ウシ

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あなたは「ウシってどんな特徴がある動物なの?」と聞かれたら、どんな説明をしますか?
ウシはとても有名な動物なので、牧場や動物園などでその姿を見たことがある人も多いことでしょう。
しかしあらためて考えてみるとウシにはどんな種類がいるのか、なぜ草を食べてあんなに大きくなれるのかなど、意外と知らないことも多いのではないでしょうか?
それでは意外と知らないウシの特徴や秘密について、こっそりと覗いていきましょう!


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~基本情報~

哺乳綱鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)-ウシ科-ウシ属

ホルスタイン(乳牛) 体重・オス1000Kg メス600Kg
黒毛和種(肉牛) 体重・オス900Kg メス550Kg

私たちに飼われていてお肉や牛乳を作ってくれているウシはかつてヨーロッパに生息していた野生のウシ、「オーロックス」を家畜化(かちくか)した動物です。原牛(げんぎゅう)とも呼ばれるオーロックスは残念ながら17世紀に絶滅してしまいましたが、現在オーロックスを祖先とする家畜のウシは地球上になんと13億頭以上いるといわれています。

ウシは種類や性別によりますが、基本的に数頭から30頭ほどの群れを作って暮らす動物です。野生のウシには決まった繁殖期(はんしょくき)がありますが、家畜のウシには決まった繁殖期がないため1年中妊娠と出産ができます。ウシの妊娠期間は約280日(10カ月)で、普通は1回の出産で1頭の子どもを産みます。

ウシは草食性の動物なので、野生のウシは草や木の葉っぱなど、その地域で手に入るあらゆる植物を食べています。一方家畜のウシは牧草や稲わらを主食に、濃厚飼料(のうこうしりょう)と呼ばれるトウモロコシや大豆、ふすまや麦など栄養価が高いエサを食べています。


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ウシのQ&A

ウシの名前の由来は何?

ところでウシはいつから「ウシ」という名前で呼ばれるようになったのでしょうか?その名前の由来にはいくつかの説がありますが、今のところどれが正しいのかはっきりとわかっていません。ここではそのうち2つの説を紹介します。

1つ目の説としては韓国でウシのことを「う」と呼んでいて、それが日本に伝わって「ウシ」になったのではないかというものです。2つ目の説としてはウシがかつて「ムチで打って使う獣(けもの)」という意味の「うしし」という名前で呼ばれていて、それが縮まって「ウシ」になったというものです。

ウシのように日頃何気なく目にしている動物でも、名前の由来を調べてみると面白いですね。



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ウシにはどのくらいの種類がいるの?

世界にはなんと、800種類を超える家畜のウシがいるといわれています。

ウシの種類はその役割によってざっくりと牛乳を取るための「乳牛」(にゅうぎゅう)、お肉を取るための「肉牛」(にくぎゅう)、牛乳とお肉の両方を取るための「乳肉兼用種」(にゅうにくけんようしゅ)、荷物を運んだり畑を耕したりする「役牛」(えきぎゅう)の4つに分かれています。

ちなみに現在の日本の牧場などで見られるウシはほとんどが乳牛と肉牛です。かつては日本の農村でも役牛が活躍していましたが、機械や道具が発達したことから役目がなくなってしまいました。今も一部の地域で仕事をしている役牛や観光用に飼われている役牛(沖縄県で砂糖を作るために働く水牛など)もいますが、国内ではほとんどその姿を見ることはできなくなってしまいました。


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ウシはどうして草を食べて大きくなれるの?

ウシはなぜ、草しか食べていないのにあんなに大きくなれるのでしょうか?ウシが草を食べて大きくなれる秘密は、ウシの胃に隠されています。

実はウシの体は私たち人間と同じで、牧草などの固くて繊維が多い植物を自分の力で消化して栄養にすることはできません。しかしウシは私たちと違ってなんと4つも胃を持っていて、胃の中でたくさんの微生物を飼っています。ウシの胃の中ではその微生物たちが働いて植物を分解し、ウシが生きるために必要な栄養素を作り出してくれます。そのためウシは草だけ食べていても、あんなに大きくなれるのです。

