ウミネコ

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Larus_crassirostris_-Japan-8.jpg

あなたはウミネコという、主に海辺に生息しているカモメの仲間を知っていますか?
ウミネコ最大の特徴、それは「ミャーオ」というまるで猫のような特徴的な声で鳴くことです。
しかしウミネコの鳴き声は知っていても、意外とそれ以外の生態については知らないという人も多いのではないでしょうか。
この記事で日本を代表するカモメの仲間、ウミネコの特徴や秘密に迫っていきましょう!

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~基本情報~

鳥綱チドリ目-カモメ科

体長 44~47cm
体重 430~640g

ウミネコは中型のカモメの仲間であり、日本を代表するカモメの1種です。体長は44~47cm程度ですが、両方の翼を広げると115~120cmにもなります。その特徴は背中と翼の上面が黒色で下面は白色であること、嘴の先端部に赤と黒の縞があることです。また成鳥に伴って尾羽に黒い帯が現れ、その帯が生涯消えないことも大きな特徴の1つとされています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Black-tailed_gull.jpg

ウミネコは生後4年ほどで性成熟を迎え、繁殖できるようになります。繁殖期は4~6月で、草原や岩壁などに集団で落ち葉や木の枝、羽根などを使った巣を作ります。メスは通常1回の産卵で2~3個の卵を産み、卵は24~25日ほど温めるとふ化します。産まれたばかりのウミネコのヒナの羽は黒色と茶色のまだら模様で、親とは全く違う色合いをしています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gulls_in_air3.jpg

なおウミネコは一度ペアができると翌年以降も同じペアで繁殖することが多いものの、片方が死亡したりケガをしたりするとペアが解消されることもあるそうです。

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ウミネコのQ&A

ウミネコの名前の由来は何?

ところでウミネコという名前には、どんな由来があるのでしょうか?

ウミネコという名前の由来は、その鳴き声にあるといわれています。ウミネコは「ミャーオ ミャーオ」というネコのように聞こえる声で鳴くことから、「海の猫」として「ウミネコ(海猫)」と呼ばれるようになったようです。

なおウミネコの学名は「Larus crassirostris」で、英語では「black-tailed gull」と呼ばれています。

出典:https://pixabay.com/images/id-5676810/


ウミネコはどうしてそこに住んでいるの?

ウミネコは日本列島周辺の海岸から北はロシア南東部、南は朝鮮半島に渡る広い範囲に生息しています。今回調査を行いましたが、なぜウミネコがこれらの地域に生息しているのか、はっきりとした理由はわかりませんでした。

しかしウミネコは同じ場所に留まって生活・繁殖を行う、留鳥(りゅうちょう)の1種です。ウミネコがずっと同じ場所に住み続けられることを考えると、これらの地域にはウミネコの繁殖に適した場所があること、1年を通じてウミネコの群れを支えられるほど食べ物が豊富であるということがわかります。

なおウミネコの繁殖地として知られる青森県の「蕪島ウミネコ繁殖地」、岩手県の「椿島ウミネコ繁殖地」、宮城県の「陸前江ノ島のウミネコおよびウトウ繁殖地」、山形県の「飛島ウミネコ繁殖地」、島根県の「経島ウミネコ繁殖地」の5カ所は史跡名勝天然記念物として、国の天然記念物に指定されています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kabushima2.JPG


ウミネコは何を食べているの?

ウミネコは雑食性の動物で、野生では主に魚類やイカ、両生類や昆虫などを食べています。

食べ物は自分で捕獲することもあれば、浜に打ち上げられた生き物の死骸を食べることもあります。また他の海鳥からエサを奪うこともあれば、漁師さんがとった魚などのおこぼれをもらうこともあります。近年は個体数の増加によるエサ不足が影響しているのか、田んぼでオタマジャクシやザリガニを食べる姿も目撃されているそうです。

なお動物園で暮らしているウミネコは、主にキビナゴなどの小魚を与えられています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gulls_in_air13.jpg


ウミネコの鳴き声やフンによる被害が増えているって本当?

本当です。このところ東京都の中央区や江東区にはウミネコが少しずつ進出してきていて、昼夜問わず聞こえる大きな鳴き声やフンによる被害が増えています。ウミネコは通常海岸線沿いに生息していますが、どうやら近年増えているビルの緑化された屋上も彼らにとっては非常に居心地の良い場所であるようです。

しかしどれだけ被害が増えていても、ウミネコは鳥獣保護管理法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)で保護の対象となっているため、生体や卵を許可なく捕獲・採取することはできません。そのため現状は防除ネットを張る、定期点検をするなどの方法でウミネコを寄せ付けない・繁殖させないといった間接的な対策が行われています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Black-tailed_Gull_(23700093163).jpg


ウミネコはどんな性格なの?

ウミネコは個体差があるものの、比較的人を恐れない、人懐っこい性格をしているようです。

地域によってはウミネコが餌付けされていて、餌付けをされているウミネコは人の頭に乗ってエサをねだってくることもあります。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Black-tailed_Gull_at_Jyoudo_Beach,_Iwate,_Japan_1.jpg


ウミネコとカモメにはどんな違いがあるの?

ウミネコはカモメの一種ですが、ウミネコと他のカモメにはどんな違いがあるのでしょうか?

