというと、体が迷彩(めいさい)のようなモスグリーン色をしているので、
動かずにいると自然に溶け込むことができたのです。

長い年月を地上で生活していたので、羽が退化(たいか)してしまい飛べなくなりました。
そして、いつのまにか世界で最も体が重たいオウムとなっていたのです。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Strigops_habroptilus,_camouflage.jpg

フクロウオウムの天敵はどんな生き物?

人が移り住む前は、ワシなどの猛禽類(もうきんるい)しかいませんでした。
しかし、人の移動と共に様々な動物が連れてこられました。

・オコジョ
・イタチ
・ネズミ
・猫
・ポッサム
・犬
・フェレット など

これらの動物によって、フクロウオウムは攻撃され減少してしまいました。
フクロウオウムは、ワシから逃げる方法しか知らなかったのです。
そのため、地上の天敵から身を守ることができませんでした。

天敵が現れると、フクロウオウムは自然に溶け込もうと動きを止めてしまいます。
しかし、独特な体臭を持っているため居場所がすぐにバレてしまうのです。
走って逃げることができないのは困ってしまいますね。

本来は自分自身で身を守れることが理想的です。
ですが、フクロウオウムには難しいため、人間によって他の動物から守られています。
特に、オコジョには気をつけなくてはいけません。
なぜなら、オコジョは海を泳いで移動することができるからです。
そんなことができるなんて知られていなかったため、過去に被害が出てしまいました。
現在もオコジョ対策を続けて行っています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kākāpō feeding.jpg

フクロウオウムはどんな匂いがするの?

フクロウオウムの体臭(たいしゅう)は、独特な匂いがします。
私たちの身近で似ている匂いを2つご紹介します。

・ハチミツ
・花(フリージア)

この2つが似ている香りだと言われています。
人によっては苦手な匂いに感じる場合もあるそうです。

なぜ、フクロウオウムは体臭を発しているのでしょうか?
その理由は、匂いでお互いを識別(しきべつ)するためです。
フクロウオウムは、夜行性で目が見えにくくなっています。
目の代わりに嗅覚(きゅうかく)が鋭くなり、体臭を発することで識別することができるようになりました。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kakapo_chick_(8528282263).jpg

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フクロウオウム種類

・フクロウオウム(カカポ)

参考文献

世界の鳥の生態図鑑「【フクロウオウムの生態!】寿命や値段等8つのポイント!」
https://sekainotori.com/823.html

NATURE ニュージーランド「NZの飛べない鳥・カカポの知っておきたい10のこと初級編」
https://naturenz.net/?p=668

メイログ 「【カカポの生態】飛べないオウムの変わった繁殖法・飛べない理由や絶滅の原因は?」
https://dunedin-nz.com/kakapo/

おさんぽ鳥見「カカポってどんな鳥?」
https://tonton-animals.com/about-kakapo/

アソビノイズミfrom New Zealand
「【保存版】2019年生まれのカカポ70羽の名前と由来を、かわいい画像で一挙紹介! 」
https://izumi.world/2420/

アイキャッチ画像
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kakapo_Sirocco_1.jpg