ちなみにウシは微生物に対して食べ物(植物)と水、そして胃の中という住みかを与えています。その代わりにウシは働けなくなった微生物を消化吸収して、栄養素(主にアミノ酸というたんぱく質の元)として利用しています。ウシと微生物は不思議で強い関係で結ばれていて、お互いに助け合って暮らしているのです。

なおウシはいつも口をもぐもぐさせていますが、この行動は反芻(はんすう)と呼ばれています。反芻は胃の中にある食べ物を口に戻してもう一度かみ、さらに食べ物を細かくして消化しやすくするために行われています。反芻はウシの仲間であるキリンやヤギ、ヒツジなどの動物でも見られます。



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ウシは1日にどれくらいのエサを食べるの?

ウシが食べるエサの量は乳牛なのか和牛なのか、また体重や年齢によっても大幅に異なります。

1つの例となりますが、体重が600Kgの乳牛(ホルスタイン)は1日20Kgの牛乳を生産するために1日に30Kgものエサ(牧草と濃厚飼料を合せた数字)を食べています。肉牛(黒毛和種)は1日に8~9Kgほどのエサを食べています。


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乳牛は1日にどれくらいの牛乳を生産できるの?

乳牛には「ホルスタイン」、「ジャージー」、「エアシャー」など、多くの種類がいます。
私たちがよく目にする白黒ぶち模様のウシはホルスタインという種類の乳牛で、日本で販売されている牛乳はほぼ100%ホルスタインが生産しています。

ホルスタインの乳量(にゅうりょう)はとても多く、1日に20~30Kg、1年で6000~8000 Kgもの牛乳を生産します。中には1頭で1日に約70Kg、1年に2万Kgもの牛乳を出すホルスタインもいて、このようなウシはスーパーカウと呼ばれています。

なおジャージーという乳牛はホルスタインより乳量が少なく、1年で生産する牛乳の量は4000 Kgほどです。しかし乳脂肪分(にゅうしぼうぶん)が多くて味わいが良いため、ジャージーが生産した牛乳はアイスクリームやバターなどの原料として使われています。ジャージーは体が茶色くて目が大きく、鼻と口の周りが白くてなんともかわいらしい顔をしているのが特徴です。


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和牛のお肉はなぜ値段が高いの?

和牛と呼ばれる肉牛のお肉が高いのは、他のウシよりも時間をかけて育てられているからです。

和牛はゆっくりと時間をかけて育てられるため、お肉にはサシと呼ばれる網目状(あみめじょう)の脂肪が入ります。そしてサシがきれいに入ったお肉は霜降り肉(しもふりにく)と呼ばれています。脂肪は融点(ゆうてん)が低いため、サシが入った和牛のお肉を口の中に入れるととろけるような感じを味わえます。

ちなみに和牛には「松坂牛(まつざかうし)」「神戸牛(こうべぎゅう)」「近江牛(おうみうし)」など、たくさんのブランド牛がいます。


ツノが生えていないウシがいるのはなぜ?

観光牧場(かんこうぼくじょう)などで見かける機会が多い乳牛、ホルスタインはぱっと見るとツノが生えていません。

実はホルスタインにはツノがあるのですが、ほとんどのホルスタインは小さいうちにツノを取ってしまいます。なぜならツノはウシにとってとても強力な武器であり、ツノで突かれると農家の人が大ケガをしてしまう可能性があるからです。なお和牛の1種「無角和種」のように、生まれつきツノがないウシも存在します。

ちなみにシカの仲間(シカやトナカイなど)は毎年ツノが落ちて生え変わりますが、ウシのツノは1度取ってしまうと二度と生えてきません。



背中にコブがあるウシがいるって本当?

本当です。

「コブウシ」や「ゼブー」と呼ばれるウシは、背中にラクダのようなコブがあることが知られています。このコブの中は筋肉と脂肪が詰まっていて、触ると意外と柔らかいようです。

コブウシはコブのほかにも首の下に長く垂れさがった胸垂(きょうすい)と呼ばれるヒダがあり、暑さや病気に強いため東南アジアやアフリカなどでたくさん飼育されています。


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ウシはどんな時にしっぽを振るの?