ウミネコとカモメを見分けたい時は、まずくちばしに注目してみましょう。ウミネコのくちばしは黄色と黒色、赤色の3色ですが、カモメのくちばしは黄色1色です。

次に注目したいのは、目の色です。ウミネコの目は猫に似ていて、黄色い虹彩の中に黒い瞳孔がはっきりと見えます。一方カモメの目は全体的に暗くて虹彩と瞳孔の区別がつきにくく、ぬいぐるみのような目をしています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:南三陸_ホテル観洋のカモメ.jpg
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Common_Gull_Larus_canus,_Arran_(38346135565).jpg

さらにウミネコとカモメは、しっぽに注目しても見分けることができます。ウミネコを含むカモメの仲間の多くは、若いうちはしっぽに黒い帯が入るという特徴があります。多くの種類は成長に伴ってその帯が消えていく傾向にありますが、ウミネコは成鳥になっても黒い帯が消えないため、しっぽを見るとウミネコとカモメを見分けることができるのです。なおこのような特徴があることから、ウミネコは英語で「black-tailed gull(黒いしっぽのカモメ)」と呼ばれています。


ウミネコはペットとして飼えるの?

ところで個人がペットとして、自宅でウミネコを飼うことはできるのでしょうか?

ウミネコは日本の法律において、鳥獣保護管理法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)で保護の対象となっています。現在愛玩目的(あいがんもくてき・ペットとして飼う目的)で野生鳥獣を捕獲することは原則禁止されているうえ、ウミネコは期間や方法を守れば狩猟できる狩猟鳥獣(しゅりょうちょうじゅう)にも該当しません。そのため基本的に、どのような理由があっても環境大臣もしくは都道府県知事の許可を得ることなくウミネコを狩猟・捕獲することはできません。

さらにウミネコはペットショップで販売されている動物でもないため、基本はペットとして飼えない動物だと考えた方が良いでしょう。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Vogelpark_Olching_31.jpg


ウミネコが見られる動物園はあるの?

ウミネコは宮城県の「八木山動物公園」や神奈川県の「よこはま動物園ズーラシア」、愛媛県の「愛媛県立とべ動物園」や兵庫県の「神戸市立王子動物園」など、多くの動物園で飼育されています。

ウミネコは人間が生活する場所の近くに生息している、人間に接する機会が多い鳥類の1種です。そのため車や窓ガラスにぶつかる、釣り糸や釣り針が体や翼に絡まってしまう、ゴミを誤飲するなどの理由から骨折をはじめとしたケガをしてしまい、保護される機会が多いのが現状です。そして保護された個体が動物園に収容され、展示されていることが少なくありません。

ウミネコたちが不用意にケガをすることがないように、釣りをした際は必ず釣り糸を持ち帰ること、バーベキューや海水浴を行う際に出たごみは持ち帰ることを徹底したいですね。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:UMINEKO.JPG


ウミネコはどのくらい生きるの?

ウミネコの寿命については、今もはっきりとわかっていません。

というのもウミネコのように、自由に空を飛ぶ鳥の一生を追跡調査することは非常に難易度が高いのです。また鳥類は若いうちに命を落とす個体が多く、限られた一部の個体だけが長生きする傾向が強いとされています。この様な理由からウミネコに限らず、野鳥の寿命を調査することは難しいとされています。

しかしウミネコはかなりの長寿なようで、2005年に青森県の蕪島で30年11カ月生存している個体が確認されています。

出典:https://pixabay.com/images/id-5676812/


ウミネコにはどんな敵がいるの?

ウミネコの天敵はネコやネズミ、キツネ、カラスやオジロワシといった動物たちだといわれています。

またウミネコのヒナにとっては、成鳥のウミネコも天敵と言えるのかもしれません。というのもウミネコは縄張り意識が強く、自分の縄張りの中に入ってくるものは例え小さなヒナであっても激しく攻撃する習性を持っているのです。そのためある程度成長して歩けるようになったヒナが他のウミネコの縄張りに入ってしまい、攻撃された結果命を落としてしまう…ということも珍しい事ではありません。

なお絶滅が心配される動物が多い中、ウミネコは今のところ生息数が多く、絶滅の恐れが少ない動物種であると考えられています。しかし野生動物は日本のアホウドリやアメリカのリョコウバトのように、どれだけ数が多くても捕獲を制限しないと際限なく狩猟されてしまい、気付けば絶滅寸前だった…という状況に陥りかねません。そのため現在5カ所のウミネコの繁殖地が国の天然記念物に指定され、保護されています。

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kabushima3.JPG

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参考文献

よこはま動物園ズーラシア「動物検索 ウミネコ」
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/zoorasia/animal/subarctic/post_23/

よこはま動物園ズーラシア「カモメの恋(ウミネコ編)」
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/zoorasia/details/post-2256.php

よこはま動物園ズーラシア「飼育日誌 カモメいるんですよ」
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/zoorasia/details/post-2235.php

Twitter・多摩動物公園[公式]@TamaZooPark
https://twitter.com/TamaZooPark/status/1319456164317261824

公益財団法人 山階鳥類研究所「コハクチョウとウミネコの長寿記録」
https://www.yamashina.or.jp/hp/ashiwa/news/200605.pdf

環境省「捕獲許可制度の概要」
https://www.env.go.jp/nature/choju/capture/capture1.html

八戸市「国天然記念物 蕪島ウミネコ繁殖地」
https://www.city.hachinohe.aomori.jp/soshikikarasagasu/shakaikyoikuka/bunka/2/4941.html

野外条件下におけるウミネコのテロメア動態に関する研究
https://nagoya.repo.nii.ac.jp

国土交通省中国地方整備局「ウミネコ」
https://www.cgr.mlit.go.jp/ootagawa/Bio/birds/index366.htm

アイキャッチ画像
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gull_in_water3.jpg