アユ
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「アユ」という魚は、日本人にとても馴染みのある魚なので、知っている方も多いのではないでしょうか。若アユの塩焼きや天ぷらなど、夏を代表する食材としても有名ですよね。「清流の女王」とも呼ばれるほど、川の流れに合わせたようなスマートで綺麗な体をしているアユを紹介していきます!
アユ 基本情報
〜基本情報〜
条鰭綱(じょうきこう)キュウリウオ目キュウリウオ科アユ属 体長:10〜30cm アユは海外だと朝鮮半島からベトナム、日本だと北海道から南九州に住んでいます。 最初にお話しした通り、「清流の女王」と呼ばれているほど、流線型で細長く綺麗な体をしています。胸びれと背びれ、尾びれの他に「脂びれ」と呼ばれるひれがあります。この脂びれは背びれと尾びれの間にあります。 若いときには全身が灰色と緑色を混ぜたような色に、背びれが黒く、胸ビレの後には楕円形(だえんけい)の黄色いマークがついています。大人になるとお腹側が黄色っぽくなり、楕円形(だえんけい)の黄色いマークも色が濃くなっていきます。さらに「婚姻色(こんいんしょく)」と呼ばれる色が出てきて、背びれの黒い部分が広くなり、お腹の下にオレンジ色の帯がついていきます。大人の証拠ですね。 アユの口は大きく、目の下まであります。ただ歯は丸く髪をとく、くしのような形をしているんです。 オスとメスの違いは、尾びれで見分けます。オスは尾びれが細長く角張っていて、メスは三角形のような形で後ろがくぼんでいます。さらに婚姻色(こんいんしょく)の黒色はオスの方がはっきりとした黒色になっています。
アユ Q&A
アユの名前の由来は?
アユの由来はさまざまな説があります。アユは昔、「あひ(い)」と呼ばれていて、「あ」は愛称、「ひ(い)」は魚の名前の語尾につけるものとされていて、「愛らしく味のいい魚」という意味でした。この「あひ(い)」がなまって「あいお」になり、「あいよ」、「あよ」となまっていき、最終的に「アユ」となった、という説があります。 他にも、アユは神前に備える食材だったことから、「ごちそう」という意味の「饗(あえ)」が「アユ」になったという説もあります。 他にも、アユは産卵期に川の下流に移動します。「川を下る」ではなく「落ちる」と表現していたことから、落ちるという意味の「アユル」が由来とする説もあります。 説がたくさんあり、どれが本当かはわかっていないんです。 アユの漢字の由来もはっきりとはしていません。アユは漢字で「鮎」と書きます。「魚」と「占」という漢字が組み合わさっていますね。これは、戦いの前にアユを釣って勝つか負けるか占っていたからという説と、アユはなわばり意識が強く、一定の範囲を独占する、占めることからこの漢字になったという説があります。 ただ、「鮎」という漢字は、中国では「ナマズ」という他の魚を指す言葉なんです。日本でも奈良時代から「鮎」はナマズを指していました。なので鮎を指す漢字は「年魚」と書かれていたんです。なぜ年魚と書かれていたのかというと、アユは1年で生涯を終えてしまうからなんです。 アユは他にもいろんな言葉で表されていました。 瓜のような香りがすることから「香魚」、泳いでいると口元が銀色に光ることから「銀口魚」、渓流に泳いでいるイワシに似ていることから「渓鰮」、うろこが小さく細かいことから「細鱗魚」、奈良県吉野郡国栖(くず)地方の名産で、朝廷にアユを献上したことから「国栖魚」といろんな漢字でアユを表していました。それだけ昔から日本人に親しまれていたんですね。 ちなみに英語では「AYU」で伝わるそうですが、アユは甘い香りがするということから「Sweetfish」と呼ばれることもあるそうです。
アユはどうしてそこに住んでいるの?
アユは河川の上流や中流、水の綺麗な湖、ダム湖などに住んでいます。岩場や小石など、いろんな石が混ざっていて、水の綺麗な場所を好みます。石についた藻(も)を食べているので、日本の川は住みやすいのでしょうね。反対に水の濁った場所や泥の多い場所では生きられず、大陸の大きな川には住めないので、あまり海外にはいないのでしょう。 ただこれは大人のアユが住んでいる場所です。では子どものアユはどこに住んでいるのでしょうか。 子どものアユが住んでいる場所は、海です。子どものアユは産まれると海に行き、ある程度大きくなると川に戻ってきます。このように海と川の両方に住むことを「両側回遊(りょうそくかいゆう)と言います。大きな海でいろんな経験をして成長し、また故郷に帰ってきているんですね。 ただ、「コアユ」と呼ばれている琵琶湖(びわこ)に住んでいるアユは海には行かず、ずっと琵琶湖(びわこ)に住んでいます。産まれた場所にずっと住んでいるのも、また違った経験が積めそうですね。
アユは何を食べているの?
アユは先ほどもお話ししたように、石についた藻(も)を食べています。この藻(も)は石からこそぎ取るようにして食べているのですが、アユの歯を思い出してみてください。アユの歯は髪をとく、くしのような形をしていますよね。その歯でこそぎ取っているので、石には髪をといたような跡が残っているのです。この跡は「食み跡(はみあと)」と呼ばれています。どこの藻(も)を食べたのかすぐにわかりますね。 アユは産まれると海に移動するとお話ししましたが、海ではプランクトンや小エビなどを食べていますが、川に戻ると藻(も)を食べるようになります。場所で食生活も変化していくんですね。 ちなみに琵琶湖(びわこ)に住んでいるコアユは、ミジンコなどを食べて生活しています。
アユは1年しか生きられないって本当?