ウシには長いしっぽがありますが、ウシはどんな時にしっぽを振るのでしょうか?

実はウシのしっぽは主に体にくっついてくるハエを追い払うために振られています。他にも体がかゆい時やお腹が痛い時などにもしっぽを振りますが、ウシのしっぽはしなやかで力が強いため直撃すると想像以上に痛いです。

ちなみにウシのしっぽは「テール」と呼ばれ、スープやシチューなどの材料として使われています。


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ウシはどうして鼻に輪っかを付けているの?

鼻にピアスのような輪っかが付いているウシを見たことはありますか?
この輪っかは鼻輪(はなわ)や鼻環(はなかん)などと呼ばれていて、ウシに指示を聞いてもらうためにつけられています。イヌやネコの首輪と同じような物だと考えると、その役目がわかりやすいかもしれません。

ウシはとても体が大きくて力が強いので、言うことを聞いてもらうのは簡単なことではありません。しかし牧場ではウシを移動させる時や病気やケガの治療をする時など、言うことを聞いてもらわないと困ることもあります。そんな時に鼻輪が付いていれば、ウシに言うことを聞いてもらいやすいのです。

ウシを移動させる時は鼻輪にひもをつけて引っぱり、治療をする時は鼻輪にひもをつけて柱などにつなぎます。


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野生にはどんなウシがいるの?

ウシといえば牧場で飼われているというイメージがありますが、実は野生にもたくさんのウシの仲間が生息しています。

アメリカには「アメリカバイソン」、ヨーロッパには「ヨーロッパバイソン」、東南アジアには「バンテン」、インドには「ガウル」など、ウシの仲間は世界のあちこちに生息しています。しかし数が減ってしまい、絶滅(ぜつめつ)してしまうのではないかと心配されている種類も少なくありません。

またあまり知られていませんが、実は日本にも野生のウシが生息しています。日本の野生ウシは鹿児島県のトカラ列島にある口之島(くちのしま)に生息している「口之島牛」と呼ばれるウシで、これはもともと家畜として飼われていたウシが野生化したものだといわれています。



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ウシの種類

乳用牛(家畜)

・ホルスタイン
・ジャージー
・ガンジー
・エアシャー など

肉用牛(家畜)

・ヘレフォード
・アバディーン・アンガス
・シャロレー
・黒毛和種
・無角和種
・褐色和種
・日本短角種 など

乳肉兼用(家畜)

・ブラウン・スイス
・シンメンタール など

野生牛

・オーロックス(絶滅種)
・アノア
・バンテン
・ガウル
・アメリカバイソン
・ヨーロッパバイソン
・ヤク
・オジロヌー
・オグロヌー
・コープレイ など


参考文献

天野 卓・一谷勝之・上埜喜八・大石孝雄・永島俊夫・横濱道成(2004年)『生物資源とその利用(第2版)』三共出版

広岡 博之(2013年)『ウシの科学 (シリーズ家畜の科学)』朝倉書店

遠藤 秀紀(2019年)『ウシの動物学 (アニマルサイエンス)』東京大学出版会

(公社)茨城県畜産協会いばらきの畜産情報~「家畜名の由来を探る」
http://ibaraki.lin.gr.jp/chikusan-ibaraki/25-09/08.html

名古屋大学生命農学研究科附属フィールド教育研究支援センター設楽フィールド「飼育動物 口之島牛」
http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~shitara/KuchinoshimaCattle.html

明治「乳牛について」
https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/know/lovable-milk/milk/cow/

田中畜産「牛の尾は何を語っているのか。」
https://tanatiku.com/kazuma/20384

一般社団法人Jミルク「千葉・南房総にある酪農のふるさとへ」
https://www.j-milk.jp/knowledge/dairy/hn0mvm0000005v0c.html

財団法人日本食肉消費総合センター
http://www.jbeef.jp/

一般社団法人三重県畜産協会「肉牛の飼育過程(黒毛和種の場合)」
http://mie.lin.gr.jp/fureai/paneru/kuroge.pdf

畜産ZOO鑑「ぼくにも乳用牛、飼えるかな?」
http://zookan.lin.gr.jp/kototen/rakuno/r221.htm

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