アユは卵から産まれ、海に渡り川に戻ってきて、秋になり卵を産む、そしてその生涯を終える、という生き方をしていて、これが1年間なんです。ただ、寿命が1年間しかないというわけではなく、子孫を残す行動が1回しかできず、その役目を果たすと死んでしまうということなんです。なので、大人になるのが遅くなったアユは2年以上生きることもあるんです。子孫を残すことに全てを捧げているんですね。 ではそんなアユがどんな生涯を送っているのか見てみましょう。 アユの産卵は秋で、住んでいる川の上流や中流から、下流に下っていきます。粒の小さい石があり水通しのいい綺麗な場所に卵を産みます。その数はなんと1万〜2万個とたくさん産むんです。そして卵を産んだ親アユは死んでしまいます。我が子の幸せを祈りながら亡くなっていくのかもしれませんね。 2週間ほどで卵から赤ちゃんが産まれてきます。全長約6mmと小さく、体は透けています。秋に卵が産まれているということは、次は寒さの厳しい冬がやってきます。赤ちゃんはそんな冬を無事に超えるために、川よりも水温が安定している海に泳いでいくんです。 赤ちゃんは海水に耐えられる体をしていますが、比較的塩分濃度の低い場所で生活します。そこでプランクトンや小エビ、水生昆虫などを食べて大きくなっていきます。 すくすくと育ち、全長が59〜63mmほどになるとうろこが出来始めます。大人への第一歩ですね。そこから春になると5〜10cmまでに成長し、川に戻っていきます。 川の上流や中流にたどり着くと、最初は水生昆虫も食べて、群れで生活をしていますが、だんだん大人と同じように藻(も)を食べるようになると群れから離れてなわばりを持つようになります。なわばりを持つのは、自分が食べる藻(も)を確保するためで、藻(も)が豊富な場所だとケンカすることもあるんです。 こうしてなわばりを持つようになると、体が黄色くなり、胸びれの後ろにある黄色いマークも濃くなっていきます。これは、アユの目が黄色を強く認識するからと言われていて、黄色くなっているアユはここをなわばりにしているんだとわかるので、なわばりを持っていないアユはそこを避けて他の場所を探します。こうして争いを避けるために黄色くなると言われているんです。アユも無駄な争いはしたくないんですね。 こうしてまた秋になり、下流に移動して産卵し、その生涯を終えます。 子孫を残す行動を終えると死んでしまうのは、メスだけではなくオスも同じです。オスも同じように子孫を残すと、その生涯を終えます。文字通り、命をかけて子孫を残しているんですね。
アユは初夏の味覚なの?
天然のアユは釣れる時期が初夏に限られているので、初夏の味覚として有名なんです。川で釣ったアユを塩焼きで食べるシーンを見たことがある方も多いのではないでしょうか。 アユは食べているものによって香りが変わってくるのですが、スイカやきゅうりなどの瓜科の香りがするんです。その独特な香りもアユの特徴で、よく食べている人は夏が来たなと感じられる香りかもしれません。 アユは塩焼きの他に天ぷらも有名ですが、生で食べるのはあまりおすすめできないそうなんです。アユは寄生虫の中間宿主なので、生で食べると食中毒になる可能性があります。刺身にする場合は、旬のもので内臓やうろこを取り、冷水で締めて、酢や塩につけて食べるという方法があります。地方によっては「鮎寿司(あゆずし)」という名物もあるほどなんです。塩焼きや天ぷらだけではなく、生でも調理法によっては美味しく食べることができるんですね。
アユはほとんどが養殖なの?
昔はたくさんの天然アユがいましたが、天然のアユは少なくなり、養殖が多くなってきました。なぜ天然のアユは少なくなってしまったのでしょうか。 それは人間が川の環境を無視してダムが作られていったからなんです。ダムがあると海から戻ってきたアユが上流に行くことができないんです。もしも上流に行けたとしても、産卵のために下流に下るのが難しくなります。アユが産卵のする場所は下流で、小さな石がたくさんある場所です。ですがダムがあると小さな石がせき止められてしまい、運ばれなくなるんです。 原因はそれだけではなく、「冷水病」という病気も原因の1つなんです。冷水病とは海外から持ち込まれた細菌が引き起こす病気で、これにかかってしまうとアユは死んでしまうんです。1990年代後半に広まった病気で、数を減らす原因となりました。 このような原因で絶滅(ぜつめつ)が危惧(きぐ)されている種類があります。「リュウキュウアユ」という沖縄に住んでいるアユです。絶滅危惧(ぜつめつきぐ)ⅠA類という絶滅(ぜつめつ)の危険が極めて高いものに指定されています。他のアユも近い将来、絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)に指定されてしまうかもしれません。 養殖では、食用のために育てている場合と、川に放流するためにアユの稚魚を養殖し、天然の河川に返してあげている場合があります。放流したアユは「半天然」と言われることもあるそうです。ただ、養殖のアユは天然のアユのような独特の香りがあまりありません。感染症も問題になっていて、「グルゲア症」という感染症にかかってしまうと、治療法がないので、全てのアユを処分しなければならなくなり、そのアユたちに使った機材も消毒しなければなりません。養殖には解決しなければならないことも多いんですね。 そんな中で、天然のアユを復活させようとする活動も行われています。 アユが住んでいた場所の清掃をしたり、アユが住みやすいように川を作り変えたり、小さい砂を下流に運んで産卵しやすいようにしたりとアユが生きやすいように整備する活動が日本全国で行われているんです。昔のようにたくさんの天然アユが川で見られるには時間がかかるかもしれませんが、川にゴミを捨てない、残さないなど出来ることから始めて、その時間を少しでも縮められるように意識できたらいいですね。